相続登記に必要な書類、遺産分割協議書の書き方を全解説【Q&A付き】
遺産分割協議書は自身で作成することも可能です。ただし、不備があると作成しなおし、再度、相続人全員に署名・押印してもらわなければならないため、専門家に依頼するのもひとつの方法です。
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不動産を相続する場合は、相続登記の手続きをする必要があります。登記申請では、登記が発生した理由や、誰にその不動産の権利が移ったのかを証明するために、登記原因証明情報を添付します。
売買などによる登記申請では、権利を取得する人と失う人が共同で手続きしますが、相続の場合は名義人は既に亡くなっているため、登記原因証明情報として遺産分割協議書を添付するのが一般的です。
遺産分割協議書とは
被相続人が亡くなって遺言書がない場合は、相続人全員で遺産の分け方を決める遺産分割協議を行います。遺産分割協議では誰が、どの財産を、どれくらい相続するかを話し合います。
遺産分割協議がまとまったら、その協議の結果を書面にします。これを、遺産分割協議書といいます。後日のトラブル防止や、名義変更などの手続きをスムーズに行うために、「誰が」「どの財産を」「どのように取得するか」について、明確に記載することが重要です。
遺産分割協議の内容を記載したら、相続人全員が署名および実印で押印し、印鑑証明書を添付します。遺産分割協議書は相続人全員分を作成し、それぞれ印鑑証明書とセットで各相続人が1通ずつ保管します。
遺産分割協議書は、必ず作成しなければいけないものではありません。ただし相続税の申告や不動産登記がある場合には必要となります。また、預貯金の解約や有価証券の名義変更などの際にも利用できます。
なお、遺産分割協議書の作成期限は定められていませんが、遺産分割協議書の提出が求められる相続税申告書には期限があります。つまり、相続税の申告が必要な場合には、被相続人の死後10ヵ月以内に作成しておく必要があるということになります。
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遺産分割協議書の作成前にすべきこと
遺産分割協議書を作成する前には、当然、遺産分割協議をしなければなりません。協議をするには、協議をする相続人が誰になるのか、相続する財産はどのようなものがどれくらいあるのかを確認しておく必要があります。
相続人の調査
遺産分割協議を行う前に必ずしておくべきなのが、相続人の調査です。戸籍謄本などの書類を集めて、正確な相続関係を把握した上で遺産分割協議をおこなわないと、あとになって参加していない相続人がいることが判明した場合、その協議は無効になってしまうからです。
戸籍謄本はそれぞれの本籍のある役所でしか取得できないので、遠方の場合は郵送で取り寄せます。手間と労力がいる作業なので、専門家に依頼することも可能です。
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相続財産の調査
相続財産は、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、ローンなどのマイナスの財産もあり、種類も多岐にわたるためすべてを把握するには時間を要します。財産の調査は、なるべく早くから取り掛かるといいでしょう。
相続登記の場合、遺産分割協議書に不動産の所在や家屋番号などの正確な情報を記載しなければなりません。固定資産税納税通知書などから不動産の地番や家屋番号を調べて、法務局で登記事項証明書を取得しましょう。さらに、名寄帳を閲覧することで、同一市区町村内にある故人所有の不動産を確認することができます。
遺産分割協議
相続人の調査と相続財産の調査が完了したら、遺産分割協議にとりかかります。前述のとおり、遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりませんが、一堂に会する必要はなく、電話やメールなどで遺産の分け方について相談しても問題ありません。
また、次のような状況の相続人がいる場合は代理人が参加します。
- 未成年者の場合:親権者または特別代理人
- 判断能力を欠く人の場合:成年後見人または特別代理人
- 行方不明者の場合:不在者財産管理人
なお、一度遺産分割協議書に署名・押印すると、詐欺や強迫などのよほどの事情がある場合や、相続人全員の同意がある場合以外は、撤回することはできません。内容に間違いがないか、本当に分割方法に異議がないかなどをしっかり確認してから、署名・押印するようにしましょう。
包括遺贈とは、「財産の3分の1(またはすべて)を○○に遺贈する」というような、遺贈する財産の割合のみを指定し、どの財産を遺贈するのかを特定していない遺贈です。包括遺贈で遺産を受け取る人を包括受遺者といいます。民法第990条では、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有する、と定められており、遺産分割協議に加わる必要があります。
相続登記と遺産分割協議書
遺産分割協議による相続登記では、手続きに遺産分割協議書が必要になります。ここからは、実際に相続登記にも言及した遺産分割協議書をどのように作成するかご説明します。遺産分割協議書には決まった書式はありませんし、手書きでもパソコンで作成してもかまいません。
次の場合には、遺産分割協議書は不要です。
- 遺産分割調停又は遺産分割審判の結果により取得した場合
- 法定相続分の共有登記をする場合
- 遺言により取得した場合
- 相続人が一人しかいない場合
①被相続人の情報
①-1.被相続人の欄には、死亡した人の氏名と死亡日を記載します。(戸籍謄本で確認)
①-2.最後の本籍地の欄には、被相続人の最後の本籍地を記載します。(戸籍謄本で確認)
①-3.最後の住所には、被相続人の最後の住所を記載します。(住民票の除票や戸籍の附票で確認)
②相続人全員の氏名
相続人全員で遺産分割協議を行ったことを記載します。
③不動産の名義人となる相続人
相続登記で誰の名義に変更するかを記載します。
④相続登記する不動産の情報
不動産番号、所在、地番、地目、地積などを記載します(登記事項証明書で確認)。土地、建物(マンションを除く)、マンションの場合で書き方が異なります。
分割して相続する場合には、それぞれの持分を明記します。
【例】相続財産のうち、下記の不動産は、佐藤福雄(持分2分の1)及び鈴木裕子(持分2分の1)が相続する。
⑤補足的な条項
相続手続き費用を誰が負担するか、代償分割の詳細などについて記載します。
【例】今般の相続登記手続きに伴う司法書士報酬等の費用については、相続人AとBが各2分の1ずつ負担する。
⑥日付・住所・署名・押印
⑥-1.日付は、協議書を作成した日を明記します。
⑥-2.氏名は直筆で記入し、押印は実印で行います。法律上、署名でなく記名(名前を手書きではなく印刷する)でも問題ありませんが、後々のトラブルを防ぐ意味では筆跡が残る署名の方がより確実です。
⑦その他の留意点
- 財産は、内容を特定できるように具体的に記載します。
- 遺産分割協議書が真実であることの証明として、相続人全員の印鑑証明書を添付します。
- 遺産分割協議書が複数枚になる場合は、つながりを証明するために用紙と用紙の間に契印を押します(協議者全員分)。
- 後日の紛争を防ぐために、遺産分割協議書は相続人全員分を作成し、それぞれ印鑑証明書と共に各自保管します。作成した複数部の遺産分割協議書が同一内容であることを証明するために割印を押すこともあります。
- 書き間違えた場合は、間違えた箇所に二重線を引き、その上に押印することで訂正が可能です。相続人個人に関する情報を訂正する場合は、その個人のみの訂正印を押せば問題ありません。一方、不動産に関する情報など、相続全体に関する情報を訂正する場合は、相続人全員の押印が必要です。
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遺産分割協議証明書とは?
遺産分割協議書は、1通に相続人全員が連名で署名・押印しますが、遺産分割協議証明書は、相続人の人数分作成して1通につき1人が署名・押印します。
相続人がそれぞれ遠方に住んでいて遺産分割協議書を作成する場合は、郵送などで各相続人に回していき、署名・押印を集める必要があります。これには時間がかかりますし、途中で紛失する恐れもあります。このような場合には、遺産分割協議証明書が便利です。
遺産分割協議証明書を作成して相続人ごとに署名・押印したら、すべての相続人分の遺産分割協議証明書をワンセットとして法務局に提出します。
デメリットとしては、遺産分割協議証明書は基本的に代表者しか原本を持たないという点があげられます。代表者がすべての相続手続きを行う場合は問題ありませんが、それぞれの相続人が相続手続きを行う場合は、遺産分割協議書の方が便利でしょう。
遺産分割協議書に関するQ&A
Q:遺産分割協議書は自分で作成できる?
遺産分割協議書は、ご自身で作成することも可能です。ただ、不備があると作成しなおして、再度、相続人全員に署名・押印してもらう必要があります。法的な文書なので、行政書士や司法書士などの専門家が作成するのが一般的です。費用は遺産の額にもよりますが、5万円~30万円ほどとなっています。
Q:遺産分割協議書の原本は返還してもらえる?
相続登記の際に法務局に提出した遺産分割協議書は、原本還付の手続きをすることで返還してもらうことができます。
まず、遺産分割協議書のコピーを作成し、そのコピーに「原本により正写しました」と記載します。次に、登記申請書に押印した人が、そのコピーに記名・押印します。申請書を提出するときに、そのコピーと遺産分割協議書の原本を一緒に提出すれば、登記完了時に原本が返却してもらえます。
Q:遺産分割協議書には、すべての相続財産について記載する必要がある?
遺産分割協議書は、前述のとおり各種相続手続きに使用します。それぞれの手続きの際に遺産分割協議書を提出すると、手続き先以外の財産の状況も手続き先にすべて知られてしまいます。このような場合は、全体の財産を記載した遺産分割協議書とは別に、各種手続き用の遺産分割協議書を作成することもできます。
Q:遺産分割協議書に有効期限はある?
遺産分割協議書に有効期限はありません。また、相続登記の場合には、印鑑証明書も有効期限がありません。作成当時の遺産分割協議書と印鑑証明書で相続登記が可能です。
Q:遺産分割協議書の作成や相続登記の期限は?
遺産分割協議書の作成に法律上の期限はありません。
ただし、相続登記を後回しにしていて相続人が亡くなると、次の相続人の相続手続きが複雑で大変になってしまいますので、速やかに手続きを行うのが望ましいでしょう。長期間、登記をしないままでいると、被相続人の住民票や除籍謄本など相続登記に必要な書類が取得できなくなることもあります。
また、相続税の申告が必要な場合には、それまでに遺産分割協議書を作成しておく必要がありますので、この場合は作成期限が被相続人の死後10ヵ月以内ということになります。
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まとめ
遺産分割協議書は必ず作成しなければならないものではありませんが、作成する際は、「誰が」「どの財産を」「どのように取得するか」を明記し、相続人全員が署名・押印する必要があります。
また、遺産分割協議書の作成の前には、次の3つのことが必要です。
- 相続人の調査
- 相続財産の調査
- 遺産分割協議
本記事の書き方を参考にしていただければ、ご自身でも作成可能ですが、いい相続では、お近くの専門家との無料相談をご案内することが可能ですので、相続登記の際の遺産分割協議書についてお困りの方は、お気軽にご相談ください。
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