相続した不動産の固定資産税、相続人が決まってないとき税金を負担は誰か?納税方法は?
所有者が決まっていない相続不動産や、故人(被相続人)の名義のままになっている相続不動産、共同名義にした相続不動産などがあった場合、固定資産税は誰が払うべきなのでしょうか。
この記事では、相続人が確定していない段階の相続不動産の固定資産税は、一体誰が払うべきなのか、相続人は何をするべきなのかといった対策について詳しくご紹介します。
この記事はこんな方におすすめ:
「不動産を相続する人」「固定資産税を払う人」
- 相続した不動産の固定資産税の納税者は時期によって違う
- 誰が不動産を相続するか決まっていなくても相続人には納税の義務がある
- 固定資産税には支払い期限があり、相続する人が決まってからの所有者変更の相続登記にも期限がある。
目次
相続した不動産の固定資産税は誰が納めるべき?
建物や家屋にかかる固定資産税は、毎年1月1日の時点でその固定資産を所有している人に「固定資産税納税通知書」が届くシステムになっています。1月1日の時点で、固定資産税課税台帳に「所有者」として名前が記載されていれば、たとえその人が亡くなっていたとしても、固定資産税課税通知書が届きます。
故人の所有だからといって、固定資産税を納める必要がないわけではありません。では、一体誰が支払うべきなのでしょうか。
結論からいうと、時期によって固定資産税を支払うべき人(納税者)は異なります。
固定資産税の納税者は時期によって変わる
固定資産税の納税者は、時期によって次の3つの段階に分かれます。
時期 | 誰が払うか |
---|---|
故人(被相続人)が亡くなる前まで | 故人(被相続人) |
被相続人が亡くなった後から、相続財産の所有者が決まるまで | 相続人全員 |
所有者が決まった後 | 所有者 |
以下に詳しく説明します。
相続開始日より前
故人(被相続人)が亡くなった日より前の固定資産税は、故人(被相続人)が納税することになります。そのため、故人(被相続人)の預金などから支払っても構いません。
現金が手元になかったり、銀行口座が凍結してしまっていたり、固定資産税が支払えない場合は、相続人の代表者が立て替えて、相続財産の算出の際に精算します。
相続開始日以降
故人(被相続人)が亡くなってから、遺産分割協議で新しい所有者が決まるまでは、相続人全員の連帯債務になります。
固定資産税の支払い方については、相続人同士で話し合って決める必要があります。以下のような支払い方法が考えられます。
- 代表相続人を決めて、固定資産税を立て替える
- 法定相続分の割合で、固定資産税を分割して、相続人で支払う
一般的には、相続代表人を決めて、その人が立て替えて固定資産税を納めるのが通例です。代表相続人となったからといって、納税上の全負担を負うわけでもありませんし、所有者になるわけでもありません。
あくまでも、固定資産税を納める上での>便宜上の代表者という扱いになります。
遺産分割協議で所有者が決まった後
遺産分割協議が調い、新しい所有者が決まれば、固定資産税はその所有者が納税することになります。
遺産分割協議がまとまる前、相続人の誰か、もしくは相続人全員で立て替えている固定資産税についても、新しい所有者が支払う必要があります。固定資産税を立て替えている相続人が新しい所有者に求償して、立て替えた分を返金してもらうことができます。
なお、相続不動産を売却した場合、新しい所有者である買い主に納税の義務があります。
固定資産税の支払いは年4期に分けられる
固定資産税の納税通知書が届くのは年に一度ですが、固定資産税の納税時期は、年4回あり、第1期~4期に分けられます。相続が発生したタイミングや、固定資産税の納税時期も自治体によって異なります。詳細は自治体の税務署にお問い合わせください。
固定資産税の納税時期(一例)
- 多くの自治体:4月・7月・12月・2月
- 東京23区:6月・9月・12月・2月
相続した不動産の固定資産税を納税する際の注意点
所有者が決まっておらず、誰が固定資産税の債務者になるのか決まっていない場合でも、固定資産がある限りは、固定資産税は発生し、相続人には納税の義務があります。
固定資産税の支払に関して、覚えておくべきポイントをご紹介します。
1.固定資産税の支払い期限に注意する
固定資産税については、1月1日時点の所有者の所に、固定資産税納付通知書が届きます。たとえ所有者が亡くなっていた場合でも、納付期限に猶予はなく、相続人に支払いの義務が生あります。
納付期限を過ぎてしまうと滞納税が発生しますので、相続人の間で早めに話し合って、期日内に支払うようにしましょう。
2.故人の口座の状態を確認しておく
故人(被相続人)が亡くなるまでの固定資産税については、故人(被相続人)が納めるべきものですので、法律上は、故人(被相続人)の預金から支払っても問題ありません。
しかし、故人(被相続人)の金融機関の口座は、被相続の死亡を金融機関に伝えた時点で凍結されてしまうため、支払いに当てたい現金が引き出せないことがあります。
口座凍結はなぜ起こる?
口座の凍結には2つの理由があります。ひとつは、相続財産を確定させるため、もうひとつは相続人同士のトラブルを防ぐためです。
金融機関の、故人(被相続人)口座に残っている預貯金は、相続財産になります。相続人の共有財産になると共に、相続税の課税対象になります。自由に引き出せるようにすると、相続税の脱税が起こる可能性もあります。また相続人の誰かが不当に引き出してしまうこともあり得ます。
そのため、遺産分割協議が終わるまでは、その口座における一切の取り引きを停止しておく必要があるのです。たとえ通帳やキャッシュカードがあり、暗証番号がわかっていたとしても、口座の凍結以後は現金を下ろすことはできなくなります。
口座凍結を解除するには?
金融機関の口座が凍結されてしまった場合、必要書類を金融機関の窓口に提出することで口座凍結を解除することができます。
解除の仕方や必要書類は、金融機関によっても異なる場合もあるので、金融機関に直接問い合わせる必要があります。
凍結解除に必要な書類(一例)
- 故人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本
- 故人(被相続人)の死亡が確認できる書類(住民票の除票、死亡診断書など)
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 相続人全員の印鑑証明書、キャッシュカードなど
3.長期化を見越して早めに対策をとる
相続や遺産分割協議では、予期せぬ相続人がいたり、相続財産が多岐にわたるなどで、協議がまとまらず長引くこともあります。
遺産分割協議が長引き、相続不動産の新しい所有者が決まらない場合でも、固定資産税の納付には期限があります。固定資産税に関しては、遺産分割協議の決着を待たずに、代表相続人が立て替えておくのが得策です。
遺産分割協議前の固定資産税の納税方法
では、実際に遺産分割協議で新しい所有者が決まるまでは、誰がどのように固定資産税を支払うのでしょうか。具体例をご紹介します。
相続人の代表者が支払う場合
まず、考えられる方法は、相続人の代表者が払うパターンです。相続人の中で話し合った上で、相続人の代表者となる代表相続人を決め、その人が固定資産税を立て替えます。
1.固定資産税納付通知書の記載額を税務署に納付
代表相続人が、故人(被相続人)宛に届いた固定資産税納付通知書に記載されている額を、期限内に支払います。
2.固定資産税の代表者指定届を提出
代表相続人が、管轄の税務署に「固定資産税の代表者変更届け」を提出します。
代表者変更届けを提出することで、税務署側が固定資産税納税通知書の届け先を把握できるようになります。新しい所有者が決まり、相続登記をするまでは、指定された代表者の元に、固定資産税納税通知書が届くようになります。
3.新所有者に払い戻してもらう
遺産分割協議で新しい所有者が決まったら、その人が固定資産税の納税義務者となります。
相続が開始してから遺産分割協議が決まるまでの固定資産税も、新しい所有者に支払いの義務があります。
代表相続人が立て替えていた固定資産税を、新しい所有者に払い戻してもらいます(代表相続人が所有者になった場合は、払い戻しの工程は必要ありません)。
相続登記をして、不動産の名義が変更されると、以降は新しい所有者の元に固定資産税納税通知書が届くようになります。
相続人全員で分割して支払う
相続不動産に関しては、新しい所有者が決まるまでは、相続人全員の共有財産になります。ここでは固定資産税を相続人全員で分割して納める方法をご紹介します。
1.固定資産税納付通知書の記載額を税務署に納付
まずは、相続人の代表者が故人(被相続人)宛に届いた固定資産税納付通知書に記載されている額を、期限内に支払います。
2.全員で分割(法定相続分と同じ割合で分割)
法定相続分と同じ割合で固定資産税を分割し、相続人全員のそれぞれの負担額を決めます。決められた金額を、立て替え払いした代表者に、相続人全員がそれぞれ支払います。
※納付期限に時間的な余裕があるようなら、相続人全員から固定資産税の負担額を徴収し、相続人の代表者が固定資産税を納める方法でも構いません。
3.新所有者に払い戻してもらう
遺産分割協議で新しい所有者が決まったら、その人が固定資産税の納税義務者となり、相続人が立て替えていた分の固定資産税をそれぞれ返金します。
故人の相続財産から支払いに充てる
手元に現金があった場合や金融機関の口座がまだ凍結されていなかった場合など、相続人同士で話し合った上で、故人(被相続人)の相続財産の中から、固定資産税を支払うことも可能です。
故人の相続財産から固定資産税を支払う手順をご説明します。
固定資産税納付通知書の記載額を税務署に納付
相続人の代表者が、故人(被相続人)宛に届いた固定資産税納付通知書に記載されている額を、故人(被相続人)の相続財産の中から、期限内に支払います。
相続財産から充てた場合、相続放棄できない
故人(被相続人)の相続不動産の固定資産税に関しては、故人(被相続人)が亡くなるまでは故人(被相続人)の債務となるので、相続財産から支払っても問題ありません。
しかし、故人(被相続人)が亡くなった後の固定資産税に関しては、相続人の共同債務になるので、それを故人(被相続人)の相続財産から支払った場合は、「相続した」とみなされて、相続放棄はできなくなります。
相続放棄する
故人(被相続人)に多額の借金などがあり、相続財産の中でもマイナス資産のほうがプラス資産よりも上回った場合など、相続放棄をするという手も考えられます。
その場合、すべての相続財産を放棄するので、固定資産税が課税される相続不動産についても放棄することになります。
ただし、固定資産税はその年の1月1日の所有者が納税することになりますので、相続放棄が完了した時期によっては相続人が固定資産税を納めなければならない場合もあります。
遺産分割協議後の固定資産税の納税方法
遺産分割協議が終わり、新しい所有者が決まった後、固定資産税の支払いはどうすべきなのでしょうか。その手順をご説明します。
相続人のうち誰か1人が相続した場合
新しい所有者が決まった場合、固定資産税の納税通知書の送付先をその新しい所有者にするように変更します。
変更届けをしておかないと、税務署から、亡くなった人宛に固定資産税納税通知書が届いてしまったり、「代表者変更届けのお願い」といった手紙が届くことがあります。
相続登記もしくは、相続人代表者指定届の提出
固定資産税の納税通知書の送付先を新しい所有者に変更するためには、以下のような方法があります。
相続登記をする
不動産の所有者が亡くなったときに、不動産の名義を相続人に変更する手続きを相続登記と呼びます。
法務局に相続登記の申請をすれば、不動産の所有名義が、故人(被相続人)から新しい所有者に変わります。固定資産税納付通知書も、翌年からは新しい所有者宛に届くようになります。なお、相続登記は令和6年4月から義務化され期限が設けられ、放置すると罰金等のペナルティを受けるおそれがあります。相続登記は専門知識も必要になるので、専門家に依頼することも可能です。
2.税務署に相続人代表者指定届を提出
相続登記をすれば、自動的に納付先は、新しい所有者に変わりますので、相続人代表者指定届を出す必要はありません。
相続登記をしなかった場合でも、最低限やっておきたいのが、相続人代表者の指定届の提出です。税務署に相続人代表者指定届を提出し、翌年以降の固定資産税の納付通知書の送付先を指定します。
3.固定資産税の仮払い分の支払い
相続開始から遺産分割協議決定分までの固定資産税の仮払い分を、立て替えた人に返金します(新しい所有者が立て替えていた場合、この工程は必要ありません)。
共有名義にした場合
相続不動産については、相続人の誰か特定の人が相続するのではなく、共有名義にすることも可能です。共有名義にした場合にやるべきことをご紹介します。
代表者を決める
共有名義にした場合でも、税務署からの問い合わせ窓口となる代表者を決める必要があります。税務署に、相続人代表者指定届を提出し、固定資産税の納付通知書の送付先を指定します。
支払った固定資産税を所定の割合で分割する
固定資産税については、共有名義となっている人全員の債務となります。とはいえ、固定資産税をその都度、分割し、全員から徴収して支払うようにすると、時間も手間もかかり、納付期限をすぎてしまうおそれもあります。
まずは代表者を決めて、代表者が一旦支払い、それを共同名義人で分割して、後から返金してもらうのが良いでしょう。
相続不動産の固定資産税Q&A
相続不動産の固定資産税について、よくある質問をご紹介します。
Q:身に覚えのない不動産の固定資産税納税通知書が届いた場合は?
代襲相続などにより、身に覚えのない固定資産税納税通知書が突然届くケースもなかにはあります。
まずやるべきことは、その不動産がどのようなものなのか確認することです。
固定資産税を支払うほどの資産価値があるのかどうか、不動産の名義は誰になっているのか、相続人はほかに誰がいるのか、など詳しく調べる必要があります。
資産価値がないと判断できる場合は、相続を知ってから3ヵ月以内であれば、相続放棄も考えられます。資産価値があった場合も、名義が何代にもわたって変更されていなかった場合、相続人の数が膨れ上がり、売却するにも相続人全員の承認が必要になるなど、一筋縄ではいかないこともあります。
また固定資産税を支払ったからといって、その不動産が支払った人の所有になるわけではありません。
専門家に相談し、慎重に進めることをおすすめします。
Q:共有名義の相続不動産の固定資産税を滞納した場合は?
相続不動産を共有名義にした場合、共有名義人の誰かが固定資産税を支払ってくれないケースもありえます。
代表者が立て替えて納税していた場合は、税務上の問題はありませんが、代表者が固定資産税を滞納していた場合は、延滞税がかかります。
共有名義にした不動産の固定資産税については、その不動産の持分に関係なく共有者全員に連帯して全額を納付する義務(連帯納税義務)がありますので、延滞税に関しても、連帯納付義務が生じます。
最悪のパターンでは、相続不動産が差し押さえられるケースも考えられます。
共有名義にする場合は、関係者が増える分リスクもあることを理解した上で決めることをおすすめします。
Q:固定資産税はどうやって決まるの?
固定資産税は、土地や家屋のほか、償却資産(事業用資産)も固定資産税の課税対象となり、固定資産税評価額をもとに算出される課税標準額に、標準税率を掛け合わせて決まります。
固定資産税の納税額は、土地や建物の場合、固定資産税評価額をもとに算出される課税標準額に、標準税率の1.4%を掛け合わせて求められます。
この記事のポイントとまとめ
相続不動産の固定資産税についてご紹介してきました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
相続した不動産の固定資産税の考え方で知っておきたい部分は以下の3つです。
- 1月1日時点での、その不動産の所有者に納税義務がある
- 所有者が亡くなり、新しい所有者が決まるまでは、相続人の共有債務である
- 新しい所有者が決まった後は、新しい所有者の債務となります。
また、相続不動産の名義人を変更する相続登記については、令和6年4月から義務化されるので忘れずにおこないましょう。
固定資産税など税金の支払いについて不明な点がある場合は税理士など、専門家に相談することをおすすめします。
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