遺産相続手続きの期限を一覧表でわかりやすく解説、しなかった場合のデメリットも
故人の相続財産を継承する手続き、遺産相続では、いつまでに行わなければならないと定められたもの、明確な期限はないがなるべく早めに手続きを済ませておいた方が良いものなど、手続きの種類によっても異なります。
この記事では、遺産相続の流れを一覧表にし、各種手続きの内容、期限についてご説明していきます。
目次
遺産相続手続きの一覧
亡くなられた方の財産(遺産)を引き継ぐ手続きが「遺産相続」です。
手続きの中には、相続放棄や所得税の準確定申告、相続税申告、遺留分侵害額請求(旧・遺留分減殺請求)など、遺産相続の手続は一定の期限内に行わないといけないものが多くあります。
期限を過ぎてしまうと、特例を受けることができなくなってしまう、高額な延滞税を支払わねばならなくなった・・・などのデメリットがあります。
そのようなことにならないように、家族が亡くなったあと、相続人がやるべき一般的な相続手続きなどの全体スケジュールとをまとめました。期限の目安や手続きの要否も一覧になっているので、ぜひ活用してください。
なお、期限が決まっているわけではなく、あくまで目安である手続きについては(*)を付けています。
期限(目安) | 手続き | 手続きの要否 | 手続きの内容 |
---|---|---|---|
死亡から7日以内 | 死亡診断書の受け取り | 必ず必要 | 死亡に伴う手続き |
死亡届と火葬許可申請書の提出 | 必ず必要 | 死亡に伴う手続き | |
死亡から10日以内 | 葬儀(*) | 適宜 | 死亡に伴う手続き(儀式) |
年金受給停止の手続き(*) | 該当する人に必要 | 年金に関する手続き | |
死亡から14日以内 | 国民健康保険の資格喪失の手続き(勤め先の健康保険は5日以内) | 必ず必要 | 保険に関する手続き |
介護保険の資格喪失の手続き | 必ず必要 | 保険に関する手続き | |
世帯主変更届の提出 | 家族構成によっては必要 | 住民票に関する手続き | |
公共料金や各種サービス等の名義変更・解約など(*) | 必ず必要 | 死亡に伴う手続き | |
金融機関への連絡(*) | 必ず必要 | 相続に伴う手続き | |
死亡から1ヵ月以内 | 遺言書の有無の確認(*) | 必ず必要 | 遺産分割協議が必要か否かの確認 |
遺言書の検認手続き(*) | 該当する場合に必要 | 遺言書の存在と内容を相続人に知らせるため及び偽造・変造を防止するための手続き | |
相続人の調査(*) | 必ず必要 | 相続人の確定 | |
相続財産の調査(*) | 必ず必要 | 相続するか否かの選択 | |
死亡から3ヵ月以内 | 遺産分割協議の開始(*) | 遺言がない場合に必要 | 相続するか否かの選択 |
相続放棄・限定承認の申述 | 該当する場合に必要 | 相続するか否かの選択 | |
死亡から4ヵ月以内 | 被相続人の所得税の準確定申告 | 該当する人に必要 | 税金に関する手続き |
死亡から10ヵ月以内 | 遺産分割協議書の作成 | 相続人が複数おり、遺言がないなど遺産分割協議をおこない、協議書が必要な場合 | 相続に関する手続き |
預貯金・有価証券等の名義変更・解約(*) | 該当する人に必要 | 相続に伴う手続き | |
不動産の名義変更(*) | 該当する人に必要 | 相続に伴う手続き | |
各種財産の名義変更(*) | 該当する人に必要 | 相続に関する手続き | |
相続税の申告 | 該当する人に必要 | 相続に関する手続き | |
死亡から1年以内 | 遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)の手続き | 該当する人に必要 | 相続に関する手続き |
死亡から2年以内 | 葬祭費、埋葬料の請求 | 該当する人に必要 | 保険に関する手続き |
高額医療費の還付の請求 | 該当する人に必要 | 保険に関する手続き | |
死亡一時金の請求 | 該当する人に必要 | 年金に関する手続き | |
死亡から3年以内 | 生命保険金の請求 | 該当する人に必要 | 保険に関する手続き |
死亡から5年以内 | 遺族年金の受給申請 | 該当する人に必要 | 年金に関する手続き |
未支給年金の請求 | 該当する人に必要 | 年金に関する手続き | |
寡婦年金の請求 | 該当する人に必要 | 年金に関する手続き | |
死亡から5年10ヵ月以内 | 相続税の還付請求の手続き | 該当する人に必要 | 相続に関する手続 |
人によっては不要であったり、他の手続きが必要な場合もあるのであくまで目安としてご利用ください。
▼銀行口座の相続手続きは行政書士に依頼しましょう▼期限が14日以内の相続手続き
14日以内以内が期限の主な手続きについて説明していきます。
家族が亡くなったら、まずは役所への届出をします。これらの手続きには期限があまり猶予のないものが多いので気を付けましょう。
死亡診断書・死亡届・火葬許可申請書
家族が亡くなったら、当日あるいは翌日に医師から死亡診断書の交付を受け、死亡届を市区町村役場へ提出します。死亡届は死亡証明書と一体になっており、右半分が死亡証明書、左半分が死亡届です。
死亡届に必要事項を記入したら、死後7日以内に火葬許可申請書と一緒に故人の死亡地あるいは本籍地などの市区町村役場に提出します。火葬許可申請書は役所窓口で入手できます。申請すると火葬許可証を交付してもらえます。
死亡届については「【死亡届の基礎知識】死亡診断書はコピーが必要?提出期限や再発行のしかたまで徹底解説」で詳しく説明しています。
葬儀・火葬
葬儀をする、しないはそれぞれの判断するもので、法律で決められているものではありません。
火葬もいつまでにしなければならないという法律的な期限はありませんが、遺体に対するあり方や、保管のための費用、公衆衛生等を考えると1~3日程度です。
ただし、火葬や埋葬はしてはいけない期間があります。「墓地、埋葬等に関する法律」第三条により、埋葬又は火葬は、他の法令に別段の定があるものを除く外、死亡又は死産後二十四時間を経過した後でなければ、これを行つてはならない。但し、妊娠七箇月に満たない死産のときは、この限りでない。」と定められています。
年金・健康保険・介護保険
故人が年金受給者であれば、すみやかに年金の受給停止の手続きをします。厚生年金の受給停止手続きは死亡後10日以内、国民年金の受給停止手続きは死亡後14日以内におこなわなければいけません。
健康保険には「国民健康保険」「国民健康保険」「被用者の健康保険」など種類があります。健康保険の場合は、死後5日以内に健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を提出します。
介護保険の資格喪失の手続きが必要なのは、故人が65歳以上または40歳~64歳で要介護認定を受けていた場合です。死後14日以内に故人の住所地の市区町村役場窓口で介護保険被保険者証の返却と介護保険資格喪失届の提出を併せておこないます。
なお、遺族年金についての手続きは「遺族年金の手続きはどうやる?いつ入金される?必要書類や手続きの流れをご紹介」を参照してください。
▼何をすればいいか迷っているなら、今すぐ調べましょう▼期限が3ヵ月以内の相続手続き
相続放棄・限定承認
相続放棄・限定承認は「相続開始を知ってから3カ月以内」におこないます。この期間を熟慮期間といい、どのような相続方法を選ぶのか法律上で定められた期間です。
プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合に、相続放棄することで相続人としての立場を放棄し、一切の財産を相続しないことができます。また、相続財産があったとしても相続に関与したくないという人も、相続放棄の手続きをおこなうといいでしょう。
限定承認とは、プラスの財産の範囲でマイナスの財産を引き継ぐという方法です。
この手続きは、相続人全員で合意して家庭裁判所に申述しなければなりません。借金など被相続人の負債や債務がいくらなのか正確にわからない場合や、借金があることがわかっていても自宅など絶対に手放したくない財産がある場合に、選択肢に入ってくる相続方法です。
正当な理由によって期間を延長したい場合は、家庭裁判所に熟慮期間延長の申立をして期間の延長を認めてもうらう必要があります。
相続放棄や限定承認については「相続放棄の手続き方法。必要書類や期限、申述書の書き方などまとめて解説【司法書士・行政書士監修】」を参照してください。
遺産分割協議
遺産分割協議自体は、いつまでにしなくてはいけない、というきまりはありませんが、先述の相続放棄・限定承認の期限が3カ月であることから、どのような遺産があるのかを調べたり、どのように分割するのかを話し合ったりする必要があります。
また遺産分割協議をするにあたり以下のような手続きが必要になるでしょう。
- 相続財産の調査
- 相続人の調査
- 銀行など金融機関での手続き
- 遺言書の有無の確認(ある場合は検認手続き)
- 公共料金や各種サービス等の名義変更・解約
期限が4ヵ月以内の相続手続き
4ヵ月以内以内が期限の主な手続きについて説明していきます。
準確定申告
確定申告が必要な人が亡くなった場合、相続人は故人の代わりに死後4ヵ月以内に税務署で所得税の申告をおこなわなければなりません。これを準確定申告といいます。
準確定申告では、1月1日から亡くなった日までの所得を申告します。また、3月15日までに亡くなり、前年分の確定申告をしていなかった場合は、前年分の申告も必要です。
故人に代わって申告手続きをしなければならない人は、相続人や包括受遺者です。
準確定申告についての詳細は「準確定申告と確定申告との違い、必要になる人の要件や注意点をわかりやすく解説!」を参照してください。
▼どの程度相続税がかかるか計算してみましょう▼期限が10ヵ月以内の相続手続き
10ヵ月以内以内が期限の主な手続きについて説明していきます。
相続税の申告・納税
相続税は「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」に申告と納付をおこなわなければなりません。
そのため、先述の相続財産の確定や遺産分割協議は相続税の申告・納税を10ヵ月以内におこなわなければいけない関係上、遺産分割協議書の作成や各種名義変更などを10ヵ月以内におこなわなければならないと考えることもできるでしょう。
期限に間に合わない場合のデメリット
相続税がかかりそうだと思っていながら申告をしなかった場合、相続税だけでなく、本来払わなくてよかった、利子に相当する「延滞税」や、罰金のような性質をもつ「加算税」まで納付する必要が生じてしまいます。
ただ、相続税は全ての人にかかるわけではなく、遺産総額が基礎控除額を超えていたり、配偶者控除やその他特例制度を利用する場合に必要となるもので、相続税がかからないと分かっている人はこの10ヵ月という期限を気にしなくても大丈夫です。
相続税の基礎控除
相続税には、次のような基礎控除が設けられています。
遺産総額がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかからず申告も必要ありません。
遺産総額が基礎控除を超えた場合には、配偶者控除などの適用可能な控除制度や特例制度がないか確認します。計算間違いや申告漏れがあるとペナルティが課されることもあるので、税理士に相談しましょう。
相続税について詳しくは「相続税の基礎知識|相続税の対象になる財産と計算方法、控除額、申告と納税の仕方【税理士監修】」を参照してください。
▼忘れている相続手続きはありませんか?▼期限が1年以内の相続手続き
1年以内以内が期限の主な手続きについて説明していきます。
故人は、遺言書で自己の財産を自由に処分できますが、法律上、配偶者・子・親といった一定の法定相続人には、一定割合の故人の財産の承継(遺留分)が保障されています。これらの人が、遺留分を侵害している人に対して請求することを遺留分侵害額請求といいます。
遺留分侵害額請求の期限は、相続開始および遺留分侵害の事実を知ってから1年以内です。ただし、遺留分侵害の事実を知らなくても相続開始から10年が経過してしまうと請求できなくなります。
遺留分については「遺留分割合をケース別に説明!代襲相続の孫、養子、兄弟、遺言書あり等」を参照してください。
▼相続手続きは一人で悩まず専門家に相談しましょう▼期限が3年以内の相続手続き
3年以内が期限の主な手続きについて説明していきます。
相続登記
令和6年4月1日から相続登記の義務化され、相続によって不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならないこととされました。
この法改正の前、過去に相続された不動産についても義務化の対象になりますので、まだ完了していない方は注意しましょう。
相続登記期限を超えた場合のデメリット
相続等により所有権を取得したことを知った日から3年以内に、正当な理由がないのに申請を怠ったとき、10万円以下の過料の対象となりますので忘れずに手続きをおこないましょう。
生命保険金
生命保険の保険金請求の時効は3年と定められています。
故人が生命保険に加入していた場合、生命保険会社に被保険者死亡の旨を連絡し、契約内容を確認し、保険会社に指定された必要書類を提出すれば、保険会社の支払い可否判断の終了後、保険金が支払われます。
▼今すぐ診断してみましょう▼期限はないが早めに手続きした方がよいもの
期限はありませんが、手続きをしないデメリットとして、使っていない光熱費や、通信費も基本料金がかかってしまいます。早めに解約や名義変更手続きをおこないましょう。
内容 | 手続き | 手続き先 |
---|---|---|
公共料金(水道、電気、ガス) | 名義変更・解約 | 各社 |
携帯電話、インターネット回線 | 解約 | 各社 |
Webサービス | 名義変更・解約 | 各社 |
固定電話 | 名義変更・解約 | 各社 |
NHK | 名義変更・解約 | NHK |
運転免許証 | 返納(更新期限が来れば自動的に失効) | 警察署 |
パスポート | 届出(期限切れのものは手続きの必要なし) | パスポートセンター |
クレジットカード | 解約 | 各社 |
この記事のポイントとまとめ
以上、主な相続手続きの期限やデメリットについて解説してきました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
遺産相続には多くの手続きが必要になると同時に、それぞれの期限を意識することの重要です。家族が亡くなったあと、相続人がやるべき一般的な相続手続きの流れとともにその期限にも注意して手続きを進めましょう
- 相続人の調査・確定
- 遺言の検索
- 遺言の検認
- 相続財産の調査・確定
- 相続放棄・限定承認(熟慮期間3ヵ月)
- 準確定申告(相続開始後4ヵ月)
- 遺留分侵害額請求(旧・遺留分減殺請求)
- 遺産分割協議(調停・審判)
- 所得税の準確定申告
- 相続税申告、納税(相続開始後10ヵ月)
- 相続税の軽減措置の適用(相続税申告期限後3年)
- 各種相続手続き(名義変更など)
手続きが遅れてしまって延滞税などのペナルティを受けないよう気を付けましょう。
仕事があったり、子育てに忙しかったりすると、なかなか手続きに時間を割くのが難しい場合もあります。そのようなときは、専門家に手続きを依頼しましょう。「いい相続」では、相続に強い行政書士や税理士を紹介しています。お気軽にお問い合わせください。
また、手続きに役立つリストをダウンロードいただけますので是非ご利用ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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