弁護士に相談すべき相続問題とは?依頼費用の相場から司法書士・税理士との違いまで徹底解説!【弁護士監修】
遺産相続の相談先といえば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのが弁護士ではないでしょうか。とはいえ、相続相談の対応や手続きの代行は、弁護士以外にも司法書士や行政書士、税理士もおこなっています。弁護士に依頼するべきなのはどのような場合なのでしょうか。
この記事では、弁護士に依頼すべき相続の問題について、遺産分割が相続人同士でまとまらないなどの具体的なケースのほか、弁護士費用の目安や相続に強い弁護士の選び方などを解説します。
この記事の監修者
不動産のある相続問題の解決を得意とし、他士業とも連携して依頼者に最適な解決を目指す。『相続のことがマンガで3時間でわかる本』など執筆も多数。一般社団法人相続総合支援協会理事。
▶ みらい総合法律事務所
目次
弁護士に依頼したいのはこんな相続問題
遺産相続では、その分け方をめぐりトラブルとなることがあります。元は仲の良い家族でも、お金が絡むためなかなか折り合いが付かず、場合によっては調停や審判までもつれ込むことさえあります。また、遺言の内容や生前おこなった贈与によって紛争が引き起こされるケースもあります。
弁護士に依頼したい相続問題 ①遺産分割
遺言がない場合、法定相続分をベースに相続人同士で相談して決定します。
例えば、相続人が配偶者と子ども2人だった場合、配偶者が1/2、残りを子どもで分けるというように民法で定められています。
法定相続人の組み合わせ | 法定相続分 | |
---|---|---|
配偶者+子 | 配偶者:1/2 | 子:1/2 |
配偶者+親 | 配偶者:2/3 | 親:1/3 |
配偶者+兄弟姉妹 | 配偶者:3/4 | 兄弟姉妹:1/4 |
配偶者のみ | 配偶者:全部 | |
子のみ | 子:全部 | |
親のみ | 親:全部 | |
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹:全部 |
相続財産がすべて現金であれば単純に割り算で相続額を決められますが、分割しにくい不動産や思い入れのある宝飾品などがある場合はすんなりと分けるのは難しくなります。
相続する財産は、遺産分割協議で全員一致で決めなくてはいけません。遺産分割協議が決裂してしまった場合は家庭裁判所に「遺産分割調停」を申立てる必要がありますし、調停で解決しなければ「審判」で争って裁判所に決定をゆだねることになります。
調停や審判となれば、もちろん弁護士に依頼した方が良いですが、そうならないためにも弁護士の力を借りることが大切です。
弁護士に依頼すると、法的な根拠に基づいたアドバイスをもらった上で分割協議をおこなえます。第三者である弁護士の意見を聞くことで、お互いに納得のいく落としどころを探しやすくなります。
さらに、弁護士が代理人となり交渉してもらうことができます。一度感情的になってしまうと、当事者同士でいくら話し合っても結論が出ないということがあります。弁護士に間に入ってもらうことでお互い冷静になり、交渉が進みやすくなるのではないでしょうか。
相続が終了した後も親族の関係は続きます。揉めてその後の生活に遺恨を残さないためにも、早い段階から弁護士に相談するのが良いでしょう。
弁護士に依頼したい相続問題 ②遺留分侵害額請求(旧 遺留分減殺請求)
遺言が残されている場合、原則遺言書の内容に従って遺産分割が行われます。しかし、この遺言書の内容により「遺留分」が侵害されている場合、「遺留分侵害額請求」により遺留分を確保することができます。
「遺留分」とは、民法で定められている一定の相続人が最低限相続できる財産のことを言います。遺言により法定相続分とは違う割合で相続人に相続させたり、相続人以外に遺贈したりすることができますが、法律で定められている兄弟姉妹以外の相続人には、遺言の内容にかかわらず遺留分が認められています。
遺留分の割合
相続人の組み合わせ | 遺留分 | 各人の遺留分 |
---|---|---|
配偶者と子 | 1/2 | 配偶者:1/4、子:1/4 |
配偶者と直系尊属 | 1/2 | 配偶者:2/6、直系尊属:1/6 |
配偶者と兄弟姉妹 | 1/2 | 配偶者:1/2、兄弟姉妹:なし |
配偶者のみ | 1/2 | 配偶者:1/2 |
子のみ | 1/2 | 子:1/2 |
親のみ | 1/3 | 直系尊属:1/3 |
兄弟姉妹のみ | なし | なし |
*子や直系尊属が複数人いる場合は、「各人の遺留分の割合」をその人数で均等に分けます。
例えば、父親が4,000万円を残して亡くなったとします。母はすでに亡くなっていて相続人が2人の兄弟のみだった場合、遺言書に兄に全額相続させると書いてあったとしても、弟の遺留分割合は1/2ですので、これを法定相続人2人で割った1/4の1,000万円を遺留分として受け取る権利を弟も持っています。
この場合、遺留分侵害額請求は弟から兄へおこないます。まずは話し合いをおこない、交渉がうまくいかない場合は調停や裁判となります。当事者同士の話し合いでこじらせるよりも、間に弁護士を入れることでスムーズに解決することもあります。
また、遺言ではなく生前贈与で遺留分が侵害されたケースにも、遺留分侵害額請求をおこなうことが可能です。
弁護士に依頼したい相続問題 ③寄与分の請求
「寄与分」とは、被相続人の財産の維持、増加等について共同相続人の中に特別に貢献した人がいる場合、その貢献に対してもらうことが認められる財産です。例えば、被相続人の家業への従事や出資、あるいは介護などをおこなっていた際に認められます。
寄与分の種類
家業従事型 | 被相続人の事業に関して、労務の提供をおこなうことにより、相続財産の維持または増加に寄与した場合 |
---|---|
金銭等出資型 | 相続人が被相続人に対し財産上の給付をおこない又は被相続人の借金を返すなどして相続財産の維持または増加に寄与した場合 |
療養看護型 | 相続人が被相続人の療養看護をおこない、付き添い看護の費用の支出を免れさせるなどして、相続財産の維持に寄与した場合 |
扶養型 | 相続人が被相続人を扶養して、その生活費を賄い、相続財産の維持に寄与する場合 |
財産管理型 | 相続人が被相続人の財産の管理をおこない、管理費用の支出を免れさせるなどして相続財産の維持に寄与した場合 |
寄与分は遺産分割協議の中で相続人同士の話し合いで決められますが、具体的な割合を決めるための計算式がないため、紛争になりやすいという問題があります。弁護士が入ることで、具体的な状況に応じたアドバイスをもらえるため、協議がまとまりやすくなります。また、話し合いで決着しない場合には調停や裁判による決定が必要となります。
寄与分を主張するためには裏付けとなる証拠を集める必要があるため、相続が発生する前に弁護士に相談しておくのも良いでしょう。
トラブルが起きる前に、弁護士に依頼したい相続手続き
問題が起きてからでなく、起きる前から弁護士に依頼しておくべき相続手続きもあります。早い段階から弁護士に相談しておけば、問題を未然に防いだり発生後も迅速に対応してもらうことができます。
弁護士に依頼したい相続手続き ①相続人の調査
相続人調査は、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を集めて確認します。
調査により、前妻との間に子どもがいたり、過去に認知や養子縁組をしていたなど想定していない相続人の存在が明らかになる場合があります。
遺産分割協議は相続人全員でおこなう必要があるため、会ったことのない相続人でも手紙を送るなどし、遺産分割協議に関与してもらう必要があります。このような場合、相続人調査は相続人本人でもおこなうことも可能ですが、その後の対応のことを考えると弁護士に依頼するのが良いでしょう。
また、音信不通の相続人がいるときも探し出して連絡を取る必要があります。事情によっては親族より第三者の方が連絡を取りやすいですし、早めに手続きを進めるためにも弁護士に依頼しましょう。
弁護士に依頼したい相続手続き ②遺言書の検認依頼
亡くなった方が遺言を残していた場合は、その内容に基づいて相続が行われます。しかし、遺言書の種類によっては裁判所で「検認」が必要で、すぐに内容を確認することができない場合があります。
主な遺言書の種類
- ◆自筆証書遺言
- 自筆証書遺言は、遺言者が基本的には全文手書きして日付及び氏名を記入し、押印して作成します(民法の改正により、財産目録は手書きの必要はなくなりました。詳細は「自筆証書遺言の書き方は?2020年法改正のポイントから5つのトラブル例まで完全解説【行政書士監修】」の記事をご覧ください)。手軽に作れる一方で、偽造されたり亡くなった後に発見されない恐れがあります。また、内容や様式に不備があると遺言として認められないことがあります。
- ◆公正証書遺言
- 公正証書遺言は、公証役場で証人2名の立ち合いのもと、公証人が関与して作成します。原本が公証役場で保管されるため、偽造や紛失の恐れがありません。
- ◆秘密証書遺言
- 秘密証書遺言は遺言者が署名捺印した書面を封印し、公証人と証人2人に署名押印してもらいます。誰にも内容を知られずに作ることができますが、自筆証書遺言同様、内容や様式に不備が生じる可能性があります。作成後は自宅で保管しますが、遺言書が作られた記録が公証役場に残るため、発見される可能性はやや高くなります。
残された遺言書が自筆証書遺言または秘密証書遺言だった場合は、家庭裁判所に遺言書を提出し、検認の手続きをとらなくてはいけません。なお、法務局に保管されていた自筆証書遺言については検認は不要です。
検認とは、相続人に対して遺言の存在と内容を知らしめるとともに、遺言書の形状や状態、日付、署名などを明確にし、偽造や変造を防止するためにおこないます。封が閉じられた状態で発見された遺言書は、検認まで開封することはできません。
検認申立の手続きは相続人自身でおこなうことも可能ですが、弁護士に依頼すれば戸籍などの資料収集から検認申立書の作成、家庭裁判所への提出をおこなってもらうことが可能です。
検認は申立してもすぐに行われるわけではなく、家庭裁判所から相続人に後日検認期日が通知されます。検認期日に裁判官が遺言の形状や状態について確認し、裁判所の記録に残します。
検認期日は申立から1ヵ月程度先になることもあります。遺産相続を早く進めたい場合は、弁護士に手続きを依頼すると申立までをスピーディーにおこなえます。
さらに、検認を受けた遺言書の内容が遺留分を侵害しているなど納得できないときも、弁護士に依頼していればすぐに対策をとることができます。
遺言書が見つからない場合でも、公正証書遺言については原本が公証役場に保管されています。また、1989年1月1日以降に作成されたものであればデータベース化されているため、全国どこで保管されていても遺言検索システムにより遺言書の有無を調べることが可能です。この手続きも弁護士に代行してもらうことが可能です。
弁護士に依頼したい相続手続き ③相続財産の調査
相続財産を調査した結果、遺言などで分かっていたのとは別の遺産が見つかることがあります。また、被相続人の財産が生前に贈与されていたり、被相続人の銀行口座から本人の意思によるものではない引き出しが行われていることがあります。
このような場合、遺産分割協議がすんなり進むことはめったにありません。あるはずの財産が遺言書に書かれていなかったり、預貯金残高が極端に少ないなど、気になる点があるときは弁護士に財産調査を依頼するのが良いでしょう。
弁護士に依頼したい相続手続き ④相続放棄
相続放棄の手続きをおこなうと、初めから相続人でなかったものと見なされます。遺産を受け取る権利はなくなりますが、債務の負担や相続人同士の揉めごとを回避できる場合もあります。ただし、一度相続放棄をおこなうと撤回することはできません。このため、相続放棄は慎重に決定しなくてはいけません。
相続放棄の申述(申請)は相続放棄の申述書を作成し、他の添付書類と合わせて家庭裁判所に提出します。相続を知った日から3ヵ月以内という期限があるため、相続放棄の可能性がある場合には相続人や相続財産の調査をすみやかに済ませておく必要があります。
弁護士に相続放棄を依頼した場合、弁護士が代理人になってくれるというのが大きなメリットです。債権者からの支払い催促や問い合わせなどの対応も代理してもらえるため、相続放棄後に債権者から脅されないかといった心配事が解消されます。
債務も含めてすべてを相続する「単純承認」と一切相続しない「相続放棄」の他に、受け継いだ財産の範囲内で債務を引き継ぐ「限定承認」もあります。相続放棄よりもさらに手続きが難しくなりますので、思い入れのある宝飾品など残したいものがあるときなどは、弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
弁護士に相談して安心、相続の生前対策
自分が亡くなった後、親族が揉めることを望む人などいないのではないでしょうか。相続問題を未然に防ぐために、弁護士に相談しておきたい生前対策をご紹介します。
弁護士に依頼したい相続の生前対策 ①遺言書の作成
遺言が残されていた場合、相続の手続きは原則遺言の内容に従って行われます。このため、法定相続分とは違う割合や誰にどの資産を残すかの指定や、相続人以外に残したい財産があるときなどは、遺言書に書くことで相続の手続きに反映されます。
弁護士に遺言作成を依頼すると、遺言内容の希望の聞き取りから戸籍などの書類の収集、公証役場とのやり取りをまでをサポートしてくれます。
さらに、遺言書では遺言の執行者を指定することができます。弁護士を遺言執行者にしておけば相続の手続きがスムーズに進められ、トラブルが発生したときにも迅速に対応してもらうことが可能です。
弁護士に依頼したい相続の生前対策 ②相続税対策
相続税は相続発生から10ヵ月以内に現金で支払わなくてはいけません。このため、相続財産の預貯金が十分でない場合は、不動産を売るなどして資金を捻出しなければならないこともあります。限られた時間での資金の確保は大きな負担になるため、事前に生前贈与をおこなったり、できるだけ相続税がかからない方法で遺言書を準備しておくことも大切です。
しかし、相続税を意識するあまり遺留分を侵害した分配方法になってしまい、紛争の原因となってしまうこともあります。相続を得意とする弁護士に依頼すれば、相続税を抑えるだけでなく紛争を防ぐための提案も合わせておこなってくれます。
弁護士に依頼したい相続の生前対策 ③事業承継
会社経営者の場合、個人の資産だけでなく会社の経営も後継者に引き継がなくてはなりません。親族に承継するケースでは、後継者ではない他の相続人との間での遺産トラブルが発生することがあります。
中小企業では、事業用の資産を経営者が個人所有していたり、会社の株式を保有していることが一般的ですが、何も対策をせずに経営者が亡くなると、これらの資産は法定相続人に法定相続分で分配されてしまいます。これにより、会社の事業に必要な資産や会社株式が経営に関係しない相続人にも相続されてしまうため、会社経営が円滑に進まなくなることもあります。
しかし、そうならないために後継者が事業用資産や株式の取得を主張すると、他の相続人は不公平と感じ、相続トラブルに発展することも多いのです。こうした事態を防ぐために、事業承継は早めに取り組む必要があります。
また、親族に承継しない場合でも、従業員や取引先などのために適切な対策を講じておく必要があります。
その会社にとってふさわしい方法をで事業承継するために、弁護士への相談をおすすめします。
相続手続きに弁護士がいらないケースとは?他にはどんな専門家が?
相続トラブルが起きたときは弁護士への依頼が必要ですが、特にトラブルがなければ他の専門家に相談するのも良いでしょう。
相続相談をおこなっている専門家には、弁護士以外に司法書士や行政書士、税理士などがいます。それぞれの得意分野や依頼可能な業務を見ていきましょう。
弁護士以外の相続の専門家 ①司法書士
司法書士は個人や企業から依頼を受け、法的に効力のある書類の作成や手続きの代行業務をおこないます。不動産登記を得意とするため、相続財産に不動産がある場合は相続登記を司法書士に依頼するのが一般的です。
司法書士は、相続税申告以外の相続に関する手続きをすべておこなうことが可能ですが、他の相続人との交渉や法律相談をおこなうことはできません。このため、相続紛争が起きる可能性がある場合などは、初めから弁護士に依頼したほうが良いでしょう。
弁護士以外の相続の専門家 ②行政書士
行政書士は官公庁への提出書類及び権利義務・事実証明に関する書類の作成、提出手続をおこないます。不動産登記はおこなえないため、相続財産に不動産がない場合に依頼するのが良いでしょう。
忙しいので相続人調査や自動車の名義変更などを代行して欲しいというときは、行政書士に依頼することで比較的費用を抑えて相続手続きをおこなうことができます。
弁護士以外の相続の専門家 ③税理士
弁護士が法律の専門家なのに対し、税理士は税の専門家です。相続手続きにおいて主に相続税の申告を担うため、弁護士と重複する業務はあまりありません。
遺産分割の場面では、弁護士は民法に基づき提案をおこないますが、税理士は税金面でのアドバイスをしてくれます。このため、相続財産が相続税の基礎控除内であれば税理士へ依頼する必要はありませんが、相続税がかかる場合は税理士にも意見を求めるのが良いでしょう。
弁護士資格があれば税理士の登録をおこなうことができるため、税理士を兼任している弁護士も少数ながら存在します。また法律事務所によっては税理士が所属しているところもあります。このような場合であれば、相続に関わるすべての手続きをまとめて依頼することが可能です。
相続の弁護士費用ってどれくらい?
弁護士に相続の相談をするとき、やはり気になるのは費用ではないでしょうか。弁護士の相談は高額になるイメージがあるため、依頼する前にはまず相場を知っておきたいですよね。
ここからは、相続手続きで弁護士報酬以外にかかる費用や、弁護士報酬は誰が支払うかなどについてご説明します。
相続案件での弁護士費用の相場
弁護士費用は、解決してほしい内容や依頼したい手続き、相続資産の金額などそれぞれのケースごとに異なります。また、弁護士法の改正に伴い平成16年4月1日より報酬規定が撤廃されたため、弁護士報酬は法律事務所や弁護士ごとに差があります。
しかし、現在でもこの「旧報酬規定」をもとに料金体系を決めている法律事務所や弁護士もあるため、参考までに以下に記します。
日弁連の弁護士報酬規定(旧報酬規定)
①法律相談 | 相談料 | 30分ごとに5,000円から2万5,000円の範囲内の額 |
---|---|---|
②訴訟事件 | 着手金 |
事件の経済的利益の額が |
報酬金 |
事件の経済的利益の額が |
|
③調停および示談交渉事件 | 着手金・報酬金 | ②に準じる。ただし、それぞれの額を3分の2に減額できる ※示談交渉から調停、示談交渉または調停から訴訟その他の事件を受任するときの着手金は②の2分の1 ※着手金の最低額は10万円 |
④日当 | 半日(往復2時間を超え4時間まで) | 3万円以上5万円以下 |
1日(往復4時間を超える場合) | 5万円以上10万円以下 | |
遺言書作成 | 定型 | 10万円から20万円の範囲内の額 |
非定型 |
基本 経済的な利益の額が |
|
公正証書にする場合 | 上記の手数料に3万円を加算する | |
遺言執行 | 基本 |
経済的な利益の額が |
特に複雑又は特殊な事情がある場合 | 弁護士と受遺者との協議により定める額 | |
遺言執行に裁判手続を要する場合 | 遺言執行手数料とは別に,裁判手続きに要する弁護士報酬を請求できる |
弁護士費用は主に「相談料」「着手金」「報酬金」で成り立っており、必要に応じて「日当」や「手数料」がプラスされます。
- ◆相談料
- 相続の相談料は30分5,000円~が目安となります。また、初回は無料という弁護士もいます。基本的に相談料は時間で費用が決まるため、確認したいことをあらかじめまとめておくなどの準備をおこなうことで費用を抑えることができます。
- ◆着手金
- 着手前に支払う費用です。報酬金とは異なり、結果によって金額が変わることはありません。遺産分割協議の場合、最低着手金は20~30万円程度のことが多いです。
- ◆報酬金
- 報酬金は解決後に支払う費用で、「経済的利益の〇%」のように結果に連動しています。遺産分割の交渉や調停の場合10%がひとつの目安になりますが、相続財産の額が上がるとこのパーセンテージは下がります。遺産分割での「経済的利益」とは、依頼者が相続する遺産の時価相当額を指します。ただし、「分割の対象となる財産の範囲および相続分について争いのない部分」については、その相続分の時価相当額の3分の1となります。
- そのあたりの線引きや計算は分かりにくいため、「どれくらい相続分が増えそうか」「その場合の報酬金はいくらになるか」という点を弁護士に確認しておくと良いでしょう。
- ◆日当
- 弁護士が弁護士事務所以外に出向く際にかかる出張費(交通費などの実費とは別の場合が多い)です。法律事務所によっては着手金に一定額が含まれていることもありますので、日当が発生する基準などあらかじめ確認しておきましょう。
- ◆手数料
- 単発の業務に対し発生する費用です。「遺言執行の手数料」は遺産額や相続人の数によって金額が変わりますが、30万円以上かかることが多いです。「相続放棄の申立手数料」は5~10万円程度が目安となります。
- 手数料は書類を取り寄せてもらうときなどにも発生します。可能であれば戸籍謄本などは自分で準備しておくことで、手数料を抑えることが可能です。
弁護士に依頼する場合、費用は誰が支払う?
弁護士は、相続人同士の利害が対立する場面では、依頼人の利益が最大になるよう交渉します。このため、弁護士に相続手続きを依頼する場合、費用は基本的に依頼者が支払います。
相続人全員でひとりの弁護士に依頼し、妥当な分与方法を決めてもらうという場合であれば、話し合いにより負担を決めて共同で支払うということもあります。
相続で弁護士費用以外にかかる費用は?
遺産分割協議や調停で遺産分割の方法が決まったら、相続する資産の名義変更が必要となります。不動産の場合、名義変更には固定資産税評価額の0.4%の登録免許税がかかります。
また、遺産の総額が相続税の基礎控除額を超える場合は相続税を支払います。
そのほか、戸籍謄本や印鑑証明などの発行費用や書類を郵送にかかる通信費などが実費でかかります。遺産分割の際はこういった費用が発生することも考慮に入れ、分割をおこなう必要があります。
相続に強い弁護士を探すには?
弁護士の活動領域は幅広く、テレビドラマでも描かれるような刑事事件が専門の弁護士のほか、離婚訴訟や企業法務を専門とする弁護士など得意分野が分かれます。
専門外の弁護士でも相続案件を引き受けることができますが、普段から相続問題を扱っている弁護士に比べると知識やノウハウが少なく、最新の情報への対応も遅れている可能性があります。このため、相続問題は相続に強い弁護士に依頼することが重要です。
ここからは、相続に強い弁護士を探すポイントをご説明していきます。
相続案件を数多く扱っている弁護士
まずは、相続案件に多くの実績がある弁護士を選ぶことが大切です。
相続は、相続人や相続財産が依頼ごとに異なるため、全く同じケースというものはありません。しかし、多くの実績がある弁護士であれば、豊富な経験からさまざまな相続トラブルに対し柔軟に対応可能です。また、相続関係の法律と判例にも詳しくなるため、紛争が起きるパターンを熟知しており、紛争予防や起きた後の対応にも長けています。
相続問題の年間取扱件数や経験年数・実績などは、法律事務所のホームページに掲載されていることも多いのでチェックしてみましょう。また、相続に強い弁護士は相続関係の書籍を執筆したり、ブログやホームページ上で相続に関する記事を書いていることも多いため、こうしたものの内容も参考にしてみてください。
話をよく聞いてくれる弁護士
弁護士に相続相談をするときは、ただ手続きをおこなってほしいだけではありません。代理で交渉してもらうなど人と人とのやり取りが重要となるため、信頼関係が必要です。信頼関係を築くには、しっかりと話をすることが大切です。
また、親族を亡くした悲しみに暮れている時期に、要領よく説明できる人はなかなかいないでしょう。そんなときでも話をよく聞いてくれる弁護士であれば、必要な情報を引き出すことができます。手続きを進めていく中で予想していなかった借金や相続人が現れるなどしたときも、その都度相談に乗ってもらい、対策を打ってもらうことが可能です。このため、話しにくいと感じるような弁護士は、選ばないほうが良いでしょう。
話をしっかりと聞いてくれる理想の弁護士に出会えても、遠方だと日当が発生し、相談の時間や回数を減らさざるを得ないこともあります。このため弁護士を選ぶ際は、じっくり話を聞いてもらうためにも事務所の所在地を確認しておきましょう。
まずは無料相談で信頼できる弁護士を探す
実績などはインターネットで調べられても、やはり実際に会ってみるのは大切です。
初回の相談料は無料という弁護士も多いため、まず会ってみて印象を確かめるとともに見積もりを取って比較しても良いでしょう。
相談時には、どんなことを依頼したいかあらかじめまとめておき、相続人や相続財産のについてもできるだけ詳しくわかる資料を用意しましょう。また、公正証書遺言や封のされていない自筆証書遺言がある場合は、コピーを取って持っていくのがおすすめです。できるだけ詳しい情報を伝えることで、より正確な見積もりを出してもらうことができます。
まとめ
弁護士を依頼すべき相続トラブルや手続き、相続に強い弁護士の探し方などをご紹介してきましたが、実際は相続発生後に急いで弁護士を探すのは大変です。このため、相続に不安があったりトラブル発生しそうなときは、前もって信頼できる弁護士を選んだり相談しておくと良いでしょう。
また、相続は生前の対策も重要です。今後親族に遺産を残すという方も、弁護士に遺言書の相談などしてみてはいかがでしょうか。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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