【事例】母が亡くなる前、弟が結婚祝い金をもらっていたそうです。これは相続財産になりますか?(40歳女性 遺産800万円)【行政書士執筆】
「いい相続」や提携する専門家に寄せられた相続相談をもとに、その解決策を専門家が解説するケーススタディ集「相続のプロが解説!みんなの相続事例集」シリーズ。
今回は、生前贈与されていた場合の遺産分割について、40歳女性の方からの相談事例をご紹介します。
解説は、りこ行政書士事務所の行政書士・國場 絵梨子さんです。
目次
この記事を書いた人
〈行政書士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、賃貸不動産経営管理士、測量士補、二種証券外務員、他多数資格有〉
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弟がもらった結婚祝い金は、相続財産になりませんか?
相談内容
母が亡くなり財産調査をしたところ、現金が500万円しかありませんでした。弟をに問い詰めたところ、結婚祝い金として3か月前に200万円もらったそうです。この200万円は相続財産に入れられますか?
- プロフィール:40歳女性
- お住まい:富山県
- 相続人:長男、長女(相談者本人)、次男の3名
- 被相続人:母
財産の内訳 | 内 容 | 評価額 |
---|---|---|
預貯金 | (結婚祝い金200万円は含めず) | 500万円 |
有価証券 | 200万円 | |
生命保険 | 契約者・被保険者:母 受取人:長男 |
100万円 |
※プライバシー保護のため、ご住所・年齢・財産状況などは一部架空のものです。
相関図
アドバイス1 特別受益とは
今回の相談者様のケースでは、被相続人であるお母様が次男である弟さんに200万円を結婚祝い金として贈与しています。
結論からいいますと、弟さんに贈与された200万円は相続財産に含めることができます。
なぜなら残った財産を法定相続分に従って平等に分けてしまうと、弟さんが他の相続人よりも多く財産をもらってしまい、相続人間で不平等な状態が生じるからです。
このような相続人間の不平等を是正するために、民法では「特別受益」という制度が定められています。
「特別受益」とは被相続人から特別の利益を受けた相続人がいる場合に、その相続人が受けた利益のことをいいます。
「特別受益」には被相続人が生前に相続人に対して行った婚姻または養子縁組等のための多額の財産贈与、住宅購入資金や事業資金等の贈与、遺言によって相続人が承継した遺産などがあります。
生命保険金は著しい不平等な状態が生じない限り、原則として「特別受益」になりません。なぜなら生命保険金は生命保険会社から受取人に支払われるもので、受取人固有の財産であると考えられているからです。
また「特別受益」を受ける者は相続人に限られます。相続人以外の人が被相続人の生前に多額の財産贈与を受けていたとしても、それは「特別受益」にはなりません。
アドバイス2 特別受益の持ち戻しとは
特別受益が存在する場合には、その額を相続が開始された時に存在していた財産と合算して相続財産とみなすと民法903条において定められています。
特別受益を相続財産に加えて各相続人の具体的な相続分を計算することを「特別受益の持ち戻し」といいます。
計算の仕方は、まず特別受益を相続財産に加えた額であるみなし相続財産を各相続人に分配します。その後に特別受益者の相続分から、特別受益の額を差し引きます。
計算の結果、特別受益の額が相続分を超えていなければ差し引いた額を特別受益者は取得します。特別受益の額が相続分を超えている場合には取得額がないことになります。
このように特別受益者がいる場合は「特別受益の持ち戻し」を行うことにより、相続人間の公平を図ることができます。
アドバイス3 特別受益の持ち戻しをした場合の具体的相続分
今回の相談者様のケースで特別受益の持ち戻しをした場合の、具体的相続分を計算してみます。
まず相続が開始された時点での財産の額を計算します。
預貯金の500万円と有価証券の200万円の合計額である700万円が相続開始時点の財産の合計額です。生命保険金の100万円は受取人が長男に指定されているので、長男固有の財産となり相続財産には含まれません。
次に特別受益の額を加えたみなし相続財産の額を計算します。先ほど計算した合計額である700万円に弟さんが贈与を受けた200万円を加えます。
みなし相続財産の額は700万円+200万円=900万円となります。
そして各相続人に相続財産を分配します。今回は法定相続分に従って各相続人に均等に財産の分配が行われたことにします。
900万円を3名の相続人に均等に分配するとそれぞれ300万円ずつ取得することになります。
最後に特別受益者の取得額から特別受益額を差し引きます。弟さんが取得した300万円から特別受益額である200万円を差し引くと取得額は100万円となります。
特別受益の持ち戻しの結果、相続人2名の相続財産の取得額は300万円、特別受益者の弟さんの取得額は100万円となり、相続人間の不平等は是正されているといえるのではないでしょうか。
このように相続人に特別受益者がいる場合には、個別に考慮しなくてはならない点があるためにトラブルが起こる可能性が大きいです。お困りの場合は士業など相続に関する専門家に相談されることをおすすめいたします。
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