相続した不動産の固定資産税は誰が払う?知らずに損しないための全知識
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2020年5月20日に公開された記事を再編集したものです。
登記簿上の所有者が亡くなった人のままの場合は、相続人が納税義務者となりますが、遺産分割協議が調っても、そのままでは相続人代表者に納税通知書が送られてきます。相続人代表者と不動産を相続した人が異なる場合は、早めに相続登記をしておいた方がよいでしょう。
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相続不動産の固定資産税は誰が払うものなのでしょうか?知らずに損しないように、是非、参考にしてください。
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相続不動産の固定資産税は誰が払う?
相続不動産の固定資産税は誰が払うのでしょうか?
亡くなった年以前(亡くなった年を含む)の固定資産税と、亡くなった翌年以降とで払うべき人が変わってくるため、それぞれに分けて説明します。
亡くなった年以前(亡くなった年を含む)の固定資産税
亡くなった年を含めて、亡くなった年以前の固定資産税については亡くなった人が払うべきものですが、亡くなった人が払うべき債務は、プラスの財産と同様に相続人が承継します。
相続人が複数いる場合は、相続放棄をした人を除く相続人全員が、相続分に限定されず、固定資産税の全額について連帯債務を負います。
相続放棄をした人は、相続放棄申述受理通知書または相続放棄申述受理証明書を役所に持参して、相続放棄したことを証明すれば、督促や差し押さえを受けることはなくなります。
全員が相続放棄をした場合は誰も払う必要はありません。
また、誰かが納税したら、他の相続人は納税する必要はなくなります。なお、遺産から払っても問題ありません。誤って遺産から払っても、相続放棄が出来なくなるようなことはありません。
また、支払った固定資産税の金額は相続税申告の際に控除することができます。
加えて、不動産から所得が生じている場合(賃貸収入がある場合等)は準確定申告が通常必要になりますが、その際に、固定資産税を必要経費に算入できることがあります。
期限内に払わないと延滞金がかかりますが、延滞金も相続人全員(相続放棄をした人を除く)の連帯債務となります。
誰も払わなければ、自治体から督促がきて、それでも誰も払わなければ、財産を差し押さえられる可能性があります。差し押さえの際は、相続分に応じて平等に差し押さえるようなことはしてくれないので、相続人の誰かが全額分差し押さえられる可能性があります。
遺産からではなく自分のお金から払った人は、他の相続人にそれぞれの相続分に応じた負担分を求償(償還を求めること)することができます。
亡くなった翌年以降の固定資産税
亡くなった翌年以降の固定資産税を払わなければならない人は、その年の1月1日時点で、誰が所有者として登記されているかによって異なります。
主に次の3つのパターンが考えられます。
- 亡くなった人のまま
- 新しい所有者
- 法定相続人が法定相続分に応じて共有
以下、それぞれに場合ついて説明します。
なお、いずれの場合においても亡くなった翌年以降の固定資産税は、相続税を計算する際に遺産額から控除することはできませんし、準確定申告時に必要経費に算入することもできません。
登記簿上の所有者が亡くなった人のまま
登記簿上の所有者が亡くなった人のままの場合は、相続人が納税義務者となります。
相続人が複数いる場合は、相続放棄をした人を除く相続人全員が、相続分に限定されず、固定資産税の全額について連帯債務を負います。
相続放棄をした人は、相続放棄申述受理通知書または相続放棄申述受理証明書を役所に持参して、相続放棄したことを証明すれば、督促や差し押さえを受けることはなくなります。
全員が相続放棄をした場合は誰も払う必要はありません。また、誰かが納税したら、他の相続人は納税する必要はなくなります。
なお、相続債務ではないので、遺産から払うと相続を承認したものとみなされ、相続放棄の申述が受理されなかったり、受理された相続放棄の申述が後に無効となったりすることがあります。
期限内に払わないと延滞金がかかりますが、延滞金も相続人全員(相続放棄をした人を除く)の連帯債務となります。
誰も払わなければ、自治体から督促がきて、それでも誰も払わなければ、財産を差し押さえられる可能性があります。
差し押さえの際は、相続分に応じて平等に差し押さえるようなことはしてくれないので、相続人の誰かが全額分差し押さえられる可能性があります。
相続人の誰かが払った場合、遺産分割までは他の相続人に相続分に応じて求償でき、遺産分割後は、不動産を相続することになった人に全額求償できます。
最終的には、不動産を相続する人が延滞金も含めて固定資産税を払うことになるので、不動産を相続する予定がある人は率先して払った方がよいでしょう。
なお、遺産分割協議が調っても、相続登記をするまでは、相続人代表者に納税通知書が送られてきます(相続登記をした翌年から新所有者に納税通知書が届きます)。
相続人代表者は、相続人代表者指定届を出した場合は届によって指定された人、出さなかった場合は役所が指定した人です。
役所が指定する場合は、その不動産に住んでいる人を指定する傾向があります(いなければ同じ市区町村に住んでいる人。それもいなければ血族よりも配偶者)。亡くなった翌年の固定資産税納税通知書が届いたら、その人が役所によって相続人代表者に指定されたことが分かります。
相続人代表者と不動産を相続した人が異なる場合で、かつ、不動産を相続した人が年内に相続登記をしない場合は、相続人代表者に指定されている人は年内に相続人代表者変更届を出しておいた方がよいでしょう。
新しい所有者
遺産分割協議が調い、1月1日時点で既に相続登記が完了している場合は、新しい所有者が納税義務者です。
他の相続人は関係ありません。なお、1月1日時点で既に不動産を売却して移転登記が完了している場合は、買い主が納税義務者です。
法定相続人が法定相続分に応じて共有
1月1日時点で、法定相続登記(債権者代位による場合を含む)がされている場合、相続放棄をした人も所有者として登記されている以上、納税義務者となります。
相続人が複数いる場合は、相続放棄をした人も含む相続人全員が、相続分に限定されず、固定資産税の全額について連帯債務を負います。また、誰かが納税したら、他の相続人は納税する必要はなくなります。
なお、相続債務ではないので、遺産から払うと相続を承認したものとみなされ、相続放棄の申述が受理されなかったり、受理された相続放棄の申述が後に無効となったりすることがあります。
期限内に払わないと延滞金がかかりますが、延滞金も相続人全員(相続放棄をした人を除く)の連帯債務となります。誰も払わなければ、自治体から督促がきて、それでも誰も払わなければ、財産を差し押さえられる可能性があります。
差し押さえの際は、相続分に応じて平等に差し押さえるようなことはしてくれないので、相続人の誰かが全額分差し押さえられる可能性があります。
相続人の誰かが払った場合、遺産分割までは他の相続人に相続分に応じて求償でき、遺産分割後は、不動産を相続することになった人に全額求償できます。
最終的には、不動産を相続する人が延滞金も含めて固定資産税を払うことになるので、不動産を相続する予定がある人は率先して払った方がよいでしょう。
なお、不動産を相続しなかった人でも所有者として登記されている状態が続く限り、さらに翌年以降も、納税義務を負い続けることになるので、遺産分割協議が調ったら、持分移転登記をすべきです。
また、相続放棄をしたものの他の相続人との間の遺産分割協議が長引いて、さらに年をまたぎそうな場合は、年が変わる前に、自分だけでも登記上の所有者から抜けるようにした方がよいでしょう。
その場合の登記手続きは、法定相続登記と相続放棄申述受理の前後関係によって異なります。
登記が先で相続放棄が後の場合は、相続放棄申述者の持分全部移転登記、相続放棄が先で登記が後の場合は、更正登記をすることになります。
手続きについては、司法書士に依頼することをお勧めします。
なお、自ら法定相続登記を申請した場合は、相続を承認したものとみなされ相続放棄の申述が受理されなかったり、受理された申述が無効となったりすることがありますが、他の相続人が申請した場合や代位登記の場合は法定単純承認の原因とはなりません。
なお、全員が相続放棄した場合でも全員が納税義務者であることに変わりはなく、固定資産税を支払った人は、他の相続人に法定相続分に応じて求償するか、相続財産法人に全額を求償することができます。
相続財産法人とは、亡くなった人に相続人がいない場合や全員が相続放棄をした場合等に、法人化した相続財産のことをいいます。
相続財産法人が作られるために手続きは不要です。
相続人全員が相続放棄した場合等は、自動的に相続財産が法人化して相続財産法人となります。
しかし、相続財産が法人化しても、管理する人がいなければ、財産を保存したり管理したり処分したりすることはできません。
そこで、相続財産法人の財産を管理する相続財産管理人の選任が必要になります。
相続した不動産の相続税が払えない場合の対処法
相続した不動産の相続税が払えない場合の選択肢として物納がありますが、これはあまりお勧めしません。
基本的には、財産を売却して金銭で納付した方が得になることが多いです。なぜなら、物納の場合は、相続税評価額で評価されてしまうからです。
土地の相続税評価額は時価の8割程度、建物の相続税評価額は時価の6割程度です。そうすると、不動産を売却して金銭で納付した方が得になります。
しかし、田舎にある不動産等の場合は中々買い手が付かず、売ろうにも売れない状況に陥ることがあります。取引の盛んではない田舎の不動産が、期限内に売れるとは限りません。期限内に売ろうとするなら、相続税評価額を下回る価格になってしまう可能性も高いです。そのような場合は、物納の申請はした方がよいでしょう。
物納を申請してから履行までは、年単位の期間がかかることもあります。物納申請をしておくことで、期限までに納付できなくても収納の日まで延滞税がかからなくなります。
物納が履行されるまでの間に相続税評価額よりも高値で売れる可能性もあるでしょう。その場合は、物納は取下げて金銭で納付することになりますが、延滞税がかかります。
なお、そのまま買い手が付かず、物納が履行された場合は、利子税はかかりません。
また、物納の場合は原則として譲渡所得税がかからないというメリットもあります。亡くなった人が取得した時よりも不動産が値上がりしている場合は売却すると譲渡所得税がかかりますが、物納の場合はかかりません。
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