【必見!】不動産の相続税で損しないために知っておきたい知識を総まとめ
本記事は、いい相続の姉妹サイト「遺産相続弁護士ガイド」で2019年5月21日に公開された記事を再編集したものです。
不動産を相続する際に、相続税がいくらかかるのか、また、相続税を安くする方法はないのかという点が気になるでしょう。
この記事では、不動産にかかる相続税の計算方法や土地を使って相続税を節税する方法、それから、相続税が払えない場合の対処法等、不動産の相続税で損しないために知っておくべき知識について説明します。
是非、参考にしてください。
この記事を書いた人
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相続税の計算方法
相続税は、財産ごとに計算されるわけではありません。
例えば、遺産に不動産と現金があったとして、不動産に対する相続税と現金に対する相続
税と別々に計算するのではありません。
すべての遺産に対する相続税の総額を計算し、これを相続分に応じて各相続人に按分します。
相続税の計算は、次の手順で行います。
- 遺産総額(課税価格)を算出する
- 相続税の基礎控除額を差し引いて課税対象額を算出する
- 法定相続分に基づき各法定相続人の相続税額を算出し、それらを合計する
- 相続税総額を実際の相続分に基づき按分する
- 各相続人の事情に応じて税額を増減する
例えば、遺産が6000万円の土地と4000万円の現金で、法定相続人が被相続人(亡くなって財産を残す人)の子であるAとBの2人で、Aが土地をBが現金を相続したとします。
遺産総額は6000万円+4000万円=1億円です。
基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」で計算できます。
今回の基礎控除額は、法定相続人は2人なので、3000万円+600万円×2人=4200万円です。
課税対象額は、1億円−4200万円=5800万円です。
法定相続分は2分の1ずつなので、AとB、それぞれの課税対象額は5800万円×1/2=2900万円です。
これを以下の相続税の速算表に当てはめます。
法定相続分に応ずる取得金額 (各法定相続人の課税対象額) | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | − |
1000万円超3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超5000万円以下 | 20% | 200万円 |
5000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
A、B共に、「法定相続分に応ずる取得金額(各法定相続人の課税対象額)」の列が「1000万円超3000万円以下」の行を確認すればよいので、税率は15%、控除額が50万円となり、相続税総額は、(2900万円×15%−50万円)+(2900万円×15%−50万円)=770万円となります。
これを実際の相続分に基づき按分します。
そうすると、Aの相続税額は770万円×6000万円/1億円=462万円、Bの相続税額は、770万円×4000万円/1億円=308万円となります。
そして、各相続人に、税額控除や2割加算の適用等、税額を増減する事情がある場合は、その事情に応じて計算します。
不動産の評価方法
先ほどの例では、土地の価格を6000万円としましたが、そもそも土地や建物といった不動産の価額はどのように評価すべきでしょうか。
以下、土地と建物に分けて説明します。
土地の評価方法
まず、相続税の計算の土地の評価方法について説明します。
実勢価格ではなく相続税評価額で評価する
土地の評価方法には主に次の3つがあります。
- 実勢価格
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
相続税の計算の際の土地の評価には、その名の通り、「相続税評価額」が用いられます。
相続税評価額の計算方法
土地の相続税評価額の算定方法は複雑であり、一般の方が自分で正確に算定することは難しいので、相続税申告の際は、税理士に相談することを強くお勧めします。
なお、相続等により取得した財産の課税価格の合計額が基礎控除額以下の場合は、相続税がかからず、申告も不要です。
課税価格の合計額が基礎控除額以下に納まるかどうかについてざっくりと計算する目的であれば、簡易的に、土地の固定資産税評価額から相続税評価額を算定することもできます。
土地の固定資産税評価額を7で割って8を掛けると(つまり、約1.14倍すると)、相続税評価額の概算を算出することができます。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に添付されている課税明細書に記載されています。
固定資産税の納税通知書は、毎年送付されてきますが、納付が済んでも保管しておきましょう。
納税課税明細書に「価格」という欄がありますが、そこに金額が記載されています。
小規模宅地等の特例は土地の評価額が最大8割引きに
「小規模宅地等の特例」とは、亡くなった人の自宅の土地や、亡くなった人が事業に使っていた土地を相続する場合に、一定の条件を満たせば、相続税を計算する際の土地の評価額を最大8割引きにしてくれる制度です。
建物の評価方法
建物の相続税評価額は相続税評価額と同じ額
建物の相続税評価額は、固定資産税評価額を適用します。
貸家の相続税評価額は減額できる
借家権の設定されている貸家は、自用の建物に比べて、貸主にとって使い勝手が悪いので、貸家について相続したり贈与を受けた場合、その相続税評価額の算定に当たって、その家屋の相続税評価額から一定の割合を控除することになっています(相続財産は相続税、贈与を受けた財産は贈与税の課税対象となりますが、いずれの場合も財産の相続税評価額に対して課税されます。)。
貸家の相続税評価額は、次の式で計算します。
家屋の相続税評価額−家屋の相続税評価額×借家権割合×賃貸割合 |
借家権割合は、2019年現在、全国どの地域でも30%となっています。
借家権割合は、今後、変更になる可能性があります。
借家権割合を調べるには、国税庁ウェブサイトの財務評価基準書のページをご参照ください。
借家権割合を調べたい都道府県(建物が建っている都道府県)のクリックし、次に、「借家権割合」の文言をクリックすると、その都道府県の借家権割合を示したページにたどり着くことができます。
借家権割合は、「100分の30」のようなかたちで表しますが、「100分の30」は30%のことです。
賃貸割合は、「当該家屋の各独立部分の床面積の合計のうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計」を「当該家屋の各独立部分の床面積の合計」で除した(割った)値です。
なお、この「各独立部分」とは、建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井及び床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。
相続した、または、贈与を受けた家屋の各独立部分の床面積の合計が100?で、そのうち、課税時期(相続時または贈与を受けた時)において賃貸されている各独立部分の床面積の合計が80であった場合の賃貸割合は、「80?÷100?=80%」となり、「借家権割合30%×賃貸割合80%=24%」を控除できることになります。
賃貸割合が高ければ高いほど、控除できる額が大きくなります。
賃貸アパートを相続する場合は、相続時に、できるだけ満室に近い方が控除できる額が大きくなるというわけです。
なお、継続的に賃貸されていたアパート等の各独立部分で、例えば、次のような事実関係から、アパート等の各独立部分の一部が課税時期において一時的に空室となっていたに過ぎないと認められるものについては、課税時期においても賃貸されていたものとして差し支えありません。
- 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること
- 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと
- 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること
- 課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと
なお、無償で貸している場合や、著しく低廉な価格で貸している場合は、借家権割合の適用を受けることはできません。
建築中の家屋も相続税の課税対象となる
ちなみに、建築途中の家屋も相続税の課税対象になります。
建築途中の家屋の評価額は、費用原価の額×70%です。
費用原価の額とは、課税時期(相続の場合は被相続人の死亡の日)までに建物に投下された建築費用の額を課税時期の価額に引き直した額の合計額のことをいいます。
また、門や塀、庭園設備等も相続税の課税対象となります。
マンションの評価方法
マンションの場合は、土地の敷地利用権と建物の専有部分の評価額をそれぞれ計算した金額の合計額で評価します。
以下、それぞれの評価方法について説明します。
敷地利用権の評価方法
マンションの敷地利用権は、敷地全体の評価額に敷地権の割合を掛け算して計算します。
敷地全体の評価は前述の土地の評価方法をご参照ください。
敷地権の割合は、登記事項証明書(登記簿謄本)で確認できます。
建物の専有部分の評価方法
マンションの建物の専有部分の評価は、ほかの建物と同様、固定資産税評価額で行います。
マンションの場合も人に貸している場合は、借家権割合による評価減を適用することができます。
不動産を活用した相続税対策
財産をなるべく不動産に換えておくことは相続税対策になります。
相続税評価額は実勢価格よりも低く見積もられるからです。
例えば、1億円の現金を持っていたとします。
現金のまま相続すると、1億円が課税価格となります。
ところが、この1億円で、土地を購入して賃貸アパートを建てたとします。
土地も建物もそれぞれ5000万円だったとします。
相続税評価額は、市場価格の約8割程度になります。
固定資産税評価額は、市場価格の約7割程度になります。
市場価格5000万円の土地の相続税評価額は、5000万円×80%=4000万円程度になります。
さらに賃貸アパートのような貸家建付地の場合は、前述の通り、評価をさらに減額することができます。
具体的には、「自用地とした場合の価額−自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合」で計算することができます。
借地権割合が40%、借家権割合が30%、賃貸割合が90%だとすると、貸家建付地の評価額は、4000万円−4000万円×40%×30%×90%=3568万円となります。
また、市場価格5000万円の建物の固定資産税評価額は、5000万円×70%=3500万円程度になります。
建物については、賃貸用なので、借家権割合の30%を差し引いて、3500万円×70%=2450万円となります。
土地と建物の評価額を合算すると、3568万円+2450万円=6018万円となり、現金のまま持っていた場合に比べて4割近く評価額を削減することができました。
また、あくまでも現時点での法律としては、タワーマンションの高層階の区分所有権を購入することは、相続税対策として有効です。
不動産の相続税評価額は実勢価格よりも低くなるため、現金を不動産に替えておくことで、相続財産の金額を減らし、相続税対策を行うことができることは前述の通りです。
タワーマンションの高層階は、実勢価格と相続税評価額との差がより大きくなるため、相続税対策としても、より大きな効果が期待できるのです。
ただし、将来的には、法改正によって、タワーマンションの高層階の財産評価の方法が変わり、相続税対策としての効果が低くなる可能性があります。
現に、固定資産税については既に法改正があり、タワーマンションの高層階は低層階に比べて高い固定資産税が課せられるようになっています。
しかし、既に購入済みのタワーマンションについては法改正の影響を受けず、影響を受けるのは、法改正後、つまり、2017年4月以降に売買契約が締結された新築物件です。
相続税についても、将来的に法改正が行われた時に、今回の固定資産税の改正のように、対象となる不動産が法改正後に売買契約が締結された新築物件に限定されれば、相続開始が法改正後だったとしても、法改正前に取得したタワーマンションの高層階は、相続税対策として有効となります。
相続税が払えない場合の対処法
遺産の価値のほとんどが不動産の場合に、相続税が払えないという事態が生じえます。
まとめ
以上、不動産の相続税について説明しました。
不動産の、特に土地の相続税評価額には様々な減額制度がありますが、すべてを正確に理解して適切に適用することは、一般の方には難しいでしょう。
相続税の基礎控除額以上の相続財産がある場合は、税理士に一度相談することをお勧めします。
▼実際に「いい相続」を利用して、税理士に相続税申告を依頼した方のインタビューはこちら
この記事を書いた人
相続専門のポータルサイト「いい相続」は、相続でお悩みの方に、全国の税理士・行政書士・司法書士・弁護士など相続に強い、経験豊富な専門家をお引き合わせするサービスです。提携する税理士・行政書士は初回面談無料、相続のお悩みをプロが解決します。遺言書や遺産分割協議書の作成、相続税申告のご相談、相続手続の代行など「いい相続」にお任せください。
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