相続関連用語集
相続について調べていると、見慣れない言葉がたくさんあって訳が分からなくなってしまった・・・そんな声もよく聞きます。
ここでは、相続に関連する用語を簡単にまとめていますので、是非参考にしてください。
あ行
遺産分割(いさんぶんかつ)
相続が始まると、被相続人の財産は全相続人が共有する状態になります。この共有状態にある相続財産のうち、誰が何を相続するか決め、分割する手続きを遺産分割といいます。
被相続人が遺言書を残している場合には、被相続人が作成した遺言書に従っておこなわれるのが一般的ですが、相続人が複数いるけれど遺言書はないという場合、相続人全員が参加する遺産分割協議によって誰が何を相続するかを具体的に決めます。また遺産分割協議で決定したことを書面でまとめたものが遺産分割協議書です。
遺産分割協議書(いさんぶんかつきょうぎしょ)
遺産分割協議書とは、遺産分割協議の結果を書面にまとめたものです。故人の預金を解約または名義変更する際や不動産登記をおこなう際など、被相続人の遺産を誰に引き渡すのかを証明する書類として用いられます。
また、遺言が残っている場合、相続人が遺言の内容に合意している場合は遺産分割協議書が不要となる場合もあります。
遺族年金(いぞくねんきん)
遺族年金とは、国民年金または厚生年金保険の被保険者(または被保険者であった方)が亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。遺族年金は、遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、国民年金の被保険者だった場合は遺族基礎年金を、厚生年金の被保険者だった場合は、支給条件を満たせば遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できできます。
遺族基礎年金は、支給条件を満たしている場合、被保険者に生計を維持されていた「18歳未満、あるいは20歳未満で障害等級1級または2級を持っている子どものいる配偶者」、と「対象となる子ども」に受給資格があります。
遺族基礎年金は対象となる子どもがいることが条件になりますが、遺族厚生年金の場合は、子どもの有無にかかわらず受け取ることができます。
遺留分(いりゅうぶん)
遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹を除く)が相続できる最低限度の相続分です。民法によって定められており、遺留分が侵害された場合、相続人には侵害額に相当する金銭を請求する権利(遺留分侵害額請求権)が認められています。
か行
家族信託(かぞくしんたく)
家族信託とは、委託者(財産管理を委託する人)が、信頼できる家族や親族である受託者(財産管理を任される人)に、自分が指定した内容の財産を託す(信託)というものです。契約によって、受託者は託された財産(信託財産)を管理・運用・処分して、得られた利益を受益者のために使用します。認知症対策としても期待されますが、判断能力が著しく衰えてしまってから契約することはできません。
共同相続人(きょうどうそうぞくにん)
共同相続人とは、相続人が複数人いる場合に、遺産分割前の相続財産を共有している状態の相続人のことです。 共同相続人は必ず法定相続人でもありますが、次の相続人は、法定相続人ではありますが共同相続人ではありません。
- 法定相続人が一人しかいない場合のその相続人
- 相続放棄をした相続人
- 遺言によって特定の財産を単独で相続し、それ以外に相続分を持たない相続人
- 遺言によって全財産を取得することとなった相続人
- 遺産分割によって共有状態を脱却し相続財産を単独所有している相続人
行政書士(ぎょうせいしょし)
行政書士の対応できる範囲:相続に関わるほぼすべての手続き(紛争解決、相続登記等は除く)
行政書士は官公署への提出書類や権利義務・事実証明に関する書類の作成等の専門家です。相続人や相続財産の調査、戸籍謄本など必要書類の収集、遺産分割協議書の作成、銀行口座の凍結解除・名義変更・口座解約、自動車の名義変更などさまざまな手続きに対応しています。また、一般的に弁護士や司法書士などと比べ報酬額が低いため、ほかの士業に依頼するより費用を抑えて相続手続きをおこなえるというメリットがあります。一方、不動産登記はおこなえないため、相続財産に不動産がある場合、不動産の名義変更(相続登記)を弁護士、または司法書士に依頼する必要があります。
相続税が発生するケースでは相続人自身で申告するか、別途税理士に依頼する必要があります。
銀行手続き(ぎんこうてつづき)
銀行預金の相続手続きは、①被相続人の取引していた銀行に連絡(口座の凍結)、②残高証明書の取得、③遺産分割協議をおこない遺産の分割内容を決める、④銀行に連絡し口座の解約などの手続きをおこなうという流れが一般的です。被相続人の口座を凍結すると、原則、預金の相続手続きが完了するまでお金を引き出すことはできません。ただし、2019年7月施行の改正相続法により、定められた範囲内であれば、遺産分割が終わる前でも相続人単独で預金を払い戻せるようになりました。なお、貸金庫に入っていた財産も相続の対象になります。
限定承認(げんていしょうにん)
限定承認とは、相続人が、被相続人の債務などをプラスの相続財産の範囲内で引き継ぐというものです。故人の財産を調査した際に、相続をしてしまうと債務超過の恐れがあるものの、清算してみないとわからないような場合におこなわれます。相続人が複数人いる場合には相続人全員の同意のもと、家庭裁判所に申述しなければならないなど、手続きは複雑です。
なお、相続放棄、限定承認をおこなう場合は、相続の発生を知ったときから3ヵ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
口座凍結
一定の条件に該当した場合に、銀行口座から、現金を下ろすことはもちろん、引き落としや振込なども一切できなくなる状態のことです。
戸籍収集(こせきしゅうしゅう)
戸籍とは、日本人が生まれてから亡くなるまでの「身分関係を証明する」公的な証明書類です。出生・結婚・死亡・親族関係などについて、登録・公証します。相続手続きでは、被相続人の法定相続人が誰なのかを証明するため、被相続人が出生してから死亡するまでに作られたすべての戸籍をさかのぼって順に取得する必要があります。また、相続人の現在の戸籍も取得し、相続開始時点で生存しており相続の権利があることを証明します。
さ行
司法書士(しほうしょし)
司法書士の対応できる範囲:相続不動産の名義変更(相続登記)、被相続人の株式の名義変更など
司法書士は、法的に効力のある書類作成の専門家です。相続財産に不動産がある場合、相続不動産の名義変更(相続登記)を司法書士に依頼するのが一般的です。このほか、相続人調査、書遺言の検認手続、遺産分割協議書作成なども対応しています。なお、相続税が発生するケースでは相続人自身で申告するか、別途税理士に依頼する必要があります。
死亡診断書・死体検案書(しぼうしんだんしょ・したいけんあんしょ)
死亡診断書(死体検案書)とは、人の死亡を医学的・法律的に証明する書類です。死亡届の提出や火葬などの際に必要です。また、遺族年金や民間の生命保険の請求手続きなどで、死亡の事実(原因)および死亡年月日確認のために必要となる場合もあります。
(相続税の)障害者控除(しょうがいしゃこうじょ)
相続人が障害者の場合、85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)が相続税の額から差し引かれます。これを障害者控除といいます。
障害者控除を受けるためには、相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人で、財産を取得した時に障害者であるなどの条件を満たしている必要があります。
なお、障害者控除額が、その障害者本人の相続税額より大きく、控除額の全額が引き切れない場合、その分の金額をその障害者の扶養義務者の相続税額から差し引きます。
生前贈与(せいぜんぞうよ)
生前贈与とは、生きている間に財産を配偶者や子、孫などに贈与することです。相続税の課税対象となる財産を減らせるため、相続税を軽減できることから、相続税の節税対策として生前贈与を考える方もいらっしゃいます。また贈与する人(贈与者)にとっては、自分が生きているうちに、あげたい財産をあげたい人に渡すことができ、さらに贈与者の死後、親族間でのもめ事を回避する効果も期待されます。
成年後見(せいねんこうけん)
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などの理由で判断能力の不十分な人を保護し、支援する制度です。財産管理やさまざまな契約、遺産分割の協議など、本人をサポート(代行)します。すでに判断能力が低下している人が利用できる「法定後見制度」と、十分な判断能力があるうちに、将来、判断力が不十分な状態になった場合に備える「任意後見制度」の2つがあります。
税理士(ぜいりし)
税理士の対応できる範囲:税務相談、税務書類の作成、税務調査の立ち会いなど
税理士は、税務相談に応じたり、書類作成などをおこなう税の専門家です。遺産相続を得意とする税理士は、相続税を抑えられる遺産分割の方法や特例などにも詳しく、税理士次第で納める税金が変わることもあります。正確に書類を作成することで税務調査が入る可能性も減るほか、仮に税務調査対象となった場合、税理士に立ち会ってもらうことも可能です。
なお、正味の遺産額(相続税の課税の対象となる財産の合計額)が相続税の基礎控除内(相続税の申告・納税が不要)であれば、税理士に依頼する必要はありません。
相続税(そうぞくぜい)
相続税とは、相続などによって被相続人(故人)から取得した財産が基礎控除額(3,000万円+(600万円×法定相続人の数))を超える場合、その超える部分に課される税金です。相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヵ月以内に、被相続人の住所地を所轄する税務署に相続税の申告・納税をしなければなりません。なお、被相続人の配偶者の税額が軽減される制度や、一定の条件を満たせば宅地などの相続税の課税価格に算入すべき価額が減額される小規模宅地等の特例などもあります。
相続調査(そうぞくちょうさ)
相続が発生したら、相続人が誰なのか、またどのような資産や負債が残されているか、まず相続人と相続財産とを調査し明らかにします。
相続財産には預貯金や現金、土地・家屋などプラスの財産のほか、借入金や未払い金などマイナスの財産があることもあります。これらの財産は、遺言書や遺産分割協議の結果によって相続人に配分されます。マイナスの財産が多い場合など、相続人は相続放棄を検討する必要があります。また、生命保険金、死亡退職金など「みなし相続財産」は、遺産分割協議の対象にはなりませんが相続税の課税対象となります。
相続手続(そうぞくてつづき)
相続手続とは、被相続人の財産を相続人が承継するための手続きです。相続人・相続財産の確認、遺言書の確認、遺産分割協議(遺言書がある場合はおこなわれないこともあります)、相続財産の名義変更、相続税の申告・納税(相続財産が基礎控除額を超えていた場合)というのが一般的な流れです。相続税の申告・納税の期限は、相続が発生したことを知った日の翌日から10ヵ月以内と定められています。
相続登記(そうぞくとうき)
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった場合に、その不動産の登記名義を被相続人から相続人へ名義の変更をおこなうことです。相続登記には法律上の期限が定められていません(2021年1月現在)。
相続登記をおこなっていない不動産は、相続人の間で法定相続分に応じて共有されている状態となります。そのため自由に売却できない、また共有している相続人の誰かが亡くなった場合、亡くなった相続人の共有持分は、さらにその相続人の共有になり、不動産登記の手続きが複雑になる可能性があります。
相続放棄(そうぞくほうき)
被相続人に多額の借金があった場合など、相続人は相続放棄することでマイナスの財産を相続せずにすみます(プラスの財産も相続できません)。また、相続放棄することで「借金の保証人になっている」「損害賠償を請求されている」といった被相続人の立場も引き継がずにすみます。第一順位である子が全員相続放棄した場合、第二順位の親に。第二順位の親もともに相続放棄した場合は、第三順位である兄弟姉妹に相続権が移ります。兄弟姉妹も相続放棄をすれば、それ以上は移りません。
尊属(そんぞく)
尊属とは、親族関係において、自分よりも前の世代の血族で、父母や祖父母、おじおばなどが該当します。尊属には直系と傍系があり、自分の父母や祖父母など世代の上下方向に直接繋がっている人を直系、叔父・伯母など祖先を同じにしますが、自分とは世代の上下に繋がらない関係にある人を傍系といいます。
た行
単純相続(たんじゅんそうぞく)
単純相続とは、被相続人のすべての財産を相続することです。相続の発生を知ったときから3ヵ月以内に相続放棄または限定承認の申述をおこなわない、または単純相続をしたと判断される行為をすることで、単純相続を選択したことになります。
直系尊属(ちょっけいそんぞく)
直系とは、祖父母、親、子、孫など祖先から子孫へと直通する系統です。
直系尊属とは、直系の中でも祖父母や父母など、本人を基準にして前の世代の血族のことです。養父母も直系尊属に含まれますが、おじ・おば、配偶者の父母・祖父母は含まれません。兄弟姉妹、おじ・おば、甥・姪などの親族は傍系といいます。
直系卑属(ちょっけいひぞく)
直系とは、祖父母、親、子、孫など祖先から子孫へと直通する系統を言います。
直系卑属とは、直系の中でも子・孫など本人より後の世代の血族です。養子も直系卑属に含まれます。
は行
卑属(ひぞく)
卑属とは、親族関係において、自分よりも後の世代の血族を指し、子や孫などを指すものです。卑属には直系と傍系があり、自分の子や孫など世代の上下方向に直接繋がっている人を直系、甥や姪など自分とは世代の上下に繋がらない関係にある人を傍系といいます。
紛争・争族(ふんそう・そうぞく)
相続では、相続財産の多い、少ないにかかわらず相続人同士で合意が得られず、遺産分割がうまくいかないことは多々あります。
例えば不動産など分割しにくい、または評価が難しい相続財産がある、遺留分を無視した遺言書で特定の相続人に偏って財産を相続させようとした、遺族が予期していなかった相続人が現れるなど、相続がトラブルに発展してしまうケースはさまざまです。
一度トラブルになってしまうと当人同士では解決は難しく、後々相続人間でわだかまりが残ってしまうことも珍しくありません。
弁護士(べんごし)
弁護士の対応できる範囲:相続に関わるほぼすべての手続き
弁護士は、法的根拠に基づいて紛争を解決する専門家です。相続では、相続人同士の合意が得られずにトラブルに発展するケースもあります。相続人同士でトラブルがおこった場合、代理人として、依頼人の代わりに交渉がおこなえるのは弁護士だけです。また、遺産分割協議において相続人全員が納得できない場合、弁護士が入ることで問題が解決することもあります。
法定相続人(ほうていそうぞくにん)
法定相続人とは法律で決められた被相続人の財産を相続する権利を持つ人のことをいい、法定相続人は、配偶者と血族相続人に分けることができます。被相続人が亡くなった時に配偶者が存在していれば、必ず法定相続人となります。
血族相続人(血のつながりがある相続人)には下表の通り優先順位があり、先順位の血族相続人が存在しない場合(または全員が相続放棄をした場合)でなければ、後順位の血族相続人には相続権が回ってきません。
相続順位 | 被相続人との関係 | 代襲相続 |
---|---|---|
第一順位 | 子 | あり(再代襲もあり) |
第ニ順位 | 直系尊属(最も親等の近い者) | − |
第三順位 | 兄弟姉妹 | あり(再代襲はなし) |
や行
遺言書(ゆいごんしょ/いごんしょ)
遺言書とは、本人の最終的な意思を伝える法的書類です。一般的に作成されている遺言書には、「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。本人が全文を自筆で書く「自筆証書遺言」(財産目録はパソコンで作成したもの、不動産の登記証明書、預貯金の通帳の写しを添付でも可)を法務局で保管する自筆証書遺言書保管制度が、2020年7月から始まっています。
有価証券(ゆうかしょうけん)
有価証券というと、証券取引所で売買されている株式を想像する方が多いでしょう。有価証券とは、財産的価値のある権利を表彰する証券であって、その権利の移転、行使が証券をもってなされることを要するものをいいます。
有価証券等の例:株券、国債証券、地方債証券、社債券、出資証券、投資信託の受益証券、貸付信託の受益証券、特定目的信託の受益証券、受益証券発行信託の受益証券、約束手形、為替手形、小切手、郵便為替、倉荷証券、船荷証券、社債利札、商品券、各種のプリペイドカード
<cite>引用:国税庁「有価証券の範囲」</cite>
要介護(ようかいご)
日常生活の基本的動作についても自分で行うことが困難で、何らかの介護を要する状態のことを要介護と言います。介護保険適用の介護サービスを受けるためには、要介護認定を申請し、要支援1~2、要介護1~5のいずれかの認定を受ける必要があります。
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