遺言信託とは?メリット・デメリット、サービスが必要な人・いらない人などをわかりやすく解説
「遺言書を作成しても、自分の死後、書いた遺言どおりに実行されるのだろうか。」
そんな心配があってインターネットで遺言に関するキーワードを使って検索をしたり調べたりすると「遺言信託」という言葉を目にすることが多いでしょう。
字だけを見ると、遺言を預けるしくみかしら・・・?とふんわりしたイメージはつきますが実際のところはどうなのでしょうか。
この記事では、あまり知られていない遺言信託についての大枠についてわかりやすく解説していきます。
遺言信託とは?
遺言信託とは何か?という問いには、答える人によって回答が異なる場合があります。
それは、「遺言信託」という商品名のサービスと、「遺言信託」という法律上の言葉があるからです。
以下からは前者を遺言信託(または遺言信託サービス)、後者を法律上の遺言信託として解説していきます。
遺言信託サービスとは
遺言信託サービスは銀行、信託銀行などでおこなっています。サービスの内容は各金融機関によって細かい部分で内容が違っていたりしますが、おおむね以下の項目をパッケージプランにしたものです。
- 遺言書の作成のサポート
- 遺言書の保管
- 遺言の執行
遺言信託サービスでは遺言の形式は、公正証書遺言の場合がほとんどです。
法律上の遺言信託とは
法律上の遺言信託とは信託法3条2項によるものです。
第二条 この法律において「信託」とは、次条各号に掲げる方法のいずれかにより、特定の者が一定の目的(専らその者の利益を図る目的を除く。同条において同じ。)に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべきものとすることをいう。
第二条 二 次条第二号に掲げる方法による信託 同号の遺言
簡単にいうと、「遺言による信託」、信託行為を遺言によって行うというものです。
遺言の形式は、遺言信託サービスとは違い、公正証書遺言でも自筆証書遺言でも大丈夫です。
遺言信託の例
例えばAが遺言し、自分が死んだら、所有する不動産の名義をBに移転し、Bによって賃貸に出すなどの管理をして家賃収益をあげさせ、その家賃収益をAの妻Cに生活費として渡してもらうというように、一定の目的を定めて財産を他人に移転して、その管理、処分など一定目的の達成のために必要な行為を行ってもらうことです。
遺言信託サービスと法律上の遺言信託の違い
遺言信託サービスは信託銀行などが遺言執行者となるパッケージプランのサービス名であり、法律上の遺言信託は遺言者が死んでから信託をおこなうことを定めておく方法です。どちらも名が似ていて遺言に関することであるのは共通ですが、意味は違うものであることに注意してください。
銀行の遺言信託 | 銀行が遺言執行者となるサービス名 |
---|---|
法律上の遺言信託 | 遺言で信託行為をおこなうこと |
遺言信託のメリット・デメリット
ここからは、遺言信託サービスについてわかりやすく解説していきます。
銀行が行っている遺言信託サービスを利用するメリットは、主に次の2つがあります。
- 金融のプロとして、財産の運用・管理のアドバイスをしてくれる
- 遺言書の作成から執行まで、一貫して依頼することができる
デメリットは手数料が高額であることと、原則公正証書遺言であるということです。
金融のプロとして、財産の運用・管理のアドバイスをしてくれる
金融のプロなので、財産の運用・管理については専門的なアドバイスをもらうことができるでしょう。
これまで利用してきたメインバンクが信託業務を行っている場合は、財産管理を依頼するのには抵抗がなく、安心感も高いでしょう。
遺言書の作成から執行まで、一貫して依頼することができる
遺言書の作成から執行までには、実にさまざまな手続きを踏まなければなりませんが、それらを一貫して任せることができるのは大きなメリットでしょう。
銀行は会社なので、担当者がいなくなっても代わりの人がいるでしょうし、依頼者より先に亡くなる心配もありません。
遺言信託サービスは手数料が高額
最も大きなデメリットは「手数料が高額」ということではないでしょうか。
銀行といっても、倒産する可能性はゼロではないこと、相続人がトラブルになった場合や、相続税の申告など、他の専門家でなければできないこともあります。
遺言の種類が選べない
遺言は自分の言葉なので自筆で残したいという方もいるでしょう。しかし、遺言信託サービスは確実な執行をするために公正証書遺言であることがほとんどです。
遺言の種類については「遺言書の種類・書き方・作成方法や法的効力をわかりやすく解説」で詳しく説明しています。
▼依頼するか迷っているなら、まずはどんな手続きが必要か診断してみましょう▼遺言信託が必要な人
ここからは遺言信託サービスが必要な人を紹介していきます。
資産が多く、預けている銀行に全部任せたい人
遺言執行者は、未成年者と破産者以外ならば誰でもなれます(民法1009条)。
しかし銀行や信託銀行なら、預けた遺言を紛失したり、託した人が亡くなったりする心配はなく、個人よりも安心感があります。
遺産の受取人が、障害を持っていたり高齢で資産管理が難しい場合
相続人となる人が、遺産を受け取っても自分で管理できない場合は、遺言信託サービスに資金運用や管理ができるタイプのものを選べば安心です。
▼今すぐ診断してみましょう▼遺言信託がいらない人
では、遺言は作りたいけれど、遺言信託サービスを利用しなくてもいい人はどんな人でしょうか。
資産が少ない人
金融機関で取り扱う遺言信託サービスは高額な費用がかかります。
資産が少ない場合、費用をかけて依頼するのはあまり得策とはいえないでしょう。
財産の分け方以外の遺言を作りたい人
遺言書の効力には、遺産の分け方以外に、子どもを認知する、相続人の廃除、相続人以外の人に財産を渡す遺贈などがあります。
子どもを認知する、相続人の廃除など、遺産分割以外の遺言を残したい場合は、遺言信託サービスには不向きです。
トラブルがおきそうな人
相続人が遺言書の内容に納得がいかないなどのトラブルになると、弁護士に別途依頼することになります。
法律上、トラブルに関しては銀行は対応できません。
遺言信託の解約はできる?
遺言信託サービスに申し込んだが、諸事情により解約したい場合、殆どの金融機関が対応してくれます。
しかし、解約時に手数料がかかるケースが多いので、契約時にしっかりと確認してください。
解約時の費用例:大手M1銀行、Aプランは解約手数料がかからないがBプランは220,000円。大手M2銀行は165,000円。
▼何をすればいいか迷っているなら、今すぐ調べましょう▼その他の遺言に関するサービス
遺言信託サービスのようにパッケージプランではなく、部分的にサポートをしてほしいという人もいるでしょう。
また、遺言信託がいらない人で解説した、財産の分け方以外の遺言書をつくりたい人や、比較的安価に遺言書の作成サポートから執行までを頼みたいと考えている人もいるでしょう。
その場合に依頼できるのが司法書士、行政書士といった専門家です。弁護士にも依頼できますが、おそらく司法書士、行政書士といった士業よりは費用がかかるでしょう。
資産の管理以外については銀行でなくてもできるのが遺言信託(サービス)なのです。
遺言作成サポート
遺言の内容について、事前に相談にのってくれるのは、弁護士、公証人、司法書士、行政書士も同じです。
遺言の執行
遺言は自分で作成したけれど、確実に執行をしてくれる相続人以外の人に頼んでおきたいという人もいるでしょう。
その場合は遺言執行者を専門家に依頼することができます。
遺言執行者についての詳細は「遺言執行者に行政書士を指定するメリットと費用・報酬の相場」を参照してください。
▼あなたに必要な相続手続き、ポチポチ選択するだけで診断できます!▼まとめ
遺言信託サービスを金融機関に依頼する最大のメリットは銀行という安心感と資産の積極的活用のアドバイスを受けることができるという点です。
是非、自分に合った遺言の作成を検討してください。
「いい相続」では、相続に強い専門家をご紹介していますので、遺言について検討されている方はお気軽にお問い合わせください。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きや遺言書の作成を依頼した方のインタビューはこちら
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