パソコンで作成、代筆もできる!秘密証書遺言の作り方
遺言書は、亡くなった人の意思を示す大切なものです。適当に紙に書いて残しても効力はなく、正式な手順や内容で作成し保存することで有効になります。ご自分の思いに沿った財産の残し方を実現するため、そしてご遺族が争わないため、遺言書を正式な方法で作成しておくことはとても重要なことです。
一般的に用いられている遺言書の形式は公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言の3つがあり、作成方法や保存方法が違います。ここではそのうち「秘密証書遺言」について、作成方法やその特徴、メリット・デメリットをお伝えします。
- 秘密証書遺言はパソコンで作成も可能、自筆証書遺言より作成の負担は軽い
- 公証役場では遺言書の内容までは確認してはもらえないが、遺言の存在を証明してくれる
- 保管は遺言者自身がおこなうため、紛失などのリスクはある
目次
秘密証書遺言とは
秘密証書遺言とは、公証人と証人に遺言の存在を明らかにしてもらう遺言のことです。
遺言者が遺言を作成し、封をした状態で手続きを進めていきますので、公証人や証人に内容を知られることはありません。
秘密証書遺言の特徴
メリット | デメリット・注意点 |
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秘密証書遺言の作成方法
秘密証書遺言では、署名と押印以外の内容は、手書き・パソコン・代筆のどの方法で記載してもかまいません。
署名、押印や封印は遺言者本人が必ずおこなわなくてはいけませんが、財産目録以外すべて自筆で書かなくてはいけない自筆証書遺言と比較すると、作成の負担は少ないといえます。
(秘密証書遺言)
第970条 秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならない。
- 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
- 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
- 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
- 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
1.遺言書を作成する
書く内容を決める
遺言書を書く前に、家族関係(法定相続人)や財産について整理します。
ご家族の情報や財産の内容を整理したら、次に財産を誰にどのくらい譲るかを決めます。このときに気をつけたいのは遺留分です。
遺留分とは、法定相続人(兄弟姉妹を除く)が相続できる最低限度の相続分です。民法によって定められており、遺留分が侵害された場合、相続人には侵害額に相当する金銭を請求する権利(遺留分侵害額請求権)が認められています。
遺言書を書き、封をする
自筆証書遺言と異なり、秘密証書遺言は署名以外は作成方法が定められていません。そのため、パソコンで作成したり、代筆を依頼することも可能です。
内容を作成したら、遺言者が署名、押印します。
完成した遺言書を封筒に入れて封をし、遺言書に押印したものと同じ印鑑で封印をします。
2.公証人と証人に遺言書を封書を提出し、署名、押印してもらう
遺言書を作成し封をしたら、遺言者は公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨、並びにその筆者の氏名、住所を申述します。
公証人は、その証書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人とともにこれに署名し、印を押します。
完成した秘密証書遺言は遺言者が持ち帰って保管します。公証役場には封紙の写しが保管され、遺言書を作成したという記録が残ります。
なお、1989年1月1日以降に作成された秘密証書遺言は、全国の公証役場で検索できます。ただし、確認できるのは秘密証書遺言の作成のみで、遺言書の内容はわかりません。
また、年齢や遺言者との関係によっては、遺言の証人にはなれない人もいます。もし遺言者自身で証人を見つけられない場合は、公証役場で紹介(有料)してもらえることもありますので、公証役場に確認してみましょう。
(証人及び立会人の欠格事由)
第974条 次に掲げる者は、遺言の証人又は立会人となることができない。
- 未成年者
- 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
- 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人
3.遺言書を保管する
完成した秘密証書遺言は遺言者が持ち帰って保管します。紛失しないように気をつけるとともに、亡くなった後に確実に発見してもらえる場所に保管しておきましょう。
秘密証書遺言にかかる費用
秘密証書遺言作成時の費用として、公証役場に支払う手数料が一律11,000円かかります。
秘密証書遺言の訂正・変更方法
作成した秘密証書遺言の内容を変更する場合、自筆証書遺言と同様、民法に定められた方法でおこないます。遺言者が変更箇所を示し、これを変更した旨を付記、署名。さらに変更の場所に押印します。
秘密証書遺言のメリット・デメリット
秘密証書遺言のメリット
秘密証書遺言のメリットとしては次のようなものが挙げられます。
パソコンでの作成や代筆が可能
秘密証書遺言は自筆証書遺言と違ってパソコンなどでの作成、代筆が可能です。ただし、自筆での署名、押印は必要です。
遺言の存在を明らかにしつつ、内容は秘密にできる
秘密証書遺言を作成すると、公証役場に遺言書を作成したという記録が残るので、内容を知られることなく、亡くなった後に遺言の存在を見つけてもらいやすくなります。
偽造や改ざんのリスクが少ない
自筆証書遺言の場合は、遺言者本人によって書かれたものかどうかが争いになることがあります。秘密証書遺言は封がされていると同時に、遺言者本人が作成したものであるとの確認が遺言者・公証人・証人によっておこなわれているので、このような争いがおこるリスクは少なくなります。
秘密証書遺言のデメリット・注意点
一方、デメリットとしては次のようなことがあります。
無効になるリスクがある
秘密証書遺言において、公証人や証人が証明するのは遺言の存在のみで、遺言書の記載内容ではありません。遺言書は遺言者自身だけで作成ができてしまうため、形式が違っていたり内容に不備があることに気づかず、遺言自体が無効になってしまうリスクがあります。
秘密証書遺言としての要件に欠けている場合でも、その遺言が自筆で書かれており、自筆証書遺言の要件を満たしていれば、その遺言は自筆証書遺言として認められます。全文を自筆で書ける人は、自筆証書遺言と同じように全文を自筆で書いておけば、不備があった場合にも遺言自体が無効になるリスクを減らせます。
作成手続きがやや面倒
遺言書の作成は遺言者のみで作業できますが、その後証人の手配や公証役場での手続きがありますので、自筆証書遺言に比べると手間がかかります。
紛失・発見してもらえない可能性がある
秘密証書遺言は、公証役場でその存在を確認し作成したという記録が残りますが、遺言書の保管はご自身でおこなわなくてはいけません。紛失したり発見してもらえない可能性もあり、公正証書遺言ほどの確実性はありません。
隠匿される可能性がある
上記同様、遺言書の保管は遺言者がおこなっているため、利害関係人に隠匿される可能性もあります。
秘密証書遺言が見つかった場合、検認が必要
秘密証書遺言が見つかったら、速やかに家庭裁判所に提出し、検認の申立てをします。
検認とは、相続人に遺言の存在とその内容を知らせるとともに、内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立ち会いの上開封しなければいけません。検認する前に開封してしまった場合は、5万円以下の過料が科されます。
秘密証書遺言はどんな人におすすめか
秘密証書遺言は、自筆証書遺言に比べると手続きに手間や費用がかかる一方で、公正証書遺言に比べると無効や紛失のリスクがあり遺言としての確実性が低いといえます。そのためか、ほかの2つの遺言書に比べて利用件数が少ないのが現状です。
さらに、2020年7月からは自筆証書遺言の保管制度がスタートし、自筆証書遺言の法務局での保管が可能になりました。法務局で保管した自筆証書遺言については、相続発生後の検認手続きも不要です。自筆証書遺言のメリットが高まったことから、今後ますます秘密証書遺言の利用が少なくなりそうです。
秘密証書遺言以外のはどんな遺言がある?一般的な遺言の3つの形式
一般的に用いられている主な遺言書の形式は、次の3種類です。
- 公正証書遺言
- 自筆証書遺言
- 秘密証書遺言
公正証書遺言は、遺言者が公証役場に出向いて公証人の面前で作成する遺言書。作成した遺言書は原本が公証役場に半永久的に保存されるため、改ざんや紛失のリスクがないことが利点です。
自筆証書遺言は遺言者が自ら作成して自ら保管をするか、2020年より始まった保管制度を利用して法務局に預けることも可能です。
まとめ
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしながら遺言の存在を証明してもらうことができる遺言です。手続きに手間や費用がかかる一方で、無効になったり紛失したりするリスクがあります。
一方で、署名以外の内容をパソコンや代筆で作成が可能ですので、作成しやすい遺言書といえます。遺言の内容について専門家へ相談して作成することで、無効となるリスクも回避できるのではないでしょうか。
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▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きや遺言書の作成を依頼した方のインタビューはこちら
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