特別縁故者とは?なれる要件や財産分与請求の手続き、注意点について詳しく解説
人が亡くなったとき、遺産はあっても相続人がいないことがあります。そうなると、遺産は国のものとなってしまいます。
しかし「国のものになるくらいなら、故人と関係があった自分が遺産をもらえないだろうか?」と思う人もいるでしょう。
故人の身の回りのお世話をしていたり、家族のような特別な関係であれば「特別縁故者」として、遺産を相続できる可能性があります。
とはいえ、特別縁故者として認められるためには要件があり、手続きも必要です。
今回は、特別縁故者になれる人や財産分与請求の手続きなど、知っておきたいポイントを解説します。
この記事はこんな方におすすめ:
「特別縁故者の申立を希望している人」
この記事のポイント:
- 特別縁故者になるには、家庭裁判所から認められる必要がある
- 特別縁故者になれても、配偶者の税額控除などの控除が受けられない
- 特別縁故者として認められ、財産を受け取るまでに少なくとも1年以上はかかる
目次
特別縁故者とは?
特別縁故者とは、相続人がいない場合に、被相続人(故人)と特別な関係にあった人が遺産の一部もしくは全部を受け取ることができる制度です。
「特別な関係にあった人」とは、被相続人の身の回りの世話をした人や生計を共にしていた人などです。これにより、被相続人と血縁関係がない内縁の妻・夫などでも遺産を受け取ることができるようになります。
なお、相続人も特別縁故者おらず遺言書もなければ、前述のとおり遺産は国に帰属することになります。
▼何をすればいいか迷っているなら、今すぐ調べましょう▼特別縁故者の要件
特別縁故者になれる人は決まっており、誰でもなれるわけではありません。
以下の要件にあてはまり、かつ家庭裁判所から認められれば遺産を受け取ることができます。
被相続人と生計を同じくしていた者
これは、日常の生活費を一緒にしていたということです。なお、夫の単身赴任や息子の留学など離れて暮らしていても問題なく、同居か別居かは問いません。
具体的には、以下の人物が挙げられます。
- 内縁の妻・夫
- 内縁の妻・夫の子(認知していない場合)
- 配偶者の連れ子(養子縁組していない場合)
長年一緒に暮らしていた内縁の夫が亡くなった。彼は天涯孤独と聞いており、亡くなっても親戚は現れなかった。入籍していないので、自身に相続権はない。
幼少期に母が再婚し、新しい父ができた。新しい父は自分のことを実の子どものようにかわいがってくれ、生活費や学費を出してくれた。しかし、養子縁組の手続きをしていなかったため、父が亡くなっても相続権がなかった。
被相続人の療養看護に努めた者
被相続人の身の回りの世話をし、介護や看護をしていた人も特別縁故者にあてはまります。ただし、家政婦やヘルパーなどお金をもらって看病や世話をしていた場合には認められません。
近所のおじいさんとは長年お互いを助け合ってきた。おじいさんは身寄りがなく、通院の付き添いや食事の面倒も見てあげた。そんなおじいさんがなくなったが、親族だという人は現れない。
夫と結婚し、て義両親は私のことを娘のようにかわいがってくれていた。夫が事故で亡くなってもずっと関係が続いたが、義父も亡くなった。足の悪くなった義母と同居し、身の回りの世話もした。
被相続人と特別の縁故があった者
上記で挙げた2つの他に、これらと同等程度に親密な関係があった者と家庭裁判所から判断されれば、特別縁故者として認められる可能性があります。
ケースとしては、被相続人の長年の弟子であったり、長年の親友などが特別縁故者になることがあります。
故人の義理の弟で、故人を母のように慕い、故人の活動のサポートをするなど信頼を得ていた。故人の喪主を努め、遺稿の整理も行った。
特別縁故者として、財産を受け取るまでの流れ
特別縁故者と認められ、実際に遺産を受け取るまでにはいくつかのステップがあり、少なくとも1年以上はかかると言われています。
具体的には、以下のような流れになります。
- 相続財産管理人の選任
- 債権者・受遺者へ申出の公告
- 相続財産の精算・債務の弁済
- 相続人の捜索
- 特別縁故者の申立・相続財産分与請求
- 特別縁故者の認定
相続財産管理人の選任
特別縁故者になるには相続人がいないことが前提です。そのため、「相続人がいない」ことを確定させなければいけません。
それには、相続財産管理人を選定する必要があります。相続財産管理人は家庭裁判所で選定され、多くの場合は地域の弁護士が選ばれるようです。
相続財産管理人が選任されると、官報で公告されます。
債権者・受遺者へ申出の公告
相続財産管理人の公告から2か月が経つと、相続財産管理人から債権者や受遺者に対し、自らを申し出るように官報に公告します。
なお、既に判明している債権者・受遺者がいる場合には、個別に申し出るように伝えます。この公告の期間は2か月以上です。
相続財産の精算・債務の弁済
公告期間が終了し、債権者・受遺者から申し出があった場合は、相続財産管理人が相続財産の精算を行います。
債権者への弁済を行い、受遺者には指定の財産を渡します。ここで相続財産が無くなってしまったら、手続きは終了します。
相続人の捜索
債権者・受遺者への公告から2か月が経過すると、相続財産管理人または検察官の請求をし、家庭裁判所が相続人捜索の公告を行います。
申立を受けると、家庭裁判所は6か月以上の期限を設けて、法律上の相続人が本当にいないのかを捜索します。
広告期間が終了し、それでも見つからない場合は、相続人不存在が確定します。
特別縁故者の申立・相続財産分与請求
相続人不存在が確定したところで、家庭裁判所に申立を行います。必要な書類はそこまで多くなく、基本的に申立書と特別縁故者本人の住民票があれば申立できます。
ただし、申立ができる期間が決まっており、それを過ぎると申立できなくなるので注意しましょう。
申立人
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
申立先
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
申立期間
相続人の不在が確定してから3か月以内
申立費用
- 収入印紙代 800円
- 家庭裁判所から書類を送付するときに必要な切手(その裁判所に確認)
必要書類
- 申立書 1通
- 申立人の戸籍謄本 1通
- 被相続人の戸籍(除籍)謄本 1通
特別縁故者の認定
特別縁故者の相続財産分与請求が認定されると、特別縁故者が相続する権利が発生し、財産を受け取れるようになります。
認定されなかった場合は相続人不在として、被相続人の遺産は国庫へ帰属されることになります。
▼忘れている相続手続きはありませんか?▼特別縁故者が相続財産を受け取ると、相続税の2割加算の対象となる
特別縁故者が財産分与を受けた場合、相続税の基礎控除(3,000万円)を超えると相続税が発生します。また、その際には相続税額の2割が加算されます。
取得した遺産が不動産や土地であっても、相続税は現金で納めなければならないので注意しましょう。
特別縁故者が受けられない控除
通常の相続では、相続人はさまざまな控除を受けることができますが、特別縁故者は控除を受けられないことも。特別縁故者が適用されない控除は以下のとおりです。
基礎控除での法定相続人1人あたりの控除
一般的な相続税の基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。しかし、特別縁故者は法定相続人ではないため「600万円×法定相続人の数」の金額は控除されません。
3,000万円については控除されます。
配偶者の税額控除
配偶者の税額控除とは、配偶者が取得した遺産額が1億6,000万円までなら相続税が課税されない制度です。これにより、配偶者は相続税を払う必要がないことがほとんどでしょう。
しかし特別縁故者が内縁の妻・夫だとしても、戸籍上の婚姻関係がないため、配偶者の税額控除は適用されません。
相次相続控除
相次相続控除とは、10年間に相次いで相続が発生した場合に、前回に課税された相続税の一部分を今回の相続税から控除される制度です。
しかし特別縁故者には相次相続控除は適用されません。
障害者控除
相続人に障害者がいた場合は、障害者控除により相続税を減らすことができますが、特別縁故者が障害者であっても障害者控除は適用されません。
▼まずはお電話で相続の相談をしてみませんか?▼特別縁故者の申立をするときの注意
相続財産管理人が選任されると、相続人の捜索が行われます。しかし、このとき行方不明の相続人がいると相続人不存在にはなりません。したがって特別縁故者の財産分与請求も認められません。
行方不明の相続人がいる場合には、失踪宣告を得るか不在者財産管理人の選任を行うことになります。
裁判所からの失踪宣告を得ることができれば、行方不明の相続人は死亡と同じ扱いとなり、特別縁故者になることができます。
▼めんどうな相続手続きは専門家に依頼しましょう▼
まとめ
今回は、特別縁故者の要件や申立について解説しました。
特別縁故者として財産分与が認められるには、かなりの時間と労力がかかります。また、いろいろな手続きが必要になるので、不慣れな方は専門家に相談することをおすすめします。
いい相続では、全国の相続の専門家をご紹介しています。ぜひ、お問い合わせください。
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