10月にお葬式をした人が、1月までにやるべき相続の14の手続き
大切な方が亡くなり、葬儀やお別れのセレモニーが済んでも、気持ちの整理には時間がかかります。そんな中でも相続手続きの期限は容赦なくやってきます。この記事では、相続開始をした方が、3ヵ月以内にするべき手続きについて説明します。忘れていることがないか、これからどんな手続きいつまでに必要なのかを確認してみましょう。
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- 11月までに済んでいなくてはいけないことは8つ
- 1月中にやるべきことは6つ
- 2月以降にやるべきことは4つ
目次
相続人がおこなう手続きと流れ
身近な方が亡くなるとしなくてはならないことがたくさんあります。葬式や、法要の手配などはおこなっても、資産家でない自分には相続なんて関係ないから……と、相続に関係した手続きがなおざりになってはいないでしょうか? 相続開始日から相続人がおこなう一般的な手続きの全体スケジュールを確認してみましょう。
相続開始日からの期限(目安) | 一般的な手続き | 手続き場所 |
---|---|---|
7日以内 | ①死亡診断書の受け取り | 病院など |
②死亡届と火葬許可申請書の提出 | 役所 | |
14日以内 | ➂健康保険・後期高齢者医療制度・介護保険の資格喪失の手続き | 役所/健康保険組合など |
④世帯主変更届の提出 | 役所 | |
⑤年金受給停止の手続き | 年金事務所など | |
⑥公共料金や各種サービス等の名義変更・解約などの手続き | 各会社 | |
⑦金融機関への連絡、手続き | 各金融機関 | |
⑧ご遺族の健康保険・年金の手続き | 役所/健康保険組合/年金事務所など | |
3ヵ月以内 | ⑨遺言書の有無の確認、検認 | 自宅/法務局/公証役場など |
➉相続人の調査、戸籍収集 | 役所 | |
⑪相続財産の調査 | 自宅/金融機関など | |
⑫遺産分割協議開始 | – | |
⑬相続放棄・限定承認の申述 | 家庭裁判所 | |
⑭生命保険の受け取りの手続き | 各保険会社 | |
4ヵ月以内 | ⑮被相続人の所得税の準確定申告 | 税務署 |
10ヵ月以内 | ⑯遺産分割協議書の作成 | – |
⑰遺品整理 | 自宅など | |
⑱預貯金・有価証券・不動産等各種名義変更手続き | 金融機関/法務局など | |
⑲相続税の申告 | 税務署 | |
1年以内 | ⑳遺族年金請求書の提出 | 年金事務所など |
㉑未支給年金請求書の提出 | 年金事務所など | |
㉒高額医療費の請求申請 | 役所/健康保険組合など | |
㉓葬祭費、埋葬料の支給請求 | 役所/健康保険組合など |
故人の遺産の種類や、相続人の事情によって必要な手続きは変わります。このスケジュールに記載があってもしなくて良いことや、追加で必要となる手続きがありますので注意してください。また、1年以上経っても相続に関係することはつづきます。たとえば、他の相続人の遺留分を侵害している場合、相続開始から10年間、遺留分侵害額を請求される可能性があります。このように長い期間に渡って様々なことがありますので、念頭に置いておきましょう。
11月までに済ませたこと(14日以内におこなう手続き)
10月に大切な方が亡くなった方は、11月中には以下の手続きが済んでいると思います。人によって不要なこともありますが、念のため確認してみてください。
✔健康保険・後期高齢者医療制度・介護保険等の資格喪失の手続き【手続きしていないとどうなる?】
保険料を払いつづける可能性があります。
✔世帯主変更届の提出
【手続きしていないとどうなる?】
正当な理由なく提出をしなかった場合、5万円以下の過料に処せられる場合があります。
✔年金受給停止の手続き
【手続きしていないとどうなる?】
年金の支払いが続いてしまった場合は、過払い金として、遺族に返金の請求がされる場合があります。
✔(ご遺族の)健康保険・年金の手続き
【手続きしていないとどうなる?】
健康保険:医療機関での支払いは全て実費となります。
遺族年金:5年内に手続きしないと、年金を受ける権利(基本権)が消滅します。
✔公共料金や各種サービス等の名義変更・解約などの手続き
【手続きしていないとどうなる?】
不要な出費が続いてしまいます。
✔金融機関への連絡、手続き
【手続きしていないとどうなる?】
預金を引き出したことで相続を単純承認したとみなされ、あとからマイナスの財産(借金)などが分かって相続放棄できない状況になる可能性があります。
翌年の1月までにやることは6つ(3ヵ月以内におこなう手続き)
10月に大切な方が亡くなった方は、翌年1月までに以下のことをおこないます。人によって不要なこともありますが、相続に関して重要なことが多いので確認してみてください。
1 遺言書の有無の確認
遺言書があると、遺産分割に大きく影響します。故人から遺言書の存在を知らされていない場合でも、入念に探しましょう。保管場所は自宅だけでなく、遺言書保管制度を利用していれば法務局、公証役場で公正証書遺言として保管されている場合もあります。
自宅で遺言書の封書を見つけた場合は、開封しないよう注意してください。検認という家庭裁判所での手続きが必要になります。
遺言書の有無の確認をしないとどうなる?
遺産分割が済んでいた場合、再分割の協議が必要になる場合もあります。
2 相続人の調査、戸籍収集
故人の戸籍を確認し、正確な相続関係を把握した上で遺産分割協議をおこないます。
相続人の調査、戸籍収集をしないとどうなる?
相続人が他にもいることがあとから分かった場合、遺産分割協議がやり直しになることがあります。
3 相続財産の調査
預貯金などのプラスの財産以外にも、ローンや借金などもマイナスの財産として相続します。金銭的価値があるものについて慎重に調べていきます。不動産や有価証券は評価額の算出が難しく、書画骨董などは専門家の鑑定が必要な場合もあります。
相続財産の調査をしないとどうなる?
相続財産の正確な金額が分からないまま遺産分割され、後日相続人間でトラブルになることがあります。また、金額があやふやなまま相続税を支払うことで、税務署から職員が確認に来る税務調査がおこなわれたりすることもあります。
4 遺産分割協議開始
遺言書がある場合には、被相続人が作成した遺言書に従っておこなわれるのが一般的ですが、相続人が複数いるけれど遺言書がないという場合や、遺言書があっても内容に納得できない場合、相続人全員が参加する遺産分割協議によって誰が何を相続するかを具体的に決めます。
遺産分割協議をしないとどうなる?
遺産分割ができていないと、相続税の配偶者控除や小規模宅地等の特例が適用できないという事態につながります。
5 相続放棄・限定承認の申述
相続財産の全容を把握したら、相続するか放棄するかを決めます。相続開始を知ってから3ヵ月以内(熟慮期間)に、単純承認、限定承認、相続放棄の3つのうち、どの相続方法を選択するか決める必要があります。限定承認と相続放棄を選ぶ場合は、家庭裁判所で手続きが必要です。
相続放棄・限定承認の申述をしないとどうなる?
熟慮期間に、限定承認と相続放棄いずれかを選び、家庭裁判所で手続きしなかった場合はマイナスの財産も含めて全財産を相続をすることになります。後から気が変わったとしても認められません。
6 生命保険の受け取りの手続き
故人が生命保険に加入していた場合、受取人は生命保険会社に連絡をして保険金受け取りの手続きをします。保険金を受け取ることができるのは契約者があらかじめ指定した死亡保険金受取人です。この場合には死亡保険金は相続財産に含まれません。
生命保険金は相続財産には含まれませんが、契約形態によってはみなし相続財産として相続税の課税対象になることがあります。
生命保険の受け取りの手続きをしないとどうなる?
保険金請求権の時効は「3年」(かんぽ生命の簡易保険の場合の時効は「5年」)となっていますので、これを経過すると保険金請求権は消滅します。
翌年の2月までにやること(4ヵ月以内におこなう手続き)
被相続人の所得税の準確定申告
確定申告が必要な人が亡くなった場合、相続人は故人の代わりに死後4ヵ月以内に税務署で所得税の申告をおこなわなければなりません。
被相続人の所得税の準確定申告をしないとどうなる?
ペナルティとして「無申告加算税」が課されます。支払いが遅れる程、課税率が高くなっていきます。
翌年の7月までにやること(10ヵ月以内におこなう手続き)
必ずしなければいけないこと
- 預貯金・有価証券・不動産等各種名義変更手続き
- 相続税の申告
やっておいた方がよいもの、必要になったらすること
- 遺産分割協議書の作成
- 遺品整理
1月の相続手続き 耳より情報
1月1日時点での不動産所有者が固定資産税の納税者になります。固定資産税は、固定資産が所在する市町村(東京都23区内の場合は東京都)に納税する地方税です。
1月1日時点での不動産所有者とは以下のような人を言います。- 土地の所有者・・・原則、登記簿や土地補充課税台帳に所有者として登録されている者
- 家屋の所有者・・・原則、登記簿や家屋補充課税台帳に所有者として登録されている者
もし、不動産を相続したものの1月1日(賦課期日)までに相続登記等が完了していない場合は法定相続人が連帯して納税義務を負います。相続登記等が済んでいなくても、相続する人が決まっているのであれば、固定資産が所在する市町村(東京都23区内の場合は東京都)に相続人代表者指定届を提出して納税通知書の送付先を土地を相続する人に指定することができます。
なお、固定資産税の算出基準になる固定資産税評価額は3年に1回「評価替え」を行います。その評価替えの基準日は1月1日で、本記事執筆時点の直近では令和3年度におこなわれました。
まとめ
葬式が済んでから数ヵ月が過ぎても、まだまだすることはたくさんあります。とくに、この期間は、相続するかしないかを決める大切な時期です。相続人を調べたり、役所に行くことも多いでしょう。自分ですべてをおこなえば、確かに費用は安くすみますが、時間の制約がある中、心身の負担によって手続きがおざなりになってしまったら元も子もなくなります。スムーズに相続手続きをおこなうために信頼できる専門家にサポートしてもらうのも一つの方法です。申請もれなども防ぐことができ、気持ちもぐっと軽くなります。一度「いい相続」へ相談してみませんか?
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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