相続体験談【争族・トラブル編】遺産目当ての母の兄妹
相続は「争族」と言われるほど、財産をめぐってもめ事が起こりがちです。
この記事では、いい相続のスタッフが経験した相続トラブルの実話をお伝えします。
相続について「備えあれば憂いなし」と準備するか、はたまた「後は野となれ山となれ」ととらえるか。体験談を通じて、是非、ご自身の相続について考えるきっかけにしてください。
※財産にかかわる話なので実名は伏せています。この記事を書いた人
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
母の余命宣告
「母がもう長くないと考えると、仕事へ集中できなくなった。このままでは、どっちつかずになってしまう。」悩んだ結果、仕事を辞め実家の福岡にもどった。
山本(仮名:30代男性独身)は福岡県出身、二人兄弟の長男である。二人とも実家を離れ東京で自分の生活を持っている。定期的に連絡をとりあう程仲が良い。父は数年前に他界し、配偶者である母は住んでいる家と、父の実家があった土地を相続した。
山本にとって相続は2回目なので経験者と言える。相続に対するノウハウは多少はあったはずだ。そんな彼にいったい何がおきたのだろうか。
トラブルの始まりは伯父叔母の強引な言い分
トラブルが始まったのは実家に戻ってからだった。
母の兄と妹、つまり伯父と叔母がこんなことをいってきたのだ。
「土地を売るって?おまえたちで勝手に決めるのはおかしいだろう」
山本の母は、父が亡くなったとき、住んでいる家以外にも土地を相続していた。 その土地は元々父の実家があった場所で今は更地になっている。アパートが建てられるくらいの広さがあり、駅から徒歩圏内と利便性も高い。
母が亡くなったら、この土地を売り、そのお金は父方の祖母にあげることで山本と弟の間で話がついていた。
ここで一つ疑問が浮かぶかもしれない。何故、山本兄弟はそんなにも無欲なのか。
「母は働いていたので、祖母と一緒にいる時間が多かったんです。祖母は厳しい人で、僕たちが何かを欲しがっても簡単には買ってくれない。でも誕生日とか節目のときにはプレゼントとして用意しておいてくれるんです。ちゃんと覚えていてくれたんだって本当に嬉しかった。僕たちはおばあちゃん子だったんですよ(笑)」
厳しいながらも暖かい、そんな祖母が大好きだったのだ。その祖母は今は老人ホームに入っている。山本兄弟は費用の足しにしてほしいと考えていたのだ。
どうやら、それが伯父と叔母の耳に入ったらしい。
▼何をすればいいか迷っているなら、今すぐ調べましょう▼伯父叔母の奇行
ショックだった。必死で病と戦っている母の実の兄妹が、今、それを言うのか、と。
伯父と叔母の主張はこうだ。
「おまえが帰ってくるまでおれたちで面倒をみていた」
確かに、病院に付き添ったり、様子を見にきてくれていたとは聞いている。しかし、自分の生活を犠牲にしてまで世話をしてくれていたということはないし、そもそも膵臓がんと診断されたのは1年前だ。
こちらが首を縦に振らないことに業を煮やしてか「入院費用を立て替えた」とも言いだした。
どうやら、母が相続した土地にアパートを建てて家賃収入を目論んでいるらしい。その説得とマインドコントロールのために、伯父叔母の常軌を逸した行動が始まる。
夜中でもおかまいなしに毎日電話をかけてくるのだ。
母の病状の悪化と伯父叔母の電話攻勢によって、山本は精神的に追い詰められていく。
次第に「相続放棄したら平穏な日々が取り戻せるだろうか」と考えるようになっていった。
親の遺産は第1順位の子どもが相続放棄すれば、相続権は第2順位の親の親へ移る。第2順位がいなければ第3順位の兄妹に移る・・・。
被相続人の生前に相続放棄はできません。相続が発生してから3ヵ月以内に手続きします。生前に紛争を避けるために用いる対策の一つとして遺留分の放棄がありますが、この方法は遺留分(最低限の相続分の権利)を放棄する手続きであり相続権そのものは残ります。違う性質のため混同しないようにしましょう。
そんな中、気晴らしに地元の友人と会った。家族の問題など言うつもりはなかったが気の置けない仲間につい愚痴をこぼしてしまう。
「俺が手伝おうか?」
予想だにしない一言だった。この友人は弁護士になっていたのである。
さあ反撃開始!
弁護士という心強い味方を得て、山本は急速に気力を取り戻していった、と言う。
弁護士が介入したことでいったいどのような変化があったのだろうか。
連絡は弁護士を通すことでメンタルが回復
山本と伯父叔母とのやり取りは全て弁護士の友人を介すことになった。
当初「親戚が話すのに弁護士を立てるなんて」と怒っていたが歯を食いしばってがまんし聞き流し続けた。そしてついに電話攻勢は止んだ。
遺言書の作成でリスク管理
遺言書を作ることにした。母に遺産分割についての確固たる意思表示を残してもらうのが目的だ。
法律上の遺産相続の順序では、被相続人に子どもがいる場合、兄弟姉妹は相続人にはならない。つまり、山本のケースは、兄弟だけが相続人となる。また、お互いが法定相続分の1/2ずつ分けることを納得しているのなら、遺言書は必要ないと考えるのが普通だろう。
しかし、この伯父と叔母のこと、アドバイスと称し今後口を挟んでくる可能性は充分に考えられる。そこで弁護士が考えた作戦は、リスク対策として遺言書を作っておくということだった。
ただ、遺言書を書いてもらうためには病床の母にも何が起こっているのかを話さないわけにはいかない。体調を心配して隠し通してきたのだが仕方なかった。
これら全てを弁護士の友人が仕切ってくれたのだ。
持つべきものは弁護士の友人⁉
2021年8月、山本の母は他界した。
ごく少数の身近な人だけが集まり家族葬で見送った。伯父叔母は参列していない。今のところ彼らは何も言ってきてはいないそうだ。
相続放棄しなくて済んだのは弁護士である友人のおかげだと山本は言う。もちろん通常通りの報酬を払う予定だ。「知り合い価格で値引き?ありえないですね。上乗せして払いたいくらい感謝してますから(笑)」
「祖母には快適な老人ホーム暮らしをしてほしい、なんだったら、老人ホームをアップグレードするのもいいんじゃないかな。
▶相続体験談【手続き編】戸籍の沼に溺れかかる。救ってくれたのは・・・
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
この記事を書いた人
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。