相続体験談【手続き編】戸籍の沼に溺れかかる。救ってくれたのは・・・
この記事では、いい相続のスタッフが経験した相続手続きの実話をお伝えします。
前回の話では、母の兄妹が財産欲しさに騒動を起し、弁護士に相談したことで問題を解決できましたが、今回はその続きです。
▶前回の話 相続体験談【争族編】遺産目当ての母の兄妹
もう、心穏やかに過ごせると思ってたのに・・・。
※財産にかかわる話なので実名は伏せています。
この記事を書いた人
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
相続手続き開始
山本は、母を無事見送ることができて安堵した。しかし、相続手続きは期限が決められているものが多いのでゆっくりはしていられない。思わぬトラブルに巻き込まれた苦い経験もあるので、早々に終わらせようと思った。
今のご時世インターネットでほとんどの手続きはできるだろうし、分からないことだってすぐに調べられると思っていた。
山本はIT関連の仕事をしているので一般の人よりは心得があるからこそ、手続きは割と簡単に片が付くものだと思っていたのだ。
相続手続きの方法を色々と検索した結果、遺言の検認の次は財産を確認しなくてはならない、とある。
遺言については友人の弁護士がすべて手配してくれたから、自分は財産の確認をしながら遺品整理を進めることにした。
金融資産の調査は難なくクリア
財産と言えば誰もが真っ先に思い浮かぶのは金融資産だろう。一般的に相続財産の調査では、遺品の中から現金や通帳を探すことから始まる。山本の場合は財産を巡ったトラブルがあったので、そのときにまとめてある。探すまでもなく母名義の6つの通帳はすでに手元にあった。
銀行口座の解約
母名義の銀行口座は凍結しているため、凍結口座の解約方法をインターネットで調べてみると「遺言書、検認の証明書、受け取る人の印鑑証明書、口座名義人の戸籍謄本を用意する」と書いてあった。他の金融機関のホームページも見てみるが同じようなことが記載されていた。
戸籍謄本なら区役所に行けば取れる。ラッキーなことに福岡市の区役所は山本の実家からさほど遠くない。よかった簡単に済みそうだ。
戸籍謄本がたりない?
早速福岡市の区役所に行き、6通を入手した。1通450円。6通だと2,700円。銀行のホームページではコピーも使用可能との記載はなかったから6行分を取っておけば間違いないだろう。
その足で銀行に向かう。本人確認書類も持っているし、一気に片付けてしまいたい。
「故人の生まれてから亡くなるまでの戸籍が必要なので、これだけでは解約の手続きはできません」
窓口の行員がさらりと言う。あっけなく出端をくじかれてしまった。
銀行の説明によると、必要な手続書類は遺言内容により異なるとのことで、山本の母の遺言書の内容の場合は、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書、相続人全員の戸籍謄本、そして母の戸籍は出生から死亡までの全ての戸籍謄本が必要になるというのだ。
戸籍謄本には全てが書かれていない⁉
戸籍謄本にはその人の今までの住所などの履歴が全て書いてあるわけではない。
入手した戸籍をよく見ると、「本籍 福岡県福岡市」その下に「戸籍事項:改製日 昭和〇年〇月〇日、従前戸籍:▲▲県▲▲市・・・」
おや?と思った。「従前戸籍:▲▲県▲▲市・・・」は母の実家のある都道府県ではない。
「改製」や「転籍」などと記載があるとその戸籍の前に戸籍があったということを示している。婚姻で新戸籍ができたとは容易に検討がつくが、その前の住所が母の実家ではないとは、いったいどういうことなのだろう。
黙りこくってしまった山本に行員は気まずそうに言う。
「おそらく、ですが、ご結婚される前に就職など他県などに行かれるなどのご事情があって、実家を離れられるときに戸籍を分けられたのではないでしょうか。」
そういえば、母は結婚前に一人暮らしで転々としていた・・・と聞いたことがある。
集めるだけでしょ、と言う勿れ
図らずも、出直すことになってしまった。
気を取り直して「従前戸籍」に記載されている住所の自治体のホームページを検索してみる。すると郵送でも戸籍謄本を取り寄せることができるのが分かった。請求用紙はダウンロードしたものを印刷して記入すればいいらしい。この自治体は遠いので、これは助かる。
ダウンロードしてみると請求用紙の雛形がこの前書いたものと少し違う。戸籍謄本を取るという目的は同じであっても、申請様式は自治体によって異なるのか。
返信用の封筒も用意する必要がある。
手元に届くのは1週間から10日ほどかかるとの注意書きも──。
見当違いだったかもしれない、戸籍謄本を集めるのは案外大変な作業なんじゃないか?
母が結婚前に転居を繰り返していたということは、この▲▲県▲▲市の戸籍謄本を取ったところで、また違う自治体の戸籍謄本を取る必要が出るかもしれない。銀行が要求するのは生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍、それを6行分。
実は、母名義の通帳に記載されている預金残高は全部合わせても数万円だった。その数万円のために、いったいどれくらいの時間と労力がかかるだろう。遺品整理はまだ済んでないうえ、もうすぐ仕事も再開するので戸籍謄本を集めるのにそこまで時間はかけられない。
戸籍謄本を集めるのに困っているなんて言ったら馬鹿にされるかなと思いながらも、また友人の弁護士に相談をしてみた。
「ああ、よくあるケース。自分で集めなくても、行政書士に頼めるよ。」
またしても、一気に解決。
やはり餅は餅屋なのだ。
相続のインターネットの効果的な活用方法とは⁉
山本はすでに東京に戻って働いている。銀行口座の解約は無事終わった。戸籍の収集と一緒に銀行の解約手続きも行政書士に全て依頼したのだ。
東京と福岡。行政書士とは問題なくコミュニケーションできた。遠距離でも滞りなく手続きがすすんだのは、こまめに電話連絡を取り合ったわけではない。ここでやっとインターネットが威力を発揮したのだ。
Googleのスプレッドシートを使って手続きの進捗状況を共有した。思いついた課題は書き込んでおけばリアルタイムで情報共有ができる。
SNSも活用した。口頭で話すほどではないがちょっと聞きたいことがあるときなどはで気軽にやりとりができるし、電話と違ってお互い都合のいいときに確認できる。既読マークで相手が目を通したことも分かり、メールよりずっと手軽で安心だった。
Google社が提供している無料の表計算ソフト。インターネットが使える状況にありGoogleアカウントがあればインストールする手間無く利用できる。Microsoft社の表計算ソフトエクセルに似た使用感。
相続の天王山⁉不動産は超難関‼
不動産については専門業者に依頼してある。 伯父叔母とのトラブルの元となった更地の土地のほうはすぐに買い手がつきそうだ。しかし、1年前まで母が暮らしていた実家はどのように売却するのが一番良いかを様々な方向性で話し合っている最中だ。
実は、専門業者に依頼する前、実家の状況を知るために完全な持ち家かどうかを調べようとした。抵当などに入っていないかを確認するために不動産登記簿の表題部、権利部(甲区)、権利部(乙区)を見る必要があるのだが……。果たして初見でこれが読み解ける人はいるのだろうか。
次に、いくら位で売れそうかインターネットで調べてみたのだが、近所で似たような売家は見当たらない。不動産の売価の算出方法を調べたが、地目?路線価方式?セットバック?またしても専門用語がぞろぞろと出てくる。
さらに、壊して更地にすべきか、それともそのまま売った方がいいのかを検討しようと思ったが、更地にするのはどのくらい費用がかかるのか……。
基本的な考え方や決まりごとは検索すれば出てくるが、自分の場合はどうなるかと実際の計算をするのはとても難しい。不動産は景気や経済情勢にも影響されるのでセオリー通りにはならないからだ。しかも解説で使われている言葉も専門的すぎて厄介だ。 不動産は生半可な知識だけではリスクが高い。 結局、こちらも、餅は餅屋なのだ。
相続を体験して思うこと
「相続を経験したことある体験者からアドバイスしてもらっても、自分とは状況が全然違うから申し訳ないけど参考程度にしかならない。ネットで調べても自分だけで解決できるのはほんの一握りだったし、逆に、ものすごく遠回りになるかも。」
山本はさらに言う。「病気が見つかってからでは、母のように余命わずかな身体の人が、こんなたくさんの細かい準備をできるわけがない。終活はつねにやっておくものだと思う。自分も財産についてはきちんとしておこうと思った。」
目下の心配は、不動産が売れたら税金をどのくらい払うのか……。
2021年12月。母の葬儀から5ヵ月、まだ相続の手続きは続いている。
離れた実家の相続手続きは専門家にご相談を
今回のいい相続スタッフのように、遠く離れた実家で起きた相続手続きを、働きながら対応するのは非常に困難といえます。
そうした時、相続人に代わって迅速に手続きを進めてくれるのが行政書士です。このスタッフも行政書士に依頼したことで、煩わしい相続手続きの悩みから解放されることができました。
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携していますので、現住所と離れた場所でおきた相続手続きに対応できる行政書士や税理士をご紹介することができます。お困りの方は、お気軽にご相談ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
この記事を書いた人
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
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