相続税申告が不要な場合は?非課税でも申告が必要な場合とは?
「遺産を相続したけど相続税がかかるかわからない」「相続税の申告方法がわからない」など相続税申告に悩む声をよく聞きます。
実際には、相続税はすべての家庭にかかるわけではなく、遺産総額が基礎控除以内であれば申告も納付も不要です。
ただし、相続税の特例や税額控除を利用して相続税が0円になった場合は相続税申告が必要になることも。この記事では相続税の基礎控除や相続税申告が必要なケースについて解説します。
相続税申告が基礎控除以下なら相続税申告は不要
前述したとおり、遺産の総額が相続税の基礎控除以下であれば相続税申告は不要です。
基礎控除とは「相続税が一定の金額以下なら非課税」となる一定の金額です。多くの人は遺産総額は基礎控除以下に収まり、約92%の人は申告不要で相続しているといいます。
この相続税の基礎控除は、「3,000万円+(600万円 × 法定相続人の数)」で計算します。法定相続人が増えると基礎控除額も増えます。
法定相続人の人数ごとの基礎控除額
法定相続人とは民法で定められた相続できる人です。被相続人の配偶者や子どもなどがあてはまります。
相続放棄した人がいた場合
相続放棄とは、被相続人の財産を一切相続しないことです。プラスの財産とマイナスの財産の両方を相続しないため、被相続人に多額の借金があった場合などに検討されます。
相続放棄した人は、始めから相続人ではなかったものとして扱われます。しかし、相続税の基礎控除の計算においては相続放棄した人も含めます。
▼めんどうな相続手続きは専門家に依頼しましょう▼相続税が0円でも申告が必要なケース
相続税の計算において「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」などの税額控除の特例が設けられています。この特例や税額控除を利用して相続税が0円になるケースも少なくありません。
ただし控除によっては、相続税申告が要件となっているものがあります。申告を忘れないようにしてください。
相続税申告が必要
- 小規模宅地等の特例
- 農地の納税猶予の特例
- 配偶者の税額軽減(配偶者控除)
相続税申告が不要
- 未成年者控除
- 障害者控除
- 相次相続控除
小規模宅地の特例
小規模宅地の特例とは、被相続人の自宅や店舗、事務所など、事業用に使っていた宅地の評価額を大幅に減額する特例です。不動産の評価額が下がると、結果として相続税を減らすことができます。
適用要件を満たせば、「居住用」「事業用」の宅地に関しては80%、「事業用」として他人に貸し付ける土地に関しては50%の評価額の減額が可能です。
小規模宅地の特例を適用するためには、相続税申告が要件となっています。
農地の納税猶予の特例
農業を営むか、農地を貸し付けていた被相続人から農地を相続した人の、農業投資価格を超える部分の相続税額の納税が猶予される制度です。相続した日から農業をし続ける限り猶予されます。さらに、相続税の申告期限から20年経過すると納税猶予税額が全額免除されます。
農地の納税猶予の特例を適用するためには、相続税申告が要件となっています。
配偶者の税額軽減(配偶者控除)
配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続や遺贈によって取得した相続財産の取得額のうち、配偶者の法定相続分あるいは1億6,000万円のいずれか大きいほうの金額まで相続税がかからずに相続できる制度です。配偶者控除とも呼ばれます。
被相続人の遺産総額が1億6,000万円以下であれば、全額を配偶者が相続することによって相続税をかからないようにできます。
配偶者控除の税額軽減を利用するには、相続税申告が必要となります。
未成年者控除
相続税の未成年者控除は、未成年の相続人が成人になるまで、教育費などの負担を考慮して相続税負担を少なくする制度です。相続税額から一定の金額が控除されます。
未成年控除の計算式 (18歳- 相続発生時の年齢)× 10万円
未成年者控除を利用して相続税が0円になった場合、相続税申告は不要です。
障害者控除
85歳未満の障害のある人が相続した場合に相続税額を軽減できる制度です。障害の程度によって一般障害者と特別障害者に分けられます。
障害者控除によって相続税額が0円になる場合、相続税申告は不要です。ただし、過去に障害者控除の適用を受けた人が、次の相続でも障害者控除の適用を受けようとした場合、過去の相続税から控除した金額を把握していないと控除額を計算できません。
障害者控除を利用して相続税が0円になった場合、相続税申告は不要です。
相次相続控除
相次相続控除とは、一次相続の被相続人が亡くなってから10年以内に、一次相続の相続人が亡くなり二次相続(数次相続)が発生した場合に適用できる制度です。
一次相続の相続人に課された相続税額のうち一定額を、二次相続の相続人の相続税額から控除できます。
相次相続控除を利用して相続税が0円になった場合、相続税申告は不要です。
▼相続税の目安を知りたい方はコチラ▼相続税申告の要否を判断するときの注意
相続税の特例や税額控除以外にも、相続税申告が不要かどうか判断する際のポイントがあります。後に税務署から指摘されたり、計算ミスなどないよう気を付けましょう。
相続財産の見落とし
まず、よくあるのが相続財産の見落としです。すべて洗い出したと思っていても、おもわぬ財産が見つかることがあります。
見落としがちな財産の例
相続時精算課税制度を利用したか
相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫が贈与を受けた場合に2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。累計が2,500万円を超えた部分には一律20%の贈与税がかかります。
相続時精算課税制度では、相続時に贈与財産と相続財産を合算して相続税額を計算しなければなりません。
もし被相続人が相続時精算課税制度を利用した場合、遺産が基礎控除以内であっても相続税が課される可能性があります。
被相続人が亡くなる前3年(7年)以内に贈与はないか
生前贈与については、贈与した人が亡くなるとそこからさかのぼって3年(7年)以内の贈与は相続財産とみなされ相続税の対象となります。これを生前贈与加算といいます。したがって親が亡くなる前に100万円ずつ贈与されていれば「100万円×3=300万円」が相続財産として計算します。
税制改正により2024年1月1日以降の贈与から「3年以内」が「7年以内」に延長されるため注意してください。
▼まずはお電話で相続の相談をしてみませんか?▼この記事のポイントとまとめ
以上、相続税申告が不要なケースについて解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 遺産総額が基礎控除以内であれば、原則として相続税申告の必要はない
- 相続税が0円でも、税額控除などを利用していれば申告が必要な場合も
- 相続時精算課税制度を利用した場合は、相続財産に贈与財産を合算して相続税を計算する
相続税の計算には相続財産の評価や税額控除の計算など、一般の方には難しい点がいくつもあります。少しでも不安のある人は税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。相続税の計算を間違えると修正申告をしなければならず、延滞税や過少申告加算税が課されることもあります。
いい相続ではお近くの専門家との無料相談をご案内することが可能ですので、相続税申告でお困りの方はお気軽にご相談ください。
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