相続財産管理人(相続財産清算人)とは?選任の流れや報酬、必要書類などを解説
故人が独身で子どもや両親がおらず法定相続人がいない場合や、相続人がいても全員が相続放棄するようなケースでは、相続財産を管理する人がいないことになります。
相続人がいないと不都合になる場合は、家庭裁判所に申立をおこなって、相続財産管理人(相続財産清算人)を選任してもらう必要があります。
この記事では、相続財産管理人について解説します。
相続財産管理人(相続財産清算人)とは
相続財産管理人とは、相続人がいない相続財産の清算をする人です。
通常、死亡した人の遺産は相続人が引き継ぎ管理します。しかし天涯孤独だったり相続人全員が相続放棄した場合は誰も財産を引き継ぎません。
そこで、相続財産管理人を選任して財産を適切に管理してもらいます。
相続財産管理人がもつ2つの権限
相続財産管理人の役割は、相続財産や相続人を調査し、借金があれば債権者に支払い清算することです。他人の財産を自分勝手に扱うことはできません。
相続財産管理人に与えられている権限は、以下の2つです。
- 保存行為・管理行為
- 処分行為
保存行為・管理行為
保存・管理行為とは、相続財産の状態を変えない範囲で財産を維持・利用することです。これは家庭裁判所の許可を受けることなく自らの判断でおこなうことができます。具体的には、下記の行為が挙げられます。
- 不動産の相続登記
- 建物の修繕工事
- 預金の払い戻し
- 預金口座の解約
- 既存の債務の履行・賃貸契約の解除
処分行為
処分行為とは、相続財産を形を変えることです。こちらは家庭裁判所の許可がないとできません。具体的には以下の行為が該当します。
- 不動産の売却
- 株式の売却
- 家電家具の処分
- 墓地の購入や永代供養費の支払い
- 定期預金の満期前の解約
- 訴訟の提起
▼めんどうな相続手続きは専門家に依頼しましょう▼
相続財産管理人の選任が必要なケース
相続財産管理人はどのような場合に必要となるのでしょうか?
相続人がいないケース
始めから法定相続人がいない場合は相続財産管理人の選任が必要です。具体的には、以下のいずれかに該当する人が一人もいない場合です。
法定相続人になれる人- 被相続人の配偶者
- 被相続人の直系卑属(子、孫)
- 被相続人の直系尊属(父母、祖父母)
- 被相続人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が既に死亡している場合は孫)
相続人全員が相続放棄したケース
相続放棄した人は、最初から相続人ではなかったとみなされます。したがって、相続人が全員相続放棄すると相続人が存在しないこととなり、相続財産管理人の選任が必要です。
被相続人が多額の借金を抱えていたりすると、相続人全員が相続放棄することがあります。
第三者への遺贈を指定した遺言書が存在するケース
被相続人が遺言書を作成していた場合、誰かが受遺者(遺産を遺言によってもらう人)に目的物を渡さなければなりません。
相続人がいれば相続人が遺贈義務者となって目的物を引き渡しますが、いなければ相続財産管理人を選任された後、相続財産管理人から引き渡されます。
また遺言で遺言執行者が指定されているケースでは、相続人の有無にかかわらず遺言執行者が遺贈を履行します。
特別縁故者が財産分与してもらいたいケース
特別縁故者とは、相続人ではないものの被相続人と特別に親しかった人をいいます。
このような人は遺産の一部をもらえる可能性があります。ただし特別縁故者が遺産をもらうには、相続財産管理人の選任が必要です。
特別縁故者に該当する可能性のある人
- 内縁の妻、夫
- 養子縁組をしていないが親子のような関係にあった者(配偶者の連れ子など)
- 相続人ではない親戚
- 献身的に介護していた人(息子の嫁など)
欠格・廃除で相続人がいない場合
法定相続人がいても、その人が欠格・廃除にあたる場合は、相続人不存在となるため相続財産管理人の選任が必要です。
欠格とは、相続人が遺産を手に入れるために不正な行動をして相続権を失うことです。具体的には被相続人を殺そうとしたり、詐欺・脅迫により遺言の変更を強制した場合などがあげられます。
また廃除とは、被相続人に虐待や侮辱をおこなったりその他の著しい非行があった場合に、被相続人の意思によって相続権を奪うことができる制度です。
▼何をすればいいか迷っているなら、今すぐ電話してみましょう▼
相続財産管理人の選任の流れ
相続財産管理人を選任する場合は、以下のような手順となります。申立から手続き完了までは1年程度かかります。
- 申立
- 公告
- 換価
- 債権者や受遺者への公告
- 債権者や受遺者への支払い
- 特別縁故者への財産分与申立
- 特別縁故者への財産分与
- 国庫への帰属
申立
相続財産清算人(相続財産管理人)の選任は、利害関係人または検察官が、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に対して請求します。 利害関係者とは、相続債権者、受遺者、相続放棄した人などです。
申立の必要書類
申立には、以下の必要書類をそろえて家庭裁判所に提出します。
- 申立書
- 財産目録
- 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の父母出生時から死亡時までの、すべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の子ども(およびその代襲者)で死亡している方がいるとき、その子ども(およびその代襲者)の出生時から死亡時までの、すべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいるとき、その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 代襲者としての甥姪で死亡している方がいるとき、その甥または姪の死亡の記載がある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
- 被相続人の住民票除票または戸籍付票
- 財産目録記載の財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書)、預貯金および有価証券の残高がわかる書類(通帳写し、残高証明書等)等)
- 利害関係人からの申し立ての場合、利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書)、金銭消費貸借契約書き写し等)
申立をすると家庭裁判所で審理がおこなわれ、相続財産管理人が選任されます。
公示
相続財産管理人が選任されると、相続財産管理人が財産の管理を始めます。
また官報に相続財産管理人が選任された情報が公開されます。
換価
相続財産管理人が相続財産の管理と換価(現金化)をおこないます。
債権者や受遺者への公告
債権者や受遺者に対し、申出をするように公告がおこなわれます。
債権者や受遺者への支払い
呼びかけに応じて現れた債権者や受遺者に対し、必要な支払いや遺産の分与をします。
特別縁故者への財産分与申立
債権の支払いが終わると、特別縁故者による相続財産分与申立を受け付ける3か月の期間が設けられます。遺産を受け取りたい特別縁故者は、この期間内に申立をする必要があります。
特別縁故者への財産分与
特別縁故者からの申立があれば、申立人を特別縁故者として認めるか、どのくらいの相続財産を分与すべきか決定されます。
その内容に基づき、相続財産管理人が特別縁故者へ遺産を分与します。
国庫への帰属
特別縁故者への分与をしてまだ余りがあれば、国庫に帰属させます。そして相続財産管理人の業務は終了します。
▼あなたに必要な相続手続き、ポチポチ選択するだけで診断できます!▼
相続財産管理人の選任にかかる費用
相続財産管理人の選任にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。
申立にかかる費用
- 印紙代800円…申立書に収入印紙を貼って提出
- 郵便切手代…文書による連絡用。家庭裁判所によって異なる(数千円程度)
- 官報公告料…5,075円(家庭裁判所の指示があってから納める)
- 戸籍取得費用…数千円程度
予納金
相続財産管理人の申立には予納金が必要です。予納金とは、申立人があらかじめ納める、相続財産管理人が業務をおこなううえで必要となるお金です。相続財産管理人の報酬にあてられる場合もあります。
具体的な金額は遺産の内容や評価額によって異なりますが、一般的には20~100万円程度になることが多いです。家庭裁判所が決定します。
相続の処理が終わり、予納金に残りがある場合は返金されます。
▼相続手続きは一人で悩まず専門家に相談しましょう▼この記事のポイントとまとめ
以上、相続財産管理人(相続財産清算人)について解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 相続人がいない場合、相続財産管理人を選任する必要がある
- 相続財産管理人選任の申立をするときは、申立人が予納金を納める
- 相続財産管理人は令和5年の民法改正により「相続財産清算人」へ名称変更
相続財産管理人選任の申立から完了までには時間と手間がかかります。そうならないよう、生前から対策しておくのもひとつの方法です。遺言書を作成したり、生前贈与を検討しても良いでしょう。
いい相続ではお近くの専門家との無料相談をご案内することが可能ですので、相続手続きや相続対策でお困りの方はお気軽にご相談ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。