相続登記を自分でやる?専門家に依頼する?ケースごとに考え方を紹介、費用や手続きの流れも解説
相続や遺言によって不動産を取得した場合、必ず行いたいのが「相続登記」です。相続登記は相続手続きのひとつであり、法務局へ申請を行います。
しかも相続登記の義務化が決定されています(令和6年4月1日より施行)。先延ばしにせず、速やかに手続きを行いましょう。
実は、相続登記の手続きは複雑だと言われています。自分でやることは可能でしょうか?
この記事では、専門家に依頼すべきケースから自分で相続登記をするときのの流れ、必要書類まで解説します。
目次
相続登記とは
相続登記とは、建物を相続したときや贈与されたときに行う登記(不動産の名義変更)を言います。実際には所有権移転登記のひとつと言われます。
自分で相続登記をやることを検討しても良いケース
この記事を読んでいる方は「できれば自分で相続登記を行いたい」と考えている方が多いでしょう。
まずは、自分で手続きをすることを検討してもよいケースをご紹介します。
相続人が配偶者や子どものみである場合
この相続人の組み合わせだと、必要な戸籍も多くなく手続きがそこまで複雑にならずに済みます。
日中・平日に時間がある場合
市区町村や法務局は平日の日中しか対応できません。何度か行く必要があることもあり、平日に動ける人だとやりやすいです。
費用をおさえたい場合
専門家に依頼すれば報酬が発生します。少しでも安く済ませたい場合は自分でやる方がよいです。
根気強く対応できる場合
相続登記の申請には戸籍を読んだり役所を往復したりと、思った以上の手間がかかります。途中で挫折してしまわないよう、根気強く対応できる人が望ましいでしょう。
万一、途中で自分で手続きするのが困難になってからでも専門家は受けてくれるので遠慮なく相談しましょう。
専門家に相続登記を頼むことを検討したほうが良いケース
相続が複雑な場合など、「専門家に依頼したほうが良いケース」があります。不安があるようであれば無理にやろうとせず、専門家に依頼したほうが安心です。
手続きが複雑になりやすい、専門家に依頼したほうが良いと思われるいくつかのパターンを紹介します。
兄弟姉妹の相続や、代襲相続がある場合
上記の配偶者と子どものみの相続に比べ、兄弟姉妹が相続人になる場合や代襲相続が発生する場合は、戸籍など必要書類が膨大になります。
兄弟姉妹が相続人となる場合に必要な書類
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍
- 相続人の現在戸籍(被相続人の子供が死亡していた場合は子供の死亡がわかる戸籍)
- 被相続人の親や祖父母の死亡がわかる戸籍(被相続人が養子の場合、実の親や祖父母の死亡がわかる戸籍)
配偶者と子どものみの相続では、1と2のみ準備します。相続人に兄弟が加わることでより戸籍収集に手間がかかります。
相続人同士が不仲(疎遠)の場合
相続人同士が不仲なことで、必要書類がスムーズに揃わないことも。遺産分割協議が進まないために、相続手続きが終わらない可能性もあります。
相続登記をせずに放置していた場合
何代も相続登記しておらず、ずっと放置されたままの不動産を取得することがあります。こうなると昔の民法を調べなければならない場合も。専門的な知識が必要になるため、専門家に依頼するのが無難と言えます。
相続登記の義務化
民法と不動産登記法の改正により、相続登記の義務化が決定されました(これまで義務化はされていませんでした)。
施行は令和6年4月1日からです。義務化が開始されると土地・建物の所有を知ってから3年以内に相続登記することが必要です。
正当な理由なく相続登記を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
また相続登記の義務化は、施行日より前に相続が開始された場合についても適用されます(遡及適用)。
代償分割や換価分割などの複雑な遺産分割がある場合
主な相続財産が不動産のみの場合、代償分割や換価分割などイレギュラーな分割方法となることがあります。
代償分割とは不動産を相続した人が他の相続人に代償金と呼ばれる金銭を支払う方法です。換価分割は不動産を先に売却し、売却金を相続人で分け合うものです。
いずれも遺産分割協議書の書き方を誤ると贈与税が発生する可能性があります。遺産分割協議書を作成する段階から、専門家に相談したほうが良いかもしれません。
相続登記を急いでいる場合
不動産を売却するケースなど、取引予定日までに相続登記を終えなければならないため、ミスや遅れは許されません。
正確かつスピーディーに終えたい方は、専門家に依頼したほうが良いでしょう。
保存期間を経過した書類がある場合
相続登記に戸籍の附票が必要となるケースがありますが、戸籍の附票は永久に保存されるわけではありません。住民基本台帳法の一部が改正されましたが、平成26年3月31日以前に消除または改製したものについては発行することができません。
相続登記を専門家に依頼したときの費用
「やっぱり相続登記を専門家に依頼しよう」と思ったとき、どのくらいの費用がかかるのでしょうか? 相続登記の司法書士報酬は、6~10万円程度とされています。
しかし相続人の人数や不動産の数、手続きの複雑さなどによっても異なります。事前に見積書をもらい、疑問点を解決してから依頼するようにしましょう。
またオンラインで申請書類を作成できるサービスなどもあります。必要書類の作成のみで2万円程度のサービスや、戸籍収集までしてくれて7万円ほどのものなどがあります。法務局への発送までしてくれる場合もあるようです。
相続の3つのパターン
相続登記は、どのように相続したかで3パターンに分かれます。それにより必要書類や手続きの流れが変わるので、必ず確認しておきましょう。
遺言書があるパターン
被相続人(亡くなった人)が遺言書を残していた場合、原則として遺言の内容どおりに遺産を分割します。ただし自筆証書遺言は開封前に家庭裁判所の検認が必要なので、その前に開けてはいけません。
ただし相続人全員が遺言に納得できなければ、遺産分割協議を行うことが認められています。
遺産分割協議によって相続するパターン
遺言書がない場合や、相続人全員が遺言書に納得しなければ遺産分割協議を行います。協議がまとまれば遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名捺印をします。
法定相続分通りに相続するパターン
法定相続分とは、民法によって定められた各相続人の遺産の取り分です。必ずしも従う必要はありません。
法定相続分通りに相続するのであれば、原則として遺産分割協議書は不要です。
相続登記の必要書類と費用
書類名 | 発行場所 | 発行手数料 | |
---|---|---|---|
法定相続による相続 (どのケースでも必要) |
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式 | 本籍地の市区町村役場 | 一通450~750円 |
被相続人の戸籍附票 | 一通300円 | ||
相続人全員の戸籍 | 一通450円 | ||
新たに登記名義人となる相続人の戸籍附票 | 一通300円 | ||
固定資産評価証明書もしくは固定資産税課税証明書 | 固定資産評価証明書は不動産所在地の市区町村役場 固定資産税課税証明書は毎年自治体から自宅に届く |
固定資産評価証明書は一通300円 | |
収入印紙 | 郵便局、コンビニなど | 登録免許税の金額分 | |
登記申請書 | 法務局窓口もしくは法務局ホームページ | ||
返信用封筒 | 郵便局、コンビニなど | 100~520円程度 | |
遺産分割協議を行った場合 | 遺産分割協議書 | ||
印鑑証明書 | 相続人の住所地の市区町村役場 | 一通300円 | |
遺言書がある場合 | 遺言書 | 公正証書遺言は公証役場 | 公正証書遺言は再発行が可能 一通250円 |
相続放棄をした人がいた場合 | 相続放棄申述受理通知書 | 相続放棄の手続きを行った家庭裁判所 | 一通150円 |
相続登記の流れ
前述のようなパターンであれば、自分で相続登記をすることは可能です。具体的な流れは以下のとおりです。
- 不動産調査
- 戸籍収集
- 遺産分割協議書の作成(遺言書がない場合) on
- 管轄法務局の特定
- 登録免許税の算定
- 登記申請書の作成
- 法務局への申請
不動産調査
不動産の所在地や面積、権利関係などを正確に把握するため、以下の書類を取り寄せます。
- 土地の登記事項証明書(全部事項証明書):法務局
- 登記済権利証や登記識別情報、登記完了証:法務局
- 固定資産税納税通知書:市区町村役場
- 土地の名寄帳:市区町村役場
- 戸籍収集:本籍地の市町村役場
相続登記で最も手間がかかるのが戸籍収集です。相続人が配偶者と子どもだけの場合、以下の戸籍が必要となります。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍、除籍、原戸籍など:市区町村役場
- 被相続人の住民票の除票:市区町村役場
遺産分割協議書の作成
遺言書がない場合、遺産分割協議を行い遺産分割協議書を作成します。
相続登記で遺産分割協議書を添付する場合は、相続人全員の印鑑証明書も必要です。
管轄法務局の特定
登記の申請は、不動産の所在地を管轄する法務局で行う必要があります。管轄が異なる法務局だと却下されるので注意しましょう。
管轄の法務局は、法務局ホームページから調べることができます。
登録免許税の算定
相続登記に限らず、不動産の登記には登録免許税が課されます。これを納付しなければ登記の申請が受理されません。 登録免許税は課税明細書を見ながら、自力で計算する必要があります。
また一定の要件を満たせば、登録免許税の免税が受けられることもあります。
登記申請の作成
登録免許税の計算や必要書類が揃ったら、登記申請書を作成します。法務局ホームページから様式と記載例をダウンロードすることができます。
登記申請書に添付する書類(戸籍謄本など)は、原本を返してもらうことができます。原本還付を受けるためには、あらかじめ書類をすべてコピーし「原本に相違なし」と記載のうえ署名と押印をします。
法務局へ申請
登記申請書と必要書類が揃ったら、管轄の法務局へ申請します。申請方法としては、法務局の窓口へ直接提出するか、郵送、もしくはオンライン申請があります。
オンライン申請だと法務局に行く必要なく、夜9時まで申請が可能です。しかし添付書類は郵送しなければいけません。書類を郵送する際はレターパックなど追跡ができる形で送付しましょう。
書類にミスがあった場合
一般の方が登記の申請を行う場合、ミスがひとつもないというのは難しいです。申請に不備がある場合、法務局から連絡が来て、修正の指示を受けます。
書類の不足の場合は、不足分を追加で郵送します。記載の間違いがあれば、法務局の窓口まで行く必要があることも。またすぐに修正できない根本的な不備のときは、申請が取り下げられることもあるようです。
登記の完了後
法務局で登記の処理が完了すると、新たな権利証などの書類が発行されます。また提出書類のうちいくつかは返却されますので、窓口に取りに行く必要があります。法務局のホームページに登記完了予定日が掲載されているので、その日以降に取りに行きましょう。提出時に郵送での返却を希望していた場合は、法務局から郵送されます。
返却書類のうち登記識別情報通知は再発行されないので、無くさないようにしましょう。
まとめ
この記事では、相続登記を自分で行う方法について解説しました。相続登記は自分で行うこともできますが不備があったら大変なので、心配であれば専門家に相談することをおすすめします。
またオンラインで申請書類を作成してくれるサービスなどもあります。必要に応じて利用を検討してみても良いですね。
相続手続きは相続登記だけでなく、相続税申告などもあわせて必要になることも。期限が決まっている手続きもあるので、漏れのないよう対応しましょう。
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