相続登記にかかる登録免許税はいくら?計算方法・免税条件から納付方法まで全解説
相続財産に家や土地などの不動産が含まれているケースは多いもの。
こうした不動産の名義変更をするには登記が必要ですが、ここでかかってくるのが「登録免許税」という税金です。登録免許税には決まった計算方法があり、それに則って計算をしていきます。
また、平成30年度におこなわれた税制改正では、一定の条件を満たせば免税措置を受けられる制度が新設されました。自身のケースが減免の要件を満たすのかを確認し、相続登記の手続きをおこなっていきましょう。
この記事では、相続登記にかかる登録免許税について、計算方法・免税の条件・納付方法を中心に詳しく解説します。ぜひご参考にしてください。
目次
不動産(家や土地)の名義変更にかかる登録免許税とは
家屋や土地といった不動産を相続し名義変更をする際には、法務局で登記申請の手続きをおこなう必要があります。
登録免許税は、不動産の登記の際に必ずかかる税金です。税金なので、自分で登記申請手続きをおこなっても、司法書士などの専門家に依頼しても同額が必要となります。
相続登記の登録免許税の計算方法
相続登記の登録免許税には決まった計算方法があります。しっかり確認し、正しい税額を納付できるようにしましょう。
基本の計算式
相続登記の際に必要な登録免許税の額は、以下の式で計算することができます。
ただし、遺贈(遺言により相続人以外の者が受け継ぐこと)の場合には「固定資産税評価額×2%」となるので注意してください。
固定資産税評価額は1,000円未満を切り捨てて計算します。また、登録免許税額は100円未満を切り捨てて計算しますが、上の計算式により算出した登録免許税が1,000円に満たない場合には、納税額は1,000円になります(後述の計算式参照)。
【ケース別】登録免許税の計算例
具体的なイメージがわきやすいよう、登録免許税の実際の計算例を見ていきましょう。ここでは、被相続人が単独で所有する以下の不動産について、
- 自宅の土地と建物を相続する
- マンション(敷地権付区分建物)を相続する
というケースについて解説します。
1.自宅の土地と建物を相続する場合
自宅の土地と建物の両方を相続する場合、土地・建物の評価額を合算して計算します。
- ①土地の評価額+建物の評価額を合計する
- 例)土地19,999,999円+建物8,888,888円=28,888,887円
- ②合計額の1,000円未満を切り捨てる
- 例)28,888,887円→28,888,000円(課税標準額)
- ③税率0.4%を掛ける
- 例)28,888,000円×0.4%=115,552円
- ④100円未満を切り捨てる
- 例)115,552円→115,500円(登録免許税額)
この例では、登録免許税の額は115,500円になります。
2.マンション(敷地権付区分建物)を相続する場合
区分所有のマンションは、建物(専有部分)と土地(敷地)で計算します。
専有部分はそのままの固定資産税評価額を見れば良いのですが、敷地については当該部屋の評価額を出すために次のような計算が必要になります。
なお、敷地権の持分割合はマンションの登記簿を確認してください。
たとえば専有部分の評価額が5,999,999円で、敷地権の評価額が92,999,999円、敷地権の持分割合が448,363分の8,502であるような場合は次のように計算します。
- ①専有部分の評価額+敷地権の評価額を合計する
- 例)
- 専有部分:5,999,999円
- 敷地権:92,999,999円×448,363分の8,502=1,763,495円
- ⇒合計:5,999,999円+1,763,495円=7,763,494円
- ②合計額の1,000円未満を切り捨てる
- 例)7,763,494円→7,763,000円(課税標準額)
- ③税率0.4%を掛ける
- 例)7,763,000円×0.4%=31,052円
- ④100円未満を切り捨てる
- 例)31,052円→31,000円(登録免許税額)
この例では、登録免許税の額は31,000円になります。
【税制改正】登録免許税の免税を受ける方法
ここまで登録免許税の計算方法をみてきましたが、平成30年(2018年)度には税制改正がおこなわれ、一定の条件の土地の相続登記にかかる登録免許税には免税措置が設けられました。次の2つのうち、どちらかにあてはまれば免税の対象になります。
- 相続により土地を取得した人が、相続登記をしないで死亡した場合
- 市街化区域外の土地で、「市町村の行政目的のため相続登記の促進を特に図る必要があるもの」として法務大臣が指定する土地のうち、不動産の価額が10万円以下の土地である場合
それぞれ免税を受ける方法が異なるので、順に詳しく解説します。
①相続で土地を取得した人が、相続登記をしないで死亡した場合
相続登記はしなくても罰則などがないので、場合によっては下図のように、被相続人のAさんが亡くなった際に、Aさんの相続人であるBさんの名義に変更していないということがありえます。
Aさんから名義を移さないままBさんも亡くなった場合に、Bさんをこの土地の登記名義人にするための相続登記については登録免許税を免除する、というのがこの1つめの措置です。
免税の条件と期間
このケースで登録免許税を免除してもらえる条件は次のとおりです。
- 土地であること(建物は対象外)
- 相続(相続人に対する遺贈も含む)による取得であること
- 相続で土地を取得した人が相続登記をしないまま亡くなっていること
なお、先ほどの図のCさんがこの土地を相続している必要はありません。たとえばBさんが生前、この土地を第三者に売ってしまっていた場合でも、AさんからBさんへの相続(1次相続)についての登録免許税は非課税となります。
上記にあてはまっていた場合、平成30年(2018年)4月1日から令和7年(2025年)3月31日までの間に登記申請した場合、登録免許税が免税となります。
※免税措置の適用期限が令和7年(2025年)3⽉31⽇まで延長されました
免税を受ける方法
この免税措置を適用されるには、登記の申請書に免税の根拠となる法令の条項をしっかりと書かなければなりません。
「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」と記載しましょう。記載がない場合は、免税措置は受けられません。
②市街化区域外の土地で、法務大臣の指定など一定の要件を満たす場合
2つめの免税措置は、市街化区域外の土地で一定条件を満たした場合に適用されます。
市街化区域とは、都市の発展動向などを考えて、市街地として優先的かつ計画的に整備していく区域のこと。「市街化区域外」の土地ということは、少なくとも当面の間市街地としての整備をおこなう予定のない土地ということになります。
免税の条件と期間
このケースで登録免許税を免除してもらえる条件は次のとおりです。
- 市街化区域外の土地であること(建物は対象外)
- 法務大臣が「市町村の行政目的のために、相続による土地の所有権移転の登記の促進を特に図る必要がある」と指定していること
- 不動産の価額が10万円以下の土地であること
法務大臣が指定する土地については、法務局や地方法務局のホームページから確認することができます。わからない場合は直接担当部署に連絡をして聞くか、手続きも含めて司法書士などの専門家に依頼するのもおすすめです。
上記にあてはまっていた場合、平成30年(2018年)11⽉15⽇から令和7年(2025年)3⽉31⽇までの間、登録免許税が免税となります。
※免税措置の適用期限が令和7年(2025年)3⽉31⽇まで延長されました
免税を受ける方法
この免税措置を利用する場合も、免税の根拠となる法令の条項を登記の申請書に記載してください。
「租税特別措置法第84条の2の3第2項により⾮課税」と書きましょう。記載がない場合は、免税措置は受けられません。
登録免許税の納付方法
普段なかなか納める機会のない登録免許税ですが、どのような方法で納付すれば良いのでしょうか。
登録免許税は、次のいずれかの方法で納付できます。
- 現金で納付する
- 収入印紙で納付する
- オンラインで電子納付する
以下、順に見ていきましょう。
現金で納付する場合
現金で納付するのはいちばんイメージがしやすいかもしれませんが、法務局に直接現金を支払いに行くわけではありません。次のようなステップで納税をおこないます。
- ①納付書(領収済通知書)を入手し、記入
- 税務署または一部の金融機関で納付書(領収済通知書)を入手することができます。必要事項を記入しましょう。
- ②納付書と共に登録免許税を納付
- 税務署または金融機関にて、納付書とともに現金を納付します。
- ③領収証書を受け取る
- 納付をしたら、税務署または金融機関で領収証書が交付されます。
- ④領収証書を登録免許税納付用台紙に貼付
- 交付された領収証書を、登録免許税納付用台紙に貼り付けましょう。台紙に特別な形式はなく、A4用紙を代用してもかまいません。
- ⑤法務局に提出
- 登記申請書と登録免許税納付用台紙を法務局に提出します。
領収証書は直接申請書に貼り付けるのではなく、別の台紙に貼り付ける点に注意しましょう。申請書とこの台紙との間に、登記申請書に押印したものと同じ印で契印をしてください。
契印は契約書のページの連続性を示すためのハンコのことで、両ページにまたがるように押します。
収入印紙で納付する場合
収入印紙を申請書に添付することでの納付も認められています。一般的にはこちらを覚えておけば良いでしょう。
収入印紙を購入すれば、次のような流れで登録免許税を納付することができます。
- ①収入印紙を購入
- 郵便局または一部の法務局内にある売り場で、支払う登録免許税相当額の収入印紙を購入します。
- ②収入印紙を登録免許税納付用台紙に貼付
- 購入した収入印紙を、登録免許税納付用台紙に貼り付けましょう。台紙に特別な形式はなく、A4用紙を代用してもかまいません。
- ③法務局に提出
- 登記申請書と登録免許税納付用台紙を法務局に提出します。
収入印紙は直接申請書に貼り付けるのではなく、別の台紙に貼り付ける点に注意しましょう。申請書とこの台紙との間に、登記申請書に押印したものと同じ印で契印をします。このとき、収入印紙そのものに消印をしないように注意してください。
オンラインで電子納付する場合
相続登記の登録免許税は、インターネットバンキング・モバイルバンキングやPay-easy(ペイジー)マークのあるATMでも電子納付することができます。
インターネットバンキング・モバイルバンキング等を利用する場合には、事前に各金融機関で手続きが必要がありますので、利用する金融機関に確認してみましょう。
ATMから納付する場合には、その金融機関のATMが登録免許税の電子納付に対応している必要があります。実際の操作方法や操作画面は金融機関ごとに異なりますので、ご利用の金融機関にお問い合わせください。
相続登記を専門家に依頼するには
相続登記は慣れない書類の準備が必要になったり、慣れない役所に行くことになったりと煩雑なもの。そこで専門家に依頼される方も多くいらっしゃいます。
ここでは、相続登記を依頼できる専門家の種類や選び方などをご紹介します。
相続登記の代行は主に「司法書士」
相続手続き関係の士業としては弁護士・税理士・司法書士・行政書士などが挙げられますが、そのうち相続登記の代行は主に司法書士がおこなっています。
すべての必要書類がそろっているようであれば自身で相続登記の手続きをしても良いかもしれませんが、書類の準備からおこなう場合には司法書士に一括してお願いしてしまうのがおすすめです。
なお、ケースによっても異なりますが、下記の書類は多くの場合必要となります。
- 被相続人の戸籍謄本等
- 被相続人の住民票の除票
- 相続人全員の戸籍謄本または抄本
- 相続人全員の印鑑証明書
- 不動産取得者の住民票
相続登記を依頼する司法書士の選び方
司法書士事務所は全国にたくさんありますが、もともと士業の知人がいるといった場合でない限り、どのように選んでいいかわからないという方がほとんどなのではないでしょうか。また、相続手続きはプライベートな内容ですので、信頼できる専門家を見つけることが大切です。
信頼できる司法書士は、次のようなポイントで選びましょう。
- 相続登記の実績が豊富かどうか
- 初回の無料相談ができるか
- 相談した際にしっかり話を聴いてくれるか
なお、相続登記の手続きは郵送やオンラインでも可能であるため、依頼する専門家は必ずしもご自身の近所や対象不動産の近くに事務所を構えている必要はありません。
この記事のポイントとまとめ
相続登記(家や土地などの不動産の名義変更)の登録免許税について解説してきました。最後に要点をおさらいしておきましょう。
- 相続登記の登録免許税の計算式は、固定資産税評価額×0.4%
- 免税措置が該当するか要チェック!
- 登録免許税の納付は収入印紙でおこなうのが一般的
今回ご紹介した内容はあくまで一般的な事例です。実際には様々なケースがありますので、司法書士等の専門家にご相談ください。相続登記について疑問点があったり、必要書類だけを収集してほしいなど、相続のお困りごとはお気軽に「いい相続」の無料相談をご利用ください。
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