【相続登記の委任状】どんなときに必要?不要なケースから書き方や注意点まで詳しく解説
相続財産に土地や不動産が含まれていた場合、相続登記(不動産の名義変更)を行います。
相続登記は義務化も決定されている手続きですので、面倒でも速やかに行いましょう。
この手続きはかなり複雑なため、専門家などに依頼しても良いでしょう。依頼する場合は委任状を作成する必要があります。
この記事では、相続登記の委任状の作成方法や専門家に依頼したときの費用などを解説します。
この記事はこんな方におすすめ:
「不動産を相続する人」「登記を専門家にまかせたい人」
この記事のポイント:
- 相続登記の手続きを依頼する場合、委任状が必要
- 代理人の氏名や不動産情報などは正確に記入する
- 法定代理人が登記申請をするときは委任状は不要
目次
相続登記とは
相続や贈与により土地・建物を取得した場合、相続登記が必要です。これにより所有権が移ったことを記録でき、法務局で不動産情報を管理できます。
相続登記をしないと不動産の売却や処分ができません。
これまでは義務化されていませんでしたが、令和3年12月14日の閣議決定により義務化されることが決定しました。
施行は令和6年4月1日です。過去の相続も義務化の対象となるので注意しましょう。
正当な理由なく相続登記を怠ると、10万円以下の過料が科される場合があります。
相続登記の義務化についての紹介は「【令和6年4月1日から施行】相続登記の義務化が決定!違反の場合は過料など必須知識をまとめて解説」を参照してください。
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相続登記の委任状とは
相続登記の委任状は、自分以外の人に相続登記を依頼するときには原則として必要です。
委任状自体は、委任する人が作成しても、委任を受ける人のどちらが作成しても問題ありません。しかし、氏名や押印は依頼する人が行いましょう。
司法書士などの専門家に依頼する場合は、専門家が委任状を作成してくれます。案内に従って、日付や氏名、住所を記載すれば問題ありません。
相続登記を委任できる人
相続によって土地・建物を取得した人を「登記権利者」と言います。そのため、登記権利者が相続登記を行うこととなります。
登記権利者が相続登記の申請をせず他の人に代行してもらうとなると、相続登記の申請の権利を授権することになります。そのため授権を証明するための書面を、委任状として作成する必要があるのです。
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委任状の作成が必要なケース・不要なケース
先ほど述べたように、自分以外の人に相続登記を頼む際には委任状が必要です。しかし、委任状が不要なケースもあります。
委任状が必要なケース
- 家族や専門家に依頼するとき
- 法定相続分と異なる割合で相続するとき
兄弟など共有持分で登記を行う場合、法定相続分だとそれぞれ1/2ずつですが、これと異なる共有持分で登記する場合は、持分が少ない方が多い方へ委任状が必要になります。
しかし、一人が代表で登記を行うと、それ以外の人は登記完了後に登記識別情報を受け取ることができないので注意が必要です。
登記識別情報とは、不動産の権利者であることを示す12ケタの英数字のパスワードです。
委任状が不要なケース
法定代理人が相続登記の申請をするときは、委任状は不要です。 法定代理人とは、法律で代理権を認められている人を言います。具体的には以下の人が挙げられます。
- 親権者
- 未成年後見人
- 成年後見人
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相続登記の委任状の書式の見本
相続登記の委任状の書式の見本を掲載します。こちらはあくまで見本ですので、作成の際は、きちんと専門家に相談することをおすすめします。
委任状の書き方
上記の書式見本をもとに書き方を項目ごとに一つ一つ解説していきます。
代理人と本人の住所・氏名
代理人や相続人、委任者の住所氏名を記載する部分では、必ず住民票の記載通り記入します。間違っていると登記申請を受け付けてもらえない可能性があります。
登記の目的
単独で所有する場合は、「所有権移転」と記入します。
共有所有していた人が亡くなって、その持分を移す場合は「●●●●持分全部移転」と記載します(●●●●は被相続人の名前)。
原因
被相続人の死亡年月日の後に「相続」と記載します。死亡年月日は除籍謄本などを見て確認します。
不動産の表示
「不動産の表示」には、不動産の情報を登記事項証明書を見ながら正確に記載します。
補足に相続登記に関連する手続きも委任する旨を記載する
相続登記に付随する手続きがいくつかあります。それらも一緒に委任するために以下のような記載しておきましょう。
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登記識別情報に関する一切の件
- 登記識別情報とは、不動産の権利証にあたる重要な書面です。委任を受けた人が登記識別情報を受け取れるようにするための条項です。
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復代理人選任に関する一切の件
- 相続登記を委任された人から、さらに別の人に委任するときに必要な条項です。委任した人が多忙などにより他の人に委任することを可能にします。ただし、委任した人以外にしてほしくないときは記載は不要です。
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原本還付請求受領に関する一切の件
- 相続登記で添付した書類のうち、原本還付の請求を行うことで手元に返却してもらえるものがあります。原本還付の請求を代理人に依頼したいときはこの条項が必要です。
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登記識別情報受領に係る復代理人選任に関する一切の件
- 登記識別情報の受け取りを依頼された人が、さらに別の人に委任するときに必要な条項です。ただし、委任した人以外にしてほしくないときは記載は不要です。
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登記申請の取下及び登記に係る登録免許税の還付金を受領すること又は再使用証明申出の請求受領に関する一切の件
- 「登記申請の取下」とは、登記申請を取りやめることです。申請の完了前であれば、登記の取り下げは可能です。取り下げには取下書を提出し、登録免許税の返還手続きなどを行う必要があります。この一連の手続きを委任する場合に、この条項が必要です。
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委任状を作成するときの注意点
相続登記の委任状を作成するにあたって、いくつか注意点があります。
白紙委任状は渡さない
白紙委任状とは、誰に何を委任するかなどが空欄になっており、後から受任者が書き足して使用するものです。
便利ではあるのですが、悪用されないとは言い切れません。白紙委任状は渡さないようにしましょう。
捨印は避ける
捨印とは、事前に欄外に押しておく訂正印のことです。これがあると委任状に不備があったときに捨印を使用して訂正できます。
便利ではありますが、内容を勝手に書き換えてしまうとも限りません。念のため避けたほうが良いでしょう。
記載を間違えたときは、該当箇所に二重線を引きその上に訂正印を押すようにします。
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専門家に依頼したときの相続登記の費用
相続登記を司法書士に依頼した場合、6~10万円程度の費用がかかるようです。しかしこの金額は目安であり、相続人の人数や不動産の数などによって変わってきます。
相続登記は自分でできる?
相続登記の手続きはそれなりに複雑ですが、自分で行う人もいるようです。
またインターネットで申請書類を作成できるサービスもあります。必要書類のみ作成で2万円程、戸籍収集なども含め7万円程度が料金の目安です。
この記事のポイントとまとめ
今回は、相続登記の委任状について解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 相続登記を他の人に依頼する際には、その授権を証明するための委任状が必要となります。
- 家族や専門家に依頼するとき、法定相続分と異なる割合で相続するときなどは委任状が必要です。一方で、法定代理人(親権者や後見人など)が申請する場合は不要です。
- 委任状の作成は氏名や日付などを正確に記載する必要があります。白紙委任状や捨印は避け、記載ミスがあった場合は二重線を引いて訂正印を押します。
相続登記に限らず、相続手続きは手間がかかります。令和6年4月からは相続登記にも期限ができますし、相続税申告など期限が決まっている手続きもあるので、段取り良く終わらせるようにしましょう。
遺産分割や相続手続きで不明点があれば、相続に強い専門家に相談してみることをおすすめします。
「いい相続」では、相続に強い専門家探しをサポートしています。ぜひ、お問い合わせください。
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