相続人とは?法定相続人の範囲や順位、法定相続分と遺留分【行政書士監修】
相続がいつ起こるかは誰も正確には予想できません。相続が発生したときにバタバタしないように、あらかじめ相続について学んでおくことはとても大切なことです。インターネットや本などで相続についていろいろ調べると「相続人」という言葉をよく目にします。相続人は、相続の基本用語の1つです。相続人の解釈を間違えてしまうと、相続に関連した制度の理解に誤解が生じてしまいます。
この記事では、相続人について正しく理解できるように、相続人の意味や相続人の範囲と順位、相続割合など相続における基本的な部分をご紹介します。
- 故人の財産を誰が受け取るかは、基本的に遺言書に書かれた内容が優先される。
- 遺言書がない場合は法定相続人全員で遺産分割協議をおこない、誰がどの財産を相続するかを決める。
- 法定相続人になれるのは、被相続人の配偶者と、血縁関係にある血族(養子縁組も含む)。
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目次
相続人とは?
最初に、相続人とはどのようなものか確認していきましょう。
相続人とは、亡くなった人の財産や権利、義務などを承継する人(相続する人)のことをいいます。
故人の財産を誰が受け取るかは、基本的に遺言書に書かれた内容が優先されます。 遺言書とは、後述する被相続人(亡くなった方)が自分の財産をどのように処分して欲しいか、誰に何を渡してほしいかなどの意思を記載した法的な書類です。
相続の場面でトラブルを回避するための生前対策として遺言書を用意する人も増えてきています。
しかし、遺言書がないまま相続が発生するケースがまだまだあるのも事実です。この場合、法律(民法)で定められた相続人が財産を引き継ぐことになります。なお、法律で定められた相続人は「法定相続人」といいます。
被相続人とは?
被相続人とは、相続人に受け渡す財産や権利、義務(「相続財産」といいます)のもとの所有者で、死後、それら相続財産を相続人に受け渡す人(相続される人)のことです。
相続財産は、遺産ともいいます。被相続人が死亡時に所有していたもので、預貯金や有価証券、不動産などプラスの財産(積極財産)だけでなく、借金や負債、債務などマイナスの財産(消極財産)、さらにさまざまな権利や義務なども含まれます。
失踪宣告と認定死亡
相続は、被相続人が亡くなる(自然死)ケースのほかにも「失踪宣告」や「認定死亡」など、法律上で死亡と扱われる場合にも発生します。
失踪宣告とは、失踪した人を法律上において死亡したとみなす制度です。失踪宣告には普通失踪と特別失踪の2種類があります。普通失踪は、行方がわからなくなって7年以上生死の確認ができないときに認められ、利害関係者が家庭裁判所に請求することで宣告されるものです。特別失踪は、震災など死亡の原因といえる危難に遭遇した人に対して、危難が去ってから1年以上経過しても生死の確認ができないときに宣告されます。
認定死亡とは、災害や事故などで遺体を発見できないときなどに、官公庁による死亡の報告によって戸籍上、死亡と扱うことができる制度です。通常は、遺体を発見できないと死亡診断書などを作成できません。死亡診断書がないと戸籍に死亡と記載することができないため、死亡したのが確実なのに戸籍に反映できないという問題を解決するための制度です。
法定相続人の範囲と順位
法定相続人の範囲や順位、法定相続分は民法によって定められています。
法定相続人になれるのは、被相続人の配偶者と、血縁関係にある血族です。この場合の血族とは生物学的に血縁がある人だけでなく、養父母や養子など養子縁組による血族も含まれます。
ここでは、法定相続人の範囲と順位についてご説明します。
配偶者は常に法定相続人
被相続人の配偶者は、常に法定相続人となります。
配偶者の条件は、被相続人と正式な婚姻関係にあることです。例えば、被相続人が亡くなったときに一緒に住んでいなかったり、離婚調停の途中であったりしても、被相続人が亡くなった時点で婚姻関係にあれば法定相続人となります。
ただし、配偶者が被相続人の財産に対する相続の権利を放棄(相続放棄)した場合は、相続人になりません。
配偶者は常に法定相続人となりますが、ほかの親族については「相続順位」が決まっています。相続順位とは、相続人となる優先順位のことです。どのような順番となっているかを確認していきましょう。
第1順位は被相続人の子(直系卑属)
相続において最も優先されるのは、被相続人の子です。「直系(ちょっけい)」とは直接的に親子関係でつながっている親族のことです。また「卑属(ひぞく)」とは、被相続人よりも下の代のことを意味し、子や孫、ひ孫を指 します。
配偶者と子がいる場合、それらが法定相続人となります。もしも配偶者がいない場合には、子のみが法定相続人です。また、配偶者がすでに離婚している場合、配偶者には相続権はありませんが、被相続人との間に子がいる場合は、その子は相続人となります。
被相続人に子がいないときは、第2順位へと権利が移ります。ただし、子がいたとしても、相続を受けるべきその子が亡くなっていた場合、その子に子(被相続人にとっての孫)がいるときは、孫が代わりに相続人となります。これを「代襲相続」といいます。
孫も亡くなっていて、さらに下にひ孫がいれば、代襲相続は続くのです。第1順位では、直系卑属に対しては何代でも代襲相続できるとされています。
しかし、被相続人の子が相続放棄している場合、代襲相続をすることはできません。相続放棄をすると最初から相続人とはならなかったと判断されるため、第2順位へと移ります。
胎児にも相続権はある
また、母である配偶者のお腹の中にいる胎児にも相続権はあります。基本的には、被相続人が亡くなったときに相続人が存在していなくてはいけません。しかし、被相続人が死亡した後に生まれた子に相続権がないのは、その子にとっては大きな不利益となります。そのため民法では、胎児は「すでに生まれたもの」として相続権を認めているのです。ただし、死産であったときには相続権が認められません。
第八百八十六条 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。
2 前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。
第2順位は被相続人の親(直系尊属)
次に優先されるのが親です。「尊属(そんぞく)」とは、被相続人よりも上の代のことを意味し、父母や祖父母を指します。先ほどと考え方は同じで、配偶者と親がいる場合、配偶者と親が法定相続人となり、配偶者がいない場合には親のみが法定相続人です。
一番優先される子が亡くなっているときはその子(孫)が代襲相続できることを解説しましたが、親の場合も同じです。親が亡くなっていたとしても、祖父母がいる場合には代襲相続ができるとされています。第2順位においても、直系尊属に対しては何代でも代襲相続ができるのです。
もちろん、第1順位と同じように親が相続放棄をしている場合、祖父母は代襲相続できません。
第3順位は被相続人の兄弟姉妹
配偶者と兄弟姉妹がいる場合、配偶者と兄弟姉妹が法定相続人となり、配偶者がいない場合には兄弟姉妹のみが法定相続人となります。
なお、兄弟姉妹の代襲相続が発生するのは子(被相続人にとっての甥や姪)までです。第3順位においては代襲相続は1代限りです。こちらも、兄弟姉妹が相続放棄している場合、その子(甥や姪)は代襲相続できません。
直系とは、祖父母、親、子、孫など祖先から子孫へと直通する系統をいいます。また兄弟姉妹、おじ・おば、甥・姪などの親族は傍系といいます。一方、尊属とは本人を基準にして前の世代の親族のことで、卑属とは後の世代です。例えば、直系の中でも祖父母や父母は直系尊属となります。また、子や孫などは直系卑属となります。なお、養父母は直系尊属に、養子は直系卑属に含まれます。
相続人の範囲に入るもの、入らないもの
ここでは相続人の範囲に関する注意点を解説します。
内縁の妻や事実婚
内縁の妻や事実婚の場合は、法定相続人となることはできません。配偶者は常に法定相続人になりますが、内縁の妻や事実婚は法律上の婚姻関係にないため、配偶者として認められていないのです。
養子
養子は、法定相続人となることができます。実子でなくても養子縁組をおこなうことで、法律上の親子関係を生じさせることができるからです。
また、後述しますが、法定相続分についても、実子と養子で差はありません。
相続人が亡くなっている場合
相続が発生したときに相続人が亡くなっているときは、代襲相続が発生します。
第1順位と第2順位では何代も代襲相続できますが、第3順位では1世代のみの代襲相続となります。また相続人が相続放棄している場合には代襲相続できません。ただし、相続廃除や相続欠格の場合は代襲相続が可能です。
法定相続人の行方がわからない場合
法定相続人の行方がまったく分からない、連絡が取れないというときは、失踪宣告の手続きをおこなうことも考えられます。
相続人が複数いるけれど遺言書はなく、遺産の分割方法が定まらない場合は、法定相続人が集まって財産をどのように分けるか協議することがあります。これを「遺産分割協議」といいます。
遺産分割協議には法定相続人全員の参加が必要です。1人でも法定相続人がいないと協議を進められないため、相続人が失踪して長く行方不明であるときや、まったく連絡が取れないときには失踪宣告手続きを検討してみましょう。
遺産分割協議の結果を書面にまとめたものが遺産分割協議書です。遺産分割協議書は、故人の預金を移す際や不動産登記をおこなう際など、被相続人の遺産を誰に引き渡すのかを証明する書類として用いられます。遺産分割協議書には相続人全員の同意が必要です。なお、遺言書が存在しているのであれば、基本的に遺産分割協議は必要ありません。
法定相続人がいない場合
法定相続人に該当する人が1人も存在しない、または相続人が全員相続放棄をするなどして相続人がいない場合は、被相続人の財産は国庫に帰属することになります。相続発生後、家庭裁判所が相続財産管理人を決め、その管理人が相続人の存在を探すことになります。
相続人や相続債権者(被相続人に対する債権者)、特別縁故者(被相続人と生計を同一にしていた者や、被相続人に対して献身的に療養看護を尽くした者など)が一定期間現れないと、最終的に国庫に帰属することとなります。
▼あなたに必要な相続手続き1分で診断できます。▼推定相続人と法定相続人の違い
亡くなった人の財産を引き継ぐ相続人には、民法によって定められた法定相続人のほかに、推定相続人もあります。
推定相続人とは、現時点で相続が発生していなくても、相続が発生した時点で相続人になる人のことです。状況によっては相続人ではなくなるため、推定という言葉がついています。例えば次に挙げる事象が起こったとき、その時点で推定相続人ではなくなります。
- 相続が開始される前に推定相続人が死亡した
- 相続が開始される前に推定相続人が失踪宣告を受けた
- 推定相続人の廃除請求(※1)が認められた
- 推定相続人が相続欠格事由(※2)に該当する
(※1)廃除請求
被相続人が相続人から虐待や侮辱を受けたなどの理由により、家庭裁判所に請求して相続人の権利を廃除すること
(※2)相続欠格事由
相続人が犯罪など法律を犯すようなことをしたことによって、相続人としての資格を失うこと
法定相続人の法定相続分
法定相続人は、相続の割合も法律で定められています。
法定相続人と相続の割合
法定相続人の組み合わせ | 法定相続分 | |
---|---|---|
配偶者のみ | 配偶者:全部 | |
子のみ | 子:全部 | |
親のみ | 親:全部 | |
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹:全部 | |
配偶者+子 | 配偶者:1/2 | 子:1/2 |
配偶者+親 | 配偶者:2/3 | 親:1/3 |
配偶者+兄弟姉妹 | 配偶者:3/4 | 兄弟姉妹:1/4 |
上の表は相続人それぞれの割合を表に整理したものです。この表をもとに解説していきます。
配偶者が相続人の場合
配偶者は常に法定相続人です。財産を受け取る割合は、ほかに誰が法定相続人となるかによって変わります。上の表における「配偶者」が該当の列です。
- 配偶者しかいないときは、配偶者はすべての財産を受け取ることができます。
- 配偶者と直系卑属(子や孫など)のときは、配偶者は2分の1を受け取ることができます。
- 配偶者と直系尊属(親や祖父母)のときは、配偶者は3分の2を受け取ることができます。
- 配偶者と兄弟姉妹のときは、配偶者は4分の3を受け取ることができます。
直系卑属の子が相続人の場合
直系卑属である子が相続人の場合、配偶者がいるかいないかで割合が変わります。
また配偶者と異なり、子については複数人いる可能性があるため、子1人あたりの割合を求めるときには別途計算が必要です。上の表における「子」が該当の列になります。
- 直系卑属(子や孫など)しかいないときは、すべての財産を受け取ることができ、それを人数で分けます。例えば、子が3人いる場合には1人あたり3分の1です。
- 直系卑属(子や孫など)と配偶者のときは、2分の1を受け取ることができます。それを人数で分けるため、子が3人いる場合は1人あたり6分の1です。
直系尊属の親が相続人の場合
直系尊属である親が相続人の場合、配偶者がいるかいないかで割合が変わります。
また、親についても複数人いる可能性があるため、直系卑属の場合と同様に1人あたりの計算が必要です。上の表における「直系尊属」が該当の列になります。
- 直系尊属(親や祖父母など)しかいないときは、すべての財産を受け取ることができ、それを直系尊属の人数で分けます。たとえば2人いる場合、1人あたり2分の1です。
- 直系尊属(親や配偶者など)と配偶者のときは、3分の1を受け取ることができます。さらに直系尊属の人数で分けるため、2人いる場合には1人あたり6分の1です。
兄弟姉妹が相続人の場合
最後は、兄弟姉妹が相続人の場合です。
兄弟姉妹が相続人の場合も配偶者がいるかいないかで割合が変わります。また、兄弟姉妹も複数人いる可能性があるため、1人あたりの計算が必要です。上の表における「兄弟姉妹」が該当の列になります。
- 兄弟姉妹しかいないときは、すべての財産を受け取ることができ、それを兄弟姉妹の人数で分けます。例えば4人いる場合、1人あたり4分の1です。
- 兄弟姉妹と配偶者のときは、4分の1を受け取ることができます。それをさらに兄弟姉妹の人数で分けるため、4人いる場合は1人あたり16分の1です。
法定相続分に関する注意点
ここでは、相続割合に関する注意点について解説します。
非嫡出子の法定相続分
非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいい、婚姻関係のある男女の間に生まれた子を嫡出子といいます。
平成25年に民法が改正され、2020年現在、嫡出子と非嫡出子の相続割合は同等です。改正される以前では、非嫡出子の割合は嫡出子の2分の1とされていました。
兄弟姉妹と父母が違う場合の法定相続分
被相続人の兄弟姉妹には、異父母兄弟姉妹がいる可能性があります。被相続人と一方の親が違う場合、相続の割合は父母が同じ兄弟姉妹の2分の1です。
例えば、被相続人に兄と弟がいたとして、兄は父母が同じ、弟は父のみが同じとします。遺産総額が3,000万円とした場合、父母が同じである兄には2,000万円、父のみが同じである弟には1,000万円が相続されます。
▼あなたに必要な相続手続き1分で診断できます。▼遺産分割の流れ
相続が発生したときに、相続人同士の遺産分割はどのような手順でおこなうのか、ここでは大まかな流れを解説します。
遺言書があるか確認
最初にやるべきことは、遺言書の存在を確認することです。
遺言書は、「誰にどのくらいの遺産を渡すか」という、被相続人の意思が記されているものになります。遺言書が見つかった場合は原則、記載されている内容に従って相続をおこないましょう。ただし、民法の規定に従って作成されていない遺言書には法的効力がないので注意が必要です。
相続人らの合意した遺産分割後になってから遺言書が見つかった場合でも、相続人が集まって再分割のための協議をおこなう必要があります。このとき遺言書に相続人以外の名前が書かれている場合には、その方を含めて協議をおこなわなければなりません。
遺言書が見つかったとしても、その遺言書に相続人の名前がまったく書かれていないケースもあります。
例えば、遺言書にすべての財産を「第三者Aさんに渡す」と書かれているような場合です。このようなときは、相続人は遺留分を請求する権利があります。
遺留分とは、相続人が最低限の遺産を受け取ることができる割合で、その割合は「直系尊属のみが法定相続人の場合」は遺産全体の3分の1、その他の場合は2分の1とされています。遺言書に相続人の名前がまったく書かれていない場合でも、被相続人との関係に応じて、遺産を相続する権利を主張できます。
ただし、法定相続分と遺留分の割合は異なるため、注意が必要です。
遺留分の割合
相続人の組み合わせ | 遺留分 | 各人の遺留分 | |
---|---|---|---|
配偶者のみ | 1/2 | 配偶者:1/2 | |
子のみ | 1/2 | 子:1/2 | |
親のみ | 1/3 | 直系尊属:1/3 | |
兄弟姉妹のみ | なし | なし | |
配偶者と子 | 1/2 | 配偶者:1/4 | 子:1/4 |
配偶者と直系尊属 | 1/2 | 配偶者:2/6 | 直系尊属:1/6 |
配偶者と兄弟姉妹 | 1/2 | 配偶者:1/2 | 兄弟姉妹:なし |
遺言書には大きく分けて、自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの種類があります。
自筆証書遺言とは、遺言者本人が紙とペンを使い自筆にて作成する形式です。保管場所も特に定められていませんが、紛失・亡失や相続人による遺言書の廃棄、隠匿、改ざんなどを防ぐため2020年7月10日から法務局で遺言書を保管する自筆証書遺言保管制度が始まりました。
公正証書遺言は、2人の証人の立ち会いのもと、公証人が遺言者から遺言の内容を聞き取りながら作成します。作成した遺言書は公証人役場で保管されます。
秘密証書遺言は、遺言者本人が作成した遺言書を2人の証人が同行して公正役場に提出し、遺言書の存在を保証してもらう形式です。公正証書遺言と異なり、証人や公証人は遺言の内容は知りません。遺言書があるという事実だけ確認します。
これらの普通方式遺言のほか、事故や災害などで身に危険が迫っているときに利用する特別方式遺言もあります。
法定相続人を確認
遺言書の存在が確認できない場合は法定相続人が誰になるのかを確認しましょう。前述した相続人の範囲や順位に従って法定相続人を特定します。トラブルを避けるためにも戸籍の取得などをおこない、法定相続人を確定しましょう。
相続財産の内容を確認
次に遺産の内容を確認します。相続財産には、借金などのマイナス財産も含むので注意しましょう。被相続人の財産がマイナスであるとき、相続放棄を選択するのが適切である場合もあります。
不動産については、登記簿謄本を取得したり、土地の権利書から内容を調べたりして資産状況を確認してください。預貯金については、各銀行窓口にて残高証明書を発行してもらいましょう。
相続人であることが証明できれば、残高証明書を取得することができます。さらに株や債券などの有価証券、貴金属類や自動車などの資産も確認するようにしましょう。
遺産分割協議を行う
最後に、遺産分割協議をおこないます。遺産分割協議には、相続人全員の参加が必要です。全員が揃わない状態で協議をおこなうと、無効とされるので注意しましょう。
行方不明、あるいは連絡のつかない相続人がいる場合、失踪宣告の手続きをおこないます。この手続きによって法律上の死亡と認定されれば、その人は相続人から除外されます。
もしも相続人に未成年者が含まれている場合には、未成年者の親権者が法定代理人として協議に参加しなくてはなりません。このとき、親権者自身も法定相続人である場合には、別途特別代理人を選任する必要があります。
遺産分割の方法
最後に、遺産の分割にはどのような方法があるのか確認していきましょう。
現物分割
現物分割は、遺産をそのまま現物で分ける方法となります。配偶者には土地や建物の不動産、長男には株や債券などの有価証券、次男には預貯金とするといった分割方法です。
この分割方法では、現物をそのまま取得することになるので、遺産をそのまま残すことができます。ただし、遺産を均等に分けることが難しい場合、不公平になりやすく、納得しない相続人が出てくる可能性もあります。
換価分割
換価分割は、遺産の全部または一部を現金化し、相続割合に従って現金を分ける方法となります。
メリットは、遺産の全部または一部を現金化するため、分けやすく、公平に分割できる点にあります。一方で、現金化することで発生する手数料などにより、遺産総額が減ってしまう可能性もあります。
代償分割
代償分割は、不動産など分割が難しい遺産を承継した相続人が、ほかの相続人に代償金で相続分を支払う方法です。公平に遺産分割でき、遺産をそのままの形で残せるというメリットがあります。
共有分割
共有分割は、不動産など相続財産を複数の相続人が共同で所有する方法です。
メリットは、遺産をそのまま残せる点と遺産分割に手間がかからない点です。しかし、単に問題を先送りしていることにすぎないため、相続の問題が長期化する可能性があります。
また、共有となった不動産を将来的に売却するときには共有者全員の承認が必要となり、共有者が亡くなったときには相続人の名義が増えるため、手続きがさらに複雑になることには注意が必要です。
遺産分割についてもっと詳しく知りたい方は「遺産分割について|遺産分割のための手続きと注意点。トラブルを防ぐためのポイント【行政書士監修】」をご参照ください。
▼あなたに必要な相続手続き1分で診断できます。▼相続人に関するよくある疑問
相続人に関するよくある疑問とその回答をまとめます。
Q.被相続人の親は相続人になりますか?
被相続人の親は、相続順位としては2番目です。つまり、第1順位である被相続人の直系卑属の子がいない場合にはじめて親が相続人となります。
気を付けるべき点は、第1順位の子が亡くなっていたとしても、孫がいる場合に代襲相続が発生し、その孫が相続人となります。代襲相続が発生する場合、第2順位である親は相続人にはなれません。
Q.遺言書に被相続人の配偶者の名前がなかった場合、相続できないのでしょうか?
遺言書に被相続人の配偶者の名前がなくても、相続人には最低限の遺産を取得できる権利があります。これを遺留分権利といいます。
Q.法定相続人のひとりと連絡がつきません。その人が不在で遺産分割協議をおこなっても問題ないでしょうか?
もしその状態で協議をおこなったとしても、基本的に無効となります。遺言書がない場合、相続人全員で遺産の分け方を話し合うことと定められているからです。
このようなときは、失踪宣告の手続きをすることが考えられます。失踪宣告とは、行方不明者を法律上死亡したものとして扱うための手続きです。
まとめ
相続人の言葉の定義から相続人の範囲や順位、相続割合まで解説しました。今回の記事を整理します。
- 相続人は相続を受ける側の人のこと
- 相続人の範囲や優先順位は法的に決まっている
- 遺言書がない場合の相続割合は法的に決まっている
- 遺言書に相続人の名前がない場合でも、最低限相続を取得できる権利(遺留分)がある
実際に自分の家族構成では相続人や割合がどうなるか確認したい方は、専門家と相談してみると良いでしょう。
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▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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