【完全解説】預金相続の手続き方法|引き出しの必要書類から改正相続法「一部払戻し制度」まで【行政書士監修】
預金は最も身近な金融資産のひとつ。遺産相続の対象となる財産は様々ありますが、中でもほとんどの方がお持ちなのが銀行などの預金ではないでしょうか。
口座名義人が亡くなった場合、相続人は金融機関で、故人の預金口座に残された預金を払戻ししたり、相続人の口座に移すなど、相続の手続きをおこなう必要があります。
この記事では、預金を相続する手続きの流れや、相続の際に必要な書類、相続する際の注意点、約40年ぶりに改正された民法(相続法)の預金に関する変更点などについてご説明します。
目次
預金相続の手続きの流れと必要書類
預金を相続するには、相続人はまず取引金融機関に口座名義人(被相続人)の死亡を連絡する必要があります。連絡を受けた金融機関は、被相続人の預金を凍結します。その後所定の手続きを踏むことで故人名義の口座は解約され、相続人は預貯金の払戻しなどを受けることができるようになるのです。
金融機関における預金相続手続きの大まかな流れは、どこの金融機関でもほぼ同じです。ここでは一般的な手続きの流れを説明します。細かい部分については金融機関によって異なりますので、それぞれの取引金融機関に個別に確認しましょう。
①被相続人の預金口座の把握
まず、被相続人が持っていた預金口座を把握することから預金の相続はスタートします。
遺言書や財産目録などで分からない場合は、
- キャッシュカードや通帳
- トークン(ワンタイムパスワード生成機)
- 金融機関からの郵便物やメール
- ノベルティグッズ
などから取引のあった金融機関を特定しましょう。
②相続発生の連絡
取引のあった金融機関を特定できたら、それぞれの金融機関に口座名義人(被相続人)の死亡を連絡します。連絡方法には、次の4つの方法があります。
金融機関への相続発生の連絡方法
- 電話(相続専用ダイヤル)
- Web(専用フォーム)
- 来店
金融機関やお取引内容によって、利用できる連絡方法が異なるので、それぞれの金融機関のHPなどで調べてみましょう。
口座名義人の死亡連絡を受けた金融機関は、この段階で預金口座を凍結します。すると被相続人の口座からは入出金などの取引ができなくなります。
公共料金の支払いなど、故人の預金口座から口座振替で支払いをしている場合、入金口座として故人の預金口座を利用している場合など、引き落とし口座や入金口座を相続人のものに変更する、ほかの方法での支払いとするなどの対応が必要になります。
同じ金融機関内に複数の口座がある場合、一度の連絡でまとめて手続きを取ることができる金融機関とできない金融機関があります。店舗ごとで情報を管理するタイプの金融機関では、複数の支店で別個に、死亡の凍結の連絡や残高証明書の発行請求が必要です。
また、複数の金融機関に預金口座がある場合は、それぞれの金融機関に相続発生の連絡をして、金融機関ごとに手続きをする必要があります。
③残高証明・取引履歴の開示・照会請求
被相続人の預金口座にどのくらいの預金があるのか、金融機関で確認し具体的な相続財産を把握します。場合によっては銀行など金融機関の窓口で残高証明書を取得しましょう。
残高証明書とは、特定の日時に口座にどのくらいの残高が残っていたかを証明するものです。金融機関によって具体的な手続きは異なりますが、同じ金融機関の場合、複数の支店に口座があっても、ひとつの窓口で残高証明書を取得できる場合もあります。
残高証明書の発行には、所定の手数料が必要です。また、すべての相続人ではなく、ひとりの相続人の請求で対応してもらえます。
④相続届・必要書類の準備
預金相続に必要な書類を準備します。
通常、相続届を提出する際にはそれぞれの金融機関所定の書類が別途必要となったり、印鑑証明書などの発行期限が決められている場合が多いので、詳しくはそれぞれの金融機関にお問い合わせ下さい。遺言書や遺産分割協議書の有無によっても必要な書類は異なります。
また複数の金融機関に被相続人の預金口座がある場合は、あらかじめ所定の相続届の用紙を準備し、すべての相続人の戸籍謄本や印鑑証明など必要な書類をまとめて取得しておくと、手続きがスムーズになります。
共通して必要な書類など
- 身分証明書
- 預金通帳
- カード
- 貸金庫の鍵 など
遺言書がある場合に必要な書類など
- 遺言書
- 家庭裁判所の検認調書または検認済証明書(公正証書遺言の場合は不要)
- 被相続人の戸籍謄本または全部事項証明(死亡が確認できるもの)
- 預金相続人(遺言執行者がいる場合は遺言執行者)の印鑑証明書
- 遺言執行者の選任審判書謄本(裁判所で遺言執行者が選任されている場合)
遺言書がない場合
- 遺産分割協議書(遺産分割協議書がある場合のみ。法定相続人全員の署名・捺印があるもの)
- 被相続人の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡まで連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
- 相続人全員の印鑑証明書
家庭裁判所による調停調書・審判書がある場合
- 家庭裁判所の調停調書謄本または審判書謄本(審判書上確定表示がない場合は、さらに審判確定証明書も必要)
- 被相続人の預金口座にある預金を相続する相続人の印鑑証明書
⑤書類の提出
金融機関所定の届出書類に必要事項を記入し、公的書類と併せて提出します。
届出書類には、相続人全員の署名捺印が必要なものもあります。なお、金融機関によっては、先に公的書類を提出して相続確認作業を行う場合もあります。具体的な手続きの流れはそれぞれの金融機関で確認してください。
⑥払戻しなどの手続き
必要書類を提出後、名義変更と払戻しなどの手続きが行われます。手続きには日数がかかる場合が多いので、余裕を持って手続きをおこなう必要があります。
なお、登記所(法務局)に相続関係を一覧に表した図「法定相続情報一覧図」と、戸籍謄本、除籍謄本などの束を提出することで、提出された一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してもらうことができます。これによって手続きの際に、戸籍謄本などの束を提出せずに済みます。
それぞれの金融機関に法定相続情報一覧図の写しが利用できるかどうか、確認しましょう。
被相続人と相続人の戸除籍謄本などの戸籍関係書類は、法定相続人を全員把握するために必要です。平成29年5月29日から法定相続情報証明制度が開始され、法定相続情報一覧図の写し(A4サイズ)を戸除籍謄本等の束の代わりに提出できるようになりました。法定相続情報一覧図の写しは複数枚同時に発行できる上、無料で発行できます。利用には最初に手続きが必要ですが、相続手続きの効率化やコストの削減が可能です。
名義変更の期限と注意点
預金の相続には基本期限はありません。
しかし、相続税の申告と納付がある場合には、相続の開始があったことを知った日から10か月以内に申告・納付をおこなわなければいけません。従って、相続する預金を納付資金に充てる場合は、それまでに相続手続きを済ませておく必要があります。
また、相続手続きの際に金融機関に提出する印鑑証明書などの公的書類には、発行後3~6か月といった期限も設けられています。相続人全員の印鑑証明書を取り直すことは、費用も手間もかかります。
そのほか、預金口座を数年放置しておくと未利用口座管理手数料がかかってくる金融機関もあります。さらに10年間放置していると、休眠預金となりその後の手続きはさらに面倒になってしまいます。
従って、預金の名義変更に期限はありませんが、ほかの相続手続きと併せて効率的に進めていくことをおすすめします。
平成30年1月1日に休眠預金等活用法が施行されました。平成21年1月1日以降の取引から10年間お取引がない預金(預金保険制度対象のもの)は休眠預金となります。休眠預金は、預金保険機構に移管され、民間公益活動に活用されます。
休眠預金となった後も取引のあった金融機関で引き出しは可能ですが、別途手続きが必要となってしまうので注意しましょう。
預金口座の凍結とは
預金口座を開設していた人が亡くなると、銀行などの金融機関で相続手続きが必要になります。亡くなった人(被相続人)の預金口座を解約して現金化したり、そのまま残しておくなどの選択を行います。
また口座名義人が亡くなった場合、銀行や信託銀行などの金融機関は口座名義人の死亡を知ると、その預金口座を凍結します。
預金口座を凍結する理由
故人の預金口座を凍結する理由には、まず相続の問題があります。口座の名義人である被相続人が死亡し、相続手続きがおこなわれる前に口座から預金が引き出されると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。こうしたトラブルを予防するために、金融機関は故人の預金口座を凍結し、出入金を停止します。
このほか、口座名義人のいない口座が犯罪なとに利用されることを防ぐ、銀行が故人にお金を貸し出していた場合など、債務整理がおこなわれた際には貸し倒れを防ぐといった理由もあります。
預金口座が凍結されるとどうなるのか
預金口座が凍結されると、原則、出金・入金・振込・振替すべての手続きができなくなります。
ご遺族の方が預金を下ろそうとしても下ろすことはできません。下ろすだけではなく、給与などの振込入金、クレジットカードや公共料金の自動引き落しなどもできなくなるので注意が必要です。
金融機関が死亡の事実を知るきっかけ
金融機関が口座名義人の死亡を知る主なきっかけは、遺族からの連絡や問い合わせです。死亡届を役所に提出したことで自動的に預金口座が凍結される、というわけではありません。
ただし、お悔やみ欄などの新聞記事、葬儀社の葬儀看板、そのほか取引先からの情報などで死亡を知るということもあり、このような場合の多くにおいて家族への事前確認はおこなわれません。このため、「知らない間になぜか口座が凍結されていて、被相続人の口座からまったくお金を引き出せなくなってしまった」ということもあります。
預金相続に対する考え方の変遷
預貯金債権の相続に関する考え方は、これまで移り変わりがあります。預金相続に対する法的な解釈の移り変わりと金融機関の対応、そして平成30年に約40年ぶりに改正された相続法の内容について見てみましょう。
可分債権としての取扱いから遺産分割協議による分割へ
従来、預金は遺産分割の対象にはならず、法定相続分に基づいて自動的に分けられるものと考えられていました。
民法債権 第427条
数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。
民法の規定に基づき、最高裁は「預貯金は分割可能な債権であり相続と同時に各相続人に当然に分割される。各相続人はその相続分に応じて自分が相続した預金を、単独で引き出すことができる。」とする判決を下してきたのです。
(昭和29年4月8日民集8巻4号819頁、平成16年4月20日判時1859号61頁)
しかし、実際の手続きでは、多くの金融機関ではトラブルを未然に防ぐため、遺言書や相続人の全員の同意書の提出がなければ払戻しをしてくれませんでした。
また、相続人にはさまざまな事情があり、預金を法定相続分に基づいて分けることが必ずしも平等とは言えません。遺族の一人が財産を生前贈与されていた場合も、その分を考慮しないまま法定相続分通りに預金を振り分けるのは、不公平ではないかという問題もありました。
こうした金融実務との乖離や、相続トラブルや不公平感を踏まえて、平成28年の最高裁判所大法廷決定で「預貯金債権は相続開始と同時に当然に分割されることはなく、遺産分割の対象に含まれる」との判断が下されました(平成28年12月19日民集70巻8号2121項)。
ここで、法的な解釈の上でも、各相続人は相続分相当額の支払いを単独で求めることはできず、遺産分割協議による相続人全員の同意があって初めて預貯金の引き出しを請求できることになったのです。
判例に基づく法的な解釈の変遷
以前:
- 相続分に応じて自動的に分割され単独で引き出せる
現在:
- 預貯金は自動的に分割されない
- どのように分割するかは遺産分割で決める
このように、平成28年の最高裁の決定により、可分債権としての取扱いから遺産分割協議による分割へと預貯金債権に対する裁判所の見解が変わったことで、実務上だけでなく法的な解釈の上でも遺産分割協議後でないと預金の引き出しはできなくなりました。
遺産分割が完了するまで預金の引き出しができなくなると、被相続人が世帯主で家計の中心だった場合、家族は葬儀費用・病院への支払い・生活費などの資金が引き出せないといった問題に直面することになります。
このような問題やそのほかの預金相続に関する問題を解決するために、平成30年7月の民法(相続法)改正では、預金相続についての改正も行われました。
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民法では、相続トラブルを防ぐために相続の基本的なルールが定められています。民法の中でも主に民法第五編(882条~1044条)など、相続について規定した部分を「相続法」と言います。
相続法は、昭和55年以降大きな改正は行われていませんでした。しかし、高齢化など社会環境の変化に対応するため、平成30年7月に約40年ぶりに大きな見直しが行われました。
この改正によって、残された家族が安心して安定した生活を過ごせるようにするための方策などが導入されることになりました。預金相続についての改正点は以下の2点です。
預金相続に関する変更点
- 遺産分割前の払戻し制度の創設など
- 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
家庭裁判所の判断なく払戻しが可能に。遺産分割前の相続預金の払戻し制度
遺産分割前に、預金の引き出しができないことから生じる問題を解決するため、新たな制度が創設されました。「家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める制度」と「家事事件手続法の保全処分の要件を緩和した制度」に大分されるので、それぞれについて説明していきます。
家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める制度
(要点)
ア 家庭裁判所の判断を経ないで,預貯金の払戻しを認める方策
各共同相続人は,遺産に属する預貯金債権のうち,各口座ごとに以下の計算式で求められる額(ただし,同一の金融機関に対する権利行使は,法務省令で定める額(150万円)を限度とする。)までについては,他の共同相続人の同意がなくても単独で払戻しをすることができる。
【計算式】
単独で払戻しをすることができる額=(相続開始時の預貯金債権の額)×(3分の1)×(当該払戻しを求める共同相続人の法定相続分)
この制度の創設により、相続人は、定められた範囲内であれば、遺産分割協議の前でも単独で預金を払い戻せるようになりました。
払戻し額の上限
- 相続開始時の預金残高の3分の1に、自分の法定相続分を乗じた金額の範囲内
- 金融機関ごとに150万円まで
金融機関ごとの上限150万円は、標準的な当面の生活費や平均的な葬式費用を考慮して、法務省令において定められています。なお、この制度によって払戻した預金については、その相続人が遺産の一部の分割によって取得したものとみなされます。
【例】相続人が長男と次男の2名で、相続開始時の預金額がA銀行普通預金1,200万円、B銀行普通預金に600万円であった場合
長男は、
- A銀行
- 1,200万円×1/3×1/2=200万円 >150万円
- ⇒150万円払戻し可能
- B銀行
- 600万円×1/3×1/2=100万円<150万円
- ⇒100万円払戻し可能
つまり、A銀行とB銀行合わせて250万円を長男単独で払い戻すことが可能です。
払戻し制度を利用するための必要書類
便利に思える払戻し制度ですが、実は書類を集めるのは煩雑な作業です。以下のような書類が必要になります。
- 被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、 戸籍謄本または全部事項証明書 (出生から死亡までの連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
- 預金の払戻しを希望される方の印鑑証明書
特に戸籍を揃えるのは難しく、被相続人の出生からの死亡まで連なったものの取得には苦労される方が多くいらっしゃいます。出生から死亡までの戸籍は預金口座の解約をはじめとした各種相続手続きで必要になるため、払戻し制度のために書類を集めるのであれば結局のところ遺産分割協議書まで作成してしまったほうがスムーズともいえます。
家庭裁判所の判断で払戻しが可能。家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
(要点)
イ 家事事件手続法の保全処分の要件を緩和する方策
預貯金債権の仮分割の仮処分については,家事事件手続法第200条第2項の要件(事件の関係人の急迫の危険の防止の必要があること)を緩和することとし,家庭裁判所は,遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において,相続財産に属する債務の弁済,相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権を行使する必要がある認めるときは,他の共同相続人の利益を害しない限り,申立てにより,遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部を仮に取得させることができることにする。
仮分割の仮処分は、これまでも家事事件手続法に定められていましたが、要件が厳しく実際に利用するケースは稀でした。
今回の法改正では、家事事件手続法第200条第3項が新設され、その要件が緩和されました。具体的には、「急迫の危険の防止の必要があること」という厳しい要件が削除され「預貯金の仮取得の必要性があること」が要件に追加されたのです。
今回の要件緩和により、家庭裁判所が預貯金の仮取得の必要性があると認めるときは、ほかの共同相続人の利益を害しない限り、申立てによって遺産に含まれる預金の全部または一部を仮に取得させることができるようになりました。
ただし、この仮処分による仮分割は、遺産分割の審判または調停の申し立てがあることが前提となっています。仮分割だけを家庭裁判所に申し立てをすることができません。
遺産分割協議による遺産分割が難しい場合で、生活費の支払いなどの事情により、「家庭裁判所の判断を経ないで預貯金の払戻しを認める制度」で説明した、家庭裁判所の判断を経ないで払い戻せる金額以上の資金が必要な場合は、利用を検討されると良いでしょう。
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
相続開始後に共同相続人の一人が遺産に属する財産(預金)を処分した場合に、計算上生ずる不公平を是正する方策が新設されました。
相続開始後に、共同相続人の一人(処分者)が遺産に属する預金を勝手に処分してしまった場合、処分者以外の相続人の同意があれば、処分された預金を遺産分割の対象に含めることができます。払い戻された預金は、遺産分割で、払戻しを受けた相続人が取得するものとして調整します。この改正によって、不当な払い出しがなかった場合と同じように公平な遺産分割が可能となりました。
預金相続に関するよくある質問
これまで預金相続の手続きの流れや、法的な解釈の移り変わりや法改正について説明してきました。ここでは、預金を相続する上で疑問が生じやすい問題について回答していきます。
Q1.死亡直前の預金払い出しは相続上どうなる?
亡くなる3年以内に引き出した預金については、その使途が重要なポイントとなります。
使途によって相続の対象に含まれる場合と含まれない場合があります。
- 病院や介護の費用に使った場合
- 被相続人が亡くなるまでにかかった医療費や介護費用として使った場合、被相続人が必要なお金として使っているので相続財産の計算に含まれません。
- 土地などを買った場合
- 死亡直前に土地や株式などを購入していた場合は、評価額が購入時から変動していたとしても購入した資産が相続財産の対象となります。
- 生前贈与した場合
- 生前贈与は、節税対策として有効な手段ですが、相続税法上は亡くなる前3年以内に相続人や遺贈によって財産を取得する人へ贈与した財産については、相続財産と見なされます。これを生前贈与加算と言います。生前贈与加算の対象となった財産について、贈与時に支払った贈与税額は相続税額から差し引きます。一方、民法上は期間制限はなく、10年前の贈与でも特別受益にあたります(「兄弟で一人だけ大学に進学した」など)。
Q2.死亡直後の預金払戻しは相続上どうなる?
死亡直後に引き出した預金は、通常相続財産の対象となります。葬儀費用や医療費に充てるために相応の額を引き出した場合は、相続財産の対象外となりますが、領収証などの証拠となる資料はきちんと取っておきましょう。なお、葬儀費用については、相続税法上は考慮できる一方、民法上は葬儀社と契約した相続人個人の債務であるなどの違いがあります。
原則としては、相続財産は遺産分割協議が合意するまで手を付けないものです。相続放棄ができなくなるケースもあるので注意しましょう。
死亡直前直後の預金の引き出しは相続トラブルに発展しやすいので気を付けましょう。たとえ被相続人のために必要な資金使途であっても、事後報告であったり、不明瞭であれば問題になることもあります。 相続法の改正によって、相続人は単独で限度額以内の預金を引き出せるようにはなりましたが、相続トラブルを回避するためには、他の相続人にも事前に伝えて可能であれば同意を得ておくと良いでしょう。
Q3.相続後に預金が見つかった場合はどうなる?
申告のやり直しが原則必要です。遺産分割協議を最初からやり直すことも可能ですが、当初の遺産分割協議書をベースに、見つかった分だけを対象とした補足的な協議書の作成も可能となっています。
後から財産が出てくる可能性を考えて、当初の遺産分割協議書に「申告後に見つかった遺産は全て相続人〇〇が相続する」などと書いておくと、後々少額の財産が出てきた場合に便利です。
Q4.相続放棄するなら葬儀費用も遺産から出せないの?
過去の判例では、身分相応の妥当な葬儀であれば、被相続人の預金から葬儀費用を捻出しても相続放棄が認められたケースもあります。
とはいえ、被相続人の口座から1円でも動かしてしまうと相続放棄ができなくなってしまうリスクがあるのは事実。できる限り相続人個人の預金から葬儀費用を出すのが安全です。
Q5.名義預金って何?
相続で言う名義預金とは、被相続人が自分以外の名義で行っていた預金のことをいいます。例えば、世帯主である夫が妻名義の口座で貯金していた場合、その貯金は実態としては夫が貯めたお金であると言えます。夫が亡くなった場合、妻名義のその口座は名義預金と判断され、相続財産と見なされてしまう場合があるので注意が必要です。
名義預金かどうかの判定は、税務署が相続税申告後の税務調査で行います。近年の税制改正によって、相続税の課税対象者が増加するとともに、税務調査で申告漏れなどの不備を指摘される件数も増加しています。相続税調査の際に最も細かく調べられるのは、預貯金の動きで、申告漏れが指摘されるのも7割が「現金・預貯金等」です。
税務調査では、名義預金の有無を特にチェックしますので、名義預金と指摘されないか心配な口座があれば、早めに税理士に相談しておくと良いでしょう。
▼あなたに必要な相続手続き1分で診断できます。▼まとめ
以上、預金の相続について述べてきました。
私たち日本人は、現預金が家計の金融資産の約半分を占めています。預金の相続は誰にでも起こりうるものだと言えます。手続きの流れや注意すべきポイントを把握して、スムーズに相続手続きを進めてください。
平成30年に相続法が改正されたことで、従前より当面の生活資金などの引き出しもしやすくなっています。残された人が困らないように、必要であればそうした制度の活用も検討しましょう。
なお、相続人や相続する預金口座が多く手続きが大変な場合や、預金の相続についてお困りの場合は、ぜひ専門家に相談されることをおすすめします。
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