相続税、準確定申告の申告・納税期限を延長するには?|新型コロナウイルス感染症の影響がある場合
この記事はこんな方におすすめ:
新型コロナウイルス感染症の影響で、相続・贈与に関連する税務手続きを期限内におこなうのが困難な方
- (申請によって)感染者以外でも、相続税の申告・納税期限は延長できる
- (申請によって)死亡による準確定申告の期限も延長が可能
- (申請によって)教育資金の一括贈与非課税の特例でも、領収書提出期限の延長は可能
相続税の申告・納税は、相続開始があったことを知った日から10ヵ月以内と期限が定められています。この期限を過ぎてしまうと、加算税や延滞税などのペナルティが課されてしまいます。しかし新型コロナウイルス感染症の影響によって期限までの申告・納税が困難な場合は、個別の申請によって申告・納税期限の延長が認められることもあります。
この記事では、国税庁が公開する「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ(令和3年4月6日更新)」をもとに、相続に関連する申告・納税の手続きについてまとめています。
目次
相続税の申告・納税期限の延長はできる?
「災害その他やむを得ない理由により、その期限までに申告等の行為が物理的に行えない場合の救済措置」として、国税(所得税、法人税、相続税、贈与税、消費税など国に納める税金)の申告や納付などの期限は延長できると、法律で定められています。
国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から二月以内に限り、当該期限を延長することができる。
(国税通則法 第11条)
申告・納税期限を延長が認められるのは?
相続税の申告・納税期限の延長が認められるのは次のようなケースです。
相続人が新型コロナウイルス感染症に感染した場合
相続人が新型コロナウイルス感染症に感染し、相続税の申告・納税ができない場合、「その理由のやんだ日」から2ヵ月以内の範囲で、申告・納税の期限を延長できます。
新型コロナウイルス感染症に感染していない場合
相続人が新型コロナウイルス感染症に感染していない場合であっても、濃厚接触者として外出自粛要請がおこなわれるなど「自己の責めに帰さない理由」によって、期限までの相続税の申告・納税ができない可能性もあります。次のようなケースなどでも、個別の申請によって申告・納税の期限延長(個別延長)が認められます(国税通則法第11条、国税通則法施行令3条3項、4項)。
- 税務代理等を行う税理士(事務所の職員を含みます。)が感染症に感染したこと
- 納税者や経理担当の(青色)事業専従者が、感染症に感染した、又は感染症の患者に濃厚接触した事実があること
- 次のような事情により、納税者が、保健所・医療機関・自治体等から外出自粛の要請を受けたこと
感染症の患者に濃厚接触した疑いがある
発熱の症状があるなど、感染症に感染した疑いがある
基礎疾患があるなど、感染症に感染すると重症化するおそれがある- 新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき、生活の維持に必要な場合を除きみだりに自宅等から外出しないことが要請されていること
国税庁「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」より一部抜粋
なお、これらのケースに該当しない場合も、個別の申請により申告期限等が延長される場合がありますので、所轄の税務署へ相談してみることをおすすめします。
相続税の申告・納付期限の延長方法
相続税の申告・納付期限を延長するには、納税地を管轄する税務署長に対して、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」に「新型コロナウイルスの影響により」と記載し、提出する必要があります。
なお、より簡易的な手続きとしては、相続税の申告をおこなう際に申告書の右上の余白に、またe-Taxの場合は所定の欄に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載・入力することで申請が可能です*。申請書の書き方の詳細は、国税庁の「相続税の申告・納付期限に係る個別指定による期限延長手続の具体的な方法」をご確認ください。
*令和3年4月16日以後は、期限までに申告・納付等することができないやむを得ない理由を具体的に確認する必要があるため、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を作成し、提出する必要があります。
申請の期限は「災害その他やむを得ない理由」がやんだ日から2ヵ月以内
申告・納税期限の延長は、災害その他やむを得ない理由がやんだ日から2ヵ月以内に申請が必要です。延長後の期限は、「災害その他やむを得ない理由がやんだ日」から2ヵ月以内で税務署長が指定した日までです。
申告・納税期限を延長する際の注意点
相続税の申告・納税期限を延長する際に気を付ける点は、主に次のような点があります。
- 申請をおこなっていない相続人の申告・納税期限は延長されない
- (事前に申請書を出していない場合)相続税の申告をおこなった日が、納付の期限になる
相続税の申告・納税期限延長の申請は相続人が個別におこないます。相続人が複数いる場合、申請をおこなっていない相続人の期限は延長されないため、相続開始を知った日から10ヵ月以内のままです。
また、申告・納税期限を延長するには、申請書を出さずに相続税申告書に「新型コロナウイルスによる申告・納付期限延長申請」と記載する簡易的な方法*もあります。この場合、納税の期限は原則、申告書を提出した日です。
相続税の申告・納税が期限を過ぎると、加算税や延滞税などのペナルティが課されたり、さまざまな特例が適用されなくなる可能性もあるため、余裕をもって申請することをおすすめします。
準確定申告の申告・納付期限の延長
相続手続きに必要な税務申告は、相続税だけではありません。確定申告が必要だった人が確定申告書を提出せずに亡くなった場合、相続人が故人に代わって所得税の申告をおこないます。
これを準確定申告と言い、その期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヵ月以内です。新型コロナウイルス感染症対策の一環で、死亡による準確定申告も、令和3年2月2日から4月14日までの間に期限が到来するものであれば、申請によって期限が延長されます。
詳細は、国税庁の「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限の個別指定による期限延長手続の具体的な方法」をご確認ください。
教育資金の一括贈与非課税の特例の領収書提出期限
「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」は、父母や祖父母など(直系尊属)から教育資金を一括で贈与された場合、1,500万円までは贈与税が非課税になる制度です。
生前贈与による相続税対策としてこの制度を利用する方もいますが、そのためには信託銀行などに教育資金のための口座を開き、金融機関から「教育資金非課税申告書」を提出する必要があります。
学校など教育機関からの領収書を取り扱い金融機関に提出しますが、新型コロナウイルス感染症の影響で、学校などが休校となり領収書が受け取れないなど、「自己の責めに帰さないやむを得ない事由」によって期限までに必要な領収書を提出できない場合も、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出することで期限の延長が認められる可能性があります。
所轄の税務署に確認しましょう。金融機関との契約によっては、領収書などの提出期限が延長されない扱いとなっている可能性もありますが、このような場合は金融機関に相談する必要があります。
(参考)新型コロナウイルス感染症に関連した国税庁の取り組み
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に関し、国税庁では下記のような対応をおこなっています。
- 納税の猶予制度の特例の整備
- 申告所得税、贈与税や個人事業者の消費税の申告・納付期限の期限延長
- 相続税や贈与税の申告・納付期限の期限延長
- テレワーク等のための中小企業の設備投資税制の整備
- 中止等された文化芸術・スポーツイベントに係る入場料等の払戻請求権を放棄した参加者への寄附金控除の適用など
ご自身の状況に合わせ、利用できる制度がないか確認することをおすすめします。詳しくは、国税庁HP「新型コロナウイルス感染症に関する対応等について」もご確認ください。
まとめ
相続税や亡くなった人の準確定申告など、新型コロナウイルス感染症の影響による申告・納税期限の延長については、国も柔軟に対応する方針のようです。
国税庁が公開しているFAQでは、延長後の納付期限に間に合わない場合には、納税についての猶予制度を適用できる可能性も示唆しています(適用する場合は別途、税務署に申請手続きが必要になります)。まずは、各国税局の国税局猶予相談センターに電話で相談してみることをおすすめします。
なお、相続放棄をする場合も、「相続開始を知った日から3ヵ月以内」と家庭裁判所に申述する期限が定められています。新型コロナウイルス感染症の影響による相続放棄の期限については、「相続放棄の期間延長はできる?│新型コロナウイルス感染症の影響がある場合」をご覧ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、税理士に相続税申告を依頼した方のインタビューはこちら
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