相続放棄の期間延長はできる?│新型コロナウイルス感染症の影響がある場合
この記事はこんな方におすすめ:
新型コロナウイルス感染症の影響により、期限までに相続の承認や放棄ができない方
- 相続の承認・放棄の熟慮期間は延長できる
- 期間延長には家庭裁判所への申立てが必要(郵送でも可能)
- 熟慮期間延長の申立て、期間内の相続放棄・限定承認のいずれもせずに3か月経過した場合は単純承認とみなされる
定められた期間内に相続の承認(または放棄)をすることが難しい場合には、期間を延長できます。本記事では、新型コロナウイルス感染症の影響により、相続放棄などの決断に時間が必要な方に向け、相続の承認(または放棄)をおこなうべき期間の延長方法や、その概要について紹介します。
熟慮期間とは?
熟慮期間とは相続の承認・放棄をおこなうべき期間のことです。相続発生により自分が相続人となったことを知ったときから、3ヶ月の熟慮期間内に単純承認、限定承認、あるいは相続放棄のいずれかをおこなう必要があります。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
(民法 第915条)
上記にあるとおり、新型コロナウイルス感染症の影響などにより、期間内の承認(放棄)が難しいときは、申立てをおこなえば期間を延長できます。
単純承認・限定承認・相続放棄の違い
①単純承認:プラスの財産・マイナスの財産のすべてを相続する
単純承認では、借金等をあわせたすべての財産を相続します。被相続人に債務があった場合、相続人が借金の弁済義務も引き継ぐことになる点に注意しましょう。
相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。
(民法 第920条)
熟慮期間内に限定承認(あるいは相続放棄)をおこなわなければ、この単純承認をしたとみなされます。
②限定承認:プラスの財産の限度内でマイナスの財産を相続する
被相続人の財産(債務を含む)の全体が把握できない場合は、相続人が相続によって得た財産の範囲内で、被相続人の債務を引き継ぐことができます。
相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。
(民法 第922条)
③相続放棄:プラスの財産・マイナスの財産のすべてを放棄する
相続人が相続する財産には、被相続人が負っていた債務(借金等)も含まれます。被相続人の債務(借金等)を相続したくない場合は相続放棄が有効です。
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
(民法 第939条)
相続放棄をすると、債務以外に被相続人が有していた財産(土地や預貯金等の権利)も相続できなくなる点に留意しましょう。
熟慮期間の延長の方法と必要書類
熟慮期間が終わる前に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に行き、申立てをおこなえば、家庭裁判所が認めた期間だけ延長が認められます。必要書類がそろえば郵送でも手続きが可能です。
期限
熟慮期間内(自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内)
申立人
相続人を含む利害関係人、検察官
申立先
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
かかる費用
- 相続人1人につき800円(収入印紙)
- 連絡用の郵便切手
※申立てをおこなう家庭裁判所によって異なります。
必要書類
- 申立書
※書式や記入例は裁判所HP「相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立書」で確認できます。 - 被相続人の住民票除票(戸籍附票)
- 利害関係人からの申立ての場合は利害関係を証する資料(戸籍謄本など)
- 伸長を求める相続人の戸籍謄本
- その他の必要書類
※被相続人との続柄により異なります。詳しい内容は裁判所HP「相続の承認又は放棄の期間の伸長」でご確認ください。
提出する書類は各一通です。事前に準備できなかった書類がある場合は、申立後の追加提出が認められることがあります。
延長申立ては相続開始地を管轄する家庭裁判所でおこないます。被相続人の最後の住所地をもとに、裁判所HP「裁判所の管轄区域」で該当する裁判所を調べましょう。
熟慮期間を過ぎてしまった場合
期間内に相続放棄や限定承認の申述、熟慮期間延長の申立てをしなかった場合、相続人が単純承認をしたものとみなされます。被相続人の財産と債務(借金等)をすべて引き継ぐことになってしまうので、単純承認を避けたい場合は、必ず期日を守りましょう。
(参考)新型コロナウイルス感染症に関連した国税庁の取り組み
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に関し、国税庁では下記のような対応をおこなっています。
- 納税の猶予制度の特例の整備
- 申告所得税、贈与税や個人事業者の消費税の申告・納付期限の期限延長
- 相続税や贈与税の申告・納付期限の期限延長
- テレワーク等のための中小企業の設備投資税制の整備
- 中止等された文化芸術・スポーツイベントに係る入場料等の払戻請求権を放棄した参加者への寄附金控除の適用 など
ご自身の状況に合わせ、利用できる制度がないか確認することをおすすめします。詳しくは、国税庁HP「新型コロナウイルス感染症に関する対応等について」もご確認ください。
まとめ
相続の承認・放棄の概要と、熟慮期間延長に関するポイントは下記の3点です。
- 被相続人の財産(債務含む)を相続したくない場合は相続放棄をする
- プラスの財産の限度内で債務を相続したい場合は限定承認をする
- 熟慮期間は自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内(申立てをすれば延長可能)
詳しい内容については、法務省HP「新型コロナウイルス感染症に関連して,相続放棄等の熟慮期間の延長を希望する方へ」もご覧ください。
時間的に余裕がないときや、複雑な事情が絡む場合は、豊富な知識や経験をもつ専門家に相談するのも選択肢の一つです。「いい相続」ではお近くの専門家との無料相談をご案内できますので、相続の承認・放棄の件でお困りの方はお気軽にご相談ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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