死後事務委任契約は何ができる?どんな人に向いてる?できないことや費用や手続きの流れについても解説
夫が先立ち、一人暮らしが長くなった方や、生涯独身を貫いた方など、いわゆるおひとり様で過ごす方は、自分の死に備えて様々な準備をする「終活」を意識することは多いのではないでしょうか。
また、おひとり様ではないけれども、自分の死後、家族や親族には迷惑をかけたくない、絶縁状態である等事情があることで「終活」を考えておきたい人もいるでしょう。
この記事では、自分自身が亡くなったあとにしてほしいことを頼める死後事務委任契約について説明します。
死後事務委任契約とは
死後事務委任契約とは、死後の事務処理の全部または一部を第三者に依頼するために生前に結んでおく契約のことです。
もう少し大まかに表現すると「自分が生きているうちに、自分の死んだ後にしてもらいたいことをお願いする人を選び、その人との間に具体的に何をしてもらうのか契約をかわすこと」を意味しています。
死後事務委任契約はどんな人に向いてる?
死後事務委任は、自分の死後に頼れる人がいない人が考えるとよい生前対策です。主に以下のようなケースが考えられます。
- 親や配偶者、子どもがいない一人暮らしのいわゆる「おひとり様」
- 家族と絶縁状態にある人
- 家族に負担をかけたくない人、負担を軽くしてあげたいと思っている人
死後事務委任ではなにができる?
死後事務委任できる死後事務の内容は大きく3つに分けることができます。
- 行政機関への届け出
- 葬送に関する事務
- 生活に関する事務
次からは具体的な内容を紹介します。
1.行政機関への届け出
死亡届の提出、健康保険証や介護保険証、パスポートの返納、年金の手続きなどを委任できます。
2.葬送に関する事務
火葬、通夜や葬儀、納骨や法要の事務手続きなどを委任できます。
3.生活に関する事務
関係者への死亡の連絡、病院や介護施設への支払い、水道光熱費等公共料金の支払いと解約手続き、賃貸不動産の契約の解除や明け渡し、公共料金の支払や解約、インターネットやサブスク、SNS等のアカウント解約、PC、携帯電話の個人情報の抹消、ペットの引渡し・施設入所等などを委任できます。
このように幅広い内容について希望に合わせて自由に決めることができるのが死後事務委任契約です。
死後事務委任でできないことは?
死後事務委任ではできない内容は大きく3つに分けることができます。
- 生前のこと
- 法的にできないこと
- 遺言書に書くことで法的効力のあるもの
次からは具体的に解説していきます。
1.生前のこと
死後事務委任契約は依頼者が亡くなったあとに様々なことをしてもらうための契約なので、生前の財産管理や身の回りのことについては委任できません。医療行為への同意などもできません。
2.法的にできないこと
死後におこなうことですが、死亡届への署名(届出人に記載する人)については戸籍法第87条で決まっています。死後事務委任で前述に該当しない人へ依頼することはできません。
また、依頼者が亡くなった後の財産に関することや税務申告に対応を依頼することはできません。たとえば、遺贈や相続税の申告は死後事務委任で依頼することはできません。
3.遺言書に書くことで法的効力のあるもの
遺産分割の方法や、認知など身分に関する遺言書が効力をもつ事項については死後事務委任で依頼することはできません。
遺言書が効力をもつ事項については「遺言書の種類・書き方・作成方法や法的効力をわかりやすく解説」で詳しく解説しています。
上記のように、死後事務として委任できること、できないことがあるので、契約を検討する場合は専門家に相談するとよいでしょう。
死後事務委任の費用相場は?
気になるのは、死後事務委任契約にお金がかかるのか?ということでしょう。
依頼する相手は信頼できる友人や知人でも、行政書士、司法書士、弁護士などの法律家でも構いません。ただし、これら専門家の場合には費用が発生します。友人知人であれば無償で依頼することも可能です。
東京都の死後事務委任の相場
東京都に事務所がある行政書士、司法書士事務所の死後事務委任契約についての料金をを独自調査しました。結果は以下の表のとおりです。
東京都にある事務所54件の死後事務委任契約の料金の目安(令和5年4月現在)
値の種類 | 金額 |
---|---|
平均 | 109,136円 |
中央値 | 78,500円 |
最小 | 22,000円 |
最大 | 547,800円 |
安い金額のところは契約書の作成のみである場合があります。高額な事務所は任意後見や遺言書とセットになっている場合があり、事務所によってさまざまな特徴があります。そのため、一概に金額だけで比較はできないので、自分に合った内容を親身に考えてくれる死後事務委任を検討してくれる事務所を探しましょう。
死後事務委任契約の流れ
死後事務委任を契約する大まかな流れは以下の通りです。
-
- 契約の内容を作成
専門家や公証人の助言を得ながら、内容を決めていきます。
- 委任者の選定
委任者は、信頼できる人物であり、法的な手続きや財産の分割などに適切に対応できる人を選びましょう。
- 契約書の作成
専門家や公証人の助言を得ながら、死後事務委任契約を作成します。トラブル防止に公正証書にしましょう。
- 契約の保管
関係者や遺族にもその存在を伝えておきましょう。
- 契約の更新
生活状況や法的な変更に合わせて、契約を定期的に見直し、必要に応じて更新しましょう。
- 契約の内容を作成
まとめ
終活として準備できることは、死後事務委任契約以外にも遺言書の作成、家族信託、成年後見制度などもあります。
いずれもいい相続で専門家のご紹介が可能です。遠慮なくお問い合わせください。
※この記事は「【事例】身内のいないおひとりさまです。そろそろ老後の準備をしたいですが、どう備えればよいでしょうか?(66歳女性 資産5,500万円)」を再編集したものです。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に死後手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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