独身者が相続人ではない人に遺産を残すには?遺贈の方法や注意点
最近では結婚をしないという選択をする方も増えているので、独身のまま人生を終える人もこれからは多くなるでしょう。
もし、生涯未婚の人が、特定のだれかに遺産を残したいと思ったらどうすればいいでしょうか。
この記事では、具体的な例を使いながらわかりやすく解説していきます。
この記事の監修者
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
第三者に遺産を残す方法は?
長年独身をとおしてきたAさん。
一度病気で倒れてからは、デイサービスを利用するようになりました。
親身になって世話をしてくれる職員さんには本当に感謝をしていて、お礼を渡そうとしても、いつも断られてしまうそう。
それならと、自分の亡き後は自分の遺産の一部をこの方にもあげられないか?と考えるようになったそうです。
法律上の相続人ではない第三者に自分の死後、自分の財産を渡すことを「遺贈」といいます。
Aさんが通っているデイサービスの職員は法律上の相続人ではないので遺贈するためには遺言書を作成することが必要です。
遺贈とは
遺贈とは、遺言によってのみ行われる財産承継で、被相続人が財産を与える相手を遺言によって指定します。
遺贈する相手は特定の個人以外だけでなく、病院やNPO法人、教育機関などの団体や法人に設定することもできます。
そのため、Aさんは職員さんに遺贈を希望していますが、デイサービスを運営している会社等に遺贈をするという選択肢もあります。
なお、遺贈により財産を受けとる人を「受遺者(じゅいしゃ)」といいます。
遺贈についての詳細は「遺贈とは?包括遺贈と特定遺贈、相続・贈与との違いと税金について」を参照してください。
遺言書と遺書は違う!
遺言書といえば、便箋に自分の思いをしたため、封筒に入れて・・・というドラマや映画で見ることのある「遺書」を連想する方が多いのではないでしょうか。
ここで注意していただきたいのが、遺書と遺言書は違うものであるということです。
この違いをざっくりと説明すると、遺書は自由な形式で残された人に思いや気持ちを伝える「手紙」であるのに対し、遺言書は法律で決められた一定の方式にしたがって作成された書面を言います。
そのため、Aさんが確実に遺産を渡したいのであれば、遺書ではなく、法律上無効にならない遺言書を作成すべきなのです。
遺言書の形式には種類があるのですが、一番おすすめしたいのは「公正証書遺言」です。
公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書のことです。
遺言書に記載する内容(誰にどの遺産を相続させるか等)を決めた後、公証役場に赴きます。2名以上の証人の立ち会いのもとで、遺言の内容を公証人に伝えることで、公証人に遺言書を作成してもらって作成します。
公正証書遺言の原本は、作成後、公証役場において原則として20年間保管されます。
そのため紛失してしまう心配もなく、誰かに無断で書き換えられてしまうリスクもありません。
なにより、公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成するので、作成方法を誤ったために無効になってしまう可能性は低く、自分の遺志を叶えられるのが最大のメリットでしょう。
公正証書遺言の作成についての詳細は「公正証書遺言の作成方法/流れ・費用・必要書類と遺言書の種類別一覧」を参照してください。
推定相続人のことも考えて作成する
ここで、遺言書を作成するにあたり、もう一つ注意したいことがあります。
それは、推定相続人への配慮です。
推定相続人とは「仮にある人が亡くなった場合、その人の相続人になるであろうと想定できる人」のことです。
先述のAさんの場合、独身で、ご両親、お兄さんもすでに他界されていますが、亡くなったお兄さんには息子さんと娘さんがいます。
この、亡くなったお兄さんの子どもである甥と姪がAさんの推定相続人にあたります。
もし、Aさんが甥や姪は自分の気持ちをわかってくれるだろう・・・と思っていたとしても、実際にAさんが亡くなって甥や姪が遺言書を見たとき「どうして、赤の他人に遺産の一部を渡すの?何か騙されているのではないか?」と訝るかもしれません。
疑いから、いらぬ争いに発展してしまったら、折角の感謝の気持ちが無になるどころか相手に迷惑をかける可能性も大いにありえるでしょう。
そういった誤解を生じさせない対策も必要です。
このように遺言書を作成する際には様々な注意点や守るべきルールがあります。
もし、遺言書の作成を専門家に依頼をすれば、どんな文面にしたいかという相談もできて、原案もつくってくれますので、是非検討してみてください。
いい相続では、全国各地の相続の専門家と提携しており、お近くの専門家との無料相談をご案内することが可能です。お困りの方はお気軽にご相談ください。
この記事は「【事例】懇意にしているデイサービスの職員に遺贈したい(72歳男性 資産600万円)【行政書士執筆】」を再編集したものです。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きや遺言書の作成を依頼した方のインタビューはこちら
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