配偶者に遺産を残したくない!どんな方法がある?遺言や死後離婚の効果を解説
離婚をしたかったけれど経済的な理由で難しいので我慢してきたという方や、配偶者の借金で長年悩まされてきたが子どもがいるので我慢してきたという方が余命宣告を受け、自分の財産を配偶者に残したくないと思ったとき、それはどうやればできるのしょうか。
この記事では、遺産を相続させたくない人がいる場合の対策ついて解説していきます。
この記事の監修者
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
配偶者に全く相続させない方法はない
相続の目的には、法定相続人の生活を保障するという一面もあり、法定相続人である配偶者に全く相続させないという確実な方法はありません。
たとえば「配偶者には遺産を相続させず、子どもにすべて相続させる」といったことを遺言に書いたとしても、配偶者には遺留分という最低限の取り分がありますので、もし、配偶者が「遺留分侵害額請求」をすれば、子どもは遺留分相当の遺産を渡すことになります。
別居中だったとしても、法的な婚姻関係にあれば相続権がありますし、離婚調停中であっても同様です。
配偶者の遺産の取り分を少なくすることで対策
配偶者に遺産を全く残さない方法はなくても、配偶者に渡す遺産を減らす対策をご紹介していきます。
- 遺言書を作り遺産分割方法を指定する
- 生前贈与する
- 生命保険に入る
以上の3つについて説明していきます。
1.遺言書を作り遺産分割方法を指定する
遺言書では、相続人の相続分や遺産分割方法の指定などができるので、特定の相続人に対して法定相続分を超える相続や下回る相続を指定することが可能です。
ただし、相続人全員の合意があれば遺言書があったとしても遺産分割協議をおこなって配分を決めることができるため、絶対的な方法でないことは留意してください。
遺留分相当額を相続分とするケース
配偶者の遺産の取得分は遺留分を配慮した額を指定した遺言を作成します。配偶者が他の相続人との差に不満を持ったとしても、遺留分相当額を取得していたらそれ以上請求することができません。
遺留分の割合
ここで、遺留分はどのくらいなのかを説明します。
遺留分の割合は、誰が相続人であるかによって異なります。
相続財産に対する遺留分の割合を示すと下表のようになります。
相続人の組み合わせ | それぞれの遺留分 |
---|---|
配偶者と子 |
|
子のみ | 子:1/2(複数いる場合は均等割り) |
配偶者と直系尊属 |
|
直系尊属のみ | 直系尊属:1/3(複数いる場合は均等割り) |
配偶者と兄弟姉妹 |
|
兄弟姉妹のみ | 兄弟姉妹:なし |
配偶者のみ | 配偶者:1/2 |
法定相続人が配偶者と子1人であった場合の相続財産に対する遺留分は、配偶者が1/4、子が1/4ですから、例えば相続財産が8000万円であれば、配偶者は8000万円×1/4で、2000万円の遺留分であると算出できます。
全く取り分がないように記載するケース
遺言書に、配偶者には全く相続させない旨を記載します。配偶者が遺留分のことを知らなければ遺留分侵害請求をしてこない可能性があるので、これは一か八かの方法です。しかし、配偶者と他の相続人との関係性が悪化する可能性はありますのでよく検討した方がよいでしょう。
2.生前贈与する
他の相続人に生前贈与することで遺産を減らしておくという方法があります。この場合は以下の点に留意しましょう。
生前に一部の相続人に贈与をした場合は、その贈与分は特別受益(特別に得ていた利益)とされ、遺産に持ち戻してカウントされる可能性があります。相続人に対して相続開始前の10年間にされた贈与は遺留分侵害額請求の対象になるからです。
相続人以外の人に生前贈与した場合も相続開始前1年以内に相続人以外に行われた生前贈与は特別受益として持ち戻しされ遺産としてカウントされます。
いずれの場合も、故意に遺留分侵害をした生前贈与であったことが判明すれば、前述の年数を超えていても遺留分侵害額請求の対象とされますので注意が必要です。
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相続する財産が預金などの現金が多い場合は生命保険に変更し、受取人を配偶者以外を指定しておく対策方法もあります。
死亡保険金は受け取った人の固有の財産とされ、特別受益として持ち戻しする必要がないため、配偶者に遺留分侵害請求をされたとしても死亡保険金は対象にはなりません。
ただ、あまりにも露骨なケースですと遺留分侵害額請求の対象となりますので、気を付けましょう。
遺言書に死後に離婚すると書いたら有効?
では、配偶者の相続権を奪うために、遺言書に「自分の死後に離婚する」と書いたらどうでしょうか。
残念ながら、遺言書に自分の死後に離婚をすると書いたとしても、離婚することはできません。
遺言書は遺言者が亡くなった後で効果を生じる一方的なものであり、離婚は、お互いの合意が必要だからです。
死後離婚とは
死後離婚とは夫婦のどちらかが死亡した場合に、生存している配偶者が「姻族関係終了届」を役所に提出することによって亡くなった配偶者の姻族関係を終了させることです。つまり、亡くなった配偶者の血族(舅、姑、夫の兄弟など)と姻族関係を終了させたい場合におこなう手続きであって、亡くなってから離婚することではありません。詳しくは「死後離婚を選ぶ妻が急増?後悔しないための注意点」を参照してください。
まとめ
以上、遺産を相続させたくない人がいた場合の方法について解説してきました。
配偶者に相続させないためのは、生前に離婚するのが一番の方法です。
特定の相続人だけが遺産が少ないと、ほかの相続人の人間関係も悪化させてしまう懸念がありますので、その後の関係性も配慮しながら自分の財産を自分の希望に近いかたちで残せる方法を講じられたらベストですね。
いい相続ではお近くの専門家との無料相談をご案内することが可能ですので、遺言書の作成を希望する方や相続でお困りの方はお気軽にご相談ください。
この記事は「【事例】ギャンブルや不貞行為をしてきた夫に財産を渡したくない。何か対策はありますか?」を再編集したものです。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きや遺言書の作成を依頼した方のインタビューはこちら
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