夫の死後隠し子発覚!結婚したときの戸籍に記載されてないのに何故?認知した子の調べ方と相続
夫が亡くなったら、見知らぬ人が訪ねてきて、夫に隠し子がいたことが分かった・・・!
結婚してからは、夫が筆頭者の戸籍を様々な手続きで何度も取り寄せたことがあったのに、どうして今までわからなかったのだろう?
この記事では、夫が亡くなって隠し子が分からなかった理由、発覚する理由、認知した非摘出子の相続などについてご紹介します。
この記事を書いた人
鎌倉新書にパートタイマーとして入社。2020年チャレンジ制度をクリアし正社員に。
目前に控えたシニアライフを楽しく過ごすため、情報集めに奔走するアラカン終活ライター
資格:日商簿記1級・証券外務員二種・3級FP技能士
戸籍には記載してないことがあるの?
まず、戸籍とは何が書かれているものなのか簡単に解説します。
戸籍とは
戸籍は「本籍」と「筆頭者氏名」で表示される書面です。
戸籍とは、日本国籍の方が生まれてから亡くなるまでの身分関係(出生・結婚・離婚・死亡・養子縁組・親族関係など)について記録し、公に証明するものです。現在の戸籍は、原則として一組の夫婦及びその夫婦と同じ氏(苗字)の未婚の子を一つの編製単位として作られています。 戸籍は戸籍法に基づく届出により記録され、本籍地の役所にて保管されています。出典:水戸市ホームページ「戸籍とは何ですか」
男性が認知をすると戸籍にも認知をした事実が記載されます。
「夫と結婚したときに作った戸籍には認知のことなんて書いてないけど?」
それには理由があります。
戸籍は、分籍や転籍をすることで新しい戸籍が作られるからです。
分籍とは
「分籍」とは籍を分けて独立することをいいます。
戸籍筆頭者かその配偶者以外は戸籍から独立することができます。
先述の婚姻したあとの戸籍に認知のことが書いていない理由として、分籍によるケースが考えられます。
分籍で認知事項が書かれていないケース
例えば、親の戸籍に入っている子Aが女性Bとの間で子どもができ(非摘出子)、子Aが非摘出子Cを認知した場合、認知したことは親の戸籍の中の子Aの認知事項として記載されます。以下は認知したときの戸籍のイメージ図です。
しかし、後に、子Aが別の女性と結婚し、分籍して新しく戸籍を作った場合に非摘出子Cを認知した事項は引き継がれません。
そのため、婚姻したときの戸籍を何年も見てきたのに隠し子(認知した非摘出子)の存在に気付かなかったということが起こりうるのです。
一方、認知された非嫡出子Cについては、母親の女性Bの戸籍に記載されます。非摘出子Cが母親の戸籍から分籍しても認知事項は移記(記載内容を別の書類へと移す)されます。
つまり、認知した父親と認知された子では新しい戸籍を作った場合等に認知事項の移記には違いがあるわけです。この違いは法律の定めによります。
戸籍を新しく作ったり、他の人の戸籍に入る場合、どんな身分事項を移記するのかということは戸籍法施行規則第39条「重要な身分事項の移記」で明記されています。その中の「二 嫡出でない子について、認知に関する事項」で非嫡出子側については新戸籍等に認知事項を引き継ぐということが決められている一方、認知した父親については定めがありません。
転籍とは
本籍地を移転することを「転籍」といいます。
本籍地を移転すれば、移転後の戸籍には認知事項は記載されません。
ただし、同じ市区町村内で本籍地の移転は記載されたままです。
また、夫婦がそれぞれ別々の場所を本籍地とすることはできませんので、婚姻中に転籍する場合は妻も転籍することになります。
\相続手続き、どんな手続きが必要か調べてみましょう/
相続手続きで隠し子が発覚する理由
現代ではほとんどの方が銀行に口座をもっていますよね。
口座名義人が亡くなると銀行口座が凍結しますので、解約する手続きが必要になるわけですが、その際の必要書類には必ず「生まれてから亡くなるまでの戸籍」が含まれます。
この、生まれてから死亡するまでの戸籍を集めることで認知した事実が発覚することになります。
では、どうして「生まれてから亡くなるまでの戸籍」が必要書類になるのでしょうか。
戸籍を集めて相続人を調べる
銀行では、相続人全員が遺産を分割して名義を変えること(解約すること)に合意しているかを確認します。
相続人全員が合意していることを確認するためには、まず、誰が相続人なのかということを確定しなくてはなりません。
そのため、銀行では、相続人を確定するためには、亡くなった方の配偶者や、子ども、兄弟等の申出ベースでなく、客観的に相続人を証明できる戸籍謄本で確認します。
なぜなら、先述の例のように、婚姻して分籍した戸籍だけでは、認知については知ることができませんし、他にも、代襲相続(相続人になるはすだった子どもが既に死亡しており孫が相続人になるケース等)などの確認する必要があるからです。
隠し子の相続
では、隠し子が発覚した場合、隠し子に遺産を渡さなくてはいけないのでしょうか。
相続順位と法定相続分(相続割合)
婚姻関係にあ男女の間に生まれた子を嫡出子といい、婚姻関係にない男女の間に生まれた子を非摘出子と言います。認知された非嫡出子(隠し子)は、嫡出子と相続順位も法定相続分(相続割合)も同じです。
また、最低限の取り分である遺留分の割合も嫡出子と非嫡出子は同じです。
平成25年に嫡出子と非嫡出子が同等の割合になった
同等になったのは比較的最近のことで、2013年に民法が改正され非嫡出子の相続分が嫡出子の相続分が同等になりました。
それ以前は非嫡出子の法定相続分は嫡出子の半分でした。
出典:法務省「民法の改正の概要」隠し子の代襲相続
本来相続人となるはずだった子どもが先に亡くなり、亡くなった子どもの子や孫が相続人になる場合を代襲相続と言います。
認知された非嫡出子(隠し子)が既に亡くなっている場合はその子どもが相続権が移ります。
もしも、夫が亡くなるまで隠し子を知らず、しかもその子が亡くなっていて代襲相続がおきた場合、全く見ず知らずの子に遺産分割しなくてはならない・・・という可能性もあるわけです。
隠し子に相続させない方法はあるか
いきなり現れた隠し子(認知された非嫡出子)に遺産を渡すことに抵抗があるでしょう。
しかし、先述のとおり、嫡出子と同等の権利である相続権を持ちますので全く相続させないことは難しいのです。
対策は生前にするしかない
もしかしたら、隠し子がいるかもしれない。そんな勘が働くことがあれば、生前に対策をすることはできます。
これは相続対策にもなりますので、是非検討してみてください。
隠し子の調べ方
妻が自分自身で夫の隠し子の存在を調べる方法は、先述の相続手続きと同じように夫の出生からの戸籍を調べます。戸籍法の第十条で配偶者の戸籍は妻(夫)でも交付請求することが認められていますので、該当の自治体に交付請求をしましょう。
戸籍謄本の集め方ついては「死亡した人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)の取り方、出生から死亡までのすべてを取り寄せる方法」で詳しく解説しています。
生前贈与
生前贈与を行うと、相続税の課税対象となる財産を減らせるため、相続税を軽減できます。
自分が生きているうちにあげたい財産をあげたい人に渡すことができ、さらに贈与者の死後、親族間でのもめ事を回避する効果も期待されます。
- 「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」
- 配偶者への自宅(居住用不動産)の贈与
- 子どもなどへの住宅購入資金の贈与
- 直系尊属から子どもなどへの結婚・子育て資金の贈与
生前贈与の方法は以下の記事で詳しく紹介しています。
遺言で対策できるか?
遺言書では、相続人の相続分や遺産分割方法の指定などができるので、特定の相続人に対して法定相続分を超える相続や下回る相続を指定することが可能です。
しかし、隠し子の存在を意識して「配偶者に遺産をすべて相続させる」といったことを遺言に書いたとしても、嫡出子も認知された非嫡出子も遺留分という最低限の取り分がありますので、もし、「遺留分侵害額請求」をされたら、配偶者は遺留分相当の遺産を渡すことになります。
まとめ
以上、戸籍から認知した事実が分からない理由や、認知した子の相続について解説しました。
なお、認知は「遺言認知」といって、遺言書で認知をすることもできますし、非摘出子が父親本人が亡くなっても3年間以内に限り、死後認知の訴訟を提起することができます。(この場合は生前に対策をしていたとしてもその努力が無になってしまいますが…)
認知だけでなく「親に亡くなった兄弟がいた」「祖父母の生まれが〇〇県だった」など、故人の出生から死亡までの初めて知ることは割と多いのです。
相続人の調査に漏れがあると、その後にかかる労力も大きなものですから、専門家に相続手続きを代行してもらうことでそういったリスクを回避することができます。
いい相続ではお近くの相続手続きの専門家との無料相談をご案内していますので、お気軽にご連絡ください。
この記事は「【事例】亡くなった夫は浮気をしており、子どもがいた。その子に相続権はありますか?(55歳女性 遺産5,000万円)」を再編集したものです。
▼実際に「いい相続」を利用して、専門家に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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