遺言執行者は誰にすべき?選任方法や役割、必要なケース、費用の負担など全てを解説!
遺言書を書く上でぜひともしておきたいことに「遺言執行者の指定」があります。
遺言書があったとしても、遺言執行者の指定をしていない場合はその本来の効力が発揮されなくなってしまうこともあるため注意しなければなりません。
遺言執行者が必要な場合と役割
遺言執行者の役割を簡単に言えば「遺言書に指定された内容を実現するため、遺産の管理や処分を行うこと」です(ただし、遺言書に指定されていない相続財産については遺言執行者には権限がないため、そのような場合は相続人全員による遺産分割の手続きが必要になります)。
法律上は「遺言執行者を指定しなければできない(必要的)な遺言事項」と「遺言執行者がいなくてもできる(任意的)な遺言事項」があります。
「遺言執行者の選任が必要な遺言事項」
- 認知
- 推定相続人の廃除、廃除の取り消し など
※廃除とは、被相続人(亡くなった人)に対して重大な非行などがあった場合に家庭裁判所の許可を得て相続人の地位をはく奪することです。
「遺言執行者がいなくてもできる遺言事項」
- 法定相続分(民法で定められた相続分)を超える相続分の指定
- 相続財産の処分に関する遺言事項のうち、遺贈及び信託の設定
もし相続人がいる場合で「相続人〇〇に△△を相続させる」という遺言内容であれば、遺言執行者がいなくても指定された相続人が単独で手続きできるため、そもそも遺言執行者は必要ありません。
しかし、「遺贈する」のような内容の遺言がされている場合、もし遺言執行者がいなければ遺贈そのものはできますが、受遺者(もらった人)への権利の移転に相続人の協力が必要になります。
もし相続人が遺言に納得せず協力を拒否すれば手続きが進まないおそれがありますので、そこに遺言執行者がいる意義があるのです。
遺言執行者が選任されている場合、もし相続人によって相続財産の処分や遺言の執行を妨げる行為があれば、遺言執行者はその行為を除去するための措置をする権限が認められています。相続人によってされた妨害行為による相続財産の処分は無効とされているのが最高裁判所の判例です。
遺言執行者はどのように定めるか?
遺言執行者は遺言によって定めることができますが、もし定めがない場合や、遺言執行者に指定された者が就職を承諾しない場合などは、利害関係人が家庭裁判所に請求することによって選任してもらうこともできます。
遺言執行者は「未成年者」「破産者」という欠格事由はあるものの、それ以外であれば誰を指定しても構いません。相続人の一人だったり、受遺者本人であっても差支えありませんし、法人であっても構いません。
また、遺言執行者を複数選任することもできますが、その場合は共同で遺言執行を行うことになりますので、決定するべき事項は過半数で決めることになります。
遺言者が遺言執行者を指定するにあたって注意しなければならないのは「相続財産をもらう人を遺言執行者にした場合は他の相続人とのトラブルが起こる可能性もある」ということです。
手続きの進行自体をスムーズにするため、そして無用なトラブルを防ぐためにも、専門家を選任しておいた方がよいでしょう。
その場合、もちろん報酬が発生することになりますが、報酬の定め方や金額を遺言書の中に指定しておくことができます。専門家と相続人の間で金額面のトラブルにならないよう、そこまで決めておきたいものです。
遺言執行者の義務はどんなもの?
遺言執行者に選任されたら、まず直ちに行うべきことは「財産目録の作成」です。
財産目録については法律上の細かい規定はありませんので、相続財産の内容が特定でき、現在の状態を把握できるものであればよく、個々の財産の評価額まで具体的に記載する必要はありません。
また、遺言執行者が指定されていても、相続人など周囲の人が遺言そのもの、そして遺言執行者の存在を知らないこともよくあります。
よって遺言執行者は相続人その他の利害関係人に「遺言執行者に就任したこと」を通知しておかなくてはなりません。
利害関係人とは、「相続人、受遺者、銀行等の金融機関、相続財産の管理者、遺言者の債権者・債務者」といった者になりますが、相続財産について少しでも権利義務を有すると思われる人にはすべて、遺言書を添付した上で通知しておく方がよいでしょう。
遺言執行者は遺言で定められた相続財産についての管理、処分を行いますが、上記のようにもし相続人が遺言執行者の執行を妨げるような、無断での財産処分を行った場合、これは絶対的に無効となります。 よって、遺言執行者は裁判上や裁判外でこれを取り戻す措置をしなくてはなりません。
遺言執行の途中であっても、もし遺言執行者が職務について相続人から報告を求められたらこれに応じる義務があります。
また、たとえ報告を求められなくても、職務の終了時にはすみやかに事務処理の経過や結果を報告しなくてはなりません。
遺言執行をめぐる金銭的な問題
実際に遺言執行者が就任する前や就任中、特に気をつけたい「金銭をめぐる問題」を考えてみましょう。
遺言執行者が就任後、「葬儀費用」を相続財産から支出してしまった
そもそも、「遺言執行にかかる費用というのは、相続財産から負担すること」が明文で認められています(民法第1021条本文)。また、遺言執行者の権限として「被相続人の債務を弁済すること」も含まれています。
では、葬儀費用というのは遺言執行にかかる費用または被相続人の債務といえるのでしょうか?
葬儀費用というのは直接的に相続財産の管理に関わる費用ではないですし、被相続人死亡後に発生する債務ですから被相続人の債務ではありません。よって、相続財産から支出することが当然に認められるわけではないということです。
法的な規定はないのですが「喪主が支払う」また「相続人全員が折半する」など遺族が納得、合意できる方法で支出するべき費用といえます。
遺言執行費用はどのように相続人で配分(負担)するのか?
遺言執行者が遺言執行業務の中でその費用を立て替え払いした場合、遺言執行者が各相続人に請求できる配分はどうなるのでしょうか?これについては、東京地裁が出している裁判例で「全相続財産のうち当該相続人が取得する相続財産の割合に比例按分した額」としています。
もし、遺言執行者が先に費用を立て替えた上で相続財産を調査したが、予想外に相続財産が少なかったという事態も考えられます。
そのような場合、事前に相続人からある程度の費用を預かっておき事後に精算するか、あらかじめ相続人との間で費用負担を書面で確約しておくなどの工夫が必要となります。
特に第三者が遺言執行者になる場合は、事案によっては遺言執行者への就職を拒否する方が良いこともあります。
遺言執行者が業務終了後に報酬を受け取ってしまったら?
遺言執行者の報酬は民法1018条でこのように定められています。
「家庭裁判所は、相続財産の状況その他の事情によって遺言執行者の報酬を定めることができる。ただし、遺言者がその遺言に報酬を定めたときは、この限りではない」
そして、報酬を受領できる時期については民法の委任における規定に準じて「事務を終了した後でなければこれを請求することができない」とされています。
よって、もしこれに反して遺言執行者が事務終了前に相続人等の承諾なく報酬を受領すれば、それは遺言執行者の解任事由となります。
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