生前贈与を現金でしたら税務署にばれる?ばれたときのペナルティや注意点を解説
「早いうちに子や孫に生前贈与をしておきたい」と思う人も多いはず。一度に多額の金額を贈与すると贈与税がかかってしまいますが、現金手渡しで贈与すればばれないと考えるかもしれません。
この記事では、生前贈与を現金でおこなった場合、税務署にばれるのかについて詳しく解説します。
現金手渡しの生前贈与はばれる?
生前贈与とは贈与者(あげる人)が、生きている時点で財産を無償で渡すことです。贈与者と受贈者の合意により法的に成立し、贈与税は財産をもらった「受贈者」が課税対象となります。
現金を手渡しして贈与した場合、税務署から贈与の事実を隠すことはほぼ不可能と言っても良いでしょう。
税務署には調査権限が与えられており、銀行口座を調べることが可能です。贈与された現金をたいていは自分の口座に入金するでしょうから、その出入金履歴から贈与の事実がばれてしまいます。
暦年贈与であれば年間110万円までは贈与税がかからない
贈与税の「暦年課税制度」では、1年間(1月1日~12月31日)に贈与された基礎控除110万円までについては、贈与税はかかりません。110万円を超えた部分については、金額に応じて10~55%の税率で贈与税がかかります。
隠していた生前贈与がばれた場合のペナルティ
現金手渡しの場合、意図的に脱税したわけでなくても申告漏れだとみなされる可能性があります。
前述のとおり、贈与税の基礎控除110万円を超える生前贈与があったとばれた場合、贈与税の申告と追徴税を含む納税が必要となります。
無申告加算税
申告期限までに贈与税申告がおこなわれなかった場合は、無申告加算税が課される可能性があります。
無申告加算税は、原則として、税務調査を受けてから申告した場合では納付すべきだった金額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分には20%の割合で加算されるものです。
延滞税
無申告加算税のほかに、納税をしていなかったことに対する延滞税も発生します。法定納期限の翌日から贈与税を払った日までの期間に課され、原則、納期限の2か月までの期間は7.3%、2か月を超えた期間は14.6%となります。
生前贈与をおこなう際の注意
生前贈与をおこなう際には、以下の点に注意すると良いでしょう。
贈与契約書を作成する
現金手渡しで贈与をする場合、贈与契約書を作成しておくことをおすすめします。
契約書がなくても贈与はできますが、贈与した事実を証明できる書類がないと税務署から否認される可能性があります。
また贈与契約書を作成しておくことで、遺産分割トラブルの防止にもなります。贈与契約書で贈与の記録を残しておくと良いでしょう。故人の通帳に使途不明の出入金の履歴があると、相続人間で不要な争いや疑念を生む可能性があります。
ただし贈与契約書があっても、現金手渡しを疑われる可能性もあります。あえて現金手渡しにしたい理由がなければ、銀行振込で贈与すると良いでしょう。
贈与ごとに贈与契約を結んでおく
「100万円の贈与契約を10年連続でおこなった場合(その都度、贈与契約を取り交わした場合)」と「毎年100万円を10年間にわたり贈与する契約を交わした場合(全部まとめて1つの贈与契約を結んだ場合)」とでは、税務上の取り扱いが異なるので注意が必要です。
前者は贈与額が年間110万円以内であれば贈与税がかからず、10年贈与をおこなったとしても贈与税は0円のままです。
後者は「定期贈与」と呼ばれ、贈与の総額に対して贈与税がかかります。つまり「毎年100万円を10年間贈与する」といった贈与契約書を作成すると、総額1,000万円に対して贈与税がかかってしまうのです。
このように毎年贈与契約書を作成するのが面倒だと言ってまとめて契約してしまうと、思わぬ税金が課されることがあります。
亡くなる7年前までの生前贈与は、相続財産に加算される
被相続人が亡くなるまでの一定期間におこなわれた贈与は、その金額を相続財産に含めて相続税の計算をおこないます。これを「生前贈与加算」と言います。
生前贈与加算は2023年度税制改正により、3年から7年に延長されました。したがって2024年1月1日以降におこなわれた贈与については、生前贈与加算が7年となります(2023年までの生前贈与は従来の3年以内の加算対象となります)。
まとめ
今回は、生前贈与を現金でした場合に税務署にばれるのかを解説しました。税務署は銀行口座を調べることができるので、手渡しであっても、贈与を隠し通すことは難しいでしょう。もし贈与税の申告漏れがあるとペナルティが発生する可能性もあります。
もし現金手渡しで贈与する場合は、贈与契約書を作成しておくか贈与した事実が確認できる書類を保管しておきましょう。
贈与税や相続税の制度は改正も多く複雑なため、相続税や贈与税について詳しく知りたい人は一度税理士に相談しても良いでしょう。いい相続では相続に強い税理士や行政書士をご紹介していますので、お気軽にご相談ください。
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。