相続手続きが終った後からでも、遺留分の請求はできますか?
昨年(2020年)父が亡くなりました。その後母から「相続手続きはもう終った」と聞いていたのですが、最近になって遺産が不動産も含めて1億円以上あったと知りました。自分は一切もらっていません。今からでももらうことはできますか?
兄弟姉妹を除く法定相続人には、相続できる最低限度の相続分、遺留分が民法で定められているため、侵害された場合は、その遺産を相続した人に遺留分侵害額を請求できる権利があります。
まずは、遺留分を侵害した相続人と話し合って、遺留分を支払ってくれるよう求めましょう。
ただし、遺留分侵害額請求には時効があります。遺留分侵害額請求の調停や訴訟をするためには複雑な手続きになるため、専門家に相談することをおすすめします。
遺留分とは
遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人には、相続できる最低限度の相続分で、民法によって定められています。
遺産相続は、被相続人の意思を尊重するため原則、遺言書の内容に従っておこなわれますが、遺留分を侵害するような遺言書の場合、その権利者は侵害額を請求できます。
なお、遺留分を請求できる権利者が遺留分侵害額請求をするかどうかは自由です。
遺留分侵害額請求権の時効
遺留分侵害額の請求権には時効があります。
- 遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないとき
- 相続開始の時から十年を経過したとき
時効によって請求権は消滅します。
相談者の場合は「遺留分の侵害があったことすでに知っている」状況と判断される可能性がありますので、もし遺留分を請求するのであれば、早めにおこないましょう。
遺留分侵害額請求権と遺留分減殺請求権
遺留分侵害額請求権は、2019年6月30日までは「遺留分減殺請求権」とされていました。
遺留分減殺請求では、遺留分を請求すると現金だけではなく、不動産など侵害された遺産そのものを取り戻すことが権利として認められていました。
この場合、対象となった財産は現物での返還が原則だったため、不動産はほかの相続人との共有状態となり、処分などに支障をきたすことが問題とされていました。
しかし、2019年7月1日の法改正によって名称を「遺留分侵害額請求権」と改め、請求する権利も金銭での請求に一本化されました。
なお、2019年6月30日までに発生した相続については、旧法である遺留分減殺請求権によって請求がおこなわれます。
遺留分侵害額請求権の手続きの流れ
実際に遺留分侵害額請求をおこなうときは、以下のような流れになります。
遺留分を侵害した相手と協議する
親族同士ですぐに話し合って解決できそうな場合は、まず、相手に「侵害した遺留分を支払ってほしい」と伝えましょう。穏便に済ませたほうがお互いのために良いはずです。
遺留分を受け取る際には、必ず「遺留分侵害額についての合意書」を作成しましょう。後のトラブル防止につながります。
内容証明郵便で請求する
相手が話し合いで遺留分を支払ってくれない場合、「内容証明郵便」で遺留分侵害額請求書を送りましょう。
遺留分侵害額請求は、「相続と遺留分侵害を知ってから1年以内」に行う必要があります。内容証明郵便の通知書を送ると遺留分侵害額請求権の時効を止められるので、話が長びきそうときには必ず内容証明郵便で請求書を送ると良いでしょう。
遺留分侵害額請求調停を申し立てる
まだ解決できない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額請求の調停を申し立てます。
調停では、調停委員が申立人と相手方それぞれの言い分を個別に聞き、調整をしてくれます。相手と直接顔を合わさないので冷静に対応でき、自分たちだけで話し合うより合意しやすくなります。
調停で相手と合意できれば、調停が成立して調停調書が作成されます。通常は、約束に従って遺留分の支払いを受けられますが、もし相手が調停での合意事項を守らない場合、強制執行も可能です。
遺留分侵害額請求訴訟を起こす
調停でも合意できない場合には、遺留分侵害額請求訴訟を提起します。請求する遺留分侵害額の金額が140万円以内であれば請求先は簡易裁判所、140万円以上の場合は地方裁判所で訴訟を提起します。
訴訟で勝つためには立証するための証拠が必要ですし、法律的に整理された主張書面を提出しなければなりません。訴訟が進むと、裁判官が和解を提示するケースもあります。和解で合意したら訴訟が終了します。合意できなければ判決となり、判決に不服があれば控訴もできます。
遺留分侵害額請求訴訟や調停にもなると、弁護士に依頼したほうが有利に進められるでしょう。
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