相続対策で事前に相続放棄はできる?
田舎の山林や田畑を相続したくない。相続対策として事前に相続放棄をしておきたいのですが可能ですか?
相続放棄はできる期間が決まっている
- 不要な土地を相続したくない
- 他の相続人が実家の稼業を継ぐことが決まっている
- 借金を相続したくない
- 親族とはかかわりあいになりたくない
さまざまな理由により、相続対策として前もって相続放棄をしておきたい、という方もいるでしょう。しかし、民法によって相続放棄ができる期間は明確に定められています。
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
第九百十五条 相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
条文には「相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」とありますので、相続の開始をしていない状態で前もって相続放棄をすることができないことがわかります。
また、相続放棄することを約束しておく念書を交わし意思表示をしておいても法的な効力はなく、実際に相続の開始があってから相続放棄の手続きをする必要があります。
相続放棄の注意点
相続が発生し相続放棄したからといってすぐに全てについて免除されるわけではありません。
次の相続人が管理をはじめられるまで財産を管理する義務があります。
管理義務がある財産が原因で、誰かに怪我をさせるなどの損害を与えた場合には、賠償責任もあることを忘れないようにしましょう。
また、相続放棄を撤回することはできませんので慎重な判断が必要です。
不要な土地の相続対策
不要な土地を相続しないための相続対策としてできることは、被相続人が亡くなる前にその土地をどのようにするのがベストか、さまざまな方法をシュミレーションしておくのがよいでしょう。ただし、後々のトラブルを防ぐためにも、被相続人や相続人になる可能性がある方にも相談しておいた方がよいでしょう。
農地の相続の注意点
農地も不動産なので、相続したら相続登記をおこないますが、他に各市町村などに設置されている「農業委員会」へ届出が必要です。
相続発生から10ヶ月以内に届出をしなければ、10万円以下の過料が科されることもあります。
また、農地を勝手に住宅地として売却したり賃貸することはできません。農地の用途を変更したい場合も農業委員会への許可申請が必要となります。
山林の相続の注意点
山林も不動産なので、相続したら相続登記をおこないますが、他に市町村長へ所有者の届出が必要です。
しかもその届け出は相続をしてから90日以内におこなう必要があります。届出を怠ると10万円以下の過料に科される心配がありますので気を付けましょう。
また山林を相続するときは、森林組合に加入することを検討しましょう。山林組合から維持や管理に関して様々な情報がもらえる以外にも、補助金などの制度の相談もできます。
以下からは土地の相続についての一般的な検討事項をご紹介します。
売却
買い手がつくような土地であるか調べます。全国展開の大手不動産会社や地元の不動産屋などに聞いてみます。
貸す
土地を貸すという選択も考えられます。土地には「用途地域」が定められているので相続する土地がどんな用途地域に属するか調べてみましょう。
寄付
不動産の寄付の受け入れをしてくれる可能性がありそうな先は、次のようなところが考えられます。
- 自治体
- 公益法人
- 自治会、町内会
どのような寄付を受けているか聞いてみましょう。
相続土地国庫帰属制度
「相続土地国庫帰属制度」は令和5年4月27日に始まった新しい制度です。所有者不明土地の対策として、相続した不要な土地を国庫に帰属させることを可能とするものです。
ただ、申請したからといって必ずしも引き取ってくれるとは限りません。審査が却下されたり不承認となる場合もあります。また承認されても負担金を払う必要があります。
制度を検討する場合は申請前に法務局へ相談したほうがいいでしょう。
譲渡
隣地の所有者が引き受けてくれる可能性もあるので、意向をきいておくのもよいでしょう。
ただし、譲渡の場合は引き受けた人(受贈者)に贈与税がかかる場合があります。
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