【よくある質問】相続財産の一部だけを別に遺産分割協議することはできますか?
両親の所有していた土地を相続するのですが、近所の人から譲って欲しいと申し出がありました。
その方に売却して相続税の支払いにあてようと兄弟間ですぐに決まったのですが、それ以外の財産について調査が進んでいません。
先にその土地の売却手続きだけを進めることはできますか?
不動産を先に売却するためには一部分割の遺産分割協議書を作成する
相続した不動産を売却するためにはさまざまな書類が必要となりますが、遺産分割協議書もその一つです。そのため、相続人全員で遺産分割協議をおこない、遺産分割協議書を作成しましょう。
土地売却の手続きに使用する遺産分割協議書には、一部分割であることを明記します。
引き続き残りの遺産の分割協議もおこなっていきますので、それらについても遺産分割協議書の作成が必要です。 遺産分割協議書を分けて作成することは相続に関する総合的な知識が必要なため、行政書士などの専門家に作成を依頼するとよいでしょう。残りの相続財産について相続人同士でトラブルになるのを防ぐ目的もあります。
遺産の一部分割の注意点は?
一部分割の遺産分割協議をする際には、一部分割をした後におこなわれる残りの財産の分割にどのような影響があるかを必ず確認しましょう。
相続人間で、一部分割した財産の用途や相続割合などの位置付けがきちんと共通認識されていれば、残りの財産の分割協議もスムーズにすすみ、トラブルを防ぐことができます。
不動産の売却には相続登記をする必要がある
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった場合にその不動産の名義人を変更することです。相続した不動産を売却するとしても、亡くなった被相続人名義の不動産をいきなり売却できません。
相続登記は不動産の所在地を管轄する法務局で申請します。故人や相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書などの必要書類と申請書の提出が必要です。
相続登記の手続きは令和6年4月1日より義務化となっています。不動産を相続したことを知ったときから3年以内に相続登記を申請しなければならず、正当な理由なく期限内に登記をしなかった場合には10万円以下の過料が科せられることとなります。
民法改正による遺産の一部分割の明文化
実務上、今までも法令の解釈上、必要性と許容性を満たせば遺産の一部分割は認められていましたが、令和元年7月1日施行の改正民法で明文化されました。これにより、遺産の一部の分割は共同相続人に不利益がなければおこなえることが明確になり、早期の遺産分割の成立が推進されていくことが期待されています。
- 第907条1項 改正後:
- 1 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
- 2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
- 改正前:
- 1 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
- 2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
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