親が高齢の場合、片方の親が亡くなったときの遺産分割の注意点は?
先月母が亡くなり遺産分割をしようと思っています。相続人は高齢の父と長男の私と弟です。遺産は母名義の土地と、預貯金などです。法定相続分どおり分けようと思っていますが、何か注意点はありますか。
ポイントは相続人の数と配偶者の有無の違い
子どもが両親から相続をするとき、父母のどちらか先に亡くなったときの相続を一次相続、残されたもう一方の親が亡くなったときの相続を二次相続と言います。
例えば、一次相続の場合の相続人は配偶者と子ども、二次相続の場合は子どもだけになると考えてみます。
すると、相続税を計算するときに相続人の人数が減るために基礎控除額が少なくなることや、配偶者の税額軽減の特例などが使えなくなることが想定できます。
配偶者の税額軽減とは、配偶者が遺産分割や遺贈により取得した遺産額から、配偶者の法定相続分相当額か1億6000万円のいずれか大きい方の金額を差し引いて、残った金額にのみ課税するという制度です。
つまり、二次相続を考える時の大切なポイントの一つは、相続人の数と配偶者の有無によって相続税算出の際に利用できる控除額に影響があることです。
親が高齢であるため次の相続発生がそう遠くないかもしれない場合は、一次相続と二次相続では相続人の人数が変わることや、被相続人の配偶者が二次相続のときにはいなくなることで配偶者の税額軽減が利用できないことなどを仮定しながら、一次相続の遺産分割の際に次の相続への影響を踏まえて検討するとよいでしょう。
一次相続と二次相続を通じた相続税額の例
母1人、子1人、課税価格の合計額が1億6千万円の場合の、目的を変えた3パターンの相続税額の計算結果をご紹介します。
考え方が異なると、一次相続と二次相続の相続税の合計額も変わることをご確認ください。※配偶者の税額軽減のみ適用。母に他に財産はなく、次の相続まで財産が減っていないものとします。
・「配偶者の税額軽減を適用して相続税の負担を軽くするのを目的」とし、母が全額相続するケース
一次相続の相続税:0円(配偶者の税額軽減により全額が控除されるため)
二次相続の相続税:3,260万円
一次相続と二次相続の相続税の合計額:3,260万円
・「二次相続で相続税がかからないことを目的」とし、母が子どもに全部譲ることにしたケース
一次相続の相続税額:2,140万円
二次相続の相続税額:0円(相続財産がないため)
一次相続と二次相続の相続税の合計額:2,140万円
・「二次相続まで考えた節税を目的」とし、基礎控除などを考慮し、妻が3,600万円、子が1億2,400万円の一次相続をおこなったケース
一次相続の相続税額:1,658.5万円
二次相続の相続税額:0円(相続財産が基礎控除額の範囲内に収まるため)
一次相続と二次相続の相続税の合計額:1,658.5万円
どんな相続にするのか、ご自身の状況に合わせて検討することが大切です。
税理士にシミュレーションを依頼するのも手
相続で、まとまった資産の遺産分割を検討するときは、先述のようにパターン毎のシミュレーションができると納得度も増しますが、ご自身での検討が難しい場合は、税理士に相談すると良いでしょう。
税計算に慣れた専門家に依頼することで、時間の節約のほかにも、専門家がサポートしてくれる安心感は想像以上に心理的負担を減らす効果があります。
相続が続いたときには相次相続控除制度の活用を検討
相次相続控除とは、10年以内に2回以上相続が発生し、相続税が課せられる場合には、前回の相続で課せられた税額の一定割合相当額を、後の相続で課せられる相続税額から控除できる制度です。(引用:国税庁 税務大学校 相続税法(基礎編)令和3年度版)
相続が続いたとき、相続税の負担が過大になり過ぎないように、相続が続いた人とそうでない人の差異調整することを目的とされています。相続が続いたときは利用しましょう。
節税を考えるなら専門家としっかり相談を
このように、親が高齢の場合は、次におこる相続に備えることが大きなポイントです。加えて、自分に当てはまる相続税の控除制度はどれか判断するのにも専門的な知識が必要です。
万一間違った申告は罰金などのペナルティにつながるおそれもありますし、親族間で揉めることになりかねません。専門家に依頼することで手間と不安を軽くするのも相続対策の一つと言ってよいのではないでしょうか。
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