相続放棄申述受理証明書が必要なケースと申請方法・申請書の記入例【相続放棄申述受理通知書との違いも】
相続人が相続を放棄すると、初めから相続人でなかったことになります。 ただ、相続を放棄したからといって親族関係(血縁関係)がなくなるわけではないので、第三者からは相続人であると勘違いされる場合があります。
そのような場合に、相続放棄をしたことを第三者に証明するにはどうすればよいのでしょうか。
相続放棄をしたことを証明するためには、相続放棄申述受理通知書や相続放棄申述受理証明書という書類を利用することができますが、これらの書類は様々な点において違いがあります。
ここでは、相続放棄申述受理証明書と相続放棄申述受理通知書の違いを踏まえながら、相続放棄申述受理証明書が必要となる場面やその取得方法等についてご説明したいと思います。
目次
相続放棄申述受理証明書とは?
相続放棄申述受理証明書とは、ある方が相続放棄の申述を行い、家庭裁判所がこれを受理したということを証明する書類です。
相続放棄の手続きは家庭裁判所で行うので、相続放棄申述受理証明書は、手続きを行った家庭裁判所において発行されます。
相続放棄申述受理通知書と相続放棄申述受理証明書の違い
相続放棄申述受理証明書と似ている書類に相続放棄申述受理通知書があります。
相続放棄申述受理通知書は、相続人が家庭裁判所において相続放棄の手続きを行い、裁判所がこれを受理すると、家庭裁判所から相続放棄を行った人に送付される書類です。
このように、相続放棄申述受理通知書は相続放棄の手続きを行えば自動的に送付されますが、相続放棄申述受理証明書は、家庭裁判所に対して交付申請をしなければ発行されません。
また、相続放棄申述受理通知書は一度しか発行されないのに対して、相続放棄申述受理証明書は何度でも発行できるという違いがあります。
さらに、相続放棄申述受理通知書は、家庭裁判所から相続放棄を行った本人に送付されるのに対し、相続放棄申述受理証明書は、相続放棄を行った本人以外でも一定の利害関係がある者であれば、家庭裁判所にその発行を求めることができます。
なお、相続放棄申述受理通知書も相続放棄申述受理証明書も、ある方が相続放棄の手続きを行ったことを証明する書類であるという点は共通しています。
ただ、前記のとおり、相続放棄申述受理通知書は一度しか発行されないため、第三者に渡す必要がある場合には、相続放棄申述受理証明書の方が適しているといえます。
相続放棄申述受理証明書が必要な場合
相続放棄申述受理証明書が必要な場合は、以下のとおりです。
債権者等に相続放棄をしたことを証明する必要がある場合
亡くなった方(被相続人)に債務があったとしても、相続人が相続放棄をした場合は、これを支払う義務がなくなります。
ただ、相続放棄をしたにもかかわらず、亡くなった方(被相続人)の債権者が、相続人に対してその支払い等を求めてきたときには、自分が相続を放棄したことを証明する必要が生じます。
一般的には、相続放棄申述受理通知書のコピーを渡すことで納得する債権者が多いと思いますが、中には、コピーではなく原本の提出を求められる場合があります。
ただ、相続放棄申述受理通知書は一度しか発行されないため、そのような場合には、債権者に提出するために、相続放棄申述受理証明書を取得する必要があります。
他の相続人が相続登記をする場合
相続人が複数いる場合に、全員が相続放棄をするのではなく一部の相続人のみが相続放棄をする場合があります。
このような場合に、他の相続人が、亡くなった方(被相続人)の土地を相続して登記名義を変更しようとした場合、登記手続きにおいて相続放棄申述受理証明書が必要となります。
相続放棄申述受理証明書の取得方法
申述人本人が取得する場合
相続放棄申述受理証明書は、相続放棄の申述をした本人が、相続放棄の手続きを行った家庭裁判所にその発行を求めることができます。
家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書の発行を求めるときは、「相続放棄申述受理証明申請書」に必要事項を記載して家庭裁判所に提出します。
なお、相続放棄申述受理証明書の申請は、本人による申請が原則のため、本人確認書類(運転免許証や住民票等)の提示(郵送の場合はコピーの同封)を求められます。
利害関係人が取得する場合
相続放棄申述受理証明書は、申述人本人以外でも一定の利害関係がある者であれば、家庭裁判所にその発行を求めることができます。この場合の利害関係のある者とは、亡くなった方(被相続人)の債権者や、他の(相続放棄をしていない)相続人等が該当します。
なお、利害関係人が相続放棄申述受理証明書を申請する場合には、相続放棄申述受理証明申請書に相続放棄をした際の事件番号に加え、申請者と被相続人との関係や、相続放棄申述受理証明書を必要とする理由について記載する必要があります。
ただ、相続放棄をした際の事件番号等は申述をした本人ではないのでわからない場合もあります。その場合は、あらかじめ、家庭裁判所に対して「相続放棄の有無の照会」を行うことで、これらの事項について、裁判所から回答をもらうことができます。
なお、利害関係人が相続放棄申述受理証明書の発行を申請する場合や、相続放棄の有無の照会をする場合には、必ず利害関係を証明する書類が必要となります。
また、被相続人が所有していた不動産に抵当権を設定している抵当権者が、その不動産について競売申立を行うために、相続人が相続放棄をしているかどうかを確認したいときには、抵当権の記載がある不動産登記簿謄本(全部事項証明書)が必要になります。
債権者等ではなく、相続人の一人が、他の相続人が相続放棄をしているかどうかを確認したいときには、戸籍謄本等で、身分関係を証明することが必要です。
なお、この照会に際しては、裁判所で本人確認を求められる場合が多く、個人の場合は住民票や運転免許証等、法人の場合は商業登記簿謄本(全部事項証明書)や資格証明書の提出を求められます。
相続放棄申述受理証明書の取得費用
申述人本人が申請する場合であっても、利害関係人が申請する場合であっても、相続放棄申述受理証明書1通あたり150円の手数料がかかります。
また、証明書を窓口で受け取るのではなく郵送して欲しいときには、返信用の切手もあわせて裁判所に提出します。
相続放棄申述受理証明書に関するよくある疑問
相続放棄申述受理証明書の発行は郵送で申請できますか?
相続放棄申述受理証明書の発行申請は家庭裁判所の窓口もしくは郵送で行うことが可能です。
なお、郵送で発行を申請する場合は、返信用封筒と郵便切手を同封しなければならないことに注意が必要です。
相続放棄申述受理証明書は再発行できますか?
相続放棄申述受理証明書は、何通でも発行を求めることが可能です。
そのため、最初から複数枚発行を申請することもできますし、紛失した場合等に再度発行を求めることもできます(なお、相続放棄申述受理通知書は一度しか発行されません)。
相続放棄申述受理証明書の取得に必要な情報がわからない場合にはどうすればよいですか?
相続放棄申述受理証明書の発行申請をするときには、相続放棄をした際の事件番号等を記載する必要があります。
ただ、相続放棄をした本人であればともかく、利害関係人や他の相続人は、事件番号等を把握していない場合が多いでしょう。
また、そもそも相続放棄をしたかどうかもわからない場合すらあり得ます(相続人本人が相続放棄をしたと言っていても実際はしていない事例や、相続人が相続財産を一切受け取っていないことを放棄と勘違いしているような事例も少なくありません)。
そのような場合には、あらかじめ、家庭裁判所に対して、相続放棄の有無の照会(ある相続人が相続放棄を行ったかどうかを調査してもらう手続き)を行うことができ、もし、相続放棄の手続きが採られている場合には、事件番号や受理日等を回答してもらうことができます。
相続放棄申述受理証明書はいつまで取得できますか?
家庭裁判所が相続放棄の手続き関係の書類を保存しておくのは30年間と定められているので、相続放棄申述受理証明書は、相続人が相続放棄をしてから30年間は発行を申請することができます。
この記事のポイントとまとめ
以上、相続放棄申述受理証明書と相続放棄申述受理通知書の違いについて解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 相続放棄申述受理通知書は一度しか発行されない
- 相続放棄申述受理証明書は、相続人が相続放棄をしてから30年間は発行を申請できる
- 相続放棄申述受理証明書は、申述人本人以外でも一定の利害関係がある者であれば、家庭裁判所に発行を求めることができる
一般的に、相続放棄をしたことは相続放棄申述受理通知書で確認できることから、相続放棄申述受理証明書が必要なケースというのはあまり多くないといえます。
ただ、相続放棄申述受理証明通知書は一度しか発行されず、紛失してしまうと再発行されません。
せっかく相続放棄をしたのに、そのことが証明できなくなると大変ですから、相続放棄の手続きを行った際には、念のため相続放棄申述受理証明書を取得しておかれることをおすすめします。
相続放棄について不明点があるときには、専門家への相談も検討してください。
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