公正証書遺言の必要書類を解説!専門家に依頼したときの費用やメリットも
公正証書遺言を作成する際に意外と手間がかかるのが、必要書類の収集です。戸籍を収集したり、不動産を所有している場合は登記事項証明書などが必要となります。
この記事では、公正証書遺言作成の必要書類や、書類の収集にかかる費用、書類の収集を含めた遺言作成支援を専門家に依頼するメリットまた、公正証書遺言の検索に必要な書類についても説明します。
目次
公正証書遺言とは?
遺言とは、亡くなった人が、主に自分の財産等について残した意思表示のことです。例えば、「全財産を妻に相続させる」というような意思表示のことです。
公正証書遺言とは、公証役場で公証人に遺言書を作成してもらってする遺言のことです。公証人がパソコンで作成し、遺言を遺す人が記載内容を確認して最後に署名・押印をします。
普通形式の遺言には、公正証書遺言のほかに、自筆証書遺言と秘密証書遺言があります。秘密証書遺言と自筆証書遺言、公正証書遺言の違いをまとめると、下表とおりです。
自筆証書遺言 | 秘密証書遺言 | 公正証書遺言 | |
---|---|---|---|
作成者 | 自分(専門家に依頼することも可能) | 自分(専門家に依頼することも可能) | 公証人 |
作成方法 | 自筆のみ(専門家に文章を作ってもらっても書くのは自分) | 自筆・代筆・ワープロ(署名は自筆のみ) | 公証人が作成 |
公証役場に行く必要 | なし | あり | あり |
証明できること | なし | 遺言者の意思に基づいた遺言であること | 遺言者の意思に基づいた遺言であること、遺言内容 |
証人 | 不要 | 必要 | 必要 |
秘密性 | 作成したことすら誰にも知られずに可能 | 内容は誰にも知られないが、作成したことは公証人と証人には知られる | 内容も含めて公証人と証人には知られる |
費用 | 不要 | 1万1000円 | 1万6000円〜(相続財産額による従量課金) |
保管者 | 自分(誰かに委託してもよい) | 自分(誰かに委託してもよい) | 公証役場 |
内容の一部変更 | できる | できない | できない |
検認 | 必要 | 必要 | 不要 |
法務局における遺言書の保管制度(※) | 利用できる | 利用できない | 利用できない(利用する必要がない) |
※法務局における遺言書の保管制度が2020年7月より始まりました。法務局に遺言書を預けることによって、遺言書の形式のチェックをしてもらうことができ、検認も不要です。
公正証書遺言の必要書類
公正証書遺言の作成には、主に次の書類が必要です。
- 遺言者本人の本人確認資料(印鑑登録証明書に加え、運転免許証、住基カード等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ)
- 遺言者と推定相続人との続柄が分かる戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書、及び推定相続人の戸籍謄本(直系尊属が推定相続人の場合には、遺言者に子がいないことの分かる戸籍が必要となり、兄弟姉妹が推定相続人の場合には、遺言者に子がなく、かつ、直系尊属が死亡していることの分かる戸籍が必要となります)
- 財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票(法人の場合には資格証明書(法人登記簿謄本又は登記事項証明書))
- 財産の中に不動産がある場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書(遺言書の中に個別の不動産を明記しない場合(例えば、「全ての不動産を妻に相続させる。」などとする場合)には、登記事項証明書の提出は不要となります)
- 証人予定者のお名前、住所、生年月日及び職業をメモしたもの
- 証人の本人確認資料(保険証などの顔写真付きでない資料でも構いません)
遺言作成に必要となる書類は遺言内容によって異なり、また、公証役場によっても若干運用が異なるため、事前に公証役場に確認すると良いでしょう。
公正証書遺言の必要書類にかかる費用
証明書類については、下表の通りの交付手数料がかかります。
証明書の種類 | 交付手数料 | 交付期間 |
---|---|---|
印鑑登録証明書 | 1通300円 ※本人確認を他の証明書によってする場合は不要 | 市区町村 |
戸籍謄本・戸籍全部事項証明書 | 1通450円 | 市区町村 |
住民票 | 1通300円 ※相続人以外の受遺者ごとに必要 相続人以外の受遺者がいない場合は不要 | 市区町村 |
登記簿謄本・登記事項証明書 |
|
法務局 |
固定資産評価証明書 | 1通350円〜400円(市区町村ごとに異なる) ※財産に不動産を含まない場合又は固定資産税課税明細書がある場合は不要 | 市区町村 |
書類収集は専門家に依頼可能
公正証書遺言の作成については司法書士、行政書士といった専門家が公正証書遺言の作成支援サービスを提供しており、必要書類の収集も専門家が代行してくれます。
料金は専門家によって異なり、必要書類の収集代行も含めたセット料金になっている場合と、別途料金がかかる場合があります。依頼する前に確認しましょう。
公正証書遺言の作成支援を専門家に依頼するメリット
公正証書遺言の作成支援を専門家に依頼するメリットは、必要書類の収集代行だけではありません。主に次のようなメリットがあります。
- 遺言内容についての相談ができる
- 手間を削減できる
- 遺言執行者になってもらえる
遺言内容についての相談ができる
公正証書遺言では遺言者が公証人に遺言内容を口頭で伝えて、その内容に沿って、公証人が遺言書を作成します。
公証人は遺言内容をどうするかについての相談には応じてくれません。しかし行政書士などの専門家は、遺言書の内容についても相談が可能です。
遺言内容によっては、相続人や受遺者の間でトラブルになるおそれがあり、また、税金も変わってくるため、遺言内容は重要です。
手間を削減できる
公正証書遺言をするためには、必要書類を収集したり、証人になってくれる人を探したりする手間が生じます。また、公証役場に最低でも2回は行かなければなりません。
専門家に依頼すると書類の収集や証人の立会いもやってもらえますし、遺言者が公証役場に行くのも1回だけで十分です。
遺言執行者になってもらえる
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きを行う人のことです。
遺言が執行される時には、遺言者は亡くなっていますから、遺言の内容を自らの手で実現させることはできません。
そこで、遺言執行者がいると、遺言者の代わりに遺言の内容を実現させることができるのです。
遺言執行者は、必ずしも指定しなければならないわけではありません。
遺言執行者がいない場合は、相続人や受遺者(遺贈によって財産をもらい受ける人)が遺言の内容を実現させるための手続きを行うことになります。また、相続開始後に裁判所に遺言執行者を選任してもらうこともできます。
しかし、相続手続きの知識のない相続人や受遺者自らが、遺言の内容を実現する手続きを進めることや遺言執行者の選任を申し立てることは煩雑で大変です。
遺言執行者がいない場合は、相続人と受遺者全員の署名、押印と印鑑証明が必要になる手続きも多数あり、手続きの度に相続人全員に連絡して、署名などを集めるのは、なかなか大変です。
その点、遺言執行者は、単独で相続手続きを行うことができるので、スムーズに進めることができます。
また、相続人や受遺者が単独で行うことができる手続きもありますが、一部の相続人や受遺者が勝手な手続きをしてしまうリスクもあります。
ですので、遺言執行者が必須でないケースでも遺言執行者を選定した方が手続きが安全かつスムーズに進むでしょう。
公正証書遺言の検索に必要な書類
遺言者が、相続人に公正証書遺言を作成したことを生前に告げておらず、公正証書遺言が存在するかどうかわからない場合、その法定相続人は、公正証書遺言が存在するかどうかを調査(検索)することができます。
具体的には、公証人連合会の遺言検索システムを利用します。このシステムの検索対象は、1989年以降に作成された公正証書遺言です。
遺言を作成した公証役場でなくても、日本全国のどの公証役場でも照会を受けることが可能です。
なお、このシステムで公正証書遺言書の存在の有無が確認できるのは、既に亡くなった遺言者のものだけであり、遺言者が生きている間に、その相続人が公正証書遺言の有無を調査することはできません。
遺言検索システムの利用には、次の書類が必要です。
- 遺言者の死亡を証明する書類(遺言者の戸籍謄本(全部事項証明書)、または、死亡診断書等)
- 利害関係を証明する書類(請求者が遺言者の法定相続人であることを証明することができる戸籍謄本(全部事項証明書)等)
- 請求者の身分を証明する書類(顔写真の付いた身分証明書(運転免許証・パスポート等)と認印のセット、または、発行から3か月以内の印鑑登録証明書と実印のセット)
請求者の代理人が公証役場に行く場合は、さらに以下の書類が必要です。
- 法定相続人の委任状(法定相続人の実印の押印が必要)
- 代理人の本人確認資料(運転免許証やパスポート)
公正証書遺言による登記に必要な書類
公正証書遺言でも、他の遺言でも、登記に必要な書類に違いはありません。違いがあるのは、公正証書遺言の場合は検認が不要という点ぐらいです。
登記に必要な書類は登記する不動産の取得者が法定相続人なのか、法定相続人以外なのかによって異なります。また後者の場合は、遺言執行者がいるかどうかによっても異なります。
遺言により法定相続人が取得した不動産の登記の必要書類
- 遺言書
- 遺言者の死亡時の戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)
- 遺言者の住民票の除票
- 登記する不動産を取得する人の現在の戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)
- 登記する不動産を取得する人の住民票
- 固定資産評価証明書
遺言執行者が定められている遺言により法定相続人以外の人が取得した不動産の登記の必要書類
- 遺言書
- 遺言者の死亡時の戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)
- 遺言者の住民票の除票
- 登記する不動産の権利証または登記識別情報
- 登記する不動産を取得する人の住民票
- 遺言執行者の印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)
- 固定資産評価証明書
遺言執行者が定められていない遺言により法定相続人以外の人が取得した不動産の登記に必要書類
- 遺言書
- 遺言者の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(または戸籍全部事項証明書)、除籍謄本(または除籍全部事項証明書)、改製原戸籍謄本
- 遺言者の住民票の除票
- 登記する不動産の権利証または登記識別情報
- 登記する不動産を取得する人の住民票
- 法定相続人全員の戸籍謄本及び印鑑登録証明書(発行後3か月以内のもの)
- 固定資産評価証明書
この記事のポイントとまとめ
以上、公正証書遺言の必要書類について解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 公正証書遺言の作成には本人確認資料や戸籍謄本などが必要
- 公正証書遺言の作成支援や必要書類の収集は専門家に依頼できる
- 専門家に遺言執行者になってもらうことも可能
今回は公正証書遺言の必要書類について説明しました。実際に遺言作成支援を依頼するときの費用や作成までにかかる期間などは専門家によって異なるのでまずは、相談してみるとよいでしょう。その際は、相続に強い専門家を選ぶことが重要です。専門家によっても得意分野は異なります。
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