公正証書遺言で確実に遺言をする方法は?必要書類や手順、自筆証書遺言との比較など
高齢化が進む現代社会において、「終活」に力を入れる人が増えてきました。
特に、自分の死亡後に、財産をどのように分配するかということについては、親族が相続で揉めるのを避けたいという想いも相まって、遺言書を残しておこうと考える方も多くなってきたようです。
ここでは、公正証書遺言について、メリットやデメリット、具体的な作成方法や費用等についてご説明したいと思います。
目次
公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言書のことです。自分で書いて作成する遺言書を自筆証書遺言と言います。
公正証書遺言を作成する場合は、公証役場において、公証人に遺言の内容を口頭で伝え、公証人がそれを文書にします。
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自筆証書遺言は形式不備などで無効となる可能性があるため、確実に遺言を残したいという方は公正証書遺言をおすすめします。
遺言書が無効になる可能性が低い
自筆証書遺言は遺言書に日付がなかったり、自筆でなくパソコンで作成するなど、ちょっとした誤りで無効になってしまう可能性があります。
これに対し、公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が作成するので、作成方法を誤ったために無効になってしまう可能性は低いでしょう。
遺言書を紛失することがない
公正証書遺言の原本は、作成後、公証役場において原則として20年間保管されます。
そのため自筆証書遺言と異なり、紛失してしまうリスクがありませんし、誰かに無断で書き換えられてしまうリスクもありません。
遺言書が偽造されることがない
公正証書遺言は、公証役場でしか作成することができず、公正証書遺言の作成時に必ず本人確認を行われます。
そのため、自筆証書遺言と異なり、本人の名を語って勝手に遺言書が偽造されてしまうということはあり得ません。
家庭裁判所での検認が必要ない
自筆証書遺言は、遺言者が法務局における保管制度を利用していない限り、遺言者の死亡後、家庭裁判所において遺言書を開封して中身を確認するという「検認」手続きが必要になります。
検認手続きにおいては、家庭裁判所から相続人全員に出頭を求める通知がなされ、相続人、裁判官立ち会いのもとで遺言書が開封されます。
しかし、公正証書遺言においては、そもそも検認手続き自体が必要なく、すぐに遺言の内容に従って相続を開始することができます。
文字が書けなくても遺言書を作成できる
自筆証書遺言は、必ず「自筆」で作成する必要があり、パソコン等で作成することができません。
そのため、何らかの理由で文字が書けない場合には、自筆証書遺言を作成することができません。
これに対し、公正証書遺言は、口頭で公証人に内容を告げるだけでよいので、文字が書けない場合でも遺言書を作成することができます。言語・聴覚機能に障害がある方の場合でも、手話や筆談によって内容を伝えることが可能です。
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費用がかかる
公正証書遺言は公証人に対する手数料が必要なため、自筆証書遺言よりも費用がかかります。
証人が必要
公正証書遺言を作成するには、遺言者と公証人以外に証人を2人以上用意しなければなりません。
ただ、推定相続人(遺言者が亡くなったときに相続人になると推定される人)や受遺者(遺言によって財産を取得する予定の者)は証人になることができません。
そのため、証人探しや証人の依頼が面倒という点がデメリットとしてあげられます。
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遺言書の内容を決める
公正証書遺言の作成をする際は、まず、誰にどの財産を相続させるかを決める必要があります。
誰にどの財産を相続させるかということを決めるには、相続人間の公平や、相続税、遺留分や特別受益等様々な要素を考慮しながら決める必要があります。
ただ、どのような遺言の内容にするべきか、という点は公証人に相談できないので、自分自身で事前に検討しておくか、税理士や行政書士といった専門家にあらかじめ相談しておくことが大切です。
証人を2人用意する
公正証書遺言を作成する際には、法定相続人や受遺者以外の第三者2名(未成年者を除く)に証人として立ち会ってもらう必要があることから、あらかじめ証人を選んでおく必要があります。
なお、どうしても適当な証人が見つからない場合は、公証役場の事務員に依頼することも可能です(別途費用が発生します)。
必要書類を収集する
公正証書遺言を作成する際には、次の書類が必要になるので、事前に収集しておきます。
- 遺言者本人の本人確認資料(印鑑証明書又は運転免許証、住基カード等顔写真入りの公的機関の発行した証明書のいずれか一つ)
- 遺言者と相続人との続柄がわかる戸籍謄本(財産を相続人以外の人に遺贈する場合は、受遺者の住民票)
- 相続財産に不動産がある場合は、その不動産の登記事項証明書、固定資産評価証明書
- 発行から3か月以内の印鑑登録証明書
- 遺言者の戸籍謄本
- 預貯金の通帳のコピー
- 証人を知人に依頼する際には、その人の名前、住所、生年月日、職業のメモ
- 遺言執行者を指定する場合は、その人の名前、住所、生年月日、職業のメモ
公証役場で遺言書を作成する
遺言書の内容が決まり必要書類の準備もできたら、証人と共に公証役場を訪れ、遺言の内容を公証人に伝えて、公正証書遺言を作成してもらいます。作成日時は公証人、証人、遺言者の都合の合う日を予約します。
公正証書遺言を作成する際にかかる費用
公正証書遺言を作成する際にかかる費用としては、公証人に支払う手数料と、印鑑証明書や登記簿謄本、戸籍謄本等の必要書類を収集するのにかかる手数料があります。
公正証書遺言を作成する際に公証人に支払う手数料は、遺言書に記載する相続財産(遺産)の額によって決まり、その金額は、交渉人手数料令という法令によって下記のとおり定められています(この手数料は全国の公証役場で共通です)。
相続財産の金額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5,000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7,000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11.000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17,000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23,000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29,000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43,000円 |
1億円を超え3億円以下 | 43,000円+5,000万円ごとに13,000円 |
3億円を超え10億円以下 | 95,000円+5,000万円ごとに11,000円 |
10億円を超える場合 | 249,000円+5,000万円ごとに8,000円 |
相続財産の金額については、遺産の総額ではなく相続人毎に計算します。
▼あなたに必要な相続手続き、ポチポチ選択するだけで診断できます!▼公正証書遺言を作成する際の注意点
公証人に遺言内容を相談できない
公証人には、誰にどの財産を相続させるべきか、どのような遺言にすれば相続税が減らせるかなど遺言の内容について相談をすることはできません。
そのため、遺言の内容が決まっていないまま公証役場に行っても、納得した遺言書が作成できない可能性があります。
遺留分に配慮する
兄弟姉妹以外の法定相続人は、遺言によっても侵害することのできない最低限の相続分として、遺留分があります。
そして、もし、この遺留分を侵害するような遺言書を作成した場合(ある法定相続人に、遺留分に満たない財産しか相続させなかった場合)、遺留分を侵害された法定相続人から他の相続人に対して遺留分侵害額請求をする可能性があります。
遺留分を侵害する遺言であっても法律上無効になるわけではないので、遺留分を侵害するような遺言であっても、公証人はそのまま遺言書を作成します。
そのため、遺言者自身であらかじめ遺留分について考慮したうえで、遺言の内容を決めなければなりません。
▼まずはお電話で相続の相談をしてみませんか?▼公正証書遺言を書き直したいときは
遺言書は、一度作成してしまった後でも、いつでも内容を撤回したり変更したりすることができます2通以上の通以上の遺言書がある場合で、その内容が抵触している場合は、後から作成した遺言書が有効となります。
これは公正証書遺言の場合も同様です。しかし公正証書遺言は原本が公証役場に保管されているため書き換えはできません。内容を変更したい場合は、再度遺言書を作り直す必要があります。また、公正証書遺言を書き換える際に、公正証書遺言ではなく自筆証書遺言で作り直すことも可能です。
▼相続対策にはどんなことがある?まずは調べることから始めましょう!▼公正証書遺言があるか相続人が調べるときは
被相続人の死後、公正証書遺言が存在するかどうかわからない場合、法定相続人は、被相続人の公正証書遺言が存在するかどうかを調査することができます。これは、公証人連合会の遺言検索システムを利用します。
この検索システムは、日本全国の公証役場で作成された(ただし平成元年以降)遺言が対象となるので、必ずしも被相続人が遺言を作成した公証役場でなくても、最寄りの公証役場において調査してもらうことが可能です。
なお、このシステムで公正証書遺言書の存在の有無が確認できるのは、既に亡くなった被相続人のものだけであり、被相続人が生きている間に、相続人が公正証書遺言の有無を調査することはできません。
▼忘れている相続手続きはありませんか?▼公正証書遺言について専門家に相談したいとき
公正証書遺言は、公証人が作成してくれることから、自筆証書遺言のように形式などに悩む必要がありません。
しかし、遺言書の内容については、公証人には相談できないので、事前にきちんと確定させておく必要があります。
そのため、まず行政書士等の専門家にどのような遺言を残すべきかを相談し、内容をきちんと確定させた上で、公証人に遺言の作成を依頼するという方法をおすすめします。
▼相続手続きは一人で悩まず専門家に相談しましょう▼この記事のポイントとまとめ
以上、公正証書遺言について解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 公正証書遺言は公証人が作成するため、形式不備などで無効となることは少ない
- 公証人に遺言の内容はできないため、事前に専門家に相談しておくと安心
- 公正証書遺言なら家庭裁判所での検認は不要
公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べて作成に手間や費用がかかるものの、偽造や変造、紛失などといったリスクがなく、確実に遺言を残したい人への遺言書といえます。
いい相続では、相続に強い行政書士などの専門家を紹介しています。遺言書の作成を検討している人はぜひお問い合わせください。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きや遺言書の作成を依頼した方のインタビューはこちら
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