妻の方が受給額が多い?!遺族年金はいくらもらえる?計算方法をご紹介【行政書士監修】
「配偶者が亡くなったら、遺族年金をもらえる」と聞いたことがあるかもしれません。
しかし、妻が亡くなった場合と夫が亡くなった場合では、遺族年金の受給金額が違うのを知っていますか?
残された夫より妻の方が多く受給できるのです。
遺された妻は遺族年金をいくらもらえるのでしょうか?この記事では、このような遺族年金の金額について、わかりやすく丁寧に説明します。
この記事の監修者
〈行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、CFP®、不動産コンサルティングマスター〉
相続・相続対策の専門家として、相続手続きの総合的なご支援はもちろん、遺言書の作成などの相続対策もお客様と共に考え、アドバイスをさせていただきます。また、後見や財産管理、民事(家族)信託などもお気軽にご相談ください。
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遺族年金は遺族基礎年金と遺族厚生年金の2種類
遺族年金とは、国民年金や厚生年金保険の被保険者等が亡くなったときに、その人によって生計を維持されていた遺族が受けることができる年金です。
故人の年金の納付状況や遺族年金を受け取る人の年齢、優先順位などの一定の要件を満たした場合に受け取ることができます。
死亡した人の年金の加入状況などによって、「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」のいずれか、または両方が給付されます。
子どもが18歳になった年度の3月31日までの間は遺族基礎年金を受給できる可能性があり、亡くなった人がサラリーマン等で厚生年金か共済年金の加入者だった場合は遺族厚生年金が受給できる可能性があります。
遺族基礎年金、遺族厚生年金にそれぞれついては以下の記事で詳しくご紹介しています。
▼遺族基礎年金▼ ▼遺族厚生年金▼以降では、遺族年金の金額について、遺族基礎年金と遺族厚生年金とにわけて説明します。
遺族基礎年金はいくらもらえる?
遺族基礎年金とは、国民年金の被保険者だった方が受給要件を満たしている場合、亡くなった人によって生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」が受け取れる年金です。
遺族基礎年金の金額の計算方法について、配偶者が受け取る場合と子が受け取る場合とを、それぞれ説明します。
配偶者が受け取る場合
配偶者が受け取る遺族基礎年金の金額(年額)は、令和5年4月分から、妻の年齢に応じて、次の計算式によって計算することができます。
子のある配偶者が受け取るとき、
①67歳以下の方 「795,000円 + 子の加算額」
②68歳以上の方 「792,600円 + 子の加算額」
例えば、67歳以下の妻で、対象となる子が4人いる場合の支給額は、
となります。
なお、子の加算額の対象となる子は、遺族基礎年金の受給資格と同じく、次の1と2のいずれかを満たし、かつ、3も同時に満たす子のみです。
- 18歳になった年度の3月31日までの間にあること ※死亡当時に胎児であった子も出生以降に対象となります。
- 20歳未満で障害等級1級または2級の障害の状態にあること
- 婚姻していないこと
したがって、例えば、ある子が18歳になった年度の年度末を過ぎると、その子は子の加算額の対象からも外れます。
対象となる子が3人以上の場合に1人が対象から外れると、加算額は76,200円減額されます。
対象となる子が2人以下の場合に1人が対象から外れると、加算額は228,700円減額されます。
子が受け取る場合
子が受け取る遺族基礎年金の金額(年額)は、「795,000円+2人目以降の子の加算額」で計算することができます。
加算額は、配偶者が受け取る場合と同じです。この金額を子の数で割った額が、1人あたりの支給額となります。
例えば、対象となる子が4人いる場合の1人当たりの支給額は、
となります。
なお、子の加算額の対象となる子は、遺族基礎年金の受給資格と同じです。
寡婦年金と死亡一時金
遺族基礎年金は、要件を満たす子がいる場合でなければ受けられませんが、要件を満たす子がいなくても受けられる「寡婦年金」と「死亡一時金」という制度があります。
寡婦年金、死亡一時金については以下の記事で詳しくご紹介しています。
▼寡婦年金▼ ▼死亡一時金▼遺族厚生年金はいくらもらえる?
遺族厚生年金とは、厚生年金保険の被保険者だった方が受給要件を満たしている場合、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族が受け取れる年金です。
基本的な計算方法
遺族厚生年金の金額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。
老齢厚生年金とは公的年金制度のひとつで、厚生年金に加入していて受給要件を満たした人が原則65歳に達してから老齢基礎年金に上乗せしてもらえる年金のことです。
老齢厚生年金には、報酬比例部分と定額部分とがあり、報酬比例部分とは、年金額が厚生年金保険加入期間中の報酬及び加入期間に基づいて計算される部分です。
老齢厚生年金の報酬比例部分は、平成15年3月以前の加入期間におけるもの(A)と、平成15年4月以降の加入期間におけるもの(B)とを足し算して計算します。
Aは、次の計算式で求めることができます。
A式中の「平均標準報酬月額」は、平成15年3月以前の標準報酬月額の総額を、平成15年3月以前の加入期間で割って得た額です。
標準報酬月額とは、被保険者が事業主から受ける毎月の給料などの報酬の月額を区切りのよい幅で区分したもののことです。
なお、亡くなった人が老齢厚生年金の受給権者だった場合は、A式中の7.125/1000は、亡くなった人の生年月日に応じて、7.125/1000~9.5/1000となります。
Bは、次の計算式で求めることができます。
Bの式中の「平均標準報酬月額」は、平成15年4月以降の標準報酬月額と標準賞与額の総額を、平成15年4月以降の加入期間で割って得た額です。
標準賞与額とは、税引き前の賞与総額から千円未満を切り捨てた金額です(1か月あたり150万円が上限)。
亡くなった人が老齢厚生年金の受給権者だった場合(前述の死亡した人に関する要件の4に該当する場合)は、B式中の5.481/1000は、亡くなった人の生年月日に応じて、5.481/1000~7.308/1000となります。
なお、前述の死亡した人に関する要件の1~3に該当する場合は、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
65歳以上で老齢厚生(退職共済)年金を受ける権利がある人が配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取るとき
老齢厚生(退職共済)年金と遺族厚生年金の両方を受け取ることができる場合、平成19年4月1日までは、原則、どちらを受けるか選択することとなっていましたが、平成16年の年金制度改正により、平成19年4月1日からは、自分自身が納めた保険料を年金額に反映させるため、65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある方は、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となります。
遺族厚生年金の受給権者が死亡した方の配偶者である場合、その遺族厚生年金は、
- 亡くなられた方の老齢厚生年金額の3/4
- 亡くなられた方の老齢厚生年金額の1/2 + ご自身の老齢厚生年金額の1/2
の2通りの計算方法があり、いずれか多い額が支給されます。
中高齢寡婦加算
中高齢寡婦加算とは、遺族厚生年金の加算給付の一つです。「寡婦」とは、夫と死別した女性のことです。
中高齢寡婦加算は、遺族厚生年金を受ける妻(夫と死別した妻)が、40歳~65歳までの間、遺族厚生年金にお金を加算してもらえる制度です。妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢の寡婦加算はなくなります。
中高齢寡婦加算の金額は、年間令和5年現在は年間596,300円です(老齢基礎年金満額の4分の3相当)。この金額が、遺族厚生年金の金額に加算されます。
経過的寡婦加算
経過的寡婦加算とは、遺族厚生年金の加算給付の1つで、遺族厚生年金を受けている妻が65歳になり、自分の老齢基礎年金を受けるようになったときに、65歳までの中高齢寡婦加算に代わり加算される一定額をいいます。
これは、老齢基礎年金の額が中高齢寡婦加算の額に満たない場合が生ずるときに、65歳到達前後における年金額の低下を防止するため設けられたものです。
その額は、昭和61(1986)年4月1日において30歳以上の人(昭和31(1956)年4月1日以前生まれ)の人が、60歳までの国民年金に加入可能な期間をすべて加入した場合の老齢基礎年金の額に相当する額と合算して、ちょうど中高齢寡婦加算の額となるよう、生年月日に応じて設定されています。
65歳以降に初めて遺族厚生年金(長期の遺族厚生年金では死亡した夫の被保険者期間が20年(中高齢の期間短縮の特例などによって20年未満の被保険者期間で老齢厚生年金の受給資格期間を満たした人はその期間)以上)を受け始めた妻にも加算されます。
まとめ
今回は、遺族基礎年金と遺族厚生年金の金額について説明しました。
家族が亡くなると、年金関係に限らず、様々な相続手続きが必要となります。専門家にまとめて依頼することで、手間が省けますし、申請漏れで損することもなくなります。
いい相続では、相続専門スタッフがお悩みを伺い、相続に強い行政書士や税理士などの専門家をご紹介しています。専門家との初回相談は無料です。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
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