遺書と遺言書の違いは?遺言の種類と法的遺言事項も詳しく説明
最近、終活という言葉を耳にする人は多いでしょう。自分の最後にむけて財産を整理しておいたり、遺言書を残しておく人が増えています。
遺言書ではなく、遺書が良いという人もいるでしょう。でも遺言書は遺書と違うのでしょうか。
せっかく遺言書を書いたのに意味がなかったなどということにならないよう、その違いについて知っておきましょう。
遺書と遺言書の違い
遺書(いしょ)と遺言書(いごんしょ)にはどのような違いがあるのでしょうか。
遺書とは?
遺書とは、自分の死後に家族や親しい人に残す言葉や気持ちを伝える手紙です。遺書に決まった形式や書くべき内容が定まっているわけではありません。好きな紙に、自由な内容を書けばよいだけです。
遺言書とは?
この遺書のうち、民法が要求する一定の方式にしたがって作成された書面を「遺言書(いごんしょ)」と言います。
遺言書の内容
民法では、遺言できる事項が法定されています。これを遺言事項といいます。遺言事項は、大きく4つに分類できます。
遺言者(遺言を残す人)の意思で、民法に定められている法定相続制度とは異なる相続方法とすることを認める事項
- 相続人の廃除又は廃除の取消し
- 相続分の指定
- 遺産分割方法の指定
- 遺産分割の禁止
- 特別受益の持戻し免除
- 遺産分割の担保責任に関する別段の意思表示
- 遺留分減殺方法の定め(後述)
遺言者の意思で、相続以外の方法で財産を処分することを認める事項
- 遺贈に関する事項
- 財団法人設立の寄付行為
- 信託の設定
身分関係に関する事項
- 認知
- 未成年後見人の指定
- 未成年後見監督人の指定
遺言の執行に関する事項
- 遺言執行者の指定
これら遺言事項は法的な効力が認められる事項ですが、これら以外の事項を遺言の内容としてはいけないわけではありません。
遺言が必要なケース
遺言がない場合の相続
遺言が残されていないときは、民法に定められた法定相続人が、法定相続分にしたがって相続することになります。
遺言書を作成したほうがよい場合
法定相続制度に従いたくない場合に遺言書を作成する大きな意味があります。
たとえば、夫婦間で何十年も前に別居してしまい、戸籍上だけの妻よりも、姉と弟に遺産を渡したいと希望するときは遺言を残すことで希望が叶えられます。
遺言書はどのようにつくるのか
遺言書は、民法の定める「方式」にしたがっていないと法的効力が認められません。以下の3つの遺言書の方式を「普通方式遺言」と言い、ほとんどの遺言書がこれにあてはまります。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が遺言内容を自書して日付を記載し、署名と押印をした方式です。費用もかからず、手軽に作成できるので多くの人から利用されている方式です。
その反面、押印忘れやワープロで作成して無効となってしまったり、内容があいまいで執行できないことも。保管中に紛失してしまうこともあります。
なお、令和2年7月10日より、自筆証書遺言の保管制度が始まりました。法務局で遺言書を預かってもらうことができます。また相続時の家庭裁判所でも検認が不要となります。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場の公証人に作成してもらう方式です。形式面のミスがなく、作成後は公証役場で保管されるので紛失や盗難の危険もありません。また公正証書遺言は家庭裁判所の検認手続も不要です。反面、立会人(証人)2名が必要なことや、手数料がかかってしまうことがデメリットです。
秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を公証人に知られず、遺言書の存在を公証人らに証明してもらうものです。あらかじめ作成した遺言書を封書にいれ、封をして公証人と立会人(証人)に提出し、この中に遺言書が封じられていると認証してもらうというわけです。秘密証書遺言は、代筆やワープロでも大丈夫です。
ただし、公証人が内容をチェックしてくれるわけではないので、内容に不備があって執行できない危険や、封書は自己保管なので、紛失や盗難のリスクもあります。
遺言の法的効力が無効となるケース
遺言者の意思を尊重する遺言制度にも、いくつかの限界はあります。
遺留分
遺言でも奪うことができない相続人の権利として「遺留分」があります。これは一定の相続人に対して、遺言でも奪うことのできない最低限の遺産の取り分を言います。
遺留分は、兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者、子、直系尊属)に認められています。たとえば、相続人が、妻と長男、次男の場合、遺留分は妻2分の1、長男次男は各4分の1です。
公序良俗違反
遺言者の意思を尊重するといっても、それが公序良俗に違反する場合は、法的効力は認められません。
たとえば、夫がその全財産を不倫関係にある愛人に贈与するという遺言を残した場合、法定相続人である妻から、その遺言は不倫関係を維持する目的でなされたもので公序良俗に反し無効だという訴えがなされたケースがいくつかあります。
詐欺、強迫、錯誤による遺言
遺言は、遺言者の意思を表示するものなので、その遺言が詐欺や強迫によってなされたときは取り消すことができます。また錯誤(勘違い)によってされたときは無効となります。
この記事のポイントとまとめ
以上、遺書と遺言書の違いについて解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 遺書とは自分の死後に残される家族、友人、知人など親しい人に向けて、自分の気持ちを伝える手紙
- 遺言書は一定の方式に従って作成される法律文書
- 遺言書は何を書いても法的効力があるわけではなく遺言事項が決まっている
遺言書の方式はいくつかあり、それぞれメリット・デメリットがあります。また遺言内容についても、一度相続に詳しい専門家に相談することをおすすめします。
いい相続ではお近くの専門家との無料相談をご案内することが可能ですので、遺言書の作成や相続手続きでお困りの方はお気軽にご相談ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きや遺言書の作成を依頼した方のインタビューはこちら
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