遺産相続したお金はいつもらえる?振り込みまでの期間や受け取り方【行政書士監修】
家族が亡くなったら死亡届の提出から始まり葬儀や預貯金の相続手続き、遺品整理などしなければいけない手続きがたくさん出てきます。
その忙しい中で、葬儀などの費用などお金について心配になる方もいるでしょう。
この記事では、相続した遺産はいつもらえるか、お金が振り込まれるまでの期間について説明します。
- 相続したお金が振り込まれるまでの期間は手続きによって異なる
- 相続関係が複雑な場合は時間がかかることもあり
- もらう前にお金が必要なときは仮払い制度を利用
この記事の監修者
〈行政書士〉
行政書士業務全般に携わり、特には、相続手続き、遺言書作成文案作成、外国人の入国手続きから、皆様の土地活用のお手伝いとして、農地転用や土地利用申請などを行っています。
▶柿澤行政書士事務所
目次
遺産は相続手続が完了したらもらえる
遺産は相続手続きが完了したらもらえます。
相続手続きとは、預貯金の払戻手続や不動産の登記(名義変更)等のように、相続した遺産の取得するための手続きのことです。
この手続きは、手続き方法や、相続人の人数、財産の種類、遺言書の有無などによってかかる時間が異なります。
相続人が一人の場合
相続人が一人しかいない場合は、死亡届を提出後、速やかに相続手続きをすることができます。
相続人が複数いる場合
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議によって誰がどの遺産を取得するかを決めた後、遺産分割協議書を作成し、相続手続きをします。
遺言書がある場合
遺言書があって、遺言によって遺産の取得者が決まる場合は、遺言書が遺言執行(相続手続き)に必要になります。
自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、遺言執行の前に、遺言書の検認が必要です(遺言書の検認については「自筆証書遺言の開封前に必ず確認!検認が必要なケースと手続きの流れ」参照)。
▼依頼するか迷っているなら、まずはどんな手続きが必要か診断してみましょう▼相続したお金が振り込まれるまでの期間は手続きによって異なる
相続手続きを申請してから、お金が振り込まれるまでの期間は手続きによって異なります。
預貯金以外にも死亡保険金を受け取る場合なども各社で決められた手続き方法ですすめていきます。
金融機関ごとのお金が振り込まれるまでの目安
預貯金の相続手続きを申請してから、お金が振り込まれるまでの期間は、金融機関によって異なります。以下に金融機関ごとのおおよその期間をまとめました。※申請書類や添付書類に不備がないことを前提としたものです。
金融機関名 | 期間の目安 |
---|---|
ゆうちょ銀行 | 1週間〜1か月 |
三菱UFJ銀行 | 2週間前後 |
みずほ銀行 | 1〜4週間 |
三井住友銀行 | 10日前後 |
りそな銀行 | 1〜2週間 |
横浜銀行 | 2〜3週間 |
JAバンク | 即日(最短) |
死亡保険金が振り込まれるまでの手続きと目安
被相続人が一般的な生命保険をかけており、相続人が受取人と指定されている場合は、比較的スムーズに振り込まれることが多いようです。
請求方法は各生命保険会社のホームページで確認できます。また契約先の保険代理店や、担当の保険外交員に連絡するのもよいでしょう。
近年、ネットでの保険契約取り扱いもありますので、ネット保険の場合にも、保険会社のホームページにて確認してください。
保険請求の流れ | 内容や期間の目安 |
---|---|
生命保険会社へ連絡 | 請求書類を送ってもらう(3日~1週間程度) |
請求書類を生命保険会社へ提出 | 死亡診断書・本人確認書類などを準備する |
生命保険会社で請求書類を確認 | 提出書類の確認等 |
死亡保険金の受取り | 指定口座への振り込み(請求書類が生命保険会社に到着し、内容に問題なければ約1週間以内) |
手続き完了が遅れる要因
金融機関に提出した書類に不備があった場合や、相続関係が複雑な場合等は、上の表に記載した期間よりも期間を要することもあります。
また、遺言書がある場合は家庭裁判所での検認が必要なためその期間手続き開始が遅れることや、相続人同士の遺産分割協議がなかなかまとまらない場合なども手続きが遅れる原因になります。
相続したお金の受け取り方
各金融機関からもらう相続手続きの書類には、払戻金の振込先を記入する欄があります。そこへ各相続人が指定する口座を記入し振り込まれるのを待ちます。振込完了の通知が送られてくる場合もあります。
なお、ゆうちょ銀行については、ゆうちょ銀行以外の金融機関口座への直接の振り込みができないため, 相続人がゆうちょ銀行に口座がない場合は以下の方法をとることになります。※2022年5月現在
- ゆうちょ銀行に総合口座を作る
- 現金で受け取る
- 口座を名義書き換えする
ゆうちょ銀行での相続手続きについては「ゆうちょ銀行の預金(貯金)残高証明書の取り方や凍結口座解約など相続手続きの方法」を、またJAバンクについては「JAバンク(農協)の預金の相続手続きの必要書類やポイントをわかりやすく解説」参照してください。
▼まずはお電話で相続の相談をしてみませんか?▼相続したお金が振り込まれるまでの流れ
預貯金の相続手続きをしてお金が振り込まれるまでの流れは、金融機関によって細かな違いはありますが、一般的には次のような流れで手続きをします。
- 死亡届を役所に提出
- 通帳、キャッシュカードを確認
- 引き落としや入金の予定がある場合は、引落口座や入金口座を変更
- 口座名義人が亡くなったことを銀行に連絡
- 必要書類の提出
- 払戻し
よりわかりやすく画像で表したものが以下の通りです。
死亡届を役所に提出
死亡届が提出されていない場合は、相続手続きを開始することができません。
死亡届は、被相続人が亡くなったことが判明したら、7日以内(国外で死亡した場合は、死亡を知った日から3か月以内)に役所に提出しなければなりません。
葬儀を葬儀社に依頼する場合は、通常、葬儀社が提出を代行してくれますので、葬儀会社への契約手続の説明時に確認してください。
死亡届について詳しくは「【死亡届の基礎知識】死亡診断書はコピーが必要?提出期限や再発行のしかたまで徹底解説」をご参照ください。
通帳、キャッシュカードを確認
亡くなった人が、どこの銀行に口座をもっているのか不明な場合は、それを明らかにしなければなりません。
通帳やキャッシュカードを探しましょう。
引き落としや入金の予定がある場合は、引落口座や入金口座を変更
銀行に連絡をすると、口座が凍結され、出入金が一切できなくなります。
公共料金やクレジットカード等の引落しがある場合は、決済方法の変更や解約などの手続きを並行して進めましょう。
凍結された口座に入金の予定がある場合は、早めに入金元に対して連絡するとよいでしょう。
口座名義人が亡くなったことを銀行に連絡
通帳またはキャッシュカードを準備して、口座名義人が亡くなったことを銀行に連絡します。
必要書類の提出
必要書類はケースによって異なります。
口座名義人が亡くなったことを銀行に連絡した際に、銀行が必要書類について説明してくれます。
払戻し
提出書類に不備がなければ、数週間ほどで指定した相続人の口座に払戻しがあります。
▼銀行の手続きは専門家に依頼できます。こちらへお問い合わせください▼
相続手続の完了前にお金が必要な場合の対処法
相続手続の完了前にお金が必要な場合の主な対処法として、次の2つが挙げられます。
- 口座凍結前に預貯金を引き出す
- 仮払いを受ける
以下、それぞれについて説明します。
口座凍結前に預貯金を引き出す場合の注意点
葬儀費用等が急ぎで必要な場合で、かつ、キャッシュカードの暗証番号が分かる場合は、口座凍結前にATMで預金を引き出すことも可能です。
引き出した場合には必ず通帳に記載し、または、ATM利用明細書を保管してください。
しかし、これには次の2つの問題があります。
- 他の共同相続人との間でトラブルになることがある
- 相続を単純承認したことになる
以下、それぞれについて説明します。
他の共同相続人との間でトラブルになることがある
被相続人の預金口座は、遺産分割協議の対象ですから、勝手に引き出して使うことは本来許されません。
引き出す前に必ず他の共同相続人の同意を取り付けましょう。
また、引き出したお金を、葬儀費用といった「遺産から支出しても構わないもの」の支払いに充てた場合は、必ず領収書を取っておいて、自分のために使ったものではないことを証明できるようにしておきましょう。
相続を単純承認したことになる
葬儀費用だけのために引き出すのであればよいのですが、引き出したお金を自分のために使ってしまうと、相続を単純承認したことになります(単純承認については「単純承認|相続の方法【行政書士執筆】」参照)。
相続放棄を検討する必要がまったくなければそれで問題ないのですが、後日、プラスの財産よりも負債の方が大きかったことが発覚した場合に、相続放棄をしようと思っても、一度単純承認してしまうと、相続放棄ができません(相続放棄については「財産放棄と相続放棄の違いを理解して財産放棄で損しないための全知識」参照)。
仮払いを受ける方法
口座凍結後、遺産分割協議が長期化していて、葬儀費用等を支払いたいのに、預金の払戻しを受けられないということがあります。
そのような場合には、仮払い手続きを利用するとよいでしょう。
また、遺産分割協議が成立している場合は、仮払いではなく、本来の相続手続きによるべきですが、預金額が少額であれば、相続手続きよりも簡便な仮払手続を利用することも考えられます。
仮払いを受けるためには、相続人全員の同意書が必要でしたが、相続法の改正によって、2019年7月1日(改正法の施行日)からは、他の相続人の同意がなくても仮払いを受けられるようになりました。
仮払いを受けるための方法には、次の2つがあります。
- 金融機関の窓口で直接仮払いを求める
- 家庭裁判所に仮払いを申し立てる
以下、それぞれについて説明します。
金融機関の窓口で直接仮払いを受ける
銀行等の金融機関の窓口で直接仮払いを求める方法のメリットには、次の2つがあります。
- 裁判所での手続きが不要(手間も日数も費用もかからない)
- 仮払いが必要な理由を求められない
ただし、生活費や葬儀費用の支払い、相続債務の弁済などの資金需要に対応できるよう、遺産分割前にも払戻しが受けられる制度として創設されるので、払戻可能額に一定の上限額が設けられています。
上限額は、基本的には次の式で計算します。
※同一の金融機関からの払戻しは150万円が上限
仮払いを受けた分は、遺産分割の際に相続分から差し引かれますので、引き出した金額の使い道を明確にしておきましょう。
家庭裁判所に仮払いを申し立てる
それほど緊急ではないが、遺産分割協議が長引いているなどの理由で、遺産分割前に仮払いを受ける必要がある場合は、家庭裁判所に仮払いを申し立てることによって、預貯金債権の法定相続分の全額の仮払いを受けることも可能です。
この方法は、上限金額の縛りがないというメリットがある反面、次のようなデメリットがあります。
- 家庭裁判所に遺産分割調停(または審判)を申し立てたうえで、さらに仮払いを申し立てなければならない(手間と日数と費用がかかる)
※遺産分割調停については「遺産分割調停前に知っておくべき調停を有利に進める方法と調停の流れ」参照 - 仮払いを受ける理由が求められる
家庭裁判所に仮払いを申し立てることによって、預貯金債権の法定相続分の全額の仮払いを受けることも可能ですが、遺産分割調停(または審判)を申し立てるため、手間や費用もかかります。また、仮払いを受ける必要性を説明しなければなりません。
仮払い制度の利用にあたっては、事務職員との事前面談などが必要になります。まずは家庭裁判所に相談し、制度利用の流れなどを確認しておきましょう。
▼めんどうな相続手続きは専門家に依頼しましょう▼この記事のポイントとまとめ
以上、相続した遺産がもらえるまでの期間について説明しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 相続手続きによって遺産を取得:相続手続きは遺産の取得手続きであり、方法や相続人の数、財産の種類、遺言書の有無によって時間が異なる。
- 相続人の数による手続き:相続人が1人の場合は迅速に手続きが進み、複数の場合は遺産分割協議を経て手続きを行う。
- 金融機関の振り込み期間:遺産相続の預貯金手続きにおいて金融機関による振り込み期間は異なり、各金融機関の目安を知ることが重要。また、死亡保険金の受け取り手続きも手間と期間が異なる。
- もらう前にお金が必要なときは仮払い制度を利用
銀行口座の相続手続きに期限はありませんが、めんどうだからと放置してしまうと、さらに手続きが煩雑になってしまうことがあります。(詳しくは「銀行口座を死亡後そのままにしておくとどうなる?」をご参照ください。)
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