【ケースごとの見本付き】預金がある場合の遺産分割協議書の書き方と、銀行での相続手続きと必要書類
被相続人(亡くなった人)が銀行に預金していた場合、その預金も相続の対象となります。
預金は分けやすい相続財産ではありますが、複数人で分割したときは遺産分割協議書を作成したほうが良いでしょう。
この記事では、銀行での相続手続きの必要書類や、預金がある場合の遺産分割協議書の書き方について説明します。
預金がある場合の遺産分割協議書の書き方
預金を複数の相続人で分割する場合、一般的に遺産分割協議をすることになるでしょう。その際には遺産分割協議書を作成しておきましょう。ここでは具体的な書き方について解説します。
遺産分割協議書に預金の金額を記載するのか?
結論としては、預金の金額は遺産分割協議書に記載してもどちらでも構いません。メリット・デメリットをふまえて決めましょう。
金額を記載するメリット
金額を記載するメリットは、誰がどのくらいの遺産を取得したのかが遺産分割協議書上でわかりやすいということです。
この点について、主な遺産が現金と預貯金だけというような場合は預金の金額を記載する意味があるかもしれませんが、不動産や有価証券など、多岐に渡る場合は、すべての遺産について価額を記載するのかという話にもなりますし、預貯金だけ金額を記載することにあまり意味はないでしょう
金額を記載するデメリット
反対にデメリットとしては、相続開始後に生じた利息や配当を誰が取得するのかについても遺産分割協議書に記載すべき等、遺産分割協議書を作成するうえで気を付ける点が増えることです。
金額を記載する場合は、銀行で残高証明書を取得して正確な金額を記載しましょう。
書き方の見本は、以下のとおりです。
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ケースごとの遺産分割協議書の書き方と見本
遺産分割協議書は相続のケースごとに書き方が変わります。相続人の人数や、遺言書の有無などいろいろなケースごとに書き方と見本をご紹介します。
一つの預金を一人で承継する場合の遺産分割協議書の書き方と見本
一つの預金を一人で承継する場合の遺産分割協議書は、以下のようになります。
以下は残高を記載していませんが、前述の通り残高を記載しても構いません。
一つの預金を複数人で分割する場合の遺産分割協議書の書き方
一つの預金を複数人で分割する場合、遺産分割協議書には、分割の内容と、分割の方法の両方を記載しておいた方がよいでしょう。
分割の内容とは、取得者が、それぞれいくらの割合で取得するのかということです。
例えば、「以下の遺産については、甲が10分の7、乙が10分の3の割合でそれぞれ取得する」というような記載をするとよいでしょう。
1円未満の端数が生じた場合はどうするのかという質問を受けることがあるので一応言及しておきますが、端数の取り扱いについては当事者(その預金の取得者)で自由に決めて構いません。
揉めるようなことでもないので、端数の取り扱い方法について、わざわざ遺産分割協議書に記載することもないでしょう。また、割合でなく金額で記載しても構いません。
金額で記載する場合は、相続開始後に生じた利息等を取得する人についても取り決めて、遺産分割協議書に記載しておくとよいでしょう。
複数人で預金を分ける場合の遺産分割協議書の書き方と見本
預金を複数人で分割する場合、銀行が、それぞれの取得者の口座に、それぞれの取得分を入金してくれる場合もありますが、銀行によっては、対応していないことがあります。
その場合は、代表相続人(相続人代表者ともいいます)を定めて、銀行は預金の全額を代表相続人に引き渡し、代表相続人から他の取得者に分配するフローをとることになります。
銀行から各取得者に直接入金するフローを希望する場合は、事前に、銀行に対応しているかどうか確認しましょう。
代表相続人を設定するフローであれば、すべての銀行が対応しています。それでは、代表相続人を設定して、一つの預金を複数人で分割する場合の遺産分割協議の記載例を紹介します。
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預金を一人が相続して代償分割する場合の遺産分割協議書の書き方と見本
代償分割とは、遺産分割にあたって共同相続人などのうちの一人または数人に相続財産を現物で取得させ、その現物を取得した人が他の共同相続人などに対して代償金を負担する分割の方法をいいます。
代償分割は、通常は、不動産のような現物分割が困難な財産が遺産の多くを占める場合に行われますが、預貯金等の金融資産が多くを占める場合でも行われることがあります。
例えば、金融資産が多数の金融機関に分散して存在する場合、前述の代表相続人を指定する方法で行うと、代表相続人が金融機関ごとに他の取得者に対して分配しなければならず、代表相続人に大きな負担がかかってしまいます。
このような場合に代償分割の方式を採ることで、代表相続人の負担を軽減することができる場合があります。
なお、代償分割にしても、税制上不利になることはありません。代償分割を行う場合は、遺産分割協議書にもその旨を記載した方がよいです。
その理由は次の2つです。
- 万一代償金が支払われない場合には、遺産分割協議書を証拠して代償金の支払いを求めることができる
- 代償金の支払いが税務署に贈与とみなされ、贈与税が課されることを避ける
記載例としては、以下のようなかたちがあります。
銀行での相続手続きに必要な書類
相続した預金を払い戻したり、預金の名義を変更するためには、銀行での相続手続きが必要です。
銀行での相続手続きには、ケースに応じて、さまざまな書類を提出しなければなりません。
銀行が間違った人に払い戻してしまっては大変なので、銀行が誰に払い戻せばよいか判断するために、ケースに応じて必要書類が異なるのです。
以下では、銀行での相続手続きに必要な書類について、次のケースごとに説明します。
- 預金を取得する人が遺言によって決まっている場合
- 遺産分割協議書がある場合
- 遺産分割協議をしたが遺産分割協議書がない場合
- 調停または審判によって預金を取得する人が決まっている場合
なお必要書類は、銀行よって多少異なります。
以下では、通常、必要となる書類について説明しますが、実際に手続する際は預金のある銀行に確認してください。
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遺言書がある場合の手続きと必要書類
遺言書があってもその内容により手続きや必要書類が変わるので、それぞれ説明していきます。
遺言書で指定されていない場合
遺言書があっても、預金を取得する人が遺言によって決まっているとは限りません。
誰にどの財産を承継させるか記載されている場合もありますが、遺産を受け取る割合だけ指定されている場合もあるのです。後者の場合は、実際に誰がどの財産を受け取るかは遺産分割協議によって決めることになります。
また前者の場合でも、相続人全員の合意があれば、遺言の内容に従わずに遺産分割協議によって誰がどの財産を承継するか決めることも可能です。
そのような場合は後述の「遺産分割協議書がある場合」の項目をご参照ください。
預金を取得する人が遺言によって決まっている場合、遺言執行者が選任されているかによって必要な書類は異なります。
遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な手続きをする人のことです。遺言執行者がいない場合は、相続人や受遺者(遺贈によって遺産をもらい受ける人)が手続きをします。
遺言執行者が選任されている場合
遺言執行者が選任されている場合は、遺言執行者が手続きをします。手続きには下表の書類が必要です。
必要になるケース | 入手先 | |
---|---|---|
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本 | 法定相続情報一覧図の写しがない場合 | 本籍地の市区町村役場 |
遺言執行者の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
遺言執行者の実印 | 必ず | 自分 |
遺言書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 遺言者が保管した場所 |
検認済証明書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
遺言公正証書謄本 | 公正証書遺言の場合 | 遺言が作成された公証役場 |
遺言執行者選任審判書謄本 | 審判によって遺言執行者が選任された場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
相続に関する依頼書(名称は銀行によって異なる) | 必ず | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
印鑑届 | 名義変更の場合(払戻の場合は不要) | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
通帳・証書・キャッシュカード類 | 必ず | 自分 |
遺言執行者が選任されていない場合
遺言執行者が選任されていない場合は、相続人または受遺者が手続きをします。手続きには下表の書類が必要です。
必要になるケース | 入手先 | |
---|---|---|
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本 | 法定相続情報一覧図の写しがない場合 | 本籍地の市区町村役場 |
預金を取得する相続人または受遺者の印鑑登録証明書 | 預金を取得する相続人または受遺者が成年の場合 | 住所地の市区町村役場 |
預金を取得する相続人または受遺者の実印 | 預金を取得する相続人または受遺者が成年の場合 | 自分 |
預金を取得する相続人または受遺者の法定代理人の印鑑登録証明書 | 預金を取得する相続人または受遺者が未成年の場合 | 住所地の市区町村役場 |
預金を取得する相続人または受遺者の法定代理人の実印 | 預金を取得する相続人または受遺者が未成年の場合 | 自分 |
遺言書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 遺言者が保管した場所 |
検認済証明書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
遺言公正証書謄本 | 公正証書遺言の場合 | 遺言が作成された公証役場 |
相続に関する依頼書(名称は銀行によって異なる) | 必ず | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
印鑑届 | 名義変更の場合(払戻の場合は不要) | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
通帳・証書・キャッシュカード類 | 必ず | 自分 |
遺産分割協議をしたときの手続きと必要書類
遺産分割協議によって預金を取得する人が決まった場合で、遺産分割協議書を作成した場合は、預金の相続手続きに下表の書類が必要です。
必要になるケース | 入手先 | |
---|---|---|
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本 | 法定相続情報一覧図の写しがない場合 | 本籍地の市区町村役場 |
各相続人と被相続人との関係が確認できる戸籍抄本または戸籍謄本 | 法定相続情報一覧図の写しがなく、かつ、被相続人の戸籍謄本で被相続人との関係が確認できない場合 | 本籍地の市区町村役場 |
相続人全員(相続放棄した人を除く)の印鑑登録証明書(未成年者については法定代理人の印鑑登録証明書) | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
手続者の実印 | 必ず | 自分 |
遺産分割協議書(相続人全員(相続放棄した人を除く)の署名押印(実印)) | 必ず | 自分 |
相続放棄申述受理証明書 | 相続放棄をした人がいる場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
相続に関する依頼書(名称は銀行によって異なる) | 必ず | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
印鑑届 | 名義変更の場合(払戻の場合は不要) | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
通帳・証書・キャッシュカード類 | 必ず | 自分 |
遺産分割協議をしたものの遺産分割協議書がない場合
遺産分割協議をしたら必ず遺産分割協議書を作成しなければいけないとは限りません。また相続人が一人しかいない場合など、わざわざ作成する必要がないこともあります。
一般的に、銀行での相続手続きでは遺産分割協議書が求められることが多いようです。
もし銀行で提出が求められなくても、遺産に不動産がある場合は登記の際に遺産分割協議書が必要になります。また、相続人間における後々のトラブル予防のためにも、遺産分割協議書を作成することをおすすめします。
遺産分割協議書がない場合は、下表の書類が必要です。
必要になるケース | 入手先 | |
---|---|---|
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本 | 法定相続情報一覧図の写しがない場合 | 本籍地の市区町村役場 |
各相続人と被相続人との関係が確認できる戸籍抄本または戸籍謄本 | 法定相続情報一覧図の写しがなく、かつ、被相続人の戸籍謄本で被相続人との関係が確認できない場合 | 本籍地の市区町村役場 |
相続人全員(相続放棄した人を除く)の印鑑登録証明書(未成年者については法定代理人の印鑑登録証明書) | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
相続放棄申述受理証明書 | 相続放棄をした人がいる場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
手続者の実印 | 必ず | 自分 |
相続に関する依頼書(名称は銀行によって異なる) | 必ず | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
印鑑届 | 名義変更の場合(払戻の場合は不要) | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
通帳・証書・キャッシュカード類 | 必ず | 自分 |
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調停または審判によって預金取得者が決定された場合の手続きと必要書類
遺産分割協議が調わない場合に、家庭裁判所での遺産分割調停や遺産分割審判によって決着をつけることがあります。
預金を取得する人が決まった場合は、下表の書類が必要です。
必要になるケース | 入手先 | |
---|---|---|
調停調書謄本 | 調停によって預金を取得する人が決まった場合 | 家庭裁判所 |
審判書謄本 | 審判によって預金を取得する人が決まった場合 | 家庭裁判所 |
審判確定証明書 | 審判によって預金を取得する人が決まった場合で、かつ、審判書に確定表示がない場合 | 住所地の市区町村役場 |
預金を取得する相続人または受遺者の印鑑登録証明書 | 預金を取得する相続人または受遺者が成年の場合 | 住所地の市区町村役場 |
預金を取得する相続人または受遺者の実印 | 預金を取得する相続人または受遺者が成年の場合 | 自分 |
預金を取得する相続人または受遺者の法定代理人の印鑑登録証明書 | 預金を取得する相続人または受遺者が未成年の場合 | 住所地の市区町村役場 |
預金を取得する相続人または受遺者の法定代理人の実印 | 預金を取得する相続人または受遺者が未成年の場合 | 自分 |
相続に関する依頼書(名称は銀行によって異なる) | 必ず | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
印鑑届 | 名義変更の場合(払戻の場合は不要) | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
通帳・証書・キャッシュカード類 | 必ず | 自分 |
▼依頼するか迷っているなら、まずはどんな手続きが必要か診断してみましょう▼
この記事のポイントとまとめ
最後にこの記事のポイントをまとめます。
預金がある場合の遺産分割協議書の書き方で預金の金額を記載するかは任意です。記載するメリットは明確な分配、デメリットは手続きが複雑化する可能性があるので自分にとってメリットのある方で作成します。
銀行での相続手続きは、遺言、遺産分割協議書の有無などケースと銀行によって異なります。
以上、預金がある場合の遺産分割協議書の書き方と銀行での相続手続きについて説明しました。
相続は人それぞれです。遺産分割協議書の書き方について不明な点があれば、行政書士等の専門家に相談されることをおすすめします。自分では気づかない部分も指摘してくれるのが嬉しいポイントです。
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