遺産分割協議書の提出先は?期限やコピーの可否についても説明!【行政書士監修】
遺産分割協議が調ったら遺産分割協議書を作成しますが、遺産分割協議書はどこに提出するためのものなのでしょうか?また、提出期限のある手続きは?
さらに、提出のとき原本ではなくコピーでも可能なのか、などいろいろな疑問が湧いてくると思います。
この記事では、そのような遺産分割協議書の疑問についてお答えします。是非、参考にしてください。
この記事はこんな方におすすめ:
「遺産分割をおこなう人」「遺産分割協議書を作る人」
- 遺産分割協議書はいろいろな手続きで必要になる
- 相続税申告の期限が決まっているため、預貯金や株式の手続きも早めが良い
- 遺産分割協議書は原則として原本を提出する
この記事の監修者
〈行政書士〉
開業以来、相続・遺言の業務を多く扱う。相続人が数十人に及ぶ調査も経験し、これまでに読み込んだ戸籍は1000通を超える。相続や遺言等の研修講師や講演の実績も多数。
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遺産分割協議書の提出先
遺産分割協議書の提出先は、次のとおりです。さまざまな手続きで遺産分割協議書が必要になります。
金融機関
- 亡くなった人が預貯金をもっていた銀行、信用金庫、信託銀行(遺産分割によって預貯金を取得した場合)
- 亡くなった人が証券口座を開設していた証券会社、信託銀行(遺産分割によって非上場株式を除く有価証券を取得した場合)
役所、官公庁など公的機関
- 法務局(遺産分割によって不動産を取得した場合)
- 税務署(相続税申告をする場合)
- 運輸支局(遺産分割によって軽自動車を除く自動車又は大型船舶を取得した場合)
- 軽自動車検査協会(遺産分割によって軽自動車を取得し場合)
- 日本小型船舶検査機構(遺産分割によって小型船舶を取得した場合)
その他
- 亡くなった人がもっていた非上場株式の株式発行会社(遺産分割によって非上場株式を取得した場合)
遺産分割協議書の提出期限
遺産分割協議書の提出期限(=手続きの期限)は、手続きによって異なります。
この記事では預貯金、不動産、自動車、株式の相続手続きと、相続税申告の期限について説明します。
預貯金
預貯金の相続手続きは、名義変更ではなく解約手続きをおこなって払戻すの場合がほとんどです。そして、預貯金の払い戻し手続きに期限はありません。
そのため急いで手続きをする必要はありませんが、手続きを取らないと凍結された口座が解除されることはありません。また銀行からお知らせが来ることもありません。
遺産分割が終わらないので、親族から催促が入ることも。また相続税手続きは期限が決まっているので(後述)、相続税を払う可能性のある人は早めに手続きを行うのが望ましいです。
また、10年以上預金の出し入れがないと「休眠預金」という扱いになり、民間公益活動のために活用されます。
休眠預金となった場合でも、相続手続きにより払戻しを受けることは可能ですが、金融機関によっては手続きに時間がかかる可能性もありますので、やはり早めに手続きを行うのが望ましいでしょう。
不動産
これまで、相続で不動産を取得したときの名義変更(相続登記)は、特別な期限は設けられていませんでした。しかし、令和6年4月1日より相続登記の義務化が施行されます。
これにより相続で不動産の取得を知った日から3年以内に手続きを行わないと10万円以下の過料の対象となります。
また、相続登記の義務化の施行以前から発生している相続や住所等の変更登記が済んでいない不動産についても、義務化されます(この場合は義務化されてから3年以内に手続きを行う必要があります)。相続登記が済んでいないと、不動産の売却などが基本的にできませんので、速やかに相続登記を行いましょう。
自動車
自動車についても、相続手続きの期限はありません。
しかし、移転登録(名義変更)をしなければ車検を通すことができず、使用できなくなってしまいます。
また、相続した自動車を相続人の自宅で使用する場合で、亡くなった方と相続人の住所が異なる場合は、車庫証明を取得しなければ移転登録ができません。
株式
株式の手続きに期限はありません。しかし、株式の相続手続きが完了しない間、株式は相続人全員の「準共有」状態となります。配当金はその都度相続人間で分割しなければならず、余計な手間もかかってしまいます。
ちなみに株式の名義が変更されていなくても、相続した以上は、株主としての権利は相続人が取得しています。
しかし、株式会社では、大量に存在する株主の取扱いを画一化する必要から、株主名簿の名義を基準として法律関係を処理すればよいことになっています。
そこで株式を相続したにもかかわらず、名義書換をせずに放置しておくと、せっかくの利益配当の通知などを受け取ることができず、事実上、配当を受け取ることができない場合があります。
未受領配当金の時効は民法上10年ですが、多くの企業では3~5年を期限としています。
また会社は、株主に対する通知などが5年間にわたり届かない場合などには、会社法に基づいて所在不明の株主の株式として競売で売却するか、会社が買い取ってしまうことが許されます。
相続税申告
相続税の申告、納付は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に済ませなければなりません。
申告だけでなく、納付まで含めて10か月です。
仮にこの申告期限までに相続人の間で遺産分割がまとまらない場合でも、申告は行わなければなりません。したがって、相続税がかかりそうな場合は、預金や株式の手続きをその前に行う必要があるでしょう。
相続税の申告期限までに遺産分割協議が終わらない場合は、一旦、法定相続分で相続した前提で申告を行います。その後、実際に分割した割合が法定相続分と異なることで相続税に変更が生じた場合は、修正申告(または更生の請求)を行う必要があります。
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提出する遺産分割協議書はコピーでも良い?
遺産分割協議書が必要な手続きを行う場合は、原則として原本を提出しなければなりません。
ただし、提出の際に所定の申請手続きをすることで、原本の還付(返却)が受けられます。
還付を受けなければ手続きごとに原本が必要になるので、複数の手続きをしなければならない場合は、原本の還付を受けた方がよいでしょう。
原本の還付を受けるには、まず遺産分割協議書をコピーします。そしてコピーに「原本の写しと相違ない」旨を記載のうえ、申請者の記名押印をします。
この押印に用いる印は、その手続きの申請書に押印したものと同じものでなければなりません。
遺産分割協議書だけではなく、印鑑証明書、住民票や住民票の除票、戸籍謄本等についても同じ方法で原本還付を受けられます。
まとめて原本の還付の申請も可能
まとめて行う場合はすべての書類をホチキス止めして、1番上のページに原本の写しと相違ない旨と記名押印をし、残りのページには割印を押します。
金融機関など民間企業では窓口でコピーしてくれる場合も
金融機関や証券会社などの手続きで原本の還付を受ける場合は、コピーを持参しなくても窓口でコピーを取ってくれる場合があります。とはいえ、その分窓口で待つ時間が増えるため、コピーを持参したほうがスムーズに手続きが進みます。
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まとめ
今回は遺産分割協議書が必要になる手続きや、原本の還付について説明しました。
相続手続きは自分で行うこともできますが、行政書士等の専門家に依頼することで、手間なく確実に進めることができます。
専門家の力をうまく活用して相続手続きを進めることをおすすめします。
いい相続では、相続に強い専門家探しのサポートをしています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
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