遺言書の法定遺言事項と付言事項とは?遺言書で決められる内容
「すべての財産を長男に相続させる」など、不公平な遺言書が発見される場合があります。この場合、遺言書が本物かどうか、この遺言書の効力が認められるのか気になりますよね。
今回は遺言書で決められる内容についてまとめました。是非、参考にしてください。
遺言書に記載すると法的な効力が認められる事項
遺言書に記載することで法的効力が認められるものを、法定遺言事項といいます。法定遺言事項には、次のようなものがあります。
- 財産の承継・処分に関する行為
- 相続人に関する行為
- 身分に関する行為
- その他(祭祀承継者の指定、遺言執行者の指定など)
財産の承継・処分に関する行為
財産の承継・処分に関する行為は、さらに次の4つに分けられます。
- 相続分の指定
- 特別受益の持戻免除
- 分割方法の指定
- 遺贈
相続分の指定
遺言によって、共同相続人の相続分(相続の割合)を定め、または定めることを第三者に委託することができます。
特別受益の持戻し免除
共同相続人の中に被相続人から遺贈を受けたり、婚姻・養子縁組・生計の資本のため贈与を受けたりしたものがいる場合、死亡時に残っていた財産に贈与を受けた価額を合計したものを相続財産とみなすことになっています。これを特別受益の持戻しといいます。
遺言で、特別受益の持戻しを免除(持戻しをしない)することができます。
分割方法の指定
たとえば「長男に自宅土地建物を、二男に預貯金を取得させる」などの遺産分割の方法を指定することができます。
遺贈
遺言により財産の全部または一部を人に譲ることができます。たとえば、相続人にあたらない長男の妻に対して、長年の介護に対する感謝の証として、財産の一部を譲る場合などが考えられます。
相続人に関する行為
相続人に関する行為には、相続人の廃除と廃除の取消しがあります。
相続人の廃除
相続人の廃除とは、相続人が、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を加えたときなどに、その相続人から相続権をはく奪する制度をいいます。
相続人の廃除は、生前に家庭裁判所に請求するほか、遺言で行うこともできます。
相続人の廃除の取消し
被相続人は、いつでも廃除の取り消しをすることができるとされており、遺言でもすることができます。
身分に関する行為
身分に関する行為には、認知と未成年後見人の指定があります。
認知
認知とは、結婚していない男女の子を自分の子であると認めることです。認知することによって、認知された子は遺産を相続できるようになります。この認知は遺言によってもすることができます。
未成年後見人の指定
未成年者に対して最後に親権を行う者(父母の一方が死亡している場合や離婚している場合など)は、遺言で未成年後見人を指定することができます。
その他
祭祀承継者の指定
神仏や祖先を祭るための財産を祭祀財産といい、相続財産とは区別されています。
祭祀承継者は慣習に従って決められますが、遺言で指定があった場合には、その者が祭祀財産を承継します。
遺言執行者の指定
遺言で遺言執行者を指定し、または指定を第三者に委託することができます。遺言執行者とは、遺言者の死亡後に遺言の内容を実現させる手続を行う者をいいます。
法定遺言事項以外のことを記載しても無効にはならない
遺言には法定遺言事項以外のことでも書くことができます。これは付言事項と言います。
付言事項は法的な効力はありませんが、遺言者が遺言をした意図を知る材料になりますし、法的効力がなくても相続人が守ることを期待できることもあるので、書く意義はあるでしょう。
付言事項は被相続人が自由に内容を決めることができますが、主に次のようなものがあります。
- 葬儀の方法等についての指定
- 特定の人の面倒を見るように依頼するもの
- 特定の人への感謝や遺言をする理由を述べるもの
以下、それぞれについて説明します。
葬儀の方法等についての指定
特定の宗教による葬儀の希望、葬儀をしないあるいはできる限り簡素なものにするなど、葬儀の方法等について指定するものです。
特定の人の面倒を見るように依頼するもの
遺言者が子らに対し、子らが協力して遺言者の妻の面倒を見るようにと依頼したり、子の1人に対して、他の子の面倒を見るようにと依頼したりする場合があります。
特定の人への感謝や遺言をする理由を述べるもの
妻に長年の内助の功を感謝する言葉を述べるなどの場合です。
また、さきほど述べた遺留分との関係で、特定の相続人の貢献が大きいことからその者に全ての財産を譲ることにしたので、他の相続人は遺留分減殺請求をしないようにというように、遺言をした動機など遺言者の真情を述べることもあります。
付言事項の文例
付言事項を書く場合の遺言書の書き方については、以下の文例を参考にしてください。
遺言書 遺言者〇〇〇〇は、次の通り遺言する。 第★条 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 第★条 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (付言事項) 病気の私のために最後まで尽くしてくれた◎◎、〇〇には大変感謝しています。 また、長男の嫁である○○さんには、私の介護をお願いさせることになり大変な負担と苦労をおかけしました。 その苦労に報いるためにも、先に記載したとおりに遺産を遺贈したいと思います。 他の兄弟にも言い分はあるかもしれませんが、この遺言内容で兄弟同士で争うことなく、どうか最後まで仲良く暮らしてくれることを切に願います。 私が死んだ後の葬儀は、葬式や告別式などは行わずに直葬で済ませて下さい。 身内だけで葬儀をすることは私の強い希望です。 こうした葬儀の方法で家族皆が揉めることがないようにお願いします。 私は、皆が笑顔で私を送ってくれるのを切に望んでおります。 今まで本当にありがとう。 |
この記事のポイントとまとめ
以上、遺言書の法定遺言事項について解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 遺言書で決められる内容は法定遺言事項として決まっている
- 付言事項に法的拘束力はないが、相続人に思いを伝えるために書く意義がある
- 無効にならない遺言書を作成するためにまずは専門家に相談してみても良い
無効とならない確実な遺言書を作るためには、遺言の内容だけでなく形式にも配慮することが必要です。自分で作成することが難しければ、専門家に相談してみても良いでしょう。
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