公正証書遺言の作成費用は?自筆証書遺言の違いや必要書類も
遺言書の作成には、どのくらいの費用がかかるのでしょうか?公正証書遺言にするか自筆証書遺言にするか、専門家に作成を依頼するか等によって費用は異なります。
今回は、遺言書の作成にかかる費用について解説します。ぜひ、参考にしてください。
遺言の方式と作成費用の概要
遺言にはいくつかの方式がありますが、主に利用されているのは、自筆証書遺言と公正証書遺言です。
自筆証書遺言とは、遺言者の自筆(自書)で書かれていて、公証人が手続きに関与していない遺言のことです。公正証書遺言とは、公証役場で公証人に遺言書を作成してもらう遺言のことです。
どちらの方式でも行政書士等の専門家に文案を作成してもらうことができ、その場合は、報酬が必要です。
自筆証書遺言の場合は、専門家報酬以外には費用はかかりません(ただし自筆証書遺言保管制度を利用して法務局で遺言書を預ける場合は保管申請手数料3,900円がかかります)。
公正証書遺言の場合は、必要書類の交付手数料や作成手数料、証人手数料などが必要です。
また、公正証書遺言の場合は2人以上の証人の立会が必要です。自分で証人を手配できない場合は、証人手数料が必要になることがあります。
必要書類の交付手数料
公正証書遺言の申請の必要書類には、役所や法務局で交付を受けなければならないものがあります。
その交付手数料は下の表のとおりです。
証明書の種類 | 交付手数料 | 交付期間 |
---|---|---|
印鑑登録証明書 | 1通300円 | 市区町村 |
戸籍謄本又は戸籍全部事項証明書 | 1通450円 ・遺言者と推定相続人との続柄が分かる戸籍 ・推定相続人の戸籍 ・直系尊属が推定相続人の場合には、遺言者に子がいないことの分かる戸籍 ・兄弟姉妹が推定相続人の場合には、遺言者に子がなく、かつ、直系尊属が死亡していることの分かる戸籍 | 市区町村 |
住民票 | 1通300円 ※相続人以外の受遺者ごとに必要 ※相続人以外の受遺者がいない場合は不要 | 市区町村 |
登記簿謄本・登記事項証明書 | ・書面請求:1通600円 ・オンライン請求・送付:1通500円 ・オンライン請求・窓口交付:1通480円※遺言書に明記される不動産ごと及び受遺者となる法人ごとに必要 ※財産に不動産を含まず、受遺者に法人がいない場合は不要 | 法務局 |
固定資産評価証明書 | 1通350円〜400円(市区町村ごとに異なる) ※財産に不動産を含まない場合又は固定資産税課税明細書がある場合は不要 | 市区町村 |
作成手数料
遺言公正証書の作成手数料は、遺言により相続させるまたは遺贈する財産の価額をもとに計算します。この作成手数料は公証人手数料令という政令で決められています。
目的の価額 | 手数料 |
---|---|
100万円以下 | 5000円 |
100万円を超え200万円以下 | 7000円 |
200万円を超え500万円以下 | 11000円 |
500万円を超え1000万円以下 | 17000円 |
1000万円を超え3000万円以下 | 23000円 |
3000万円を超え5000万円以下 | 29000円 |
5000万円を超え1億円以下 | 43000円 |
1億円を超え3億円以下 | 4万3000円に超過額5000万円までごとに1万3000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 | 9万5000円に超過額5000万円までごとに1万1000円を加算した額 |
10億円を超える場合 | 24万9000円に超過額5000万円までごとに8000円を加算した額 |
目的価額は、公証人が証書の作成に着手した時を基準とします。
評価は、不動産の場合は直近の固定資産評価額(借地の場合は路線価と借地権割合で算出)、預貯金は現在の残高、株式その他の有価証券や出資金はその価額によります。
各相続人・各受遺者ごとに、相続させ又は遺贈する財産の価額により目的価額を算出し、それぞれの手数料を算定し、その合計額がその証書の手数料の額となります。
例えば、総額1億円の財産を妻1人に相続させる場合の手数料は、4万3000円です(なお、下記のように遺言加算があります)。妻に6000万円、長男に4000万円の財産を相続させる場合には、妻の手数料は4万3000円、長男の手数料は2万9000円となり、その合計額は7万2000円となります。
ただし、遺言加算といって、1通の遺言公正証書における全体の財産が1億円までの場合は、1万1000円を加算されます。したがって7万2000円に1万1000円を加算した8万3000円が手数料となります。
遺言者が病気等で公証役場に出向くことができない場合には、公証人が出張して遺言公正証書を作成しますが、この場合の手数料は、遺言加算を除いた目的価額による手数料額の1.5倍が基本手数料となり、これに、遺言加算手数料を加えます。
この他に、交通費(実費)、日当が必要になります。作成された遺言公正証書の原本は、公証人が保管しますが、保管のための手数料は不要です。
遺言書正謄本の交付手数料
遺言公正証書を作成すると、原本、正本及び謄本が各1部交付されます。各通につき1枚250円の手数料が必要となります。
証人手数料
遺言公正証書を作成するには、証人2人以上の立会いが必要です。
証人を自分で手配する場合はこの手数料は不要です。謝礼については遺言者と証人との間で自由に取り決めて構いませんが、以下のような目安となっています。
行政書士などの専門家に依頼する場合 | 1人あたり1万円 |
---|---|
公証人役場で紹介してもらう場合 | 1人あたり6,000円~7,000円 |
知人に依頼する場合 | 1人あたり5,000円~1万円 |
以上は証人1名分ですので、2名を依頼すると、この倍額になります。証人の手数料は、証人に直接支払います。
なお、専門家に遺言書の作成を依頼する場合は、通常、専門家やその事務員が証人も引き受けてくれます。
別途の報酬が必要かどうかやその料金設定については専門家ごとに異なりますが、次の3つのパターンがあるようです。
- 2人分の証人立会い料が基本料金に含まれている
- 1人分の証人立会い料が基本料金に含まれていて、2人の証人の立会いを依頼する場合は追加料金が必要
- 証人立会い料が基本料金に含まれていない
証人立会いが別途料金の場合の料金の相場は、証人1人につき1万円前後のようです。
公正証書遺言の作成は専門家に依頼できる
公正証書遺言の文案の作成や書類収集を行政書士などの専門家に依頼することができます。費用は事務所によってことなりますが、10~20万円程度です。
専門家に作成を依頼するメリットは、遺言内容の相談ができること、手間を削減できること、遺言執行者になってもらえることなどが挙げられます。遺言執行者は必ずしも指定しなければならないわけではありませんが、遺言執行者に専門家を指定しておくことによって、スムーズに相続手続きを終えてくれるでしょう。
公正証書遺言の正本と謄本の保管
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されますが、公正証書遺言の正本と謄本は、自分で保管しなければなりません。
相続人の見つけやすい場所に保管しておくか、遺言執行者に預けておく方法もあります。
遺言書原案の作成や遺言執行を専門家に依頼した場合は、その専門家に遺言書の保管を委託できることがあります。一度相談してみると良いでしょう。
この記事のポイントとまとめ
以上、公正証書遺言の作成費用について解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 公正証書遺言の作成には印鑑証明書や住民票などが必要
- 公正証書遺言の作成手数料は財産額によって異なる
- 行政書士などの専門家に遺言書の作成支援や遺言執行を依頼できる
公正証書遺言を自分だけで作成しようとすると書類収集などの手間がかかります。また何度も公証役場に行かなければならないこともあります。
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