銀行預金の相続手続きと必要書類を分かりやすく説明!遺産分割協議書がない場合も解説
亡くなった人の財産は、相続財産として相続人が複数いる場合は、各相続人が法定相続分に応じて取得することになります。
預金は代表的な相続財産と言えるでしょう。
では、亡くなった人の預金はどのように相続手続きすればよいのでしょうか。手続きには必ず遺産分割協議書が必要なのでしょうか。
この記事では手続きの流れに沿って分かりやすく解説していきます。是非参考にしてください。
預金の相続手続の流れ
預金の相続手続きは以下のような流れになります。
- 死亡届の提出
- 相続財産の調査
- 銀行へ連絡
- 必要書類の提出
- 払戻し
おおまかに分けると、1から2は銀行での手続き前にすること、3から5が実際に銀行でおこなう相続手続きです。
▶詳しい流れは「銀行預金の相続手続きの期限は?引き出し方法は?|手続きの流れや必要書類まで詳しく解説」を参照してください。
預金の相続手続きの前にすること
- 死亡届の提出
- 相続財産の調査
まず、この2つについて簡単に説明します。
死亡届の提出
被相続人(亡くなった人)の死亡届が提出されていない場合は、相続手続を開始することができません。
死亡届は、次のいずれかの土地の市区町村(市役所、区役所等の役場)の窓口に提出します。
- 死亡者の死亡地または本籍地
- 届出人の住所地
死亡届の書類はA3サイズで、左半分が「死亡届」、右半分が「死亡診断書(死体検案書)」と一体になっているのが一般的です。
病院で亡くなった場合、病院ではこの左半分が死亡届になっている死亡診断書を記載してもらえることが多いので、その用紙をつかって役所で手続きすることができます。
提出時期は、死亡の事実を知った日から7日以内(国外で死亡したときは,その事実を知った日から3か月以内)です。
相続財産の調査
被相続人が、どの銀行に口座を持っているかを調査します。
被相続人がエンディングノートや財産目録を残している場合など、どこの銀行に口座を持っているのかを完全に把握できている場合以外は、被相続人がどの銀行に口座を持っているかを調査します。
自宅などをくまなく探し、どうしてもみつからないときは、取引のありそうな金融機関に調べにいきます。
口座の調べ方は、「銀行預金の相続手続きの期限は?引き出し方法は?|手続きの流れや必要書類まで詳しく解説」をご参照ください。
預金の相続手続き
ここからは先述手続きの流れ3~5の、実際に銀行とのやりとりが発生する相続手続きについて説明していきます。
- 銀行へ連絡
- 必要書類の提出
- 払戻し
銀行へ連絡
被相続人が、どこの銀行に口座を持っているかが分かったら、その銀行に被相続人が亡くなったことを連絡します。これについては、2の相続財産の調査で分かった段階など、早めに連絡してもかまいません。
そうすると、口座が凍結され、以降は預金を自由に引き出すことができなくなります。 死亡の事実は誰から伝えても構いません。
伝える先は、亡くなった人が口座を開設していた金融機関の支店です。
なお、銀行は遺族からの申し出がない場合でも、新聞のお悔やみ欄、取引の過程で故人の訃報を把握すると口座を凍結することもあります。
銀行口座の凍結は「故人の預貯金を遺産の対象として確定するため」と「勝手な引き出し等による相続のトラブルを防止するため」の2つの理由があるからです。
銀行へ必要書類の提出
複数の相続人がいる場合は、被相続人の預金の相続の方法によって必要書類は異なります。
- 遺産分割協議(遺産分割を話し合いにより決めた)による預金の相続
- 遺言書による預金の相続
以下に順番に説明していきます。
遺産分割協議による預金の相続手続きの必要書類
遺産の分け方を話し合って決める遺産分割協議をしたからといって必ず遺産分割協議書を作成しなければならないわけではありません。
実際、多くの銀行での相続手続は遺産分割協議書がなくても可能です。
しかし、遺産に不動産がある場合は登記の際に遺産分割協議書が必要ですし、また、相続人間における後々のトラブル予防のためにも、遺産分割協議書を作成することをお勧めします。
遺産分割協議をしたが遺産分割協議書がない場合
遺産分割協議書がない場合は、概ね下表の書類が必要です。(実際の手続きの際には取引銀行の窓口や銀行サイトで確認してください。)
必要書類 | 必要になるケース | 入手先 |
---|---|---|
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本 | 必ず※ | 本籍地の市区町村役場 |
各相続人と被相続人との関係が確認できる戸籍抄本または戸籍謄本 | 必ず※ | 本籍地の市区町村役場 |
相続人全員(相続放棄した人を除く)の印鑑登録証明書(未成年者については法定代理人の印鑑登録証明書) | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
相続放棄申述受理証明書 | 相続放棄をした人がいる場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
手続者の実印 | 必ず | 自分 |
銀行所定の届出用紙 | 必ず | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
印鑑届 | 名義変更の場合(払戻の場合は不要) | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
被相続人の通帳・証書・キャッシュカード類 | 必ず(紛失の場合は別途書類で申し出) | 自分で準備 |
※「法定相続情報一覧図の写し」でも可
遺産分割協議書がある場合
遺産分割協議によって預金を取得する人を決め、遺産分割協議書を作成した場合は概ね下表の書類が必要です。(遺産分割協議書の内容や様式について指定がある場合もあるので、手続きをする銀行窓口や銀行サイトにて確認してください。)
必要書類 | 必要になるケース | 入手先 |
---|---|---|
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本 | 必ず※ | 本籍地の市区町村役場 |
各相続人と被相続人との関係が確認できる戸籍抄本または戸籍謄本 | 必ず※ | 本籍地の市区町村役場 |
相続人全員(相続放棄した人を除く)の印鑑登録証明書(未成年者については法定代理人の印鑑登録証明書) | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
手続者の実印 | 必ず | 自分 |
遺産分割協議書(相続人全員(相続放棄した人を除く)の署名押印(実印)) | 必ず | 自分 |
相続放棄申述受理証明書 | 相続放棄をした人がいる場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
銀行所定の届出用紙 | 必ず | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
印鑑届 | 名義変更の場合(払戻しの場合は不要) | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
被相続人の通帳・証書・キャッシュカード類 | 必ず(紛失の場合は別途書類で申し出) | 自分 |
※「法定相続情報一覧図の写し」でも可
遺言書による預金の相続手続きの必要書類
遺言書による相続の場合、遺言書の内容に応じ、手続や必要となる書類が異なりますが、概ね以下の書類が必要になります。
また、遺言執行者が選任されている場合は遺言執行者が手続きをおこないます。(実際の手続きをする際には、取引先銀行にお問い合わせください。)
相続人が手続きする場合
必要になるケース | 入手先 | |
---|---|---|
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本 | 必ず※ | 本籍地の市区町村役場 |
預金を取得する相続人または受遺者の印鑑登録証明書 | 預金を取得する相続人または受遺者が成年の場合 | 住所地の市区町村役場 |
預金を取得する相続人または受遺者の実印 | 預金を取得する相続人または受遺者が成年の場合 | 自分 |
預金を取得する相続人または受遺者の法定代理人の印鑑登録証明書 | 預金を取得する相続人または受遺者が未成年の場合 | 住所地の市区町村役場 |
預金を取得する相続人または受遺者の法定代理人の実印 | 預金を取得する相続人または受遺者が未成年の場合 | 自分 |
遺言書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 遺言者が保管した場所 |
検認済証明書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
遺言公正証書謄本 | 公正証書遺言の場合 | 遺言が作成された公証役場 |
相続に関する依頼書(名称は銀行によって異なる) | 必ず | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
印鑑届 | 名義変更の場合(払戻の場合は不要) | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
通帳・証書・キャッシュカード類 | 必ず | 自分 |
※「法定相続情報一覧図の写し」でも可
遺言執行者が選任されている場合
遺言執行者が選任されている場合には手続きには概ね以下の書類が必要です。
必要になるケース | 入手先 | |
---|---|---|
被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本 | 必ず※ | 本籍地の市区町村役場 |
遺言執行者の印鑑登録証明書 | 必ず | 住所地の市区町村役場 |
遺言執行者の実印 | 必ず | 自分 |
遺言書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 遺言者が保管した場所 |
検認済証明書 | 自筆証書遺言または秘密証書遺言の場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
遺言公正証書謄本 | 公正証書遺言の場合 | 遺言が作成された公証役場 |
遺言執行者選任審判書謄本 | 審判によって遺言執行者が選任された場合 | 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所 |
相続に関する依頼書(名称は銀行によって異なる) | 必ず | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
印鑑届 | 名義変更の場合(払戻の場合は不要) | 銀行で用紙を入手して自分で記入 |
通帳・証書・キャッシュカード類 | 必ず | 自分 |
※「法定相続情報一覧図の写し」でも可
法定相続情報一覧図で手続きの負担を軽く
被相続人と相続人の戸籍謄本などの戸籍関係書類は、法定相続人を全員把握するために必ず必要です。
先述のように相続手続きではたくさんの書類を準備しますが、中でも戸籍謄本の収集は想像以上に大変です。 そこで、戸籍謄本などの代わりになるものがあるので紹介します。
平成29年5月29日から法定相続情報証明制度が開始され、法定相続情報一覧図の写しを戸籍謄本などの代わりに提出できるようになりました。
法定相続情報一覧図の写しは複数枚同時に発行できる上、無料で取得できます。利用には最初に手続きが必要ですが、相続手続きの効率化やコストの削減が可能です。
次のような場合は、法定相続情報証明制度の利用も検討すると良いでしょう。
- いくつもの銀行に預金口座がある
- 相続人が多くて戸籍謄本を集めるのが大変
- 相続する財産の種類が多い
- できるだけ手間をかけたくない
なお、この法定相続情報一覧図の手続きは、専門家に依頼することもできます。銀行の手続きと一緒に法定相続情報一覧図の作成も専門家に依頼することで手間を軽くすることも検討してみてはいかがでしょうか。▶「いい相続」とは?相続の専門家との無料相談の流れはこちらへ
払戻し
必要書類を漏れなく提出すると、預金の払戻しを受けることができます。 必要書類を提出してから払戻しまでの期間は10日~2週間ほどかかることが多いようです。金融機関によって振込みされるまでの期間には多少の違いがあります。
銀行の相続手続きの期限
銀行の相続手続の期限は、特に決まっていません。
しかし、りそな銀行等の一部の銀行では、一定期間(りそな銀行の場合は2年間)利用されていない銀行口座に対して口座管理手数料(りそな銀行の場合は年間1200円)を徴収しています。
また、銀行口座を死亡後そのままにしておくと、いざ、払戻しを受けたいときに、その手続きが煩雑になってしまうことがあります。
例えば、放置されている預金口座に関しては最終異動日が2009年以降で10年間取引などがないと休眠口座の取扱いになります。解約はできますが、通常の手続き方法とは異なるうえ時間がかかります。(外貨預金、2007年9月30日までに預け入れられた定額郵便貯金などは休眠口座の対象にはなりません。)
まとめ
以上、銀行での相続手続について説明しました。
相続が始まって何をどうすれば良いかわからないというような場合は、行政書士など相続の専門家に相談してみることをおすすめします。
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▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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