年金受給者が亡くなった場合、遺族がもらえるお金は?
年金の受給者が亡くなった場合に、残された遺族がお金を請求することができる場合があります。具体的には「未支給年金」「遺族基礎年金」「寡婦年金」「死亡一時金」「遺族厚生年金」が存在します。それぞれの制度で対象となる方や申請方法、必要書類などが異なります。
この記事では、年金受給者が亡くなった際に、遺族がもらえるお金について、詳しく解説していきます。
未支給年金請求
年金は2ヵ月に一回、偶数月に2ヵ月分の金額をまとめて支給されます。その関係で、受給者が亡くなる前に受給することができたはずの年金が未支給になることがあります。その場合には未支給年金の請求届けを提出しましょう。なお、未支給年金は相続の対象にはなりません。
未支給年金請求を請求をできる場合
年金受給者が亡くなった場合に銀行口座を解約または凍結します。この解約などをするタイミングが年金の支払日より前になることが多いのですが、それによって未支給年金が生じてしまいます。
年金の支給のために用いていた銀行口座が解約されている場合には、当然年金を支給することができません。未支給年金が発生していると日本年金機構から相続人宛に通知が送付されることもあるので、金額などを確認して請求をしましょう。この請求は5年で時効になってしまいます。忘れないうちに申請することをおすすめします。
請求をする人
未支給年金を請求できる者、つまり未支給年金を受け取ることができる者は、「配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、その他の3親等内の親族」の中で「死亡当時生計を同じくしている人(生活を共にしている人)」と法律で定められています。
配偶者や子供、父母であっても、同居をしているなどのケースのように生活を共にしていなければ、未支給年金の請求をすることも受け取ることもできないのです。逆に同居をしている者でも配偶者や子供でないと請求ができません。法律上の婚姻関係にない事実婚やパートナーの場合にも請求をすることができません。
必要な書類
未支給年金の請求に必要な書類は「未支給年金請求届、年金証書、戸籍謄本、住民票、通帳」となります。戸籍謄本は亡くなった方と請求者の関係性を明らかにすることを目的としています。
住民票は亡くなった方と請求者が生計を同じにしていた(同居していた)ことを明らかにするためのものです。通帳は未払い年金の振込先を明らかにするためのものです。
▼忘れている相続手続きはありませんか?▼遺族基礎年金
年金受給者が亡くなった場合に、残された遺族の家計が苦しくなってしまうことがあります。このような場合のためにある制度が遺族基礎年金です。遺族基礎年金とは、国民年金の加入中に亡くなった加入者によって生計を維持し家計を支えていたなどの一定の要件を満たす遺族が受け取ることのできる年金です。
遺族基礎年金を請求をできる場合
遺族基礎年金を受け取る場合には亡くなった方の要件と遺族の要件が存在します。
亡くなった方の要件は「被保険者または老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡したとき。(ただし、死亡した者について、保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上あること。)」とされています。
すなわち「国民年金の被保険者が死亡したとき」「国民年金の被保険者であった人で、日本国内に住所を有し、かつ60歳以上65歳未満である人が死亡したとき」「老齢基礎年金の受給権者が死亡したとき」、「老齢基礎年金の資格期間を満たした人が死亡したとき」であって、「保険料納付済期間が加入期間の3分の2以上」である方が亡くなった場合に支給対象となります。
遺族の要件は、亡くなった方によって生計を維持され、家計を支えられていた子供のいる親または子供となります。この場合の子供とは、18歳以下の子供もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子供とされています。これらの条件を満たす場合には遺族基礎年金を受け取ることができます。
請求をする人
遺族基礎年金を請求することができる者は、受給者となります。すなわち、先ほど紹介した遺族の受給要件を満たしている者が請求をすることができるのです。具体的には、亡くなった国民年金受給者によって生計を維持され、家計を支えられていた子供のいる親または子供となります。この場合の子供も、18歳以下の子供もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子供とされています。
▼相続手続きのお役立ち資料は無料ツールを使いましょう▼必要な書類
遺族基礎年金を受給するための申請には「年金請求書、年金手帳、戸籍謄本、住民票の写し、住民票除票、収入が確認できる書類、死亡診断書、通帳、印鑑」が必要になります。
年金請求書は市役所などの役所や年金事務所、年金相談センターなどで入手することができます。
住民票の写しは世帯全員が記載されている必要があります。この場合に個人番号の記載がないものを発行します。住民票に亡くなった方が記載されている場合には住民票除票を提出する必要はありません。
収入が確認できる書類は、生計維持認定のために必要となります。これは請求者の収入と、義務教育が終了した子供の収入が確認できるものを用意しなければなりません。なので、高校生の子供がいる場合には義務教育を終了しているため、アルバイトをしていなくても収入を確認できる書類を用意しなければなりません。
「住民票、住民票除票、収入が確認できる書類」についてはマイナンバーを記入することで提出を省略することができます。
死亡診断書は他の手続きと同様にコピーを提出します。再発行する場合には病院に確認しましょう。印鑑は認印で構いません。
▼相続対策にはどんなことがある?まずは調べることから始めましょう!▼遺族厚生年金
ここまで国民年金の受給者が亡くなった場合について解説をしてきましたが、ここでは会社員や公務員といった厚生年金に加入している方が亡くなった場合の手続きについて解説をします。厚生年金の受給者が亡くなった場合にその遺族は要件を満たすことで遺族厚生年金の支給を受けることができます。
遺族厚生年金を請求をできる場合
遺族厚生年金を受給することができる要件は遺族国民年金と同様に亡くなった人の要件と遺族の要件が存在します。
亡くなった人の要件は「厚生年金に加入している、または厚生年金の加入中に初診日のある傷病が原因で初診日から5年以内に死亡」した場合に、「亡くなった人の保険料納付期間が国民年金加入期間の3分の2以上、または死亡日に故人が65歳未満の場合は、死亡日の2ヵ月前までの1年間に保険料の滞納がない」という要件を満たしていることが必要です。
また、この要件を満たしていなくても「1級または2級の障害厚生年金を受給している、老齢厚生年金を受給している、老齢厚生年金の受給資格期間を満たしている」場合のいずれかに該当する場合には要件を満たすことになります。
次に遺族の要件を解説します。遺族の要件を満たすものは、「亡くなった者によって生計を支えられていた」「配偶者または子供、父母、孫、祖父母」になります。
この場合の子供は国民年金の場合と同様です。また、これらの受給者の優先順位は「①配偶者または子供、②父母、③孫、④祖父母」ということになります。配偶者または子供は国民年金の遺族基礎年金と合わせて受給することが可能です。
請求をする人
遺族厚生年金を請求することができる者は、受給者となります。すなわち、先ほど紹介した遺族の受給要件を満たしている者が請求をすることができるのです。具体的には、亡くなった厚生年金加入者などによって生計を維持され、家計を支えられていた「配偶者または子供、父母、孫、祖父母」の中で優先順位が高い者が受給者となり請求者となります。
必要な書類
遺族厚生年金を受給するための申請で必要な書類は、遺族基礎年金の申請書類と同じです。すなわち「年金請求書、年金手帳、戸籍謄本、住民票の写し、住民票除票、収入が確認できる書類、死亡診断書、通帳、印鑑」が必要になります。住民票や住民票除票、収入が確認できる書類をマイナンバーの記載によって省略できることや印鑑は認印で良いことなども遺族基礎年金の場合と同じです。
▼あなたに必要な相続手続き、ポチポチ選択するだけで診断できます!▼寡婦年金
寡婦年金とは、第1号被保険者(国民年金加入者)が一定期間の間に保険料を納めていた場合に、亡くなって残された配偶者に対して支給を行う制度です。
寡婦年金を請求をできる場合
寡婦年金を支給される場合には、遺族基礎年金や遺族厚生年金と同様に亡くなったものに対する要件と遺族に対する要件が存在します。
亡くなった者に対する要件は「1号被保険者(国民年金加入者)として保険料を納めた期間が10年以上ある夫が亡くなった」ことです。また、亡くなった夫が、障害基礎年金の受給権者であった場合、老齢基礎年金を受けたことがある場合は支給されません。
そして、遺族に対する要件は「10年以上継続して婚姻関係にあり、生計を維持されていた」ことです。
請求をする人
遺族厚生年金を請求することができる者は、受給者となります。すなわち、先ほど紹介した遺族の受給要件を満たしている者が請求をすることができるのです。寡婦年金の場合には、亡くなった者の配偶者のみが受給者となれることから、配偶者が請求をすることになります。
必要な書類
寡婦年金を受給するための申請で必要な書類は「年金請求書、年金手帳、戸籍謄本、住民票の写し、住民票除票、収入が確認できる書類、通帳、印鑑」が必要になります。遺族基礎年金と遺族厚生年金とは異なり、死亡診断書の提出は不要です。また、受給者が配偶者だけなので収入が確認できる書類は配偶者のものだけで構いません。そして、住民票などの書類の提出をマイナンバーの記載で省略できることはありませんので、住民票などは必ず提出しましょう。
▼忘れている相続手続きはありませんか?▼死亡一時金
死亡一時金とは、第1号被保険者(国民年金加入者)として保険料を一定期間支払った者が亡くなった場合に、残された遺族に対して支給を行う制度です。
死亡一時金を請求をできる場合
死亡一時金を支給される場合には、これまでの手続きと同様に亡くなったものに対する要件と遺族に対する要件が存在します。
亡くなった者に対する要件は「第1号被保険者(国民年金加入者)として保険料を納めた月数が36月以上ある方が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま亡くなった」ということです。
遺族の要件を満たすものは「亡くなった者と生計を同じくしていた」「配偶者、子供、父母、孫、祖父母」になります。この場合の子供は国民年金の場合と同様です。また、これらの受給者の優先順位は「①配偶者、②子供、③父母、④孫、⑤祖父母」ということになります。
遺族が「遺族基礎年金」を受給している場合には支給されません。また、遺族が「寡婦年金」を受給している場合にはどちらか一方を選択して支給されます。なお、死亡一時金は死亡の日から2年で時効になってしまいます。
請求をする人
死亡一時金を請求することができる者は、受給者となります。すなわち、先ほど紹介した遺族の受給要件を満たしている者が請求をすることができるのです。具体的には、亡くなった第1号被保険者(国民年金加入者)などと生計を同じくしていた「配偶者、子供、父母、孫、祖父母」の中で優先順位が高い者が受給者となり請求者となります。
必要な書類
死亡一時金を受給するための申請で必要な書類は「国民年金死亡一時金請求書、年金手帳、戸籍謄本、住民票の写し、住民票除票、通帳、印鑑」が必要になります。遺族基礎年金と遺族厚生年金とは異なり、死亡診断書の提出は不要です。また、死亡一時金は保険金を支払っていたにもかかわらず、支給されることがないまま亡くなってしまった方の遺族にその分を支給する制度ですので、収入に関する要件もなければ書類を提出する必要もありません。そして、住民票などの書類の提出をマイナンバーの記載で省略できることはありませんので、住民票などは必ず提出しましょう。
▼あなたに必要な相続手続き1分で診断できます。▼まとめ
この記事では、年金に関する遺族がもらえるお金について解説してきました。それぞれの手続きは住所地の市区町村役場の窓口のほか、最寄りの年金事務所や年金相談センターでも手続きが可能です。
支給額の計算方法など、より詳細な情報については日本年金機構のホームページなどに掲載されていますのでぜひご確認ください。それぞれの手続きの要件や違いをしっかり理解した上で、ご自身が該当する手続きがある場合には忘れずに手続きを行いましょう。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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