教育資金の一括贈与の非課税制度とは?子や孫に1,500万円まで非課税で贈与する方法
かわいい孫のために教育資金を贈与したいという祖父母は多いと思います。そんな方のために、教育資金が1,500万円まで一括で非課税で贈与できる制度があります。
この制度を有効に使えば大きな相続対策になりますが、実際に利用するには要件を満たす必要があります。また、この制度は2026(令和8)年3月までの期間限定となっています。
今回は、教育資金贈与の非課税制度について解説します。
教育資金の一括贈与の非課税制度とは
父母、祖父母などの直系尊属から30歳未満の子や孫に教育資金を贈与したときに非課税となる制度です。この制度では、一括で贈与することができ、1,500万円まで贈与税が非課税となります。
教育資金とは
この制度で非課税となる教育資金とは、何を指すのでしょうか。
本来、扶養者であれば教育資金は「通常必要と認められるもの」については非課税で贈与できます。教育費がかかるのは当然ですから、贈与税はかからないとされています。
教育資金贈与の非課税で教育資金とされるものは、例として以下の通りです。
学校等に直接支払うもの
- 授業料、保育料、施設設備費など
- 入学金、入園料、入学検定料など
- 在学証明書代、卒業証明書代など
- 給食費、スクールバス代、遠足費、修学旅行費、部活動費、寮費など
- PTA、生徒会、学級会などの会費
- 大学入試センター試験受験料など
学校等以外に対して直接支払うもの
- ランドセル、教科書、上履きなど、学校が書面で保護者に購入を依頼した学用品
- 制服、ジャージなど学校指定の学用品
- 校外学習の活動費用
- 卒業アルバム・写真代
- 通学定期代
- 学習塾、予備校、家庭教師などの月謝
- スポーツ教室や習い事などの月謝、指導者を通して購入した物品、交通費など
- 学童保育の費用
なお、非課税限度額は合計で1500万円までですが、学校等以外に対して直接支払うものは500万円までとなっています。
※2019年7月1日以降に支払うの学校等以外の金銭で、受贈者(子や孫)が23歳に達した日の翌日以降に支払われるものについては、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するための費用に限られます。
非課税制度の要件
この制度を利用するためには、いくつかの要件をクリアする必要があります。
贈与者の要件
教育資金贈与の非課税制度の適用を受ける場合、贈与できるのは父母・祖父母・曾祖父母といった受贈者の「直系尊属」のみです。第三者や配偶者の親、おじ・おばなどは本制度を利用できません。
受贈者の要件
受贈者(資金をもらう人)には以下の要件があります。
- 信託契約を締結する日において30歳未満であること
- 信託を設定する日・信託財産を追加する日において、受贈者の前年の合計所得金額が1,000万円以下
制度の適用期限は2026(令和8)年3月末まで
教育資金贈与の非課税制度を利用できるのは2026(令和8)年3月末までとなっています。
教育資金贈与の非課税制度の手続き方法
教育資金贈与の非課税制度は、以下のような流れで手続きをします。
- 贈与者と受贈者との間で「贈与契約書」を作成する
- 金融機関に教育資金口座を開設し、「教育資金非課税申告書」を提出する
- 贈与資金を預け入れる(最大1,500万円まで)
- 領収書を金融機関に提出し、教育資金口座からお金を引き出す
教育資金の一括贈与では、贈与者が金融機関に金銭を信託し、信託された金融機関が金銭を管理、受贈者はその都度請求をして信託財産の交付を受ける仕組みです。
金融機関によっては教育資金贈与信託を扱っていなかったり、手数料がかかることもあります。詳細は金融機関に確認してください。
申告書は口座を作成した金融機関経由で税務署へ提出するため、贈与者が税務署へ赴く必要はありません。
受贈者が支払った教育費の領収書は、そのつど金融機関に提出します。領収書が教育費として適正なものであると認められれば、領収書に記載された金額を口座から引き出せるようになります。ちなみに教育資金贈与に使う口座は、受贈者一人につき1つまでしか開設できません。
令和5年度税制改正による変更
教育資金贈与の非課税制度については、これまで税制改正による変更がおこなわれてきました。令和5年度税制改正による変更内容は以下の通りです。
相続財産5億円を超える者の管理残高への相続税課税が追加
教育資金の贈与金額が消費される前に贈与者が亡くなった場合、教育資金として使いきれなかった金額に対して相続税がかかります。しかし、改正前は受贈者が23歳未満である場合や学校等に在学している場合など、一定の要件が満たされていれば、相続税の課税が免除されていました。
令和5年度の改正では、贈与者の死亡による相続税の課税額が5億円を超える場合は、一定の要件を満たす場合でも、管理残高に対して課税されます。令和5年4月1日以降に拠出する場合は改正内容が適用されるので注意しましょう。
贈与資金が使いきれなかった場合、贈与税は「一般税率」で計算
贈与された資金が30歳までに使いきれなかった場合、残った金額には贈与税が課されます。
改正前は18歳未満は一般税率、18歳以上は税率が低い特殊税率が適用されていましたが、令和5年4月1日以降に贈与する場合は年齢関係なく一般税率が適用されます。
教育資金の一括贈与の非課税制度の注意点
一括で1,500万円まで贈与できる便利な制度ではありますが、あらかじめいくつか確認すべき点があります。
贈与資金が使いきれなかった場合は贈与税の対象となる
教育資金贈与で信託に預けた資金は30歳までに使い切りましょう。使い切れなかった分は贈与税の対象となります。教育資金口座の使用が中止となると同時に、口座残高があれば贈与税がかかります。
1,500万円まで贈与できるからといって、必要以上の教育資金を贈与して使い切れず贈与税がかかるケースがあります。贈与された資金をどのように使用するか、あらかじめ計画をたてておきましょう。
手続きの手間がかかる
教育資金の一括贈与の非課税制度を利用するためには贈与契約書の作成や金融機関での口座開設などが必要です。また、出金の際には、教育費として支払ったことが証明される領収書などをその都度提出しなければなりません。一般的な預金とは異なるため、ATMなどでは引き出せません。
一度契約すると解約できない
教育資金の一括贈与の非課税制度では、一度契約をすると解約ができません。したがって一度契約をすると途中で解約することはできません。一度信託に預けた教育資金は、贈与者に戻すことはできないため注意しましょう。
教育資金の非課税贈与の1,500万円は、必ずしも一括で預けなければいけないわけではありません。追加で贈与することもできます。追加で贈与をする際も手続きが必要なため、余裕をもって計画をたてることが重要です。
まとめ
今回は教育資金の一括贈与の非課税制度について解説しました。節税効果の大きい制度のため多くの人が利用しています。
またこの制度は令和5年度税制改正により要件が厳しくなっています。詳細については一度専門家に相談し、どのように贈与するか計画を立てて活用することが大切です。
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