被相続人の戸籍の収集(出生から死亡まで)について詳しく説明
相続の手続や届出を行う際には、相続関係を証明する戸籍謄本等の提出が求められることが多々あります。
本記事では、戸籍の基本知識や集め方について詳しくご説明します。
そもそも戸籍って?
皆さまの中には、「戸籍って言葉はもちろん知ってるけど、どんな書類なのか正確には説明できない…」という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?戸籍の集め方を深堀りする前に、そもそも戸籍とは何か、なぜ相続手続で必要なのかを見ておきましょう。
戸籍とは?
戸籍とは、日本人が生まれてから亡くなるまでの「身分関係を証明する」もので、出生・結婚・死亡・親族関係などについて、登録・公証する公的な証明書類です。
日本で戸籍制度が誕生したのは、明治5年まで遡ります。当時の戸籍は、「家」をひとつの単位として作られていました。家には一家の主「戸主(こしゅ)」があり、戸主を中心として記載がなされていましたので、夫婦や子どもだけでなく孫や子どもと孫の配偶者など、非常に多くの人物がひとつの戸籍に入籍していました。
一方、現在の戸籍制度では、「ひとつの夫婦およびこれと氏(=名字)を同じくする子」がひとつの戸籍に入籍することになっています。前述の戸主は現在の戸籍には存在せず、代わりに「筆頭者」中心の記載がなされています。
戸籍と住民票の違いは?
戸籍と似たイメージの書類として、住民票を思い浮かべた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
戸籍は「身分関係を証明する」公的な書類であることに対し、住民票は「住民の居住関係を証明する」公的な書類である点が大きな違いです。記載事項も次のように異なっています。
- 戸籍:本籍、筆頭者氏名、同じ戸籍に記録されている者の名、生年月日、父母の氏名、出生地、婚姻日など
- 住民票:氏名、生年月日、性別、住所、住民となった年月日、届出日および従前の住所、世帯主の氏名と世帯主との続柄、本籍及び筆頭者氏名など(※)
※世帯主の氏名と世帯主との続柄、本籍及び筆頭者氏名については、交付申請時に記載の有無を選択できます。
なぜ相続が発生すると戸籍が必要なの?
ここまでで、戸籍が身分関係を証明するために必要な書類であることはおわかりいただけたかと思います。では、なぜ相続が発生すると戸籍が必要になるのでしょうか?
たとえば、相続手続を行う際には、亡くなった方(=被相続人)の相続財産を誰にどうやって振り分けるかを話し合いによって決めることがあります。これを遺産分割協議といいますが、この場合は被相続人の法定相続人全員で協議を行って内容を決定しなければなりません。その際、被相続人の法定相続人が誰なのかをあらかじめ確認しておく必要があります。それを証明してくれる書類が戸籍なのです。
戸籍取得の基本知識
戸籍の必要性はご理解いただけましたでしょうか?
ここからは、相続手続の必須アイテムである戸籍の具体的な取得方法について解説していきます。
誰の分をいつ時点までさかのぼって取得すればいいの?
戸籍は被相続人の死亡事項の記載のあるものだけを取得すれば問題ないでしょうか?実はそれだけではその方の相続関係を証明するのに十分ではありません。
戸籍は転籍や夫雄改正、婚姻などにより適宜新しくつくられますが、その際に既に抹消された情報は基本的には新しい戸籍に記載されず、相続人全員の確認ができないのです。そこで、相続関係を正確に証明するためには、被相続人が出生してから死亡するまでの一生で作られたすべての戸籍をさかのぼって順に取得する必要があります。
相続関係の特定
被相続人の戸籍をさかのぼって取得し、他に相続人がいないことを特定していきます。兄弟姉妹が相続人となる場合、両親の戸籍もさかのぼって取得し、他に兄弟姉妹がいないこと、すなわち両親に他に子どもがいないことを証明する必要があります。また、相続人の現在の戸籍も取得し、相続開始時点で生存しており相続の権利があることを証明します。
遺言があったら?
正式な遺言が残されているときは、被相続人の死亡事項の記載がある戸籍と相続人あるいは受遺者であることの証明のみで足りることもあります。これは遺言がある場合には、他に相続人がいないことまで戸籍で証明する必要がなくなるためです。ただし、遺言書の検認などを行う場合は、原則として出生までさかのぼる戸籍や相続人の現在の戸籍が必要となります。遺言については、別記事で詳しく解説しておりますので、そちらも併せてご一読くださいませ。
誰が取得できるの?
戸籍は誰でも自由に請求して取得できるのでしょうか?戸籍は身分関係を証明するものであって、出生や結婚、親族関係などが記載されている大変プライベートな書類です。そのため個人情報保護の観点から、他人の戸籍を取得できる者の範囲は戸籍法という法律で制限されています。基本的に戸籍を請求できる者は、本人や配偶者、直系尊属(父母や祖父母など)、直系卑属(子や孫など)などに制限がされ、傍系存続(叔父や叔母など)や傍系卑属(甥や姪など)では取得することができません。
他人の戸籍は原則として交付を受けることはできませんが、債権回収など自分の権利を行使したり自分の義務を履行したりするために戸籍の証明書が必要である正当な理由がある場合には、限られた目的の範囲内で取得することができます。
また、相続手続や訴訟手続等に当たって、地方公共団体などの自治体から法令に基づき戸籍の提出が求められる場合などにも取得することができます。その場合、取得する理由を明らかにする書面などを提出しなければなりません。これは相続手続を専門にしている司法書士や税理士、行政書士などの士業であっても同様です。
士業に携わる者が事件や手続の依頼を受けた場合、職務上請求書と呼ばれる書類によって依頼者に代わって戸籍を取得することが可能となります。例えば行政書士であれば遺産分割協議書を作成するために戸籍が必要であるなど、その職務を遂行するために必要な限られた目的の範囲内で取得することができるに過ぎず、取得できるのは本人が権利を有する範囲のものだけとなります。
戸籍の種類って?
戸籍には、①謄本、②抄本、③全部事項証明書、④一部事項証明書と呼ばれるものがあります。それぞれ、どのような内容か簡単に触れておきましょう。
①戸籍謄本とは、戸籍に記載されている内容の全部のコピーです。したがって、戸籍に記載された全員の身分関係のコピーとなります。
②戸籍抄本とは、記載事項の一部を抜粋してコピーしたものです。したがって、戸籍に記載されている一部の人に限った身分関係のコピーとなります。
現在の戸籍は、各市区町村役場によってコンピューターを活用した保管が進められており、紙面ではなく電磁的記録で保存がされています。コンピューター化されたもののうち、謄本のように全部の内容を記載したものを③全部事項証明書、抄本のように一部の内容を記載したものを④一部事項証明書と呼んでいます。
どうやって取得できるの?
戸籍は、本籍地を管轄する市区町村役場がその取扱事務を行っています。そのため、本籍地のある市区町村役場に請求することで取得できます。窓口は市区町村によって異なりますが、市民課や戸籍課、戸籍住民課などの名称で呼ばれています。
請求時には、請求者の免許証など本人確認書類を提示する必要があります。また、先述のとおり戸籍は誰でも自由に取得できるものではありませんので、請求する権利をもつ者であることを証明する書面の提出を求められることもあります。請求可能な者から委任を受けた者は、委任状があれば代理で請求することが可能です。必要な書類を揃えて、請求書や手数料とともに市区町村役場の窓口に提出しましょう。
窓口に行かないと取得できないの?
本籍地が遠方の市区町村であったり、昨今の新型コロナウイルス感染症の流行時のように外出自粛が要求されるなど、窓口へ出向くのが困難な場合でも直接窓口へ行かなければ請求はできないのでしょうか?行政手続ではこのような状況下でも窓口対面でなければ対応できないと言われるものも多いですが、戸籍は郵送でも請求が可能です。
申請書などの必要書類は該当の市区町村役場のホームページなどからダウンロードし、手数料は定額小為替を郵便局等で購入して返送用封筒とともに送付すれば問題ありません。
郵送で請求する時は、事前に請求先の役所担当部署に電話で連絡しておくと手続がスムーズになるのでおすすめです。
具体的な戸籍の取得方法
戸籍取得に関しての基本的な知識を学んできたところで、戸籍を取得する細かな方法について見ていくことにしましょう。
具体的な申請方法は?
戸籍の全部事項証明書等の交付申請用紙の提出によって、必要な戸籍に関する証明書を取得することができます。申請用紙は、各市区町村役場に備えられていますので、それを利用することになります。もしくは、各市区町村役場のホームページからダウンロードすることも可能です。
様式は自治体によって異なりますが、基本的な部分は変わりません。申請用紙には、戸籍の筆頭者の氏名と本籍を記載し、取得したい書面が全部事項(謄本)なのか一部事項(抄本)なのか、加えて請求者の氏名と住所も記載します。また、請求理由も記載する必要がありますので、前述のとおり戸籍を取得する正当な理由を具体的に記載するよう注意してください。
窓口には何を持参すればいいの?
交付申請をする時には、①認印、②身分証明書、③手数料、④委任状を窓口へ持参するようにしましょう。
交付申請用紙には、申請者の捺印を求められる場合があります。そのため、実印ではなく三文判で問題ありませんので、認印を持参するようにしてください。窓口で申請者の本人確認が行われることもありますので、運転免許証やパスポートなど身分を証明する書類も持参するようにしましょう。また、交付手数料も支払う必要がありますので、現金も忘れずに持参してください。
前述のとおり戸籍は第三者が取得することもあります。例えば、請求したい人が市区町村役場を訪問することが難しく他の人に取得請求をしてもらう、すなわち委任するような場合です。その場合、受任者(委任を受けた人)の名前で戸籍を取得することになるため、受任者は本人確認書類として運転免許証などの身分証明書を持参する必要があります。また、受任者は委任者から取得請求の委任を間違いなく受けたことを証明するために委任状も準備する必要があります。
戸籍はいつでも取得できるの?
戸籍には、実は保存期間があります。そのため、いつまでも全部事項証明書等が取得できるとは限りません。通常の戸籍は除籍となって除かれるまでは永遠に保存されますが、除籍となった場合は保存期間が決まっています。保存期間は戸籍法の施行規則に定められており、除籍となった年度の翌年から150年で廃棄されることになります。
古い戸籍に書かれた字が読めない時はどうすればいいの?
戸籍は明治時代までさかのぼることもあり、記載されている文字が読めないということが多々あり得ます。
現在の戸籍は、大抵はコンピューターで作成されるため読めないということはまずないと思いますが、大正や明治時代までさかのぼると手書きで作成されていることがほとんどです。書き手によって字のくせが違ったり、右読みになっていたりと読解に苦労するだけでなく、昔はひとつの戸籍に記載される人物も戸主を中心に何代にもわたって記載がされていました。このように、昔の戸籍を読み解くのは非常に難しいものです。
このような場合には、市区町村役場の担当者に直接確認することですんなりと解決することが多いです。あれこれ悩んで貴重な時間を費やすよりも、戸籍を取り扱うプロに確認してみることが解決への近道となります。また、相続手続などで必要な場合には、行政書士や司法書士などの専門士業に相談し、複雑で面倒な手続を一任してみることもひとつの手でしょう。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
ご希望の地域の専門家を探す
ご相談される方のお住いの地域、遠く離れたご実家の近くなど、ご希望に応じてお選びください。