世帯主が死亡したときの変更や健康保険の手続きについて解説
相続手続きの中で、世帯主が亡くなった場合にのみ必要になる手続きが存在します。具体的には世帯主変更の届出や健康保険などに関する手続きが必要になります。
この記事では、世帯主が亡くなった場合に主に必要になる相続手続きについてご紹介します。
世帯主とは
世帯主とは、同居をしている家族の中で代表する者や1人暮らしをしている者などで、自治体に届出をしている者を指します。
同居している家族の中で世帯主が誰かわからないということがあれば住民票を取得しましょう。世帯主は住民票の一番上の欄に記載されているので、住民票を取得すれば確認することができます。
相続手続きでは死亡届の提出など、市役所や区役所に行く機会が増えるかと思いますので、住民票を取得して確認してみると良いかもしれません。また、国民健康保険などの加入は世帯単位で行われるので、納税通知書の名宛人は世帯主となっています。
世帯主変更の届出
世帯主が亡くなった場合には、まず世帯主の変更届を提出します。変更届の申請書などは自治体によって異なりますが、ここでは全国で共通する世帯主変更届の手続きについてご紹介します。
世帯主変更の届出とは?
世帯主変更の届出は世帯主が亡くなった場合に行う手続きです。なので、世帯主以外の者が亡くなった場合には世帯主の変更届をするは必要ありません。
世帯主は国民健康保険や後期高齢者医療制度などの健康保険と結びついているため、世帯主の変更届を提出して保険証の記載などを訂正する必要があります。
世帯主変更の届出は死亡届の提出や火葬許可証の発行などの相続手続きとは異なり、一人暮らしや結婚のタイミングでも行う手続きのため経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
いつまでに提出しなければいけないの?
相続の中で一番はじめに行う手続きは死亡届と死亡診断書などの提出で、これは亡くなったことを知った日から7日以内に行わなければなりませんでした。世帯主変更の届出については、住民基本台帳法という法律に規定がされており、その内容は「世帯主に変更があつた者は、その変更があった日から十四日以内に、その氏名、変更があつた事項及び変更があつた年月日を市町村長に届け出なければならない。」となっています。
世帯主が亡くなることによって、世帯主の変更が起こります。すなわち、世帯主が亡くなることによって世帯主の変更が生じた場合には、亡くなった日から14日以内に届出をする必要があります。
世帯主の変更を14日以内に行わなかった場合には、罰金がかせたれてしまう場合もありますので、できる限り期限内に行うことをおすすめします。世帯主が亡くなった場合には、まずは死亡届の提出や火葬許可証の発行などの手続きを行い、その次に行うべき手続きが世帯主変更の届出です。
誰が提出できるの?
世帯主の変更届を提出することができる者は「世帯主」「世帯員」「代理人」となっています。結婚や一人暮らしの場合に世帯主変更の届出を行う時には、世帯主が自ら提出することができます。
しかし、相続手続きの場合には世帯主は亡くなっていますので、同じ世帯に所属している者、または委任状などを作成して代理人が世帯主変更届を提出することになります。
世帯員が誰かわからない場合には、亡くなった世帯主が一番上に記載されている住民票を発行することで、そこに記載されている世帯員を確認することができます。亡くなってから14日以内に提出することができる世帯員が以内場合には、委任状を作成して他の相続人や親族に頼むことをおすすめします。
また、最近は葬儀社が代理人として世帯主変更の届出を行なってくれる場合もありますので、葬儀社に相談することも一つの方法です。委任状についてはフォーマットを限定していることはありませんが、各自治体のホームページにそのテンプレートが掲載されていることもありますので、それを用いることができます。自分で委任状を作成する場合には、「委任年月日、委任者の住所/氏名/連絡先、受任者の住所/氏名/連絡先、委任内容、押印」などを記載すると良いでしょう。
変更届の提出先
相続手続きの場合の世帯主の変更届を提出する場所は、亡くなった世帯主の住所がある市役所、区役所または町村役場になります。
つまり、死亡届の提出や火葬許可証の発行と同じ場所に提出することになります。世帯主の変更届の書類は多くの場合、提出先の役所で入手することができます(最近ではホームページでダウンロードできる自治体も増えてきています)。
何度も役所に足を運ぶことは相続手続きをスムーズに進めるためにできるだけ避け方が良いですので、死亡届の提出や火葬許可証の発行の際に世帯主変更の届出に関する書式も入手しておくと良いでしょう。
提出には何が必要?
世帯主変更の届出の際に必須の書類は「世帯主変更届、窓口で提出する方の本人確認書類、窓口で申請する方の印鑑」です。
本人確認書類は「運転免許証やマイナンバーカード、パスポート、保険証」などです。マイナンバー通知カードは一般的な本人確認書類として利用することができないので注意しましょう。
印鑑については、自治体に登録している実印である必要はなく、認印を利用することができます。ただ、シャチハタは使うことができないので注意しましょう。
これらの他に世帯主変更の届出の際に必要になる書類として「国民健康保険の保険証、委任状」などが存在します。国民健康保険の保険証は国民健康保険に加入している場合にのみ必要になります。国民健康保険についてはこの記事の後半部分で詳しくご紹介します。
委任状は、先ほど「誰が提出できるの?」でご紹介した通り、代理人が世帯主変更届を提出する場合にのみ必要な書類となります。
世帯主変更届が不要な場合
世帯主変更の届出は世帯主が亡くなった場合に常に必要になる手続きというわけではありません。世帯主が亡くなった場合に世帯主変更の届出が不要になるケースは「世帯主が一人暮らしだった場合、世帯主が亡くなって世帯に残った者が1人の場合、世帯主が亡くなって世帯に残った『15歳以上の者』が1人の場合」になります。
すなわち、世帯主変更の届出が必要になる場合とは、残された世帯員のなかで誰が世帯主となるか選択肢がある場合となります。では、それぞれのケースを解説していきましょう。
世帯主が一人暮らしだった場合
「世帯主が一人暮らしだった場合」とは、世帯主が亡くなった後にその世帯に誰も残っていない状況です。世帯に誰も残っていないわけですから世帯主を変更することができません。よって世帯主変更の届出をする必要はないのです。
世帯主が亡くなって世帯に残った者が1人の場合
次に「世帯主が亡くなって世帯に残った者が1人の場合」について開設していきます。先ほども解説したように、残された世帯員の中で世帯主となるものの選択肢がある場合に世帯主変更の届出が必要になります。つまり、世帯主となる者の選択肢がない場合には世帯主変更の届出は不要となります。
例えば、80歳の世帯主と75歳の世帯員がいたケースでは、世帯主が亡くなった場合に新たな世帯主となれる世帯員は1人しか存在せず選択肢はありません。よってこの場合には世帯主変更の届出は不要となります。
逆に、80歳の世帯主と75歳の世帯員、40歳の世帯員がいたケースでは、世帯主が亡くなった場合に新たな世帯主となれる世帯員は2人存在することになります。
この場合には、どちらの世帯員が世帯主となるのかを自治体に報告(届出)する必要がありますので世帯主変更の届出は必要になります。
世帯主が亡くなって世帯に残った「15歳以上の者」が1人の場合
最後に「世帯主が亡くなって世帯に残った15歳以上の者が1人の場合」について解説をします。先ほど解説したケースとの違いは「15歳以上の者」という条件が付与されたことです。
これは「15歳未満の者は世帯主になることができない」という前提があるからです。すなわち、世帯主が亡くなった後に新たな世帯主となる選択肢に15歳未満の世帯員は含まれません。
例えば先ほどと同様の80歳の世帯主と75歳の世帯員、40歳の世帯員がいたケースでは、世帯主が亡くなった場合に新たな世帯主となれる世帯員は2人存在することになります。
この場合には、どちらの世帯員が世帯主となるのかを自治体に報告(届出)する必要がありますので世帯主変更の届出は必要になります。
一方、80歳の世帯主と75歳の世帯員、14歳の世帯員がいたケースでは、世帯主が亡くなった場合に新たな世帯主となれる世帯員は1人しか存在しないことになります。この場合は新たな世帯主の選択肢はないので世帯主変更の届出は不要になります。
ご自身の状況がどのケースに当てはまるかによって、世帯主変更の届出の要否が異なります。個別のケースについては自治体に確認をしてみることも良いかもしれません。
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世帯主の変更届の提出と同時にする手続きに国民健康保険の手続きが存在します。また、健康保険ではありませんが、介護保険や後期高齢保険も同時に変更する必要があります。
これらの手続きは世帯単位で加入しているため、世帯主の変更届を提出する際に自治体の窓口で同時にする必要があるのです。なお、この手続きは世帯主が亡くなった場合は必ず必要です。
では、国民健康保険の手続きについて解説していきたいと思います。
保険証の返却と喪失届
保険証の返却と国民健康保険者資格喪失届の提出は世帯主変更届と同様に、世帯主が亡くなってから14日以内に行う必要があります。届出をする場所は今までの手続きと同様に亡くなった世帯主の住所がある市役所、区役所または町村役場になります。
自治体によっては死亡届を提出することで、国民健康保険者資格喪失届の提出が不要になるケースもありますが、その場合でも保険証は返却する必要がありますので注意が必要です。
手続きを行える者
保険証の返却と国民健康保険者資格喪失届の提出を行うことができる者は、世帯主変更の届出と同じく「同じ世帯に所属している者、または委任状などを作成して代理人」となります。
委任状を作成して世帯主変更届の提出と保険証の返却、資格喪失届の提出を代理人によって行う場合には、委任内容に世帯主変更についてだけでなく、険証の返却と資格喪失届の提出についても記載することが必要なので気をつけましょう。
手続きに必要な書類
保険証の返却と国民健康保険者資格喪失届の提出を行う際に必要となる書類は「国民健康保険者資格喪失届」「国民健康保険被保険者証」「死亡を証明する書類」「申請をする者の本人確認書類」「印鑑」となります。
喪失届は市役所などで入手することができるので、他の申請書類と合わせて早めに入手しておきましょう。死亡を証明する書類は、死亡届のコピーや死亡届提出後に発行した戸籍謄本などを用います。本人確認書類と印鑑は、世帯主変更の届出と同じものを利用できます。
なお、70歳から74歳までの方は「国民健康保険高齢受給者証」を加えて提出する必要があります。また、代理人が申請を行う場合には委任状を合わせて提出しなければなりません。フォーマットや書くべき事項は「提出には何が必要?」で紹介したものと同じです。
国民健康保険への加入
世帯主が亡くなって国民健康保険の資格を喪失した後に、そのままでは保険の適用を受けられなくなってしまいます。ですので、保険証の返却と喪失届を提出した場合には、新たに国民健康保険に加入するか、すでに健康保険に加入している家族がいる場合にはその家族の扶養に入りましょう。
国民健康保険以外の保険の場合
会社員など国民健康保険に加入していない世帯主が亡くなった場合には、健康保険や厚生年金保険被保険者資格喪失届を年金事務所に提出して、その資格を喪失する手続きを行う必要があります。
しかし、基本的にこれらの手続きは所属していた会社などが退職手続きやその他の手続きと合わせて一緒に行ってくれることがほとんどです。相続手続きを行う際には、会社などに手続きの内容や必要な書類などの確認を行うと良いでしょう。
まとめ
今回紹介した手続きは死亡届の提出や火葬許可証の発行のようなすべての方が行わなければならない手続きではなく、世帯主が亡くなった場合に必要になる手続きでした。
また、世帯主の変更は、世帯主になる可能性がある世帯員が複数存在する場合に必要になる手続きです。相続手続きは、相続人の関係性や相続財産の種類によって大きく異なります。自分の場合にどの手続きが必要になるのかといったアドバイスを行政書士や司法書士、税理士などの専門家に頼ることも良いかもしれません。
▼実際に「いい相続」を利用して、行政書士に相続手続きを依頼した方のインタビューはこちら
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