換価分割とは?メリット・デメリットや遺産分割協議書の書き方まで徹底解説【行政書士監修】
遺産を相続するとき、遺産分割にはいくつかやり方があるのをご存知ですか?「換価分割」「現物分割」「代償分割」の3つの方法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。
また、分割の方法によって、遺産分割協議書の記載の仕方が異なることも。
遺産分割協議書とは、遺産分割の内容を記した書面になり、相続税申告の手続きなどで提出する必要があります。また、対応を間違えると贈与税を課される場合もあります。
この記事では、換価分割のメリット・デメリット、遺産分割協議書の書き方などを解説します。遺産分割協議の前に、よく理解しておきましょう。
この記事はこんな方におすすめ:
「遺産分割協議をしている人」
この記事のポイント:
- 換価分割は、不動産などを売却し得られた売却金を相続人間で分割する方法
- 遺産分割には換価分割、現物分割、代償分割の3つの方法がある
- 分割の方法によって、遺産分割協議書の記載の仕方が異なる
この記事の監修者
2016年に開業し、2018年に独立。行政書士・終活アドバイザー・シニアライフカウンセラー養成講座講師・一般社団法人ProFamilia終活協会 代表理事など終活領域において多方面で活躍する。著書に『90分でざっくりわかる!終活の本』『ステイタスノート』など。
▶ 本木行政法務事務所
換価分割とは
換価分割とは、不動産などを売却し得られた売却金を相続人間で分割する方法です。
例えば法定相続人が3人いて3,000万円の不動産があった場合、不動産を売却し代金を1,000万円ずつ受け取るのが換価分割になります。
また、換価分割のほかに現物分割と代償分割があります。
現物分割とは
現物分割は、最も一般的な遺産分割の方法です。
現物分割は預貯金や株、不動産などの財産を「そのままの形で分割」します。例えば不動産は長男、株式は次男、預貯金と車は長女が相続する場合です。
現物分割のメリットは「対象の遺産を一人ずつ引き継ぐ」ので、手続きが簡単なこと。一方デメリットとしては、財産によっては公平に分けるのが難しいことが挙げられます。
代償分割とは
代償分割は、相続人のうち一人もしくは数人で不動産などを現物で相続して、不動産を取得した人がほかの相続人に見合った「代償金」を払う方法です。
代償分割のメリットは、スムーズかつ公平に遺産分割ができることです。しかし、代償金を支払う人にかなりの資金力が必要になるのがデメリットと言えます。
▼今すぐ診断してみましょう▼換価分割のメリット
換価分割のメリットについて、詳しく解説します。
公平に遺産を分けられる
換価分割では、遺産をすべて現金にして分配します。そのため1円単位で計算ができ、完全に公平な形で遺産を分け合うことができます。
現物分割や代償分割ではどうしても相続人の間で不公平になりやすいため、換価分割のメリットと言えるでしょう。
資金がなくても分割できる
マンションなどの不動産が遺産に含まれていた場合、代償分割で分けることも考えられます。しかし代償分割は、不動産を取得する相続人に「代償金の支払い能力がある」ことが必要です。
不動産を取得する人に支払い能力がなければ、そもそも代償分割はできないのです。
相続税の納付資金を確保できる
換価分割は、相続税が発生する遺産分割においてもメリットを発揮します。
相続税は、相続の開始があったことを知った日(通常は、相続人の死亡日)の翌日から「10か月以内」と決まっています。そのため、換価分割で売却金が速やかに取得できれば、相続税に充てることができます。
相続税を節税できる場合がある
被相続人(亡くなった人)が生前に不動産を売却するより、相続が発生してから換価分割により不動産を売却したほうが相続税を抑えることができます。
なぜなら、現金より不動産のほうが相続税評価額が低くなるからです。
相続税は相続税評価額をもとに計算されます。相続税評価額は土地なら現金の8割、建物は現金の7割ほどが目安となります。
▼まずは調べることから始めましょう!▼換価分割のデメリット
換価分割のメリットは多くありますが、デメリットについても理解しておきましょう。
手間がかかる
換価分割を行うには、まずは不動産を売却しても良いという相続人全員の合意が必要です。もしかしたら、納得しない相続人がいる可能性もありますし、いざ売却しようとしても不動産会社とのやり取りや手間がかかります。
遺産分割がなかなか終わらないと、精神的な負担にもなるでしょう。
不動産が安くしか売れないことも
換価分割をする相続人は「できるだけ早く、高く売りたい」と考えると思います。
特に、売却金を相続税の支払いに充てようと考えている場合、相続税の納付期限までに売却金の支払いを受ける必要があります。
ただし、不動産は売り急いでも希望通りの金額で売れるとは限りません。景気の動向にも左右されます。
換価分割の場合、良い時期や買い主をじっくりと見極めることができず、売却価格が低くなってしまうことがあります。
経費がかかる
換価分割をする場合、不動産を売却するわけですから不動産仲介会社に支払う手数料や印紙代、測量の費用などいろいろな経費がかかります。
所得税が発生することも
不動産を売却すると「譲渡所得税」がかかる可能性があります。
譲渡所得税とは、不動産を売却した利益から諸経費を引いた利益にかかる税金です。また、譲渡所得税がかかると住民税も増額されます。
ケースによっては「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」を利用できる場合があります。
▼忘れている相続手続きはありませんか?▼換価分割の手続き
遺産分割協議から売却金の分配まで、換価分割の流れを説明します。
遺産分割協議を行う
相続が発生すると、相続人全員で遺産分割協議を行います。遺産分割協議の内容には、相続人全員の同意が必要です。
換価分割を行うことになったら、売却金の分配割合も合わせて決定します。そして遺産分割協議書にその旨を記載します。後述しますが、分配割合は、基本的に法定相続割合に従う場合が多いです。しかし、相続人全員の合意があれば、任意の割合にしても問題ありません。
このとき誰かが不公平になったりすると、後のトラブルの原因になることも。状況に応じて、納得のいく分け方を検討しましょう。
相続登記を行う
亡くなった人の名義のままでは売却できないので、遺産の名義を相続人に変更する必要があります(相続登記)。
このとき登記の方法として、次の2つがあります。
- 換価代金の取得割合に応じた持分で共有登記をする方法
- 換価代金を取得する相続人の中から換価手続きを行う代表者を一人選び、その人の単独登記をする方法
共有登記だと売却手続きが煩雑になるので、単独登記を選択する場合が多いようです。
該当の不動産を売り出す
遺産分割協議が終了したら、不動産を売り出します。このとき相続人が一人ですべてを行うのは大変ですので、誰か代表者を決めて複数人で売却活動を行うと良いでしょう。
不動産業者の選定から契約、必要書類の記入などミスや漏れのないように気をつけます。
売却金を受け取る
不動産の売却ができたら、相続人の代表者がまとめて売却金を受け取りましょう。
このとき、代表者が普段使用している口座に入れてしまうと混乱するので、相続用の銀行口座を作ると安心です。
法定相続人間で売却金を分配する
売却金から経費を差し引き、残りを遺産分割協議で決めた通りに分配しましょう。
換価分割における遺産分割協議書の書き方
単独登記による、換価分割の遺産分割協議書の記載例は、以下の通りです。
1.次の土地については、売却し、その売買代金から売却に要する一切の費用を控除した残金を、甲、乙及び丙が、それぞれ3分の1の割合で取得する。 所 在 東京都〇〇市〇〇町△丁目 2.相続人乙は前項の財産を取得する。乙は、相続人を代表して前項の土地の売却・換価手続を行うものとし、前項の土地を売却後、甲及び丙に対して、同項の残金について同項に定める割合を支払う。 3.甲、乙及び丙は、第1項の土地を売却し買主に引き渡すまで、これを共同して管理することとし、その管理費用は、同項に定める割合に従って負担する。 |
遺産分割協議書に「換価分割のために便宜上名義変更をする」のように、換価分割だと明記しておかないと、売却金を分配したときに贈与税がかかる可能性があります。
また、登記後から換価までにかなりの期間が空いてしまうと、贈与税が課される場合もあります。速やかに換価分割を終えておくことをおすすめします。
▼まずはお電話で相続の相談をしてみませんか?▼まとめ
今回は、換価分割について解説しました。遺産分割の方法にはいくつかありますが、どれもメリット・デメリットがあるため、よく検討して決める必要があります。
「遺産分割協議書の作り方がわからない」「相続税がいくらになるか知りたい」など、相続でわからないことがあれば、専門家に相談しても良いでしょう。
「いい相続」では相続に強い行政書士・税理士などの専門家を紹介しています。経験豊富な相続専門スタッフが対応いたしますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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