株の相続税はいくら?上場・非上場それぞれ計算方法や相続する際の注意点を解説
相続が発生した場合、相続人間で誰がどの財産を相続するか話し合う必要があります。相続財産には現金や不動産だけでなく、株式が含まれることもあるでしょう。
相続財産に株式があるとき、どのように相続税を計算すればよいでしょうか。この記事では、上場・非上場株式のそれぞれの計算方法や株式を相続する際の注意点などを解説します。
株式も相続税の対象になる
故人の遺産総額が一定額を超えた場合、相続税がかかります。これは株式についても同様です。
株式が含まれる場合の相続税の計算は、まず、相続税評価額(現金にしたらいくらなのか)を求めます。株式の評価額を算出したら、現金や不動産などの他の相続財産と合算して、相続税の総額を算出します。遺産総額から借金や基礎控除の分を除いた金額が、相続税の課税対象となります。
▼依頼するか迷っているなら、まずはどんな手続きが必要か診断してみましょう▼株式の相続税の評価方法
相続した株式は上場か非上場かによって評価方法が異なります。
上場株式は株価が公開されているため評価額は把握しやすいですが、非上場の株式は会社規模などの情報をもとに自分で計算しなければなりません。具体的に解説していきます。
上場株式
上場株式の評価額は、「1株あたりの金額×保有株数」で算出します。しかし株価は日々変動するため、過去の傾向などを考慮して以下の4つの時点で一番低い金額を適用してよいことになっています。
- 相続開始日の終値
- 相続開始月の終値の平均
- 相続開始前月の終値の平均
- 相続開始前々月の終値の平均
相続した日の市場が休みの場合
株式市場は土日や祝日は開いていません。もし、相続が発生した日(被相続人が亡くなった日)が株式市場が休みの場合は、相続が発生した日に近い日の最終価格を採用します。
例えば、土曜日に亡くなった場合は金曜日、3連休の中日に亡くなった場合は、連休前と後の最終価格の平均を相続発生日の最終価格とみなします。
▼今すぐ診断してみましょう▼非上場株式
非上場株式の相続税の評価方法は、以下の2つの方法で算出します。ただしどちらの方法も専門知識が必要となるため、税理士などの専門家に依頼したほうがよいでしょう。
- 原則的評価方式
- 配当還元方式
原則的評価方式
原則的評価方式では、非上場株式を発行した会社の総資産額、従業員数、売上高などから会社の規模を判別し、これに従って評価額を決定します。
会社の規模によって大会社、中会社、小会社の3種類に分類し、それぞれに対して、類似業種比準方式、純資産価額方式、またこれら2つの併用による算定方式の3つによって評価額を算定します。
類似業種比準方式
評価する会社と事業内容が似ている上場企業の株式の株価をもとに評価します。
純資産価額方式
純資産価額方式は、その会社が解散したと仮定したときに、株主一人あたりに配分されるであろう金額で評価します。
類似業種比準方式と純資産価額方式の併用
発行会社の規模により類似業種比準方式と純資産価額方式を90:10、75:25、60:40、50:50のいずれかの割合で併用します。
配当還元方式
配当還元方式は過去2年間に受け取った配当金を基準に評価額を算定する方法です。
一般的に非上場株式の評価額算定は「原則的評価方式」が採用されますが、相続される株が少なく会社の運営に影響が生じない規模の株式保有の場合のみ、こちらの方法を使って評価額を算出します。
配当還元方式による評価額の算出方法も複数ありますが、一般的な算出方法である「国税庁配当還元法」では以下の計算式を利用します。
評価額 =(過去2年間の1株あたりの年間配当の平均額 × 10%)×(1株あたりの資本金額 ÷ 50円)
▼めんどうな相続手続きは専門家に依頼しましょう▼株式の相続で利用できる特例
株式を相続した場合、一定の要件を満たせば、相続税を減らせる特例が利用できます。特例には以下の3つがあります。
- 取得費加算の特例
- みなし配当課税の特例
- 非上場株式の納税猶予および免除の特例
取得費加算の特例
取得費加算の特例とは、譲渡した株式で支払った相続税額を取得費に加算できるという制度です。取得費が増えれば譲渡所得が小さくなり、譲渡所得税が減額される仕組みです。
ただし、相続した株式を相続が発生した日から3年10ヶ月以内(相続税の申告期限の翌日から3年以内)に譲渡しなくてはなりません。
これは上場・非上場株式のどちらでも利用可能です。
みなし配当課税の特例
相続によって非上場株式を取得した人が、相続の発生した日から3年10ヶ月以内にその株を発行している会社に譲渡(売却)した場合に発生する所得税を下げる特例です。
非上場企業の株式を売却した際に発生する譲渡益は、株主が会社から配当を受け取ったとみなされ、この「みなし配当」には、最大で55%近くの高い所得税と住民税が課されることになります。
このような場合にこの特例を利用することで、税率を20.315%までおさえることができます。
非上場株式の納税猶予および免除の特例
中小企業の株式を相続する場合に、一定の要件を満たすことで相続税が猶予・免除される制度です。家族経営などの小規模な企業の場合、相続税が払えず事業承継できない事態になりかねないからです。
このような事態を避けるため、以下の要件を満たす場合に相続税が猶予されます。また会社の要件などもあるため、詳しくは国税庁ホームページを参考にしてください。
- 後継者が筆頭株主であり50%を超える株式を持つこと
- 後継者が相続が生じる直前に会社の役員であること
- 後継者が相続開始の翌日から5ヶ月以内に代表者になること
また、この猶予は一定の条件を満たせば、後継者が亡くなるまで有効になり、後継者が亡くなった際には全額が免除されるため、事実上相続税を支払う必要がなくなります。
株式の相続の注意点
株式を相続する際は、いくつかの注意点を知っておきましょう。
相続前に売却益がある場合などは準確定申告が必要
被相続人が亡くなる前に株を売却して利益が出ているケースなど、準確定申告(被相続人の代わりに相続人が確定申告を行うこと)が必要な場合があります。
準確定申告には期限があり、相続開始から4か月以内に手続きをしなければいけません。該当する場合は早めに対応しましょう。
また、上場株式や非上場株式を含めた有価証券が1億円以上あり、かつ相続人のうち1人でも国内非居住者がいる場合も、「国外転出時課税制度」により準確定申告が必要なケースがあります。これは、相続や贈与によって国外に住んでいる相続人に財産が渡った場合も対象になります。
上場株式は確定申告が必要
相続した株式が上場株式の場合、上場株式は、「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」のいずれかが取引口座です。「特定口座(源泉徴収なし)」「一般口座」は確定申告をする必要があります。
一方、取引口座が「特定口座(源泉徴収あり)」なら確定申告は不要です。しかし、譲渡損が生じた場合は、確定申告することで節税ができます。
相続後に売却益が出ると「譲渡所得税」が発生
相続した後に株を売って現金化した場合、譲渡益が出れば譲渡所得税が課税されます。相続人は相続税とは別に、譲渡所得税を納める必要があります。
▼あなたに必要な相続手続き、ポチポチ選択するだけで診断できます!▼相続した株式の名義変更
相続した株を売却したい場合、まずは名義変更が必要です。遺言書の有無を確認し、遺言書がなければ誰がどの株を何株ずつ相続するか遺産分割協議で決定します。事前に相続人名義の証券口座を開設しておくとスムーズです。
上場株式
上場株の場合は、被相続人の口座を管理している証券会社で名義変更の手続きができます。証券会社指定の届出書などのほか、遺産分割協議書や相続人の戸籍謄本、印鑑証明書、被相続人の連続した戸籍謄本などの書類が必要です。
非上場株式
非上場株式の場合は、その株式を発行している会社に直接連絡して名義変更したい旨を伝えます。必要書類は発行会社によって異なりますが、株式名義書換請求書兼株主票のほか、遺産分割協議書や戸籍謄本などが必要になります。
▼相続対策、迷っているなら今すぐ診断!▼保有株式がわからない場合
被相続人の保有株式は、証券会社から送られてくる取引残高証明書や配当計算書などである程度把握できます。しかし、パスワードがわからなかったり、すべての証券口座で手続きできてるか心配になることもあるでしょう。
このような場合、「証券保管振替機構(通称:ほふり)」へ連絡してください。登録済加入者情報の開示を請求すると、証券会社や口座を特定できます。
開示請求には以下の書類が必要になるため、あらかじめ準備しておきましょう。
- 開示請求書
- 請求者(相続人)の住所・氏名・生年月日がわかる書類
- 被相続人の除籍謄本や相続人の戸籍など(法定相続一覧図でも可能)
- 被相続人の住所がわかる書類(戸籍の附票など)
- 相続人の印鑑証明書
この記事のポイントとまとめ
以上、株式の相続税について解説しました。最後にこの記事のポイントをまとめます。
- 株式の相続税評価方法は、上場株式か非上場株式かで異なる
- 相続した株式を売却するにはまず名義変更が必要
- 中小企業の株式を相続する場合、一定の要件を満たせば相続税の猶予もしくは免除の特例を利用できる
相続が発生した場合は、株式を含めたすべての財産を調査し、それぞれの評価額を把握しないと相続税を計算することができません。
しかし、実際は不動産や株式の評価は難しく、非上場株式の評価は専門家でなければなかなかできません。評価を誤ると相続税の金額も変わってくるためまずは相続税に強い専門家に相談することをおすすめします。
いい相続ではお近くの専門家との無料相談をご案内することが可能です。株式の相続でお困りの方はお気軽にご相談ください。
▼実際に「いい相続」を利用して、税理士に相続税申告を依頼した方のインタビューはこちら
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